こんにちは、北濱にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を経営するヒゲの総帥こと、阿守のブログです。


一部分の人から総帥と呼ばれる、このヒゲの男の人生はこれから猫の目のようにグルグル変わっていく。高校を辞め、故郷から出奔して都会で飲まず食わずを経験して、そして気がつけば北極圏で松(ホワイトパイン)の貿易の手伝いをする。欧州をほっつき回ったあとは音楽家になる。音楽家を辞めて会社を独立させたり詐欺師をやってみて、そして今は北濱にある猫のひたいのような小さな店、クントコロマンサに腰を据えている。しかしながら、ずっと長居をするつもりはないのだ、ヒゲの総帥はゲリラ活動家になりたがっており、これまで虎視眈々と準備を進めてきた。そして、いよいよ機は熟して月は満ちようとしているのである。


ヒゲの総帥がクントコロマンサの経営に携わりだして丸4ヵ月が経った。いよいよ沈むぞヨーソローと思われていた万作丸は見事に常連と新規含めた協力者たちのおかげで難局を乗り越え、大海の荒波に漕ぎだしているのである。ただし、これはまだ現時点ではヒゲの総帥が曳航しての航海であるからして、ヒゲの総帥がいなくなればまた前に戻るのかも知れない。それならばそれで社会淘汰されてしまった惜しいひとつのバーとして、人々の記憶に残るのみである。


ヒゲの総帥は来月にエンジンをフル回転させて、遠くへ遠くへ洋行させるため、万作丸に勢いをつけてスイング・バイさせ白波を突き抜けさせるつもりである。どうかこれをお読みの皆さまにはさらなるご乗船、ご随行を願うものである。


さて、一昨日のこと。


常連の不思議な女とガルパンの男と大学生の女とヒゲの総帥は先日のイベント「日曜スペシャル」について話しをしていた。とてもよいイベントだったと常連の二人が褒めてくれるのであるからして、総帥は嬉しくて仕方がない。なにより旧来よりこの店を愛顧してくれているポッポ~ず♪のコンビを新しいお客に紹介できたことは良かった。物事には段取りがあり、そのヒゲの総帥の勝手な一存による店の立て直しの段取りについては周囲より賛否両論があったが、そういった議論や意見を交わせたことも大きな財産である。


それで昨日のこと。


ヒゲの総帥が店に行くと、ギャラリーの女とギャル曽根の女が一緒にひとつのテーブルで酒を飲んでいる。ギャラリーの女は随分と飢えていたようで、漬け丼とフォーを平らげてしまい、次には菓子をぼりぼりとかじっていた。「あなた、北濱に三越があったことをご存知ですか」と上品な語り口で相席になっているギャル曽根の女に訊く。この両人はもちろん初めての迎合である。


「いいえ、知りません」とギャル曽根の女は答える、ヒゲの総帥にしても一度、知人の北欧マニアの男が企画した音楽イベントを船場の綿業会館で催した際に、北濱あたりで道に迷い「こんなところに三越があったのか」と驚いた記憶がある程度である。「いい映画館も北濱にはあったんですよ、神農さんのお祭りしてる通りなんか、人から訊くところによれば随分と力があるそうなんですよ」とギャラリーの女はいう。「つまり、パワースポットということですか」と総帥がわざわざ聞かなくてもわかりきったことを問うと、こくりと頷くギャラリーの女。


そこからギャラリーの女に以前の北濱の風情を聞かせてもらう。「そりゃあ、お洒落で上品でしたよ。三越の階段の踊り場にはピアノなんかが置いてありましてね、そこで演奏があったりしたもんです」と懐かしそうな目をしてギャラリーの女は日本酒で赤らんだ頬でいう。「そのピアノ演奏で米国の進駐軍の兵隊たちが踊ってたんですよね」とヒゲの総帥が合いの手を入れると、隣の席にいたガルパンの男は思わずビールを吹き出す。「そんなに古い時代のことじゃありませんよ」と失敬なという表情をするのはもちろんギャラリーの女である。ギャラリーの女から語られる、つい最近までの北濱の風情はまさにヒゲの総帥がこの街に期待していたそのものであった。


「古き良き時代ということですね」ヒゲの男がそういうと、「そんな大層なもんじゃありませんよ、ここ最近の話しです」と苦笑しながらギャラリーの女はいう。さらに「これからが面白いんじゃありませんか?だって北濱革命軍の隊長がここにおられるんですから」とイタズラっぽい目つきでギャラリーの女はヒゲの男を見やる。ヒゲの男は笑いながら「名誉顧問も僕の目の前にいますから」と返すとギャラリーの女は「私はそういうのに加わりたくないんですよ」と爆笑する。ヒゲの総帥も「同感です」と連れて笑う。


北濱とは不思議な土地である。キタでもないミナミでもない、だがそのどちらの素養も持ち合わせながら、とてもドライな人間たちに好かれている土地。どこか辺境の街を思わせれば、どこか都会の中心のようでもある。歴史情緒豊かでもあれば、こぞってタワーマンションはがらがらどんどんと建設ラッシュを迎える。この猫の目のように捉えどころのない北濱(北浜)という街は、ヒゲの総帥の心を捉えて離さない。


坂本竜馬が桂浜を好きだったように、ギャラリーの女は北浜が好きなのだろう。人はいつしか自分の生まれ故郷よりも好きになる場所を持つことになる。すでに取り決められている居場所ではなく、そういったものは自分で探して、自分で勝ち得るものだ。だから好きになれるのである。


ギャラリーの女たちが帰ったあと、総帥はガルパンの男と一緒にガルパン劇場版をスマホで見ながら、そんなことを考えていた。すると重大な願いを込めてマニ車を回す信者のように、階段を昇ってくるものがある。万作は「冷泉さん来たな」と誰にいうでもなく呟く。


ゴガッという締まりの悪いガラス戸が開いて、そこにいたのは髪を下ろして休日モードのハイタッチ冷泉であった。


冷泉はいう「阿守さん、2日のちゃんこですけど、朝までやっても、いいですか?ワハハ」と。


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# by amori-siberiana | 2017-11-24 15:17 | 雑記 | Comments(0)


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