2017年7月11日 ◆先生、時間です


画廊喫茶フレイムハウスは北浜にある小さいカフェ。

例えるなら作曲家エリック・サティが住んでいた猫のひたいほどのアパルトマンの一室。
例えるなら、サマセット・モームの「月と6ペンス」に出てくる、異端の天才チャールズ・ストリックランドが飢え死にしそうになって寝込んでいた部屋。

そんな感じのところです。

版画家の柿坂万作と、音楽家の阿守孝夫が共同で経営する、小さいカフェです。

カフェの中はがらくたで満載。

楽器だけでも、バイオリン、チェロ、足踏みオルガン、アコーディオン、コンガ、マラカス、蓄音機、トランペット、クラリネット、誰も知らないようなマニアックなフォークソングのコード譜面。

それ以外の愛すべきがらくたを含めると、とんでもない文字量になります。
それらはそれらで、なんとなく肩をすぼめながらでも、ある一定の調和を保っているように僕は感じます。

壁には万作さんが描く壮大なパステル画。まだまだ途中とのこと。お店の営業中に描いたりもします。

そんな万作さんが夢中になっているのは、ある「もの」を作ること。
その「もの」を作っているのが世間にバレると、国家権力によって殺されるのだと、彼はいいます。
冗談ではなくて、本気でいっていらっしゃいます。

「阿守さん、絶対にこのことだけは口外せんといてくださいね」と何度も念押しされました。

なので、ある「もの」が何なのかを僕はいいません。

とても高度で緻密な計算を要するものなので、万作さんのひいた図面には、沢山の数字たちが並びます。
その羅列された数字たちは、数字たち同士で隣の数字と会話をしているようでもあり、かわいくもあります。

そうそう、画廊喫茶フレイムハウスの隣には、サロン喫茶フレイムハウスという同名の店舗があります。

わかりづらいですよね。

そう、わかりづらいんです。

でも、どうぞ迷ってください。間違って隣のお店に入ってしまっても構いません、それはそれで縁があったのかも知れません。
迷い込んでくるお客さんをこれまでに何度も見てきましたけれど、ここで命を落とすようなことはありませんでした。

命さえあれば大体どうにでもなります。

作曲家エリック・サティが亡くなったあと、彼を慕う人たちがサティの部屋に入り、遺品整理をしていました。
すると、あるものが出てきました。ちょっとおかしな手紙です。

差出人はエリック・サティ

受取人もエリック・サティ

自分で書いて、自分で受けとったということです。
みんなが一様に顔を見合わせて、「?」となりましたが、勇気を出して手紙を開封してみることにしました。


すると、そこにはメモが入ってて、次のように書かれていました。


ー 先生、時間です -


大阪市中央区淡路町1-6-4 2階上ル


阿守

d0372815_12395322.jpg




[PR]
by amori-siberiana | 2017-07-11 12:44 | 雑記 | Comments(0)


北浜のビジネス街にある、昭和レトロなカフェのブログです。            大阪市中央区淡路町1丁目6の4 2階上ル