2017年9月06日(水) ◆アラタメ堂と占い師とアロハ

こんにちは、北浜にて猫のひたいのような小さな店。画廊喫茶フレイムハウス(もうすぐ改名)を営んでいる阿守です。


画廊喫茶という名前から、そこへ行くと絵画を買わされたりするのではないかと想像豊かな諸君は思われるかも知れないが、そういうことはない。是が非でも売ってくれといわれれば、売らないこともないかも知れないが、これまでそういった場面に遭遇したことはない。


画廊喫茶とは名ばかりの、ここは私塾である。


ヒゲの男のオフィスの近所に緒方洪庵ゆかりの適塾というのがあるが、まさにフレイムハウスは現代の適塾なのだ。


お昼すぎに画廊喫茶フレイムハウスへ行く、妖精の女がパスタを食べていた。


「ちょっと、塩足らなんだん違いますやろか?」と妖精にお伺いをたてたのは、この店のシェフであり、版画家の柿坂万作。


「ええと、こんなんを阿守さんの前で言わんほうがええんやけれども、ワシ、塩を切らせとるのを忘れてまして、塩がないんですわ」と、万作は現状報告をしてくれる。


ヒゲの男はシタール弾きが置いていった、重たいアンプをステージ横から店の入り口まで引きずり出しながら、版画家のことばに応答する。


「それだったら、隣から少しばかりいただいてきたらいいのではありませんか?敵に塩を送るということばもありますから」との返答に、万作は大笑いをする。


ヒゲの男は、店に来る前に人生初のタロット占いをしてもらってきた。困難があるが、やり続けることだとの占いをみて、多少なりともホッとした気持ちになった。これから人生の岐路のときには、占いを頼りにするのもいいものだと感じたのだ。


ただ、太陽(ソレイユ)とフランス語で書かれたカードの絵が気になった。腰巻だけつけた半裸の男が二人で健闘を称えあっているのである。もちろん、そういうデザインのカードだからと言ってしまえば終わるのだが、ヒゲの男は気になった。


売れるものは全て売り払い、最後の最後に着るものもなくなって、「よくここまで頑張りましたね」と、ヒゲの男はいう。「ワシも、ここまで続くとは思いもしませんでしたわ。もともとワシの服はもらいもんばっかりやったんで、今さら裸になっても、ワシはなんも失っとりゃしませんがね」と、ディオゲネス然とした万作は誇らしそうに笑う。


「じゃあ、万作さん、お疲れさまでした。またどこかでお会いましょう」


「ええと、ワシ、また会ういうても、どこに行くかわからんので」


「じゃあ、来世でお会いしましょう」


「うーん、来世いうんは好きやないな。ワシ、来世いうんを信じてないんで、うーん、来世いうても、なんかピンとこんな…」


と、こんなやりとりが想像できる絵柄なので、それが気になるのである。ただ、太陽だけは燦然と輝いていることは見て取れた。


ヒゲの男は、曇り空のなかシタール奏者のところへアンプを返しに行く。北浜に戻ってきてから、まず隣のフレイムハウスへ立ち寄り、梅酒をあおりながら店舗の名前を改名することを了解したとの返答をした。


「それで、お店の名前はなにとなさるんですか?」と隣のオーナーの女は訊いてくる。


「いや、まだ何も決めていないのです。これっていうのが浮かび次第に改名します。それまではご寛大にお待ちあれ」と、ヒゲの男は足元の問題を、未来の自分に託すようなことをいう。


夜には、常連の不思議な女と青山ビルでギャラリーをしている女、そして占い師の女が来店してくれた。占い師の女からタロットの歴史や占いの歴史などを聞きながら、暗黒の時代といわれた中世ヨーロッパに思いを馳せていた。


中世のヨーロッパ、およそ1000年ほど、何も起こらない時代が続いたのだ。それによって後世の歴史家からは暗黒の時代と揶揄される。もちろん戦争も起きてれば、文芸も発達してはいるが、他の時代と比較してみると、何も起きていないに等しいとのことだ。


しばらくすると、常連のガルパンの男がやってきて、その後にアラタメ堂の主人がやって来た。


アラタメ堂の主人はカードゲーム収集家である。古今東西のありとあらゆるカードゲームを持っており、北浜のオフィスにAmazonから小包が届くと、十中八九、アラタメ堂の主人が取り寄せたカードゲームだったりする。


「いつ頃からカードゲームに興味を持たれたのですか?」とヒゲの男がアラタメ堂の主人に訊く。版画家の万作は、なぜだか手に花札を持ちながら、店内をウロウロする。


「小学生とか中学生のときですかね、一時期は離れてパソコンゲームをしていたんですが、今はまたコレに戻りました」とは、アラタメ堂。


「パソコンゲームってどんなのですか?フロッガーとか?」と、ヒゲの男は根掘り葉掘りの勢い。


「また、古いゲームの名前を出しましたね。してましたけど、そういうのじゃないんですよ」と、アラタメ堂は苦笑しながら回答する。


アラタメ堂の高説から入ってくるカードゲームの情報を聞いてると、知らないところで随分とゲーム性が発達していることがわかる。知ってしまうと、やりたくなって仕方がないのが人間の性であろう。


「そうだ、いっそここ(店)でそういう日を作りましょうよ」


「いいですね、願ってもないことです」と、アラタメ堂も賛同する。


そして、決まったのが9月16日の土曜日である。


アラタメ堂の主人が選りすぐりのカードゲームを持ってきて、それに興じるというものである。日本語訳のついた海外のゲームもあり、そのなかでもヒゲの男が気になるのは冷戦時代の諜報工作のゲームや、スパイを探し出すゲーム、さらにはアラタメ堂がイチ押しするホラーゲームなどだ。


夜も更けた頃、ハイタッチの男こと冷泉が店にやって来る。今日はいちげんさんのアロハの男と太もものお化けを連れてやってきた。


アロハの男はアロハシャツを日本で一番売る男、自分の誕生日に偶然いあわせたアントニオ猪木からビンタをされた男でもある。猪木のビンタを受けて、顔から床に叩きつけられ、ビンタを受けていないほうの頬を三日間も腫らしたそうだ。太もものお化けは、元サッカー選手であり、太もも周りは65センチで筋肉で鋼鉄のようにコーティングされている。


冷泉がいう。


「阿守さん、この人、歌好きなんですよ」とアロハの男を見る。


「それだったら何かギターで伴奏するんで、歌われますか?」と、ヒゲの男はいつもの調子でギターを取り出す。


アロハの男が思い出したように口を開く。


「それなら、もう一軒行こうか?いいお店がある、生ギターで歌がうたえるバーがある」


なるほど、それに特化したバーなら勉強のために行っておくが良かろうと、三人で心斎橋の「KOTETSU」というバーに移動する。


入店すると、泉谷しげるのような風貌のマスターがギターを抱えている。店のテレビにはTOTOのライブが流れていた。


ものは試しだ、歌ってみよう。そう意気込んだヒゲの男はTOTOの「99」をマスターにリクエストする。


「99かぁ、歌詞カードが読みにくいから、あんまりオススメできへんねんな」とマスターは気乗りしない返答。


「そうですか、じゃあ、長渕剛の順子をお願いします」


「おととと、えらい方向転換やな!なかなか、そこからそこへ飛ぶ人はおらんわ」


何も見ることなく順子を長渕そのまんまに弾きだし、そしてここぞというときにはコーラスも入れてくれる。なるほど、これは確かに良質なバーである。歌にあうギターの伴奏というものがある、ヒゲの男はそれが苦手なので、こうした巧みな演奏を見せられると感嘆してしまう。


バーには他の客もいたが、客のリクエストに応えてなんでも弾けるマスターは素晴らしかった。


リクエスト順は、以下のようなものだった。


長渕(阿守)→長渕(他の客)→長渕(冷泉)→長渕(アロハ)→EXILE(他の客)。


名残り惜しいのは、夏祭りを本格的なスリーフィンガーで歌ってみたかったからだ。また次の機会に。


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by amori-siberiana | 2017-09-06 17:18 | 雑記 | Comments(0)


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