2017年9月09日(土)② ◆竜と人間が生きていた時代のはなし、そしてカリフォルニケーション。

こんにちは、北浜は画廊喫茶フレイムハウスにて、猫のひたいのように小さな店を経営する阿守です。秋風が涼しく吹き抜けて、土曜日の北浜は人もまばらで静か。道端にはどこへ行けばいいのかわからない外国人観光客がウロウロしており、普段の大勢の会社員がいないことで、外国人の数は増えていないのですが、ウロウロがひときわ目立っている状態。


金曜日のこと、つまり、昨日のこと。


ヒゲの男は南船場のパン屋「き多や」へ立ち寄りバゲットを抱えて北浜のオフィスへ行く。ちゃっちゃかちゃっちゃかと仕事を適当に切り上げて、版画家の柿坂万作の居城、「画廊喫茶フレイムハウス」へ向かう。


店に行ってみると、青いカーデガンの女と7~8年給料の出ていない女がお茶をしていた。7~8年とはなかなかのものである、ウイスキーもそれくらい寝かせれば、いっぱしのものになるであろうと、ヒゲの男はぼんやりと考える。


彼女たちは一旦、青山ビルにあるギャラリーへ行くため店を出る。すると宗教画のモデルの女がやってきて、短時間の滞在であるのに常人の一週間分の酒をひとりで飲みだす。


しばらくして、先述の二人が店に戻ってくる。ヒゲの男は今月の19日の演奏に備えて、お客がいようがいまいが関係なく一心不乱にギターの練習をする。万作は壁画に取りかかる、まったくもって喫茶というよりはアトリエである。


すると、締まりの悪いガラス戸が開かれ、吟遊詩人の女が友人のベレー帽をかぶった異国風の女を連れてやってくる。吟遊詩人の女は大きなグリーンのバッグを抱えている。


バッグを開け放つと、そこには小型のハープ(竪琴)が入っていた。万作とヒゲの男は珍しそうに楽器を見入っている、「ちょっと弾いてみてもらえませんか」とヒゲの男が彼女へことばを発したが、これは何もヒゲの男固有の意見ではなく、その場にいた誰もが考えていたことを代弁しただけである。


吟遊詩人の女はハープを特徴ある指運びで演奏しながら、物語を紡ぎだす。


竜と人間が争っていた時代の話しが、ハープの音色とともに聴衆の耳へ運ばれてくる。ナイロンの弦が空気を震わせ、それが水面の波紋のように拡散しながら店内に響く。インターネットと違うところは、それが炎上しないところだ。


地底人のような声の男、常連のガルパンの男がやってきて、ハープに興味津々であるところを示す。


「あの手がいいですねぇ」とはガルパンの男の感想。静かにうなずくのはいつの間にか来店されていたグラフィックデザイナーの男。


聞くところによると吟遊詩人の女の友人も歌をやるとのこと、是非、一聴させていただけないかとヒゲの男はベレー帽の異国風の女に頼み込む。


異国風の女はギターを片手にイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」を歌いだす。これはまた見事な歌声、吟遊詩人の知り合いにはこの高いレベルの音楽家がゴロゴロいるのかと思うと、随分と恐ろしくなってくる。


この異国風の女はヒゲの男よりも一回り年齢が下であるが、ヒゲの男が知らない一回り上の世代の外国の曲をよく知っている。つまるところ、彼女からすれば二回り上の曲をレパートリーとして持っているのだ。クイーン、ディープ・パープル、TOTO、クラプトンなどなど。


吟遊詩人の女と異国風の女は、地底人のような声の男より、音楽への貢物としてビールをそれぞれ一杯ずつおごられる。


一曲だけで終わるわけはなく、そこから終電まで二人は歌うこととなった。常連の不思議な女と、そのボスが二人の歌い手と入れ替わるようにやってきた、冥途の土産ということで異国風の女は帰り際に、本日、三度目の「ホテル・カリフォルニア」を歌うこととなった。


異国風の女がその気風のよさで頑張ってくれたことにより、吟遊詩人の女は「カントリー・ロード」を一度口ずさむだけでよかった。持つべきものは友である。


彼女たちのテーブルには、シェフ兼版画家の柿坂万作が腕をふるった、風の谷のナウシカのオウムみたいな外観の料理が運ばれてきていたが、どのような味だったのか二人に感想を訊くのを忘れてしまった。


吟遊詩人の女は「竜と人間が争っていた時代の物語」を組曲(4曲)として持っている。


ハープとギターによって紡がれるストーリーの一部始終を聴いてみたいものだ。


そして、万作の描くドラゴンなる生き物も壁画で見てみたいものだが、いかがなものだろうか。


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by amori-siberiana | 2017-09-09 12:47 | 雑記 | Comments(0)


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