2017年10月5日(木) ◆ツキノワグマに襲われて、首筋を痛めるヒゲの男。

こんにちは、北浜にて猫のひたいのように小さなお店。画廊喫茶フレイムハウスに乗り込んで3か月目の阿守です。


ヒゲの男は一年の25%を猫のひたいで過ごしてみた。100人以上の人間と会い、面と向かって話しをする機会を持ったことで、ヒゲの男は経験とアルコール摂取量をこれまでより増やすこととなった。


さて、昨日の話し。


ヒゲの男は、道具屋筋に行く。版画家の柿坂万作がおでんを始めるのだが、その鍋の底が抜けているため、新しいおでん鍋を買いに来たのである。あちらこちらの金物屋をめぐって、なるほどこれがちょうど良かろうというものを買う。金物屋などに来るのはヒゲの男の人生において、二度目か三度目くらいではなかろうか。


道具屋筋のなかでも一番大きいくらいの金物屋に入る。店には延々とおっさんのナレーションがラジカセか何かでかかっている。


「階段があります。松茸ごはんに土瓶蒸しのこと考えて、落ちんといてや…」という言葉が何度も続くが、そのうち心地よくなってくる。ラジカセから耳に届く音質というのは、その独特な音質を知ってるものにとって、ノスタルジーを感じるのだ。


おでん鍋を買い、北浜のオフィスへ立ち寄ったあとに店へ行く。版画家の新料理、コロマンサの写真を撮影しにデザイナーの女がすでに来ており、コロマンサを撮影したあとにペロリとたいらげていた。ギター弾きの男も店内でコーヒーを飲んでいた。


ヒゲの男は早速、ギター弾きの男をつかまえて、一緒にイベントをしないかと問いかける。ギター弾きの男は唐突な申し出に「?」をその表情によぎらせたが、ヒゲの男は構わずにしゃべり続ける。


ヒゲの男がいうには、そのギター弾きの男とやってみたいイベント企画があるのだとのこと。ヒゲの男は譜面をもってきて、ギター弾きの男に見せる。ギター弾きの男は譜面を目でおいながら、「なるほど」と相槌をうつ。


一方的に説明を終えたヒゲの男はすぐに店を飛び出し、どこかへ消える。


…なにやら外でしているみたいだが、それはまた別の話し。


夜になり店に戻ってきたヒゲの男。万作は新しいおでん鍋をカセットコンロの上に設置して、おでんをぐつぐつと煮込んでいた。


店には常連のガルパンの男、不思議な女、温泉マニアの男、洒落た名前の女がいる。この洒落た名前の女であるが、この女の気だるさは相当なものである。気だるさにワインのようなランクがあるとすれば、この女が醸しだす気だるさはプルミエ・グラン・クリュの上位につけるであろう。


ヒゲの男はガルパンの男のテーブルに相席となり、スマホを取り出してガルパンを始める。つまり、ひとつのテーブルに向かい合わせで帽子をかぶった男二人が、スマホを取り出して同じゲームをしているというものだ。


洒落た名前の女は、本の名前が敢えて伏せられた、本の宣伝文と、2015年に封切された名画をモチーフにしたカクテルのカタログをヒゲの男にプレゼントだといって渡す。本当に謎ばかりを持ち込んでくれて、ありがたい話しである。


しばらくすると、オーストラリア人の男がやってくる。明後日にはオーストラリアへ帰国して、そのまま休暇をフィジーで過ごしたあと、11月に仕事で日本へ戻ってくるとのことだ。ヒゲの男も先日、珍しく万作が購入した絶景のガイド本を見ながら南の島に思いをはせるが、ヒゲの男は「冬」の美しさを持つ男なので、南に行ってはいけない。


そして不思議な女が、「隠れた常連」と呼ぶ二人のペアが店に来た。


万作が店の名前が変わるのだということを二人に告げるが、二人は現在の店の名前自体を知らないようであった。


「うーん、ワシが、もうアカン、この店、もうここまでや、あー、潰れるわ。いうときに一気に立て直してくれたんが、この人ですねん」と、言いながらヒゲの男を紹介する。


「どうもありがとうございます。阿守さんはメシアなのですね」と、ペアの男のほうが言う。


「いえ、そんなとんでもないです。好きでしたことですから」と、ヒゲの男は珍しく謙虚に引っ込む。


隠れた常連の女が、オーストラリア人の男にどんな魚を食べるのかという質問をする。


「そですね、私のオーストラリアでは、フィッシュは、バルマンディというを食べます」と、オーストラリア人の男は日本語を駆使して返答する。1週間に2時間だけ練習したにしては、なかなか冗舌である。


「バルマンディ…」


聞き慣れない魚の登場に、一同がその魚について調査を開始する。インターネットであったり、オーストラリア人への直接の聞き取り調査であったり色々だ。


疲れていたヒゲの男は珍しくこの日は早めに店から帰った。その小さな脳みそのなかに、沢山のフォルダが開いているので、ひとつひとつ整理するために睡眠を欲したのだ。


その夜、ヒゲの男は自身がクマに襲われ、とっさに川へ飛び込む夢をみて、実際、猛烈に寝返りをうちソファから落ちて目が醒めた。とてもリアルな夢だった。


大きなツキノワグマが山道のヘアピンカーブの向こうで、背伸びして木の実を獲ろうとガリガリしている。ヒゲの男の数メートル前には登山の格好をした山ガールが歩いている。クマはこちらに気づき猛然と追いかけてくる、あの巨体の悠然とした筋肉の動きからは想像もできないほどのスピードでこちらへ向かってくる。


逃げ出して数秒で、これは負けが決まった勝負だとヒゲの男は直感した。願わくは山ガールのほうへ行ってくれと、ヒゲの男は卑怯なことを祈る。


ヒゲの男の祈りが通じたか、クマは山ガールを追いかける。ところが山ガールの逃げ足はとてつもなく早い、垂直に切り立った壁を走って登り逃げていく。


クマはこれは相手にならないと諦めて、ヒゲの男のほうへ進路を変える。どうしてだかヒゲの男はスローモーションのような動きしかできない。生きるか死ぬかの間髪、ヒゲの男は「どうにでもなれ!」と橋から川に飛び込んだ。


夢だったのかとソファから床へと転げ落ちた自分に気がつくヒゲの男。転がり方が悪かったのだろう、首筋を寝違えた。


どうせ見るなら良い夢をみたいものだ。


フランスの作曲家、ラヴェル先生がボレロをBGMに、滝壺から空中浮遊しながら湧き上がってきて、夢の中でラヴェルの弟子であったヒゲの男は、他の弟子たちとともに喜び号泣するという夢を見たのが、これまでで一番良い夢であった


起きたあとも泣いていたくらいなのだ。夢を見ながら何時間くらい泣いていたものか。目が疲れていた。



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by amori-siberiana | 2017-10-05 13:13 | 雑記 | Comments(0)


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