こんにちは、北浜の風雲児こと岩本栄之助をご存知でしょうか。大阪は中之島の中央公会堂のキッカケを作った人。株式の仲買人としては剛腕であり、さらには人情家で篤志家でもあった彼は北浜の地でなにを捉えようとしていたのかをぼんやりと考えてる、湿気と熱気が渦巻く今日この頃です。


北浜のおもしろさは、その地政学に根差します。


キタ(梅田)からも、ミナミ(なんば、心斎橋)からも滅法近い距離にありながら、公共交通機関の便はそれほど良くなく、白なのか黒なのかわからない人間たちが目まぐるしく流れ込んできては、闊歩往来する前述の街とは違い、ある一定の質量が保たれているような街。

それが、北浜という街です。


しかし、この北浜も今はホテル施設の建設ラッシュとなっていて、あちらこちらでトンカントンカンやっており、平日の昼は忙しいビジネスマンが大挙するコンビニでの長蛇の列を含めて、戦後復興の雰囲気すらあります。


さて、昨日はエイリアンさんのギャラリーへお邪魔してきました。「北浜には若者が必要なのよ!」という彼女のことばもあったので、職場から粋のいい若いのを一人連れて行ってきました。


全体が白で調和されたギャラリーは、清潔感とこれから何かが起きようとする期待感があり、屋上部にいたっては条件さえ整えば100人規模でビアガーデンをしながら、映画の上映もできるほどのスペースがありました。


ギャラリーの下の階は、サロン兼エイリアンさんの住居となっており、来客用に椅子は20脚ほどありました。


僕が画廊喫茶フレイムハウスの名刺をエイリアンさんに渡すと、「あんた、ここのギャラリーのプロデューサーって名刺も作りなさいよ」と言ってくださいました。エイリアンさんは近くの射撃バーによく行ってらっしゃるそうで、実物と同じくらい重たいライフル銃を「構え、筒!」して、乱射するのがたまらないのだとか。


還暦を超えても箕面の山でサバイバルゲームに興じるという彼女自身の個展を開いたら、さぞや面白いものになるであろうと考えましたが、それだと商売になりません。


三人で焼けつく日差しのなか、屋上に出ると予想以上に眺望がよく驚きました。エイリアンさんは東西南北を眺める僕、そして様々な角度から写真を撮る同僚を見つめながら、こういいます。


「私の本の発想はここで生まれたのよ」


「どの本のことですか?」


「タワーマンションの住人が違うタワーマンションの住人とお互いをのぞきあうってやつ」


「ああ、なるほど」


僕がギャラリーをどのように使っていくのかを考えていたとき、ここを物見やぐらとして立て籠もり、ライフル銃を構えたエイリアンさんが、ときどき双眼鏡で周辺を索敵する場面を脳内再生してしまい、おかしくなった。


◆10W gallery (www.10w.jp/)


そこは、北浜から確かにヒリヒリとするものを発信している場所。


エイリアンさんのギャラリーから撤退して、そのまま北浜のオフィスへ一旦戻り、画廊喫茶フレイムハウスへ向かった。


お店に入ってみると、版画家の柿坂万作さんと常連のガルパンの男がスマホで「ガンダム」の動画を見ていた。僕が来たのをみて、「あともう少しやったのに」と名残惜しそうにガンダムから離れる万作さん。まるで学級委員や風紀委員長がやって来たような扱いである。


「万作さんの作品ってどれくらいの点数がありますか?」


「ええと、どれくらいやったかな、まあまああるんやないかと思います」


そして、万作さんが三階からいくつかの作品をもってきて僕に見せてくださった。自分の作品だけでなく、自分が教えた生徒さんたち老若男女の作品もずっと大切にとってあるのである。


デッサン画、版画、パステルなど、版画にしている紙も良質の和紙であり、経年とともに良い具合に焼けていた。


「万作さん、最後に個展してからどれくらい経ちます?」


「うーん、そうやなぁ、この店はじめる前やから、7年くらいまえ違いますかねぇ」


「久しぶりに個展をしてみる気はありませんか」


「うーん、もうその気力はないなぁ、エイリアンさんとこ行ってワシの個展でもしよういうて焚き付けられましたんか?」


この思考のプロセスが万作さんらしいというか、なんというか、度し難いおっさんである。


「いや、そんな話しは一切出てません」


「へえ、ほんならどうして急に…」


「いや、音楽家は音楽を奏でてお金をいただきますけれど、版画家は版画をすってお金をいただくものではないかなと考えたんです。万作さんの版画を見てみたいという人も沢山おられますし、問い合わせも実際にあるから訊いてみました」


「ワシ、そういう絶好のタイミングを逃すのは得意ですねん(苦笑)」と卑屈な笑顔を浮かべる彼に対して僕は猛烈に腹が立った。なぜだかわからないが、猛烈に腹が立った。そのセリフの言い慣れた感覚に、憤怒したのだ。


「なら、そのまま、死ぬまで逃し続けましょう」と僕は万作さんにむかって平静を装って言い放ったが、その自分の呪詛のような言葉にも腹が立った。猛烈に腹が立った。心にある言葉が理性を簡単に飛び越えて、口から出たことに憤怒したのだ。


そのままお店でエゴン・シーレの画集を見ていたが、エゴン・シーレの絵画には相当前から腹立たしさを覚えていたので、僕の腹立ちは助長されるばかりであった。


腹が立つなら、店の雰囲気が悪くなるので、さっさと帰ればいいものを…、何故か僕は結構、遅くまでいてしまった。


昨日の反省のうえに今日がある。今日は27日のためにモノポリーをお店に持っていくのだ。

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by amori-siberiana | 2017-08-18 14:04 | 雑記 | Comments(0)


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