こんにちは、北浜にある猫のひたいのように小さな店。画廊喫茶フレイムハウスは昨夜も騒がしい一日となった。繁盛しているのか、暴挙にかられているのか、それは誰にもわからないが、賑やかなことに変わりはない。


なにが騒がしいかといって、一番のニュースはこの店にゆかりのある、出っ歯の男が小説家としてデビューすることが公式に発表されたのだ。常々、北浜から文化人を発信したいと目論んでいる、ヒゲの男からするとこんなに嬉しいことはない。


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~異世界も日本も捨てがたい! 大人のための『時々帰れる』欲張り冒険譚!!~

【本のタイトル】アラフォーおっさん異世界へ!!でも時々実家に帰ります

【著者】平尾正和

【発売日】2017年10月10日

【出版元】カドカワBOOKS

【値段】1200円(税抜き)

【WEB】https://kadokawabooks.jp/product/arafoossan/321706000620.html

【概説】1通のスパムメールで、突然異世界に放り込まれてしまった敏樹(40)。しかし彼は、自由に実家に戻れるスキルを手にして……?危なくなったら即帰宅!アラフォーおっさん流・空気を読まない異世界旅が始まる!

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以上が、小説の概要となる。


画廊喫茶フレイムハウスにいるヒゲの男と、この小説家として文壇の門扉を叩こうとする男とは同郷の知人であり、双方とも音楽家として同じステージにて20年以上にわたり付き合ってきた仲である。手放しで応援したくなるのは無理もない話しである。


しかも、ヒゲの男にはこの小説家をキッカケとして、北浜独立の戦略上における重要拠点を築こうという狙いもある。あらゆる芸術、あらゆる文化、あらゆる歴史というのは、そのほとんどをことばに頼っている。となれば、物書きと組むことは理にかなっているのである。


平尾よ頑張れ。平尾よ羽ばたけ、その少し顔より前に突き出た歯を、杭のように地に突き立てて、進んで行くのだ。あっぱれ!人生の博打は始まったばかりだ。


さて、ヒゲの男こと阿守が北浜のオフィスにて仕事をしていると、一通のメールが入ってきた。差出人は画廊喫茶フレイムハウスの共同経営者である、版画家の柿坂万作。どうやら、ヒゲの男と同郷の友人がランチに来ているとのこと。ヒゲの男はさっさとデスクの上を片付けて、店に行くことにした。


店に行くと、遠距離にいるのに見慣れた知人の顔があった。少し後になってクレオパトラの女が店にやってきたので、版画家の万作を含めて昼間っから、草刈り機で足を切断したというような話しをする。クレオパトラは食事中に勘弁してくれというような顔をして手で耳を塞ぐが、万作は気にせずそのまま突っ走る。


「田舎にあるよう研いだ、草刈り鎌とか、えらい切れますからね、ひひひ」とは万作。


話しが一段落したところで、ヒゲの男は翌日のシタール演奏会の準備のため、音響機材をシタール奏者の男のところまで取りに行く。


シタール奏者はちょうど生徒さんをレッスンしていたところだった。聞き慣れないことばがわんさか出てくる、「パニサガレダ~」のような呪文を旋律にのせて声に出している。多分、インドの音階の呼び名なのであろうと、わざわざ聞かなくともなんとなくはわかる。


重たい機材をシタール奏者より渡される。


「阿守くん、帰りは地下鉄?」


「そのつもりだよ」


「これ重いから、地下鉄で帰るんやったら、ここをこう向かえばエレベーターのある入り口になるわ」と、シタール奏者は丁寧に教えてくれる。


ヒゲの男は、「大丈夫、大丈夫」と意気揚々、シタール奏者のところから機材を持ち出してきたが、ものの30秒ほどで音をあげてしまい、タクシーを呼ぶはめになった。


一度、北浜のオフィスへ立ち寄る。北浜人狼を主催するアラタメ堂の主人がいたので、今日、最終のリハーサルをさせて欲しいとお願いする。ついでにカフェ・コンサルの男と、インバウンド事業で一旗あげようと目論む上仲、さらにまた違う業種のインバウンド事業で一旗あげようと目論む大学生に声をかけ、フレイムハウスで人狼に付き合ってもらうことにした。


一度は北浜のオフィス内で、アラタメ堂の主人が持ってきた「ゲスカノ」という新しいゲームをしていたのだが、どう考えてもオフィス内との空気感が嚙み合わないので、フレイムハウスへ移動することにしたのだ。


店に一同が集結したのち、人狼の最終リハーサルが行われる。


常連のガルパンの男はゲームに加わらないが、ご機嫌にビールを飲みすすめる。常連の不思議な女もやって来るが今日は様子が違う、白いカッターシャツの若い男を連れている。なんと、常連の不思議な女が部下である新入社員を連れてきたのだ。


常連の不思議な女が会社で働いている姿を、ヒゲの男は一切、これっぽっちも想像できなかったが、部下がいると違うものである。なんだか腑に落ちた。


ワイワイしていると、冷泉がたわわに実った見事な巨峰とマスカットを手土産にやってくる。いちげんさんを一人連れている、この男をマイナーな男と名付けることにする。


マイナーな男は2万円で起業して、今では年商16億を稼ぐまでに成長させた男だそうだ。早速、ヒゲの男に促されて上仲くんが自身のビジネスプランをマイナーの男にぶつけるが、1R秒殺。


不思議な女と、その部下の新入社員の男も加わって、人狼は夜がとっぷりと更けるまで繰り返されることとなった。


ウイスキーのストレートと、ハイボールをチェイサーにして飲みながら、冷泉は言う。


「マイナーさん、僕の腹を殴ってください」


「いや、僕は殴りませんよ。ここで僕が殴ることによって、どんな社会的貢献が起こりうるというんですか」と、マイナーな男は当然のことを言う。


「社会的貢献は…、ない、です」と、冷泉は思ったままを述べる。


「だったら無意味じゃありませんか、全体の利益にも福祉にもならないことを僕はしたくないのです」と、これも至極当然な論である。


「いや…、意味は、あります」と、冷泉は滑舌わるくいう。


「どんな意味があるんですか!?」と、上ずった声でマイナーな男はいう。


「…わかりません」と、冷泉は言いながら高らかに笑いだす。


不思議な女が合いの手を入れる。


「冷泉のすること、それについての共感は、私にはないけれど、行為のまえにその理由を解さずまま拒否をしてたら、戦争にしかならないんじゃない?」


「いやいやいやいや、ちょっと待て!姉さん!話しがえらく大きくなってるぞ!この話しはどこへ向かおうとしてるんですか!」と、マイナーな男は大いに慌てる。


この一連のやりとりは横から見ていても、腹を抱えて笑うにはもってこいだ。


ヒゲの男は、冷泉の趣味なのか性癖なのか、それともそれを凌駕する何かなのかわからないが、こういった珍妙な論議を毎日繰り返していくうちに、いつも同じことに思いをはせるのだった。




臨済宗の祖、臨済は、確かに殴られたことによって、悟ったのだ。と。



とにもかくにも、画廊喫茶フレイムハウスは小説家の平尾正和さんを応援いたします。

えいえいおー、えいえい、おー!

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by amori-siberiana | 2017-09-02 14:19 | 雑記 | Comments(0)


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