こんにちは、北浜にある猫のひたいのように小さな店。画廊喫茶フレイムハウス(近日:クント・コロマンサに改名)にて、天下無双の痴れ者を気どるヒゲの男こと、阿守のブログです。


さて、昨日のこと。


ヒゲの男は昼に店へいく。画廊喫茶フレイムハウスの日曜日のお昼は、店を開けていたり、閉めていたりと気分次第なので、前もって版画家の柿坂万作に「お昼に行くから、店のシャッターを開けておくように」と、ヒゲの男はメールをしておいた。店に到着すると、シャッターは開いており、星師匠が先にきて店内の掃除をしていた。


この日曜と月曜のイベントは一週間前の予約の時点で満席となっているため、普段、店内にあるテーブルを上の階にあげたり、仕入れをしたり、おでんとおにぎりを仕込んだりと忙しいのである。ヒゲの男は前日の日次収支をまとめたあと、日本橋にクーラーボックスを買いに行き、そのあと酒屋にたちより飲み物を仕入れる。


ヒゲの男が買い出しから戻ってくると、電気工事士の山本が到着しており、自身の楽器のセッティングを終えて、のんびりと水を飲みながらたたずんでいる。しばらくして、宗教画のモデルの女がやってくる。宗教画のモデルの女はやってきた早々にハイボールを飲みながら、星師匠と一緒に開店にむけて備える。


「ワシ、これやったら17時半くらいまで自由にしとってもええんですね」と、テーブルの片付けやおでんの仕込みを終えた万作はいう。そして、万作は唐突に「空がみたい」といいだして、店を抜けて散歩にでかける。まるで、高村光太郎の智恵子抄である。


あと、バイオリンを弾く王子が東のコロシアムから西の猫のひたいにやってくるのを待つばかりである。王子からはヒゲのところへ逐次、どのような状況なのかの連絡がメールにて送られてくる。


「忘れ物をしている、これこれこういう機材はあるか」

「演奏終了、これより空港へ向かう」

「搭乗口に到着、これより離陸する」

「これより着陸する、タクシーに乗る」


万作が空を見る散歩より帰ってきて、しばらくすると宣言どおり18時30分ジャストに王子がキャリーバッグを抱えて店に滑り込んでくる、これでスタンバイは整った。先ほどまで1万人から2万人ほどの前で演奏していた男が、猫のひたいに集まる25人のために空を飛んで、呆れかえるほどタクシー代を使ってやって来るという素敵さは、王子が人情味豊かな生粋の江戸っ子であることをヒゲの男に改めて感じさせるものであった。


店はいつもより1時間遅れで、その機能を開始する。イベントは大盛況となる。万作は厨房にて氷をガツガツ割り、返却されてきたグラスを洗う。星師匠とすでにベロベロの宗教画のモデルの女は食べ物や飲み物を来場者に供給していく。王子はバイオリンを弾き、電気工事士はベースを弾き、ヒゲの男は一心不乱にギターを弾く。


いい曲をみんなで作っていて良かったと、ヒゲの男はギターを弾きながら思うのであった。ヒゲの男はことあるごとに、自身が音楽家をしていたことで助けられる。猫のひたいのような小さな場所で開かれる、この閉ざされたイベントは演奏者も聴衆も総じて訳のわからない者はおらず、秘密結社の様相を呈している。


どれだけ遠くに離れていようと、どれだけ互いの環境が変わろうと、共通項であるシベリアでの抑留経験をもつものは、これ、皆が戦友のようなものである。ここにいる30人くらいは、そうである。


いや、正確にいうと28人くらいのシベリア抑留経験者と、1人のハーフ顔の酔っぱらい、そして1人の版画家というものであろうか。


無事に演奏が終わる。アンコールも終わり、全てを出し尽くした。するといちげんさんのオーストラリア人の姉妹がやってくる。どうやら音につられてやってきたそうなのだが、演奏は終わったばかりである。ヒゲの男はその日、一日分の精根は使い果たしているので、勘弁してくれと思いながら、チラリといちげんさんの方を見やる。


それが女性だとわかった瞬間に元気が復活してきたヒゲの男は「コンサートは今、始まったばかりなのだ」と適当なことをいい、彼女たちを店へと招き入れ、もう1曲演奏することになる。


女性に音楽を演奏してくれといわれ、断るやつはマヌケだ。


王子の帰還、それはこの場に集った者たちにとって、懐かしくもあり喜ばしくもあり、数か月前まではとても考えられなかったであろう、嬉しいハプニングのひとつである。我々はハプニングを心底、待ち望み期待しているのだから。


たこ焼きが食べたい、たこ焼きが食べたいと終演後にしつこくわめき散らす、王子に乾杯。


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by amori-siberiana | 2017-10-09 12:50 | 雑記 | Comments(2)


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