こんにちは、北濱にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を根城にかの地の独立を目指しているヒゲの総帥こと、阿守のブログです。


さて、昨日のこと。


ヒゲの総帥はいつものように北濱にあるオフィスへ向かい仕事をする。仕事といってもこの男がしているのはブログを書くことぐらいであり、それを仕事と捉えるのか遊びと捉えるのかの判断は後世の歴史家の評価を待つばかりである。それでも本人はおかしな使命感を持ちこみ「これはれっきとした仕事なのだ」と済まして威張っているのだから始末が悪い。


ところが昨日にいたってはブログを書きあげてそろそろ終了させようかというときに、文章が消滅する。予期せぬエラーだとかなんとか画面に出たまま文章はいずこかへ消え失せて、復旧することもかなわない状態となったため、ヒゲの総帥はパソコンに向かって呪いの言葉をわめき散らしながら一気に消沈する。消沈すると眠気が襲ってくるもので、そのまま店に行って寝ることにした。かの高名な作曲家リヒャルト・シュトラウスはあるインタビューで「作曲が進まないときはどうするのか」と問われて、「辛抱強く我慢して待つ。それでもどうにもならなければ寝る」と答えているが、辛抱強さと我慢強さというスキルを持ちあわせていないアラフォーおっさんは率直に「寝る」だけを選択することとなった。


北濱のオフィスの目の前には旧鴻池邸宅の跡地を示す石碑があり、冷たそうに佇んでいる。酒と金と運び屋で「日本の富の七分は大阪にあり、大阪の富の八分は今橋(ヒゲのオフィス:リンクスがあるところ)にあり」と言われるほどに儲けに儲けた豪商である鴻池の本宅には今はレンガ造りの大阪美術倶楽部なる建物とビジネスホテルとクラフトビールを売るバーがある。ここのバーにてハイタッチ冷泉がウイスキーのストレートを頼んだら、驚くほどの量のウイスキーがグラスに入ってでてきたそうだ。「多分、ストレートがどんなもんか知らんのちゃいますか」と冷泉は苦笑していた。


この鴻池先生たちも時代と共に飛躍跋扈しては時代の流れに翻弄されたようである。貧乏な藩(大名)に金を貸していたのが廃藩置県によって町人から大名への貸付金は帳消しとなる。さらには自ら開発した土地「鴻池新田」も終戦後の農地改革によって地主制が解体されて多くを失うこととなった。あらゆる思惑があるといえ、このときのGHQの判断は判官びいきの様相があり国内外を含めた世論を納得させることになったであろう。


ヒゲの総帥は店に行く。版画家の万作は厨房でゴゾゴゾしている、ヒゲの総帥は三階のアトリエに行き革靴からスリッパに履き替える。視界に何かはいってくるのでそこへ視線を向けてギョッとする、茶釜のなかに何かが山盛りに入っている。薄暗いアトリエのなかで見たそれは遺骨に見えたので、ヒゲの総帥は一体ここで何人殺されたのだと直感的に推理する。しかしながら近寄ってよく見てみると変哲もない店の暖房に使用している練炭の灰だったので興醒めであった。


アトリエから絨毯を持ってきて床に敷きヒゲの総帥はそこにごろりと転がる。万作は自分の行動スケジュールをヒゲの総帥に伝えて、自身が帰ってくるまで店にいるのかどうかを訊ねる。「大丈夫です、万作さんが帰ってくるまでずっと寝てますから」といってヒゲの総帥はぐうぐう寝だす。しかしながら、夕方にもなると非常に店内は寒い。寒気と眠気のどちらかを取らねばならない状態でもヒゲの総帥は後者を選択したので、寒さに震えながら頑張ってやはりぐうぐうとする。まるで眠りの残高を取り返さなくてはという勢いでぐうぐうやる。


しばらくして万作は帰ってきてヒゲの総帥も起きる、すると開店早々に大学生の女がやって来る。ヒゲの総帥と大学生の女は世の中にはなにやら陰謀めいたことがあるそうだと互い知っている事例を挙げてはヒソヒソ話しをする。常連のガルパンの男がやってきて「よっこいしょういち」との掛け声を出していつもの座席に座る、アラタメ堂のご主人もやって来る頃には万作によって店の中央に練炭コンロが出されてくる。


すると、いちげんさんの男が店に入ってくる。きょろきょろしながら店の中を伺うように神妙に入ってくる、そのすぐ後に不動産広告デザイナーの忌部が我が家のように飄然と入ってくる。どうやら今入ってきた男とクントコロマンサで待ち合わせをしていたようである、「ずっと見てたんや。ちゃんと店(コロマンサ)を見つけて入るかどうかな。行ったり来たりしてたやろ」と悪趣味なことを平然と待ち合わせの男に向かっていう。「最初、入口がわからなくて迷ってました。そしてここへの階段を見つけたとき、いよいよ上るかどうするか迷ったのです」といちげんさんは言う。「よう入ったな、俺そこのスギ薬局のところからずっと尾行しとってん」とカッカッカと乾いた笑いを浮かべながら言う忌部自身は破滅的な恋愛を経験するばかりで、愛に飢えてる「あいうえお」なのだそうだ。


こんな男に案内されて待ち合わせに現れたこの恰幅のあるいちげんの男は専門学校生なのだという。名は山岡としておこう。ヒゲの総帥は山岡君に「これから君が何の専門学校に行ってるのかを当てるから拝聴したまえ」と一方的に通達する。アラタメ堂のご主人もそれに乗ってくる。こんな奇人たちの檻に閉じ込められた不幸なる山岡君は苦笑しながら、連想ゲームの標的にならざる得ない状況を受け入れる。


「わかった、パティシエだ」と総帥がいう。「そんな体格だけで判断しちゃダメですよ」とアラタメ堂が忠告する、山岡君は首を振り違うのだという素振りを見せる。「彼は建築関係ですよ」とアラタメ堂が持論を述べるがやはり違うようだ。忌部は山岡君がなにの専門学校へ行っているのか答えを知っているので、悠々と椅子に腰かけてジンジャーエールを飲んでいる。「それなら歯科技師だ」と総帥がいうがこれも違う、アラタメ堂も次々にいうがどれも違う。どうも終わりがなさそうなので、ヒゲの総帥は山岡君に手を広げて見せてくれという。


山岡君は手を広げて見せる大きく男らしい手である。「これだったらラフマニノフも弾けるのではないか」と羨ましそうにヒゲの総帥はいうが、どうやら山岡君にはラフマニノフが何をした人なのか釈然としない様子。ヒゲの総帥は彼の手を見て自身の考えに合点がいったと見えて堂々と答える「わかった、パティシエだ!」。「どうしても彼をパティシエにしたいみたいですね」と呆れた声でアラタメ堂はいう。


誰が当てたのかはわからないが結局のところ柔道整復師であるということが、それからしばらくしてわかった。ところがその柔道整復師なるものが正確に何であるのかわからない一同、ヒゲの総帥は「ならばちょっとマッサージしてくれないか」と山岡君をステージにまで連れ出す。ステージには椅子が二脚ありヒゲの総帥はそのうちの一脚にちょこんと座る、山岡君もヒゲの総帥の背後に座る。「マッサージと言われても…」と山岡君はつぶやきながら、ヒゲの肩を揉む。しかしどうにも気合が入っていないようなので、ヒゲの総帥はどうしたのだ?と山岡君に問う。すると柔道整復なるものはマッサージとは全然違うのだと説明する、脱臼や挫傷などを回復させるものだそうだ。ならば、一度肩を脱臼させてそのまま入れてくれないかと忌部は他人事だということでめちゃくちゃ言う。


山岡君は専門学校を終えても故郷の和歌山には帰らずに大阪で修行をするのだと今後の展望を語る。ヒゲの総帥はこれをきいて「ならば我らで君の故郷の町を当ててみせよう」といよいよ山岡君を丸裸にする気である。じゃんけんに勝ったアラタメ堂のご主人が最初の回答権を得て和歌山市以外のなんちゃら市と回答するとなんと大正解であった。


それから斥候の男がやって来る、そして常連の不思議な女もやって来る。アラタメ堂はトリプル・コロマンサを食べたあとにラーメンを食べる、その様子を見ながら忌部は山岡君に「自分やったらトゥエルヴ(12)・コロマンサとかいけるんちゃう?」と暴挙を勧める。


山岡君にとって不信感が半端ない初来店となったであろう夜はこうして終わっていくのだった。


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# by amori-siberiana | 2017-12-14 13:43 | Comments(0)


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