こんにちは、北浜にて猫のひたいのような小さな店。画廊喫茶フレイムハウス(もうすぐ改名)を営んでいる阿守です。


画廊喫茶という名前から、そこへ行くと絵画を買わされたりするのではないかと想像豊かな諸君は思われるかも知れないが、そういうことはない。是が非でも売ってくれといわれれば、売らないこともないかも知れないが、これまでそういった場面に遭遇したことはない。


画廊喫茶とは名ばかりの、ここは私塾である。


ヒゲの男のオフィスの近所に緒方洪庵ゆかりの適塾というのがあるが、まさにフレイムハウスは現代の適塾なのだ。


お昼すぎに画廊喫茶フレイムハウスへ行く、妖精の女がパスタを食べていた。


「ちょっと、塩足らなんだん違いますやろか?」と妖精にお伺いをたてたのは、この店のシェフであり、版画家の柿坂万作。


「ええと、こんなんを阿守さんの前で言わんほうがええんやけれども、ワシ、塩を切らせとるのを忘れてまして、塩がないんですわ」と、万作は現状報告をしてくれる。


ヒゲの男はシタール弾きが置いていった、重たいアンプをステージ横から店の入り口まで引きずり出しながら、版画家のことばに応答する。


「それだったら、隣から少しばかりいただいてきたらいいのではありませんか?敵に塩を送るということばもありますから」との返答に、万作は大笑いをする。


ヒゲの男は、店に来る前に人生初のタロット占いをしてもらってきた。困難があるが、やり続けることだとの占いをみて、多少なりともホッとした気持ちになった。これから人生の岐路のときには、占いを頼りにするのもいいものだと感じたのだ。


ただ、太陽(ソレイユ)とフランス語で書かれたカードの絵が気になった。腰巻だけつけた半裸の男が二人で健闘を称えあっているのである。もちろん、そういうデザインのカードだからと言ってしまえば終わるのだが、ヒゲの男は気になった。


売れるものは全て売り払い、最後の最後に着るものもなくなって、「よくここまで頑張りましたね」と、ヒゲの男はいう。「ワシも、ここまで続くとは思いもしませんでしたわ。もともとワシの服はもらいもんばっかりやったんで、今さら裸になっても、ワシはなんも失っとりゃしませんがね」と、ディオゲネス然とした万作は誇らしそうに笑う。


「じゃあ、万作さん、お疲れさまでした。またどこかでお会いましょう」


「ええと、ワシ、また会ういうても、どこに行くかわからんので」


「じゃあ、来世でお会いしましょう」


「うーん、来世いうんは好きやないな。ワシ、来世いうんを信じてないんで、うーん、来世いうても、なんかピンとこんな…」


と、こんなやりとりが想像できる絵柄なので、それが気になるのである。ただ、太陽だけは燦然と輝いていることは見て取れた。


ヒゲの男は、曇り空のなかシタール奏者のところへアンプを返しに行く。北浜に戻ってきてから、まず隣のフレイムハウスへ立ち寄り、梅酒をあおりながら店舗の名前を改名することを了解したとの返答をした。


「それで、お店の名前はなにとなさるんですか?」と隣のオーナーの女は訊いてくる。


「いや、まだ何も決めていないのです。これっていうのが浮かび次第に改名します。それまではご寛大にお待ちあれ」と、ヒゲの男は足元の問題を、未来の自分に託すようなことをいう。


夜には、常連の不思議な女と青山ビルでギャラリーをしている女、そして占い師の女が来店してくれた。占い師の女からタロットの歴史や占いの歴史などを聞きながら、暗黒の時代といわれた中世ヨーロッパに思いを馳せていた。


中世のヨーロッパ、およそ1000年ほど、何も起こらない時代が続いたのだ。それによって後世の歴史家からは暗黒の時代と揶揄される。もちろん戦争も起きてれば、文芸も発達してはいるが、他の時代と比較してみると、何も起きていないに等しいとのことだ。


しばらくすると、常連のガルパンの男がやってきて、その後にアラタメ堂の主人がやって来た。


アラタメ堂の主人はカードゲーム収集家である。古今東西のありとあらゆるカードゲームを持っており、北浜のオフィスにAmazonから小包が届くと、十中八九、アラタメ堂の主人が取り寄せたカードゲームだったりする。


「いつ頃からカードゲームに興味を持たれたのですか?」とヒゲの男がアラタメ堂の主人に訊く。版画家の万作は、なぜだか手に花札を持ちながら、店内をウロウロする。


「小学生とか中学生のときですかね、一時期は離れてパソコンゲームをしていたんですが、今はまたコレに戻りました」とは、アラタメ堂。


「パソコンゲームってどんなのですか?フロッガーとか?」と、ヒゲの男は根掘り葉掘りの勢い。


「また、古いゲームの名前を出しましたね。してましたけど、そういうのじゃないんですよ」と、アラタメ堂は苦笑しながら回答する。


アラタメ堂の高説から入ってくるカードゲームの情報を聞いてると、知らないところで随分とゲーム性が発達していることがわかる。知ってしまうと、やりたくなって仕方がないのが人間の性であろう。


「そうだ、いっそここ(店)でそういう日を作りましょうよ」


「いいですね、願ってもないことです」と、アラタメ堂も賛同する。


そして、決まったのが9月16日の土曜日である。


アラタメ堂の主人が選りすぐりのカードゲームを持ってきて、それに興じるというものである。日本語訳のついた海外のゲームもあり、そのなかでもヒゲの男が気になるのは冷戦時代の諜報工作のゲームや、スパイを探し出すゲーム、さらにはアラタメ堂がイチ押しするホラーゲームなどだ。


夜も更けた頃、ハイタッチの男こと冷泉が店にやって来る。今日はいちげんさんのアロハの男と太もものお化けを連れてやってきた。


アロハの男はアロハシャツを日本で一番売る男、自分の誕生日に偶然いあわせたアントニオ猪木からビンタをされた男でもある。猪木のビンタを受けて、顔から床に叩きつけられ、ビンタを受けていないほうの頬を三日間も腫らしたそうだ。太もものお化けは、元サッカー選手であり、太もも周りは65センチで筋肉で鋼鉄のようにコーティングされている。


冷泉がいう。


「阿守さん、この人、歌好きなんですよ」とアロハの男を見る。


「それだったら何かギターで伴奏するんで、歌われますか?」と、ヒゲの男はいつもの調子でギターを取り出す。


アロハの男が思い出したように口を開く。


「それなら、もう一軒行こうか?いいお店がある、生ギターで歌がうたえるバーがある」


なるほど、それに特化したバーなら勉強のために行っておくが良かろうと、三人で心斎橋の「KOTETSU」というバーに移動する。


入店すると、泉谷しげるのような風貌のマスターがギターを抱えている。店のテレビにはTOTOのライブが流れていた。


ものは試しだ、歌ってみよう。そう意気込んだヒゲの男はTOTOの「99」をマスターにリクエストする。


「99かぁ、歌詞カードが読みにくいから、あんまりオススメできへんねんな」とマスターは気乗りしない返答。


「そうですか、じゃあ、長渕剛の順子をお願いします」


「おととと、えらい方向転換やな!なかなか、そこからそこへ飛ぶ人はおらんわ」


何も見ることなく順子を長渕そのまんまに弾きだし、そしてここぞというときにはコーラスも入れてくれる。なるほど、これは確かに良質なバーである。歌にあうギターの伴奏というものがある、ヒゲの男はそれが苦手なので、こうした巧みな演奏を見せられると感嘆してしまう。


バーには他の客もいたが、客のリクエストに応えてなんでも弾けるマスターは素晴らしかった。


リクエスト順は、以下のようなものだった。


長渕(阿守)→長渕(他の客)→長渕(冷泉)→長渕(アロハ)→EXILE(他の客)。


名残り惜しいのは、夏祭りを本格的なスリーフィンガーで歌ってみたかったからだ。また次の機会に。


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by amori-siberiana | 2017-09-06 17:18 | Comments(0)

こんにちは、北浜にある猫のひたいのような小さな店。画廊喫茶フレイムハウスの阿守です。


本日より、9月02日(土)のイベント【天上の宴 甘美なる宮廷音楽】の予約受付を開始いたしました。インドの楽器、シタールの音色というものは一度聴いたら忘れられないインパクトがあります。なかなか聴こうと思って聴く機会のないものですから、まだ生で聴いたことがない人は、是非、画廊喫茶フレイムハウスまで足をお運びください。


さて、昨日は版画家の柿坂万作さんの厨房でのお召し物を朝から買いに行きました。


万作さんは、そのずんぐりむっくりな体躯にサイズが合っていない、誰かからもらったシャツを毎日着ており、そのいでたちは「POP」を出した頃のU2のボノみたいです。「厨房に立たれるのだからもう少し清潔感があったほうがいいんじゃない?」という意見をお客さまからいただいたからです。


南船場のパン屋「き多や」さんから、そういった服は道具屋筋で売ってるよと教えてもらい、案外近くにあったがこれまで立ち入ることのなかった道具屋筋に行ってきました。昨日は朝から相当な暑さで、アーケード街も容赦のない熱気であふれていました。


そのまま酒屋へ行き、コーラとジンジャーエール、そして炭酸水とウイスキーをしこたま買ってランチで開店したばかりの店に顔をだし、北浜のオフィスへ戻る。


北浜のオフィスでは会議室から絶えず笑い声がきこえてくる。人の笑いかたは様々だが、どのような笑いであったとしても、泣いているよりは随分と魅力的だ。


お昼を食べるために近くの青山ビルにある喫茶店へいき、帰り際に同じく青山ビル内にあるギャラリー「遊気Q」に寄って雑談をする。ギャラリーの女がいうには、アトリエの一角(猫のひたいのように小さな一角)が空いたので、誰か使ってくれる人はいないか相談に乗って欲しいとのこと。


見どころ満載の大正時代に建てられたスパニッシュ様式の青山ビル自体にファンがおり、そんなところでアトリエを構えられるとは、自分がなんらかの作家であれば一考の余地もありだなと思ったが、僕がアトリエをもっても今のところ大した利用価値が見つからないので、興味がある人を探してみるとギャラリーの女に言い残して帰る。


もし、これをお読みのかたでどんなところなのか興味があるかたは、阿守までご連絡をください。


満腹となりオフィスへ再度戻ると、ミーティングルームでの談笑が「子育てカウンセリング」の講義だったことを知る。主催をしていたのは心理カウンセラーの女。


ちょうどタイミングもあったので名刺交換をさせていただく。するとオフィスで働くママさんたちも集まってきて、知り合ったのも何かの縁、これからフレイムハウスへ行こうということになる。


事前に万作さんに「これからお客さまを連れてお店へ行きます」とメールをしておき、多少、フライング気味の時間にママさんたちを連れてフレイムハウスへ到着すると、すでに声の大きな男が先客としてきている。


その男がいうには、店が開いていたから入ってきたとのこと。万作さんとは古い飲み友達ということはわかったが、こういうのは勘弁していただきたい。店のなかで大声で電話をするわ、変なタイミングで話しに割り込んでくるわで、うっとうしいことこの上ない。


せっかくのいちげんさんのママさんたちも早々に退散する。


この店は客を選ぶのか?といわれれば、答えはイエスである。ふざけるな、バカ野郎。


万作さんとその男が旧知であるということもあり、追い出すこともできそうにないので、お店は万作さんに任せて、外へご飯を食べに出る。


そろそろよかろうと外で時間をつぶして、店に戻ってくると大声の男は帰っており、常連の不思議な女と、素敵な帽子かぶったグラフィックデザイナーの男とアリスの女が来てくれていた。それに続いて宗教画のモデルの女も店にやってくる。


不思議な女が足踏みオルガンで不思議な音を弾きだす。


それに合わせて歌ってみると「アモアモ、そういうのじゃないの」とダメ出しを受ける。不思議な女から「ふわっと消えるような音楽を弾くのよ」と不思議な指令をいただいたので、言われるようにやってみる。


不思議な女が不思議なことをいうのは、別段、なんら不思議なことではない。魚が水を欲しがるように、鳥が空を欲するように、それは普通のことなのだ。


なんとも例えがたい音楽をオルガンで演奏していると、いちげんさんがやってくる。万作さんがいうには「ワシ好みの男」とのこと。不動産関係のグラフィックデザイナーをしている彼のことを、最近ヒゲを剃った男と名付けることにする。


そして北浜のペット・ミドラーことエイリアンもやって来る。


エイリアンは僕の顔を見るなり「あなたのブログ読んだ、私は、まだ還暦じゃない!それとブログなんですけどね、全然つまらない!」と痛烈なクレームが入る。いつかのブログでエイリアンのことを還暦と書いていたようで、失礼いたしました。


「でも、四捨五入すれば還暦ですよね?」と問うと、少し考えたあとエイリアンは「そうだ」という。


エイリアンは文章のコツとして「僕とか私とかの一人称を抜け、それが入ってるだけで読む気にならない!」とアドバイスをくれた。早速、試してみているのが今回のブログだが、なかなか難しいものである。


アリスの女が問いかけてくる。


「阿守さんのしていた音楽ってどんなジャンルなんですか?エイリアンさん、興味があるそうです」


「そうだな…、言葉にすると…」と言おうか言うまいかのタイミングで、エイリアンが口を挟んでくる。


「そんなことはどうでもいい!知りたくもない!」と両手で拒絶するジェスチャーで言葉をさえぎる。いやはや、なんという威圧感であろうか。エイリアンの異名は伊達ではない。彼女の会話の勢いたるや、溢れる才気の核融合と分裂を一身では抑えきれず、メルトダウンしているようだ。


そのままエイリアンはアリスの女や、不動産デザイナーの最近ヒゲを剃った男を巻き込んで、マンションビジネスにおける問題点や今後の展望を語る。いや、吐きだす。


「私のギャラリーを勝手にしていいっていってんだから、なんでもかんでも好きにやりゃいいのよ!」とエイリアンは僕を指さしていう。


「その、なんでもかんでもっていうのが難しいんですよ」と返答して、最近ヒゲを剃った男に助けを求めると、ヒゲのない男はヒゲのない半笑いの顔でこういう。


「それは、自由にすればいいってことですよ」


そのパーフェクトな言葉に大笑いしてしまった、サンキュー、これぞ、他人事!


ガゴッと音がする、扉の方を見てみるといちげんさんが来ている。


「すいません、加藤さんは来られてますか?」


加藤というのはここではハイタッチの男の俗名で、つまり、冷泉さんのことだ。よくある苗字なので念のために聞いてみる。


「それはもしかして、黒ずくめの男のことですか?」


「ああ、その人です」


「そろそろ来られるかと思うので、こちらでお待ちください」と彼を席に案内するやいなや、締まりの悪いガラス戸がまた開く、ハイタッチの男こと冷泉の登場である。


ハイタッチの男(冷泉)、会計事務所のオーナー、スーツケースの男、そして今、来られたいちげんさんの病院経営の男が奥のテーブル席へ行き、酒盛りがはじまった。後から遅れて仕事途中だったはずの人材派遣の男も加わる。


ハイタッチの男がギターを弾いてくれというので、ちょうどいい機会。エイリアンにも言葉で説明するより実際に聴いてもらうがよかろうと、ギターを取り出して弾いてみる。


演奏が終わり、一同の拍手を受ける。見渡してみるとエイリアンは、さっさと帰っていた。


そこからジャズの歌手、書道家の男の一団も来店して、猫のひたいは全てが埋まりあちらこちらから届く喧噪は心地のよいものだった。


宗教画の女が冷泉を殴って蹴りとばし、その勢いで会計事務所のオーナーも蹴り飛ばし、ヒゲのない男とアリスの女、ジャズシンガーも冷泉の腹をおそるおそるパンチする。


そうして、世間のプレミアム・フライデーの雰囲気とは、多少かけ離れるであろう画廊喫茶フレイムハウスの夜は更けていく。


万作さんの白いコスチュームに黒いエプロンは愛嬌が増して、なかなか素敵だった。


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by amori-siberiana | 2017-08-26 13:39 | Comments(0)

こんにちは、北浜の風雲児こと岩本栄之助をご存知でしょうか。大阪は中之島の中央公会堂のキッカケを作った人。株式の仲買人としては剛腕であり、さらには人情家で篤志家でもあった彼は北浜の地でなにを捉えようとしていたのかをぼんやりと考えてる、湿気と熱気が渦巻く今日この頃です。


北浜のおもしろさは、その地政学に根差します。


キタ(梅田)からも、ミナミ(なんば、心斎橋)からも滅法近い距離にありながら、公共交通機関の便はそれほど良くなく、白なのか黒なのかわからない人間たちが目まぐるしく流れ込んできては、闊歩往来する前述の街とは違い、ある一定の質量が保たれているような街。

それが、北浜という街です。


しかし、この北浜も今はホテル施設の建設ラッシュとなっていて、あちらこちらでトンカントンカンやっており、平日の昼は忙しいビジネスマンが大挙するコンビニでの長蛇の列を含めて、戦後復興の雰囲気すらあります。


さて、昨日はエイリアンさんのギャラリーへお邪魔してきました。「北浜には若者が必要なのよ!」という彼女のことばもあったので、職場から粋のいい若いのを一人連れて行ってきました。


全体が白で調和されたギャラリーは、清潔感とこれから何かが起きようとする期待感があり、屋上部にいたっては条件さえ整えば100人規模でビアガーデンをしながら、映画の上映もできるほどのスペースがありました。


ギャラリーの下の階は、サロン兼エイリアンさんの住居となっており、来客用に椅子は20脚ほどありました。


僕が画廊喫茶フレイムハウスの名刺をエイリアンさんに渡すと、「あんた、ここのギャラリーのプロデューサーって名刺も作りなさいよ」と言ってくださいました。エイリアンさんは近くの射撃バーによく行ってらっしゃるそうで、実物と同じくらい重たいライフル銃を「構え、筒!」して、乱射するのがたまらないのだとか。


還暦を超えても箕面の山でサバイバルゲームに興じるという彼女自身の個展を開いたら、さぞや面白いものになるであろうと考えましたが、それだと商売になりません。


三人で焼けつく日差しのなか、屋上に出ると予想以上に眺望がよく驚きました。エイリアンさんは東西南北を眺める僕、そして様々な角度から写真を撮る同僚を見つめながら、こういいます。


「私の本の発想はここで生まれたのよ」


「どの本のことですか?」


「タワーマンションの住人が違うタワーマンションの住人とお互いをのぞきあうってやつ」


「ああ、なるほど」


僕がギャラリーをどのように使っていくのかを考えていたとき、ここを物見やぐらとして立て籠もり、ライフル銃を構えたエイリアンさんが、ときどき双眼鏡で周辺を索敵する場面を脳内再生してしまい、おかしくなった。


◆10W gallery (www.10w.jp/)


そこは、北浜から確かにヒリヒリとするものを発信している場所。


エイリアンさんのギャラリーから撤退して、そのまま北浜のオフィスへ一旦戻り、画廊喫茶フレイムハウスへ向かった。


お店に入ってみると、版画家の柿坂万作さんと常連のガルパンの男がスマホで「ガンダム」の動画を見ていた。僕が来たのをみて、「あともう少しやったのに」と名残惜しそうにガンダムから離れる万作さん。まるで学級委員や風紀委員長がやって来たような扱いである。


「万作さんの作品ってどれくらいの点数がありますか?」


「ええと、どれくらいやったかな、まあまああるんやないかと思います」


そして、万作さんが三階からいくつかの作品をもってきて僕に見せてくださった。自分の作品だけでなく、自分が教えた生徒さんたち老若男女の作品もずっと大切にとってあるのである。


デッサン画、版画、パステルなど、版画にしている紙も良質の和紙であり、経年とともに良い具合に焼けていた。


「万作さん、最後に個展してからどれくらい経ちます?」


「うーん、そうやなぁ、この店はじめる前やから、7年くらいまえ違いますかねぇ」


「久しぶりに個展をしてみる気はありませんか」


「うーん、もうその気力はないなぁ、エイリアンさんとこ行ってワシの個展でもしよういうて焚き付けられましたんか?」


この思考のプロセスが万作さんらしいというか、なんというか、度し難いおっさんである。


「いや、そんな話しは一切出てません」


「へえ、ほんならどうして急に…」


「いや、音楽家は音楽を奏でてお金をいただきますけれど、版画家は版画をすってお金をいただくものではないかなと考えたんです。万作さんの版画を見てみたいという人も沢山おられますし、問い合わせも実際にあるから訊いてみました」


「ワシ、そういう絶好のタイミングを逃すのは得意ですねん(苦笑)」と卑屈な笑顔を浮かべる彼に対して僕は猛烈に腹が立った。なぜだかわからないが、猛烈に腹が立った。そのセリフの言い慣れた感覚に、憤怒したのだ。


「なら、そのまま、死ぬまで逃し続けましょう」と僕は万作さんにむかって平静を装って言い放ったが、その自分の呪詛のような言葉にも腹が立った。猛烈に腹が立った。心にある言葉が理性を簡単に飛び越えて、口から出たことに憤怒したのだ。


そのままお店でエゴン・シーレの画集を見ていたが、エゴン・シーレの絵画には相当前から腹立たしさを覚えていたので、僕の腹立ちは助長されるばかりであった。


腹が立つなら、店の雰囲気が悪くなるので、さっさと帰ればいいものを…、何故か僕は結構、遅くまでいてしまった。


昨日の反省のうえに今日がある。今日は27日のためにモノポリーをお店に持っていくのだ。

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by amori-siberiana | 2017-08-18 14:04 | Comments(0)


北浜のビジネス街にある、昭和レトロなカフェのブログです。            大阪市中央区淡路町1丁目6の4 2階上ル