カテゴリ:雑記( 128 )

こんにちは、北浜にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)にて、北浜を革命の火種としてやろうと企図するヒゲの男こと、阿守のブログです。


ヒゲの男はひょんなことから、今日よりホテル暮らしをすることとなった。といっても以前のようにホテル阪急インターナショナルを根城にする経済力はないので、貧乏な放浪生活となる。といっても、今の大阪はゲストハウスで溢れており、格安で泊まれるところが無数にあるのだ。2020年までは特需があると踏んだ人々が雨のあとの竹の子のように、こうして起業して価格競争してくれてるおかげである、その苦労をヒゲの男が享受するというのはなかなか面白いことである。


ヒゲの男は今日より外国人観光客と一緒になったドミトリーで生活をすることになるわけだが、彼自身のヨーロッパでの放浪生活を少々ながら思い出すことになって高揚感に酔いしれている。ただ、宿が安いからという理由のみで、イタリアのコモ湖畔へ行ったこともある。ただ、その日の宿が取れたという理由だけで、何の用事もない「ロミオとジュリエット」の舞台となったベローナに行ったこともある。つまるところ、久しぶりのその日暮らしの生活である。英語のヒアリングがまったく出来なくなってきたので、こういうところで生活をすれば多少なりともスキル復活するであろうという期待もある。


さて、昨日のこと。


ヒゲの男が店に行くと、常連のガルパンの男とデザイナーの女、唐揚げが大好物の男が来ている。この唐揚げが大好きな男は大学生でありヒゲの男と初対面であるが、ヒゲの男がクントコロマンサに通うようになるまで、たまに顔を出していたのだそうだ。唐揚げだけじゃなく、発作的にバーガーキングに行ってはハンバーガーを三つも食べてしまうほどの大食漢であり、その恰幅の良さは生来のものなのか、それとも唐揚げの産物なのかは判然としない。


しばらくすると、不動産広告デザイナーの男がクライアントを連れてやってくる。このクライアントは二人組であり、ここではブルースブラザーズと名前をつけることにしよう。二人ともダークスーツに身をつつみ、いかにも不動産の広告代理店という様相である。ブルースブラザーズの一人は体躯もしっかりとしており、キックボクシングをしているとのこと。このタイミングで冷泉がやってくることがあれば、凄惨な光景が繰り広げられることであろうと、ヒゲの男は心半ば冷泉がやってくることを期待する。


「仕事の打ち合わせ中やったんですけど、変な店行こか、いうて二人を連れてきたんです」と、自らの手柄を誇らしそうに語るのは不動産広告デザイナーの男である。


ブルースブラザーズの若いほうが語る。自分は中卒でこれまでに色んな仕事を必死でしてきた、できるだけ若いうちに結婚をして親を楽にさせてやりたいという。ヒゲの男も自身が中卒であり、ありとあらゆる仕事をしてきて成功と失敗を繰り返しながら、今ここにいるのだということを伝える。


「こいつはめちゃくちゃ女たらしなんですよ」と、ブルースブラザーズの年長者(キックボクシング)が若いほうを指していう。「へえ、そうなんや、クズやな」と反応するのは不動産広告デザイナーの男。


「まあ、クズですけど、他人のもの(女性)には手を出したりはしませんよ」と、若いほうの男は自己に向けられた評価を手で制するような仕草をする。不動産広告デザイナーの男はヒゲの男のほうへ向き、ニヤニヤしながら「阿守さんは、どうなんですか?」と訊いてくる。


「僕はそういうのは関係ないですね。男と女はなんでもありです、むしろ他人のほうが燃えたりします。クズからみてもクズだと思いますよ」と、期待されたであろう回答をする、店内は笑いに包まれる。


ドンドンドン、誰かが階段を昇ってくる音がする。この階段の音を聞いて、版画家の万作とヒゲの男は共通の認識にいたった。


「冷泉が来た」


どちらからともなく、二人の口からこれから登場するであろう人物の名前が店内を駆け巡る。まるで空襲警報のようなものである。


ゴガッ。締まりの悪いガラス戸が開く、入ってきたのはもちろんのこと冷泉であった。冷泉以外にも元プロサッカー選手の男、そして人材コンサル会社の男である。三者三様に良い具合にベロベロになっている。これは当初に期待したような化学反応が起こるであろうと、ヒゲの男は確信するにいたり。不動産広告デザイナーの男が連れてきたクライアントたちを冷泉一派に紹介する。


そして、およそ2分がたたないうちに、殴り合いがはじまった。


キックボクシングの男が冷泉を殴る、一閃するパンチ。冷泉がそれを受けてよろける、冷泉はニタニタしながら「兄さん、強いですね」と言い放ち、お返しにキックボクシングの男を殴る。そこから殴り合いの応酬がはじまる、互いに渾身のパンチを相手に決めていく。そこからは店内にいる皆で殴り合いと蹴り合いがはじまる。


しばらくファイトクラブが続くが、そろそろ飽きてきたころ、元プロサッカー選手の男が冷泉に顔を寄せていく、何が起きるのかと思って皆が見ていたが、いきなり接吻をしだすではないか。おぞましいことこの上ない地獄絵図の光景に一同は爆笑する。


「加藤(冷泉)さんの唇、甘いです」と、サッカーの男は感慨深そうにいう。近影にその光景をみて涙を流しながら爆笑していたヒゲの男は、厨房にいる万作がこの世の終わりを見たというような顔をしているのに、ことさら腹がよじれる。


夜も更け、地獄の沙汰が落ち着いたころ。店には万作、ヒゲの男、冷泉、不動産広告デザイナーの男だけとなり、四人でカーペットに座りこんでの酒盛りがはじまる。


「万作さんは、この、お店を、どうしたいんですか?」と、ドスの効いた声で問い詰めるのは冷泉。


「うーん、ワシはあんまりそういうんないんで、どないいうたらええんやろ…、うーん、現状維持でええんです」と、万作は素直に答える。


「万作さん、現状維持いうたら、どういうことなんですか?」と、冷泉は眉間にシワを寄せて万作に問う。


「うーん、このまま!」と、万作はいう。


「このままいうんは、阿守さんからの助けがあってこそやないですか。それについてどない考えてはるんですか!」と、椅子を大きな音で叩き、冷泉はいう。


「まあまあ、冷泉さんは真っすぐすぎるくらい真っすぐで、熱い男なんですよ、それにここのお店がめちゃくちゃ好きなんですよ」と、不動産広告デザイナーの男は冷泉を落ち着かせるよう、冷泉の背中をぽんと叩く。ヒゲの男は本来なら自分が根をつめて万作と話し合わなくてはいけないことを、冷泉が代弁してくれていることを知っている。


「万作さん、どうなりたいんですか」と、冷泉はことばを紡ぐ。


あることに気がついたような顔をした万作は、自身がどうしてこの店をはじめたのか、さらにはどうして存続させることにこだわるのか、そして将来はこうなればいいという理想を恥ずかしそうに話す。いつぶりであろうか、こんな話しを仲間と一緒にするのは、四人が四人とも心を揺さぶられるようなことをいう。


「万作さん、僕はこのお店を万作さんから取り上げるつもりはさらさらありません。かといって、経営がうまく行かなくなったときに結局は他人事だからと逃げ出すようなこともしません。万作さんから請われて勢いで決めたとはいえ、そう決めたと同時に心中するつもりで尽力しています。万作さんがこうなりたいという理想があるのだから、それを叶えましょう。尽力します。だけどそれは今のまま万作さんが殻にこもっていてダメです、そのために自分が何をすべきなのか、自分で考えるようにしてください」と、ヒゲの男はいう。


「ワシ、変わらんといかんのですか?店の雰囲気とかも?」と、万作は不安そうな顔をするが、ヒゲの男はそういうことを言ってるんじゃないという。


ヒゲの男は自身がこの店に関わることによって、どれだけ自分のものの見方を変えてくれ、どれだけ真人間に戻れたかを語った。ヒゲの男が店の経営における舵取りを任されてからというもの、いろんな人に頼り、いろんな人に助けてもらい、いろんな人から恵みをもらっている。ギターを弾くことにまったく興味が失せていたヒゲの男であったが、彼が総帥と呼ばれていたときに持っていた、燃えている心を取り戻した。


「ワシ、なんとなく、自分が殻に閉じこもらんと、殻から出るいうことがわかったような気がします」と、万作はいう。


「けど、なにからしたらええんかとか、まったくわからへんのですわ」と、万作はさらに言葉を紡ぐ。


「絵を描きましょう、あなたは絵描きなんですから」と、ヒゲの男はいう。不動産広告デザイナーの男は「それや」とうなずく。冷泉は何か言おうとモゾモゾしだす、ひとしきりモゾモゾしたあと、こういう。


「僕、どうやって立ち上がったらええですか?」と、自身が泥酔で足腰にきていることを冷泉は皆に伝えて笑いを誘う。


四人は日にちが変わってもお構いなしに、酒を飲みながら大いに語り合う。自身のこと、他人のこと、将来のこと、今のこと、過去のこと、この世のことやあの世のこと。そして、クントコロマンサという北浜にある猫のひたいのような小さな店でこれまで出会った人たちや、起きた出来事たちのことを。


世のため、人のためになるようなことをしようではないか。滑稽だろうが、真剣だ、それが人間だ、ねじ込むんなら、押し込むんだぜ。


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by amori-siberiana | 2017-11-03 17:08 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北浜にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を根城にして、なんらかを企んでいるヒゲの男こと、阿守のブログです。


ここ数日、秋晴れに恵まれる。季節の変わり目、ヒゲの男が発症する鼻炎もおさまり、ようやくのことヒゲの男自身も秋らしさを感じる余裕ができている。ヒゲの男は自分が老人になったときのことを想像してみる、老境に入ったとき、また季節の感じかたも変わってくるのであろうかと。


さて、一昨日のこと。


ヒゲの男が北浜のオフィスで仕事をしていると、ハイタッチ冷泉から連絡がくる。昼間に冷泉から連絡がくること自体が初めてのことである、なにか急用であろうかと考えてはみるものの、何も思い当たらない。とにかく、冷泉からは昼過ぎにヒゲの男のオフィスへ顔を出すとの連絡だった。


昼過ぎ、上下を黒で統一したスーツ姿の冷泉がオフィスにやってくる。北浜のオフィスは、こいつは一体誰なのだと静かにゾワゾワするが、冷泉はお構いなしである。冷泉はヒゲの男がいつもいるデスクの隣に座って、自身の真っ黒い鞄からノートパソコンを取り出した。


「阿守さん、店の管理のためにこうしたら楽になるんじゃないですか」と、冷泉はヒゲの男にクラウドの使い方を教えてくれる。ヒゲの男のパソコンと、冷泉のパソコンは店に関して共有の情報をもち、それらのデータを基に戦略を練られるというものである。ヒゲの男のモットーは「戦うまえから勝っていることが重要」であるからして、これは嬉しいと万歳をする。


冷泉はヒゲの男にコンサルをしてくれたのであった。ヒゲの男もパソコンを利用はするが、それはあくまで検索とメールをしたりという範囲に限られている。冷泉はパソコンというツールにおいてヒゲの男がやってこなかった使い方を教えてくれたのだった。冷泉からすれば初歩の初歩であろう、ヒゲの男からすればこの初歩が大変助かるのである。将棋でも最初の一手は皆ほとんど同じであるが、それにはそれなりの理由があるからだ。


冷泉とオフィスで別れたあと、ヒゲの男は店に行く。店に行くと、履歴書の女とネズミ色の女、そして大学生の女が来ていた。大学生の女は店の改名祝いにと加賀の献上茶をくれる。版画家の柿坂万作の淹れるほうじ茶は随分と美味しいそうである、普段はほうじ茶が嫌いな常連のガルパンの男も、万作が淹れるほうじ茶は「うまい、うまい」と喜んで飲んでいたそうだ。


大学生の女は、どうやら天文学のレポートをあげなければいけないそうだ。ヒゲの男になにかよい天文学の本とか論文とかはないかと訊いてくるので、ヒゲの男はカール・セーガン博士の書いた「コスモス」を勧める。古い本ではあるが、大いなる宇宙の謎に立ち向かう姿勢において、考え方の新旧はないのである。


しばらくすると吟遊詩人の女が、腹が減ったのだとやってくる。ヒゲの男は週末のできごとなどを来店の女子諸君に身振り手振りをくわえて話しをする。これこれこういう芸術家がいたのだ、これこれこういう催し物があったのだ、これこれこういう音楽家がいたのだと、思いの丈を話す。


気がつけば、ヒゲの男が整体の予約を入れていた時間になったので、ヒゲの男は急ぎ足にさっさと店をあとにして整体へ行く。整体から店に戻ってくると常連の不思議な女とガルパンの男が静かに店でくつろいでいる。


不思議な女とヒゲの男は互いにギターを持ち、「MY FAVORITE THINGS」のコード進行の素晴らしさを論じ合うのであった。紡いだ一本の絹糸が、からからと糸巻きにからめとられて、絶妙な模様を描いていくような進行なのである。


それはまるで女の一生のようだ。


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by amori-siberiana | 2017-11-03 11:01 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北浜にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)にて、最大多数の最大幸福を誰に請われるでもない、勝手に考えているヒゲの男こと、阿守のブログです。


季節は秋をさらりとこなして、そのまま冬へ向かおうとしている。人々がそれを望むも望まないも、そのようなことは関係なし。空の下で右往左往しているヒゲの男などは、天の動きに従うのみであり、それに背こうとしてもそれは池の魚が、隣の池に移りたいなと考えるほどに無駄な抵抗なのである。自分の力ではどうにもならないことが、どれほど当たり前にあることか。


ヒゲの男が根城にしている北浜にも、冷たい風が吹くようになり、忙しそうに往来する人も外気の寒さの分だけ、分厚くなっていくのである。白秋から玄冬へ、確かに一歩ずつ近づいているのだ。


さて、昨日のこと。


ヒゲの男はいつものように北浜のオフィスへ顔をだす。アラタメ堂のご主人がなにやらパソコンを前にして、うんうん唸っている。そんなアラタメ堂の姿をみて、ヒゲの男はひとつ思い出したことがあったので、その思い出したことを思い出したままにアラタメ堂にことばとしてぶつける。


「アラタメ堂、モノポリーをしたことはないんですよね」


「いや、そうなんですよ。どうもあまりにメジャーなボードゲームなので、どうにもやる気がでないんですよ」


ボードゲームと絶世の美女を天秤にかけて、それでもボードゲームを選んでしまうような男がボードゲームの王道のモノポリーをこれまで知らないというのは、なかなか珍妙なことであるが、その感覚をヒゲの男もなんとなくわかる。ヒゲの男にしても、メタリカ(METALLICA)を知るのは随分と遅かった。その理由は簡単で、あまりにも有名すぎたので食指がそそらなかったのである。有名であるから軽薄であろうという、根拠のよくわからない帰納的推論を持っていたのだが、なにかしらのキッカケでメタリカを知ってからというもの、世間の評価というのは自分などよりも随分と洗練されているのだなと、平伏することしきりであった。


メタリカに関して論じると、一冊の本が書けるほどなので、それは今月の7日のイベントにその場を譲ることにする。


とにかくモノポリーをまだしないというアラタメ堂に、それなら今日にでも一度してみないかとヒゲの男は呼びかけて、アラタメ堂もそれならばと快諾する。二人はさっさとパソコンをしまい込み、連れだって北浜にある猫のひたいのように小さな店、クントコロマンサに向かった。


二人が店に到着すると、マタタビから覚めて自分が猫であるがゆえに恥知らずにも過敏な反応してしまったことに対し、自身の種族的特性を呪うような顔をしている猫。のような目をした洒落た名前の女がおでん鍋の前に座っている。そしてその隣には才能が爆発してメルトダウンしたようなオーラを持つエイリアンがビールをあおっている。


エイリアンは開口一番、「阿守さん、あなたブログやめたら」と遠慮もなしに言い放つ。「なるほど、それもいいアイデアです」とヒゲの男は考えたが、ことばには出さず苦笑しながらアラタメ堂と奥の席へいこうとする。エイリアンはヒゲの男を呼び止めて、パンフレットを渡す。今月の中旬から開催される「大阪エイズウィーク2017」というものと、それに関連したイベント(LETTEr ARTS /レッテルアーツ)のチラシである。


エイリアンのギャラリーでは、「ラブホ図鑑2017」というのを11/27~12/03まで開催するとのことを教えてもらう。その説明をしながらエイリアンはピンクのコンドームの束をヒゲの男に手渡す。異星人からの唐突な性啓蒙に困惑しながらも、ヒゲの男はコンドームの束を自身のバッグの中に納めるが、納めたところでこれほどの避妊具をどうしていいものかわからないので、結局、店の棚に置いておくことにした。


常連の不思議な女とガルパンの男、そして組長もやってくる。ヒゲの男はコロマンサのダブルを注文して、片手にコロマンサの皿を持ったままアラタメ堂とモノポリーに興じる。ところが二人でモノポリーをしてみても、たいして面白くないことに気がつく。二人でやってみてもゲームの市場に金が出回らなく、バランスが悪いのだ。とりあえずやってみるが、アラタメ堂が鉄道すべてを取得してからというもの、ヒゲの男のサイコロ運のなさも影響して、ヒゲの男は破産に追いやられる。


「関西は私鉄が強いんですよ」と、アラタメ堂はヒゲの男から分捕った札束を目の前にして誇らしげに語る。


そのあと、元将棋クラブだったというアラタメ堂と将棋をすることになるが、ヒゲの男の勝利に終わった。ヒゲの男は虎視眈々と12月の決戦を見据えているのである。ちょうどそんな折、ヒゲの男の12月の対戦相手になろう東京在住の男から電話がかかってくる、内容の特にないイタズラ電話であった。電話の奥では浩司ばいの「ヒヒヒヒ」というアダルトビデオの監督が出すような声が聴こえてくる。


ゲーム界のメタリカを経験した二人はそこからウイスキーの酔いに任せて語り合う。アラタメ堂は10年近く、音楽雑誌の編集に関わっていた男であり、奇遇にもヒゲの男が駆け出しのミュージシャンだった頃、世話になった男と一緒に仕事をしていたのだ。世話になったといっても、たいして世話になったわけではない。中途半端に知人なので世話になったという定型文が適用されるのである。


エイリアンがヒゲの男のほうに向けて口を開く。


「私ね、阿守さんのバンドの曲を初めて聴いたんですよ、いいですね」と、ヒゲの男がビックリするようなことをいう。


「うーん…、エイリアンさんから聴かせてくれいわれて、ワシも何を聴いてもろたらええんかわからんので、洒落た名前の女さんに選んでもろうたんです」とは版画家の柿坂万作。


そういえば、店内にはずっとシベリアンなんちゃらというバンドの「ゼロ」というアルバムが流れている。


エイリアンは続ける。


「もっと、ロックな音楽かと思ってたんですけど、全然ロックじゃないですね、いいわ。ヒカシューみたいやね、ヒカシュウの歌がない感じやね」


「ヒカシュー…??」と、ヒゲの男は考え込んだ。最初はピカチュウのことをエイリアンがいってるのかと真剣に考えたが、何度もヒカシューというのでピカチュウとは別物だということはわかった。入れ歯の人間が、歯を外してピカチュウと発音すればヒカシューにはなりそうだが、エイリアンの歯は見るからに屈強そうである。骨すら砕きそうな印象があるのだ。


ヒゲの男のその一瞬の逡巡の間隙をついてアラタメ堂が笑いだす。


「ヒカシューなんて、また古いバンドの名前が出てきましたね」


ちょうどそのタイミングで斥候の男も店にやってくる、「おお、ヒカシュー!懐かしい!」と、音楽談義は斥候の男も含めて思わぬところで発展する。


「ヒカシューは、めっちゃくちゃ格好よかったんですから!」と、エイリアンは当時を懐かしむような顔をして、ヒカシュウの歌であろうメロディーをプップクプーと口ずさむ。

調べてみたところ、ヒカシューというのは「悲しい歌の集まり」の意味だそうだ。それをカタカナ表記にすることによって、言語の無意味化を企図したとの本人のインタビュー記事を読んだ。あくまでインタビュー記事なので正確なニュアンスは本人にしかわからないが、このなんともポップな名前の出典は大体そういうことなのだ。


エイリアン主導で夜更けに音楽談義で盛り上がっているころ、近場でセミナーを開いていたハイタッチ冷泉がやってくる。気がつけば自然に会話のなかに入ってきている冷泉、この男の類まれなる能力のひとつであるとヒゲの男は感心する。


ピンクのコンドームを目の前に、冷泉は笑いながらいう。


「エイリアンさん…、めちゃくちゃですね」


そんな、ハチャメチャなエイリアンを構築したであろう、70年代後半から80年代前半のカルチャーシーンについて、ヒゲの男はまだまだ無知であるし、ちょっぴり身震いもするのである。


【10W gallery】


◆http://winfo.exblog.jp/

◆https://www.facebook.com/10w-gallery-456560594502022/


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by amori-siberiana | 2017-11-01 15:31 | 雑記 | Comments(0)

こんばんは、北浜にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を根城に北浜の独立を目指すヒゲの男こと、阿守のブログです。


さて、昨日のこと。


ヒゲの男は土日に起きたことを忘れないうちにブログへ書きだすため、昼から夕方までオフィスに引きこもりパソコンとにらみ合いをする。少しでも頭を揺らすと、昨日の出来事などの記憶や感想をどこかへ落っことしてしまいそうなので、モノも言わずにさっさと書く。


書きあがって一息ついたところで、店に行くことにした。こういうところが一人で店をやっているのとは違って融通が利くところである。ヒゲの男は周囲の人間からすれば悠々自適な生活を送っているように見えるかも知れない。いや、もしかしたらそのとおりかも知れないが、ヒゲの男本人がいうところによれば、これほど報われない生き方もないものだと不平不満を漏らすことしきり。なかなか人間というのは難しいようである。


一本道があればそこをただ歩けばいいではないかと動物なら考えるであろうが、人間はそうはいかない。たとえ一本道しかなかったとしても、その一本道を歩くことについても、ただ歩くだけではなく、多数の選択肢を持ち、そして悩み苦しむのが人間という珍妙な種族である。


ヒゲの男が店に行ってみると、ギャラリーの女とフェルト作家の女が店内の椅子に着座して、おでんを前菜に何やら食事を注文している模様。ヒゲの男も朝から何も食べていないので、版画家の柿坂万作におでんを盛ってもらう。一度だけ甘味噌でおでんを食べて、「懐かしいな、やっぱりコレだな」とノスタルジーを感じ、次からは甘味噌でおでんを食べようと誓ったヒゲの男であったが、その誓いは面倒くさいという好敵手の出現により、水泡と消えることとなった。


常連の不思議な女と、常連のガルパンの男もやってくる。ギャラリーの女は自身の空腹を満たしたあと、こういいだす。


「あのね、阿守さん、私、思うんですけれどやっぱり写真集を出しましょう」


「前に話しをしていたやつですね、確か予算が高くつくから頓挫した話しじゃなかったですか?」と、ヒゲの男は返答する。ギャラリーの女はそんなヒゲの男のことばに構わずに、持論を大行進させる。


「ですからね、お金のことはスポンサーを見つければいいんですよ。あなた、そういうの得意でしょう。私は企画を提案しますから、お金は阿守さんが集めてきてください」


「おっ、一番重要なところを放り投げたな」と、静かに落ち着いた声でいうのは常連の不思議な女。ガルパンの男は視線を上にあげずに、それらの話しを聞いてニヤニヤと笑っている。


「あなた、身体だって白くてシュッとしてるでしょ。それにあなたは透明なんですよ、外見はどうあれ、内面はとても美しいんです」


「ありがとうございます、ただ、外見についての評価の低さに驚きました」


「いえいえ、外見だけならあなたよりね、いい人はそんじょそこいらにいますよ」と、笑いながら答えるギャラリーの女。どうやらこの女は正気で、ヒゲの男に写真集を作ってみてはどうかと提案しているようである。


ヒゲの男は一度、小説家の男と豚王と一緒にカレンダーを作ったことはある。もちろん、冗談の一環で作ったのだが、これがなかなか手頃な値段で作ることができた。写真集ではなく卓上カレンダーくらいになれば可能な話しではあるが、ギャラリーの女は写真集に、なんらかのエッセーのようなものをヒゲの男に書けともいう。やり方を間違えれば北浜のチェ・ゲバラを目指していた男は、いつしか北浜のチャールズ・ブコウスキーになりそうだなと考えるヒゲの男。


そんなヒゲの男を放っておいて、コロマンサ店内での話しは、いかに名探偵コナンの主人公が優秀であるかの話しに変わっていた。コナンが変声器で誰かになり代わり、巧みな推理をしていくわけだが、そう簡単に声だけ変わっても、その本人になり切れるわけではなかろう。そういったとき、彼の母親が女優だということで、彼にも親譲りの演技能力が備わっていて身を助けるのだと、ギャラリーの女や常連の二人は話しをする。


ヒゲの男の写真集のタイトルについて、ギャラリーの女は決めているそうだ。


「あもりのつもり」というタイトルをつけたいとのこと。訳がわからない。


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by amori-siberiana | 2017-10-31 19:24 | 雑記 | Comments(0)

こんばんは、北浜にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)にて夜な夜なバカ騒ぎに付き合わされている、ヒゲの男こと阿守のブログです。


さて、昨日のこと。


昼前まで寝ているのはヒゲの男。「ハッ」と気がつきスマホで時間を確認する。今日は朝から晩まで珍しくスケジュールがたてこんでいるのであるが、その一発目が昼にあるのだ。その一発目に間に合うように外出しなければならないが、外は暴風雨である。なるほど、これは天が自身に外遊を控えるようにといっているのだろうと考えたヒゲの男は、まず一発目をキャンセルする。


ヒゲの男は嵐のなか店に行く、版画家の柿坂万作は昨日までカウンターだったところを解体して、本日のライブに備えるところであった。今日はSUEMARR(スーマー)というバンジョー弾きが店にやってくるのだ、なんとかイベントの開催時間までには天候も落ち着いてもらいたいものである。


ヒゲの男は早速、店にある借りていた椅子を青山ビルにあるギャラリー「遊気Q」のオーナーに返却するため、椅子にゴミ袋をかぶせて、どっこいしょを持ち上げる。斜めに激しく降る雨に打たれながら、堺筋という大通りを東から西に横断して、ツタの絡まるスパニッシュ建築の青山ビルへ到着する。


嵐の最中であるのに、青山ビルには多数のツアー客がきており、なるほどこのビル自体が見どころのある名所であることを再確認させられた。借りていた椅子を一気にすべては運び込めないので、二回に分けて持って来ようとしていたヒゲの男、ギャラリーの女にその旨を説明する。


「ああ、いいんですよ。残りの椅子はそのまま置いておいてください」と、ギャラリーの女はヒゲの男にいう。


「えっ?それは助かりますけど、それでいいんですか?」と、ヒゲの男は思わぬ嬉しい申し出に恐悦至極である。この雨のなか、もう一往復しなくてはいけないのかと思うと、なかなか骨が折れるなと考えていたのである。借りておいて、自分勝手な男である。


「このざんざん降りの天気でね、お客さんが来ると思いますか?」と、ギャラリーの女は自身が企画した今日のイベント模様について、ヒゲの男に訊ねる。


「いえ、来ないと思います」と、ヒゲの男は正直に自己見解を述べる。そして二人はフフフと不敵に笑いあう。今日、ギャラリー「遊気Q」では展示会の最終日、指絵師の男がギターを持って弾き語りをするそうだとのこと、ギャラリーの女はヒゲの男に加われというので、ヒゲの男は自分でいいのならと出演を快諾していたのである。


イベントの時間になり雨脚は次第に落ち着いてくる、ギャラリーのなかに客が入ってきて、用意されていた椅子はすぐに満席となった。皆がそれぞれ色々な味の紅茶を楽しんでいるなか、ギャラリーの女はヒゲの男にビールを勧めるので、ヒゲの男だけが紅茶ではなくアサヒのスーパードライを飲むという珍妙な光景となる。隣にはヒゲの男が尊敬する広島カープの背番号「1」、前田智徳に似た男が座っている。


そしてイベントは始まる。芸術家たちがギターの弾き語りがはじめる、最初はガラス細工の男、次は指絵師の男である。ヒゲの男はそれぞれ出演者がギターも上手なので出る幕はなさそうだと、酩酊状態で隣の部屋でフラフラしている。しばらくするとギャラリーの女に呼びかけられて、「次、阿守さんの出番ですよ」と上品で落ち着いた声。


一応、ギターは持ってきたものの自分はここで何をすればいいのかわからないままギャラリーの中央に導かれたヒゲの男。芸術家の集まりにバーの経営者がやって来て、酔っぱらいながら大声を張り上げて歌うのも野暮なので、ゴーリーの絵本のときに作った曲「カモメ」を静かにギターで弾く。この曲は静かに弾けば静かに弾くほど、不思議と情感が溢れてくる曲なのだ。


一曲だけのつもりだったが、思いのほか、来場者が拍手をくれるのでヒゲの男はいい気になってもう一曲「MY EVIL」を演奏して、そそくさとギャラリーを後にする。そしてそのまま地下鉄に乗り込み、南へ進路を向けるのであった。


今晩は魔女アハハの主催するイベントがあるのだ。そこに以前、台風のなか店に来てくれたハコ女も出演するというし、アラタメ堂のイベントに来てくれたさすらいのイタリアンシェフも料理を作るというのだから、ヒゲの男も顔を出したかったわけである。


場所は心斎橋の「酔夏男(よかにせ)」というところだ。先日、青いカーデガンの女から聞くところによるとヒゲの男も数年前にここでイベントをしたことがあるそうだが、ヒゲの男はそのことを一切覚えていない。覚えていないということは場所も知らないということなので、マップで見ながら店を探す。


開場前からすでに数人が並んでおり、店内に入ってみると薄暗い。厨房にはさすらいのイタリアンの男がおり、ヒゲの男は肉料理とラザニアを注文する。ヒゲの男が考える世界三大料理は、「たこ焼き」、「ラザニア」、「永谷園のお茶漬け」というもので、その味覚範囲の狭さには舌を巻くところだが、本人がそれで喜んでいるのなら何もいうまい。


ヒゲの男と同行していた星師匠はウイスキーを飲みながら、食べ物を突く。アハハの女はギターを弾きながら歌い、そのあとゲストのハコ女もギターをかき鳴らしだす。アハハの女はハコ女が歌っているあいだ、ステージの横にイーゼルをたててキャンバスをおき、絵の具を塗りつけ何かを描きだす。


そのキャンパスの手前に覚えのある頭部が見える。どこで見たのだろうかとヒゲの男が考えていると、それがクントコロマンサにてマニアックにも人狼の最中にラーメンを頼んだ男であることに気がつく。


ヒゲの男はイベントの途中であるが、どうにもウイスキーが頭に回ってしまったので途中で退席することにした。このままここにいては、他人の店なのに「殴り合いをしようじゃないか」と言ってしまいそうだったのだ。


空を見上げると、先ほどまでの豪雨がウソのように、夜空は晴れ渡り、月がのんびりと顔を出していたそうだ。そう、また月曜日がやって来るのである。


とにかく、今月の雨つづきはかなわない。天候に左右される商売をやってみて、わかることが確かにあるのだ。最悪の月、2017年10月。


そう、青山ビルの隣には大学がある。その名も麻雀大学という。一度、入学してみたいものだ。


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by amori-siberiana | 2017-10-30 17:07 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北浜にて猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を版画家の柿坂万作と共に経営する、ヒゲの男こと阿守のブログにようこそ。


台風のやって来るなかの週末をはしゃぎ過ぎたヒゲの男。その肝臓は冷泉から提供された秘薬によってフル回転をすることとなり、二日酔いを避けることに成功したが、あげすぎたモチベーションは下がる一方である。ヒゲの男は克己するために北浜のオフィスに到着早々、映画「ロッキー」を流す。有名なテーマ曲をバックにスタローン演じるロッキー・バルボアがトレーニングする模様を見だす、なんと素晴らしい映画なのであろうかと、オフィスにてパソコンの前で感涙する。


さて、一昨日のこと。


ヒゲの男は雨のなか、宗教画のモデルの女と星師匠と連れだって店から近くで開催されているワークショップへ顔をだす。不用意に顔をだしたわけではなく、知人の心理学の女がそこでイベントをしているというので、様子を見に行くのである。外は雨が降り、肌寒い気候であった。ヒゲの男はコートを羽織っているが、宗教画の女はノースリーブであり、星師匠はその両者の中間という格好。この三者が一堂に会して写真に納まると、その撮影された季節が誰にもわからないであろう。


会場に到着すると、大勢の占い師がおり、占いの国際見本市のような賑わいであった。ヒゲの男もタイミングがあれば何か占ってもらおうかと考えていたが、あいにくとどこのブースも盛況であるか、値段が高いので諦める。そんななかで、ふと目をひいたのが「星撮人」と名乗る男のブースである。


宗教画のモデルの女は、「ほしさつにん」と声に出して読むが、これは間違いなく「ほしとりびと」と読むのであろうと、ヒゲの男は思った。


売れないシンガーソングライターのことを「うたいびと」とか、ソフト路線の葬儀屋のことを「おくりびと」と、その内容は変わらぬまま、余計な新語をあてて喜んでいるのが多くて、ヒゲの男はうんざりしているが、この「ほしとりびと」というのは自身の趣味とも合致しているので、興味を持つ。だが、基本的に「なになにびと」と自称する人間のスキルセンスをヒゲの男は一切、信用していない。


星師匠はブースに並べられた一枚の夜空の写真をみて、「これは火星とアンタレスですね」と星撮人の男に向かっていう。星撮人の男は驚愕した顔をして、「よく…、わかりましたね」という。星師匠は相手の反応など構わずに、この写真が撮影されたであろう時期を話しだす。


三人は星撮人と星の話しで盛り上がり、本題である心理学の女のイベントに参加する。まず、色を二色ほど塗らされる。ヒゲの男は青色とピンク色を塗る。心理学の女はその色にまつわる表層心理と深層心理について語りだす。これがなかなか興味深くて面白い。


そこから三人はそのまま店に戻る。店に戻ってみるとハイタッチ冷泉がすでに大量の買い物を版画家の柿坂万作とともに終えたあとで、iCOSをふかしながらニヤニヤしている。そう、今日は冷泉が命を削って、ちゃんこ鍋を作る日なのである。およそ30人分の食材を目の前にしたときの圧倒的な威圧感は、なかなかただごとでは済まないことを店内に予感させた。


ちゃんこ鍋における製作総指揮は冷泉。彼の指揮により、ヒゲの男は包丁をもち、一心不乱に肉を切り、ショウガとニンニクをすりおろしまくる。宗教画の女は野菜の皮むきをする、星師匠はゴボウを切る、万作は「こないな忙しいときになんですけど、ワシ、風呂に行ってきますわ」と言い残して、雨のなか店外へ出ていく。


冷泉はカウンターの中に設置された大きな鍋に具材を入れながら、何度も小皿にダシをとっては吟味をして、自分の理想に近づけていく。聞くところによると、冷泉は若い頃、相撲部屋の女将さんから秘伝のちゃんこ鍋の作り方を教わったのだそうだ。それに冷泉なりのアレンジを加えて、もうかれこれ300回は作っているとのこと。ちゃんこ鍋の作り方を教わる代償はなにかあったのか?とヒゲの男が笑いながら冷泉に訊いてみるが、膝を触られたぐらいであると冷泉は笑い飛ばす。


それぞれ別の産地であろうところから、この日のため、北浜に結集させられた肉や野菜はひとつの鍋という牢獄のなかに放り込まれ、冷泉の監視下のもと、絶妙な味わいを醸し出す。万作が風呂から帰ってきたころ、食欲をそそる匂いがクントコロマンサに漂う。


時間は19時、店の階段には電灯がつき、これからお前たちの胃袋の要求に応えるぞといわんばかりの意気込みを感じさせる。雨と風が叩きつけるにもかかわらず、多くの客がやってくる。


開店早々、副社長ばかりする男と細君を皮切りにして、30分のうちに店内の席は埋まることとなる。会計事務所のオーナーの男とその参謀たち、ボクサーの男、京都からきた指圧の神、起業を目指すハーフの女、チンピラの男、白黒バッグの服飾の男、腹まわりが118センチの男、大酒のみの女、不動産広告デザイナーの男、陸サーファーの上仲、コード0001の男とその部下、水タバコの男と細君、バレリーナの女とピアノの女、カーセックスで童貞を捨てた男、150人の人妻を操る男とドレスを売る女、JKなどなど、ここに書ききれるものではない。


冷泉は乾杯の音頭をとったり、カウンターのなかでちゃんこ鍋を椀のなかに入れたりする。宗教画のモデルの女はいつの間にかミツバチのコスプレをしているが、その背中につけられた羽根は頼りなさそうで、いつも閉じている。だが、他人に酒を勧めるのに関しては日本でも三本の指に入るのではなかろうかという押しで、来場者にアルコールを消費させていく。星師匠もあちこちにハイボールを配って東奔西走する。


遅れてやってきたのはアラタメ堂の主人である。バレリーナの女がハイボールを注文したアラタメ堂の隣にいき、こういう。


「阿守さんのブログで拝見しています、あなたがアキラメ堂さんですよね?」


「違いますよ、アキラメじゃなくアラタメ堂です。僕はまだまだ諦めてなんていませんよ」と、アラタメ堂は重大な部分を訂正する。ヒゲの男はこのやりとりが、おかしくて仕方がない。店は冷泉が陣取るカウンター付近、オルガン横の奥のテーブル、そして真ん中のテーブル、さらに入口から近いテーブルと四つのエリアがあるが、文字どおり四方からいろんな話しが聴こえてきては、そのそれぞれの会話の分母には、冷泉のちゃんこ鍋とアルコールがしっかりと横たわっているという次第。


なにかをキッカケにするわけではないが、腹を満たした連中は殴り合いをはじめることになる。ここに参戦したのが宗教画のモデルの女である。


「どうせやったら二回蹴らせて」と、立ち並ぶ男たちの太ももを蹴り飛ばしたあと、最後にみぞおち当たりを蹴るという技を披露してくれる。市役所に並ぶように青ざめた顔をした男たちの退屈をぶっ飛ばせという勢いで、宗教画のモデルの女は次々に男たちを蹴り飛ばしていく。そのなかにカーセックスで童貞を捨てた男も入っていたが、彼の致命的なミスは蹴ってくれといったあと、宗教画の女に背を向けたことであった。後ろを向いて視線をズラしたカーセックスの男の太ももに冷泉の蹴りが一閃する。痛そうな音が店内に鳴り響き、悶絶するカーセックスの男の尻めがけて、宗教画のモデルの女の容赦ない蹴りが炸裂する。ウルトラクイズの回答者が頭にかぶるハットのように飛び跳ねるカーセックスの男。その風貌は寡黙な戦場カメラマンのようであった。


チンピラの男は冷泉と会計事務所オーナーの同士討ちが見てみたいとけしかける。酔っぱらった二人は何度も相打ちを繰り返す。大体、どんなデモでも騒乱においても、火種となる人間はいるのであり、今夜の場合はこのチンピラの男である。


冷泉のちゃんこ鍋の会の凄まじいところは、そのアルコールの消費量にある。ヒゲの男は後日、伝票と店の在庫をみて驚いたものだ。大きなポリタンクのような容器に入っていたウイスキーのそのほとんどが無くなっていた。


奇人たちの晩餐会はこうして深夜を迎えたまま、記憶とともに霧散していくのであった。


博多「魁龍」が提供するラーメンように濃厚な一夜はこうして終わった。ハイタッチ冷泉とその仲間たちに感謝しながら、万作とヒゲの男はその日のシャッターを閉めるのである。もちろんそれは、店の外側のできごとについては、一切の責務を負わないという気持ちの表れでもあるわけなのだが。


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by amori-siberiana | 2017-10-30 15:28 | 雑記 | Comments(2)

こんにちは、北浜にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を根城に日夜、よからぬことを企んでいるヒゲの男こと阿守のブログです。


さて、昨日のこと。


北浜のオフィスで仕事と一日の無料課金で可能な範囲のゲーム(パワプロと将棋ウォーズ)をこなしたヒゲの男は、電気工事士の男と日本橋で待ち合わせる。なにがあるのかといえば、今日はオスカー・フォン・ロイエンタールの誕生日なのだそうで、彼の誕生を祝うためにバーへ繰り出すのだとのこと。


オスカー・フォン・ロイエンタールというのは田中芳樹が著者の「銀河英雄伝説」という小説に出てくる登場人物なのだそうだ。架空の人間を祝うため、わざわざ出かけるという足労はするわりに他のことを面倒くさがるヒゲの男なのだから、これは極めて度し難い状況である。


ヒゲの男と電気工事士が向かったのは日本橋にある「海鷲」というバーである。もちろん、銀英伝のファンが集う場所であり、店内には銀河英雄伝説のアニメが流れている。二人が行ったときには、ヤン・ウェンリー准将が進言した策が、パエッタ中将に退けられている場面であった。


ヒゲの男がブランデーの紅茶割りを頼む、すると紙コップに入れられて商品が提供されてきた。バーで飲むのに紙コップなどとはどういうつもりなのか…と、ヒゲの男は怪訝な顔をしたが、そういえばこの飲み物を愛用していたヤン提督は、印象的なシーンにおいてこの飲み物を紙コップで飲んでいたことを思い出す。なるほど、さすが徹底しているなと笑いが込み上げてくる。


小一時間くらいを「海鷲」で過ごした二人はそのあと日本橋で別れる。ヒゲの男はそこから駅を三つほど北上したところにある北浜へ向かう。つまり、要塞クントコロマンサへ戻ったのだ。


店に行くと、常連のガルパンの男、青いカーデガンの女、そして冷泉がいる。冷泉は版画家の柿坂万作と一緒に明日のちゃんこ鍋の段取りについて話しをしている。一番近くのスーパーはどこかとか、飲み物はどれほど酒屋に注文しておけばいいのかなど、綿密に打ち合わせをしている。


そこから不動産広告デザインの男がやってくる。魔女に囲まれ鼻の下をのばした万作の写真であったり、アンティーク調に加工したヒゲの男の写真などをわざわざ額縁に入れて持ってきては、その出来映えにニヤニヤしている変人だ。不動産広告デザインの男は、ひそかに冷泉の写真も加工をしている途上だというので、ヒゲの男はサンプルを見させてもらい爆笑する。


キラキラした光に包まれて、虹色に染まった冷泉がそこにいるのだから、笑わないほうが不自然である。


すると、冷泉も自身の写真を加工したものがあるのだといいだして電話をさわりだす。電話のメモリーから出てきたのは、自分の首が切断されて血が噴き出している写真だった。冷泉の頭のなかはサウスパークのようになっているのかも知れないなと、ヒゲの男は感じた。


そう、今日は忙しいのでブログにあまり時間はかけられない。この辺で失礼する。


昨日のブログでアップし忘れた、ギャラリー遊気Qの作品展の写真をあげておく。明日の16時から演奏イベントがあるので、椅子を返しにいくと同時にヒゲの男も演奏してみようと考えている。


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by amori-siberiana | 2017-10-28 12:53 | 雑記 | Comments(5)

こんにちは、北浜にて猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を版画家と共同経営している、ヒゲの男こと阿守のブログです。


さて、昨日のこと。


ヒゲの男は風邪を召してしまう。フラフラしながら北浜のオフィスへ向かい、そして青山ビルのギャラリーの女のところへ行く。ギャラリーに行くと、やっぱり当然の如くギャラリーの女がおり、今回の展示品の説明をしてくれる。国造焼といわれる鳥取は倉吉の焼き物、それの四代目が自身の感性にて自由に焼き上げた逸品たち。そして、指絵師の男の絵画が共同展示されてある空間は、色彩の楽園のようであった。


ヒゲの男は陶器を手にとってみる、釉薬の妙であろう、生まれたばかりの鉄器のように光沢をもつ器は、鉄とは比べ物にならないくらい軽い。なるほど、やはりこいつは土の産物なのだと実感するのである。この展示会の最終日にあたる明後日の29日は、ギャラリーでライブが予定されている、ヒゲの男もギターを持って加われとギャラリーの女はいう。ヒゲの男は快諾した、そのタイミングで借りていた椅子を返却すればよかろう。


ギャラリーを後にして店に行くが、いよいよ体調が怪しくなってきたヒゲの男はすぐ帰る。飲食をしている店に風邪ひきの男が長居していたのでは、よくなかろうということは世間一般の常識の範疇である。


ヒゲの男はオフィスへ戻り、受付の女に薬局はなかろうかと問い合わせる。受付の女は淀屋橋に目当ての店があると教えてくれるので、ヒゲの男は重たい足を引きずりながら、淀屋橋へ向かう。ヒゲの男が根城にしているオフィスは、ちょうど北浜と淀屋橋のあいだに位置するので、どちらからも近いし、またどちらからも遠いともいえる。遠近はその人の感性に委ねられることとなる。


薬局でマスクを買うが、最近のマスクは性能の基準が底上げされたのだろうか、それに比例するように値段も上がっていることにヒゲの男は驚く。だが、手で口を塞いだまま生活をすることもできないので、ここは譲歩してマスクを購入する。


マスク姿で外見がいつぞやの中核派のようになったヒゲの男がオフィスに戻ってくると、アラタメ堂のご主人が忙しそうにオフィス内を行ったり来たりする。どうやら本日はアラタメ堂が主催の「北浜人狼」というのが開催されるそうだが、別件で仕事のアポイントが重なって手が回らないらしい。


「そんなに忙しいのなら、上仲に全て仕事を丸投げして昼寝でもしてたらどうですか?」と、ヒゲの男はアラタメ堂に告げる。上仲というサーファーの男は横耳でそのやりとりを聞いており「僕に任せてください!」と胸を張る。


「そんな無茶苦茶できませんよ、大体、どうして上仲君なんですか。彼、まったく僕の仕事に関係ないじゃないですか」と、アラタメ堂はヒゲの男の適当なアドバイスに不平を漏らす。


「彼、英語は堪能ですよ」と、ヒゲの男は上仲の株をあげてから、もう一度勧める。アラタメ堂は苦笑しながら「僕の仕事に英語の出る幕は一切ありませんから」と、丁重に断るの一手。結局、英語が堪能なサンディエゴ帰りの上仲は、アラタメ堂の北浜人狼の備品などの買い出しを手伝うことになった。アラタメ堂の手から一万円札が上仲の手へと渡る、その一部始終をみていたヒゲの男は上仲にアドバイスする。


「それ、全部使いきらんだろう、あまりのお金でボウリングを2ゲームくらいしてきなさい」と、ヒゲの男は冗談とも本気とも取れないことをいう。


「えっ!?いいんですか!?僕、ボウリング好きなんですよ」と、上仲は目くら滅法このうえないヒゲの男の助言に案外、前のめりになる。


「なに、勝手なこと言ってるんですか、やめてくださいよ」と、二人の盛り上がりを制止するのは無論、アラタメ堂の主人である。


上仲は買い出しに行く、ヒゲの男はアラタメ堂が横にいることこれ幸いと11月7日にクントコロマンサで小説家を呼んでのヘビーメタル談義をすることを伝えて、そして当日の楽曲紹介におけるラインナップの草案を見せる。アラタメ堂はすぐさま盲点を見つける。


「1990年から1995年が今回の範囲なら、ジューダス・プリーストのペインキラーが抜けてますよ」


「ジューダス・プリースト…、ごめんなさい、自分はまったくジューダスを知らないのですけれど、それはメタルを語るうえで重要な作品なのですか?」


「なにいってるんですか、ペインキラーほどメタル界に賛否両論を投げかけた作品はないんですよ」と、アラタメ堂はイギリスのメタルバンドの肩を持つ。アラタメ堂がいうには、それまでのジューダス・プリーストから1990年に発表されたペインキラーで激変したのだとのこと、ヒゲの男はそれならばとペインキラーを聴く。


まず、ペインキラーよりひとつ前の作品を聴いて、そのあとでペインキラーを聴けば違いがわかるだろうと安易な発想のもと、自身のパソコンにイヤホンを刺して、「ラム・イット・ダウン」という曲をYouTubeで聴く。


アァァァーーーーアァアァアァ!(7秒間)


人間がこのように叫ぶのはどういった境遇のときだろうと考え込んでしまうほどの、高音の叫びが鋼鉄のように鳴り響く。ヒゲの男の体調が万全であれば、この話しもさらに続くのであろうが、ヒゲの男は残念ながら風邪である。アァァァーーーーを聴き終えるかどうかの頃に、ヒゲの男はYouTubeを静かに閉じた。また、再会のときもあろう。


ヒゲの男は音を聴くのをストップして、それならば歌詞から曲を連想すればよかろう。メタルは総合芸術である、メロディやリズムだけで成立するものではなく、歌詞も含めた三位一体となることで完成するのである。ということは、歌詞を知れば、残りの二位も想像できるであろうという論法である。






ペインキラー


Faster than a bullet
Terrifying scream
Enraged and full of anger
Hes half man and half machine


その姿は、弾丸よりも速く轟く、恐怖の叫びと怒りに燃えるサイボーグなのです。


Rides the Metal Monster
Breathing smoke and fire
Closing in with vengeance soaring high
He is the Painkiller
This is the Painkiller


メタルモンスターにまたがり、炎と煙を吐きながら復讐に燃えて空を駆けてくるのです。
そう、彼こそがペインキラーなのです!
これこそが、ペインキラーなのです!






さて、時間も頃合いを迎えて「北浜人狼」の開催となる。第一回目に参加した人も来られており、ヒゲの男は久方ぶりの戦友たちと挨拶をする。アラタメ堂の命により今回もヒゲの男はゲームの進行役を任されているが、今回は人狼をやり込んでいるであろう人たちも参戦してきたので、これはさらに愉快になりそうだと感じる。


およそ15人くらいの村での人狼が四度ほど行われる、経験者の記憶力と論理的な解釈は場のレベルを急激に上げることとなり、論議も白熱してくる。ゲームを知らないものは必然的に発言数は少なくなるが、それがまた不気味でもあるのだ。どれだけ強固な発言であったとしても、個々がそれを発することにより飽和状態になる。昼の論議にはタイムリミットがあり、否応なく時間は迫ってくるので、そのうち「アビリーンのパラドックス」に似た状態に陥る。これがたまらなく面白い。


ヒゲの男も前半の二回をゲームマスターとして、そして後半の二回はプレイヤーとして参加して、風邪のことも忘れて熱中できるものであった。すると不思議なものでいつしか風邪はヒゲの男のことが飽きたのか、どこかへ行ってしまった。ように感じる。


人狼は予定時間をオーバーして続き、オフィスが閉まったあとは、幾人かが集ってヒゲの店で続きをすることになった。猫のひたいのように小さな店で、少人数で行われる人狼もこれはこれで面白いものであった。人狼プレイヤーのなかに最強のピアニストの女がおり、ヒゲの男は店にあるオルガンで何か弾いてくれと頼む。彼女が弾きだしたのは、ショパンの幻想即興曲であったのには驚愕した。まさかオルガンで聴くことになるとは思ってもいなかったからだ。


アラタメ堂(彼)、お疲れさまであった。




Planets devastated
Mankind's on its knees
A saviour comes from out the skies
In answer to their pleas

彼は、荒廃した惑星に住む人類がひざまずき祈っている願いにこたえるため、空から現れた救世主なのです。


Through boiling clouds of thunder
Blasting bolts of steel
Evils going under deadly wheels

He is the Painkiller
This is the Painkiller

雷雲と鋼の稲妻を突きやぶり、邪悪なるものは、死の車輪の下敷きとなるのです。
そう、彼こそがペインキラーなのです!
これこそが、ペインキラーなのです!



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by amori-siberiana | 2017-10-27 14:52 | 雑記 | Comments(2)

こんにちは、北浜にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を版画家の柿坂万作と共同統治する、ヒゲの男こと阿守のブログです。


聡明なるヒゲの男は、またひとつの真理に辿り着くことになった。


「この子の耳は将来、大物になる耳じゃが」と、遥か昔に故郷の老人がヒゲの男に向けてよくそう言っていた。もちろん、その頃には当該する男にヒゲは生えてはなかった。その若い頃から将来を有望視されたヒゲの男、西讃の神童がいよいよ核心に近づいたのであるから、一聴の価値ありだ。


つまるところ、やる気は戻らない、身体の節々は痛む、頭皮はボロボロと落つる、季節の変わり目による鼻水とくしゃみが止まらない。そしてとにかく眠くて仕方がない。このような四面楚歌の状態においても、ヒゲの男の頭脳は死んではいなかった。とうとう気づいてしまったのだ。


「…これは単なる風邪ではなかろうか」


自身の症状をよく考えてみて、ふと、そういう明快な答えが頭をよぎった。ヒゲの男は答えを急いではならぬと、今一度、よく自分の現状を監査してみるが、なるほどこれは風邪に間違いないという回答が得られたのである。自分が風邪であることに、ここまで脳をフル回転させ遠回りしながら辿り着かなければいけないとなれば、この男も相当に面倒くさい男である。


ヒゲの男は自身が風邪と気づいたその刹那、いきなり風邪の患者になったような気がする。そして自分が疾患による被害者なのだということを知るやいなや、なるほどいろいろなことに合点がいき、えらく救われたような心持ちになる。


「そうか、自分は風邪なのか」


感冒に対しての一番の処方箋は、自分の正しい状況を知ることである。


ヒゲ、ダウン。


そういえば、昔。ヒゲの男の学友がリンドバーグを聴いているときに高熱が出た、それ以来、リンドバーグが聴けなくなったということをボヤいていた。ヒゲの男もまったく同じ理由でBON JOVIが苦手になったのである。もちろんチャンマキやジョン・ボン・ジョヴィに罪などはない、聴き手の一方通行な理由である。


なので風邪の日は何もしないのに限るのだ。副作用や後遺症によって、音楽が聴けなくなってはたまったものではないからだ。


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by amori-siberiana | 2017-10-26 15:57 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北浜にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を共同統治する、ヒゲの男こと阿守のブログです。


ヒゲの男は季節の変わり目が苦手である。どう苦手なのかといえば、頭皮がボロボロとはがれて体の節々が痛む、そして鼻水が止まらなくなる。さらには芥川龍之介が書いた「ただ、ぼんやりした不安」のようなものが心に入り込んでくるのである。もちろん、このようなことはヒゲの男だけに限ったことはないのであろうが、兎にも角にも季節が変わるということは、ヒゲの男にとって随分と心身の変化をもたらすのである。


さて、昨日のこと。


ヒゲの男は昼に店へ行く、店に行くと版画家の柿坂万作が缶ビールを片手に、コンビニの弁当を食べながら、眼前にある自分の描いている壁画を凝視している。いつ頃、完成するのかは本人にもわからない。さらには現時点でどれくらい完成しているのかすら、本人にもわからないそうである。もっといえば、当人がすでに飽きているのだという。


義務や責務に突き動かされて美術なるものを仕上げるとき、それが金銭的な価値に早い段階で帰結する場合は、創作意欲がわいてくる場合もあるが、そうでない場合は創作者の克己心に拠るところが多いため、一度執着が離れてしまうとなかなか完成を見ないものである。版画家の万作だけではなく、ヒゲの男も一曲だけ放置したままの曲があり、これをいつ完成させるのかというのは定まっていない。一人で弾き過ぎて、若干飽きている感じはするのだ。


ヒゲの男は店をでて、そのまま北浜のオフィスへ行く。行くと、宗教画のモデルの女がおり、二人で話し込む。


「どうにもやる気が出ない」と、ヒゲの男は怠惰なことを遠慮なくいいだす。


「一週間くらいのんびりして来たら?海外とか温泉とか」と、宗教画の女はヒゲの男の話しを聞きながら提案してくれる。


「そうだねぇ…」と、ヒゲの男はのるのかそるのか判然としない回答をしながら、ぼんやりと温泉に入っている自分を想像しながら、おかしなことを言いだす。


「たまに、ハッと気がついたようになって、自分は今、どこにいるんだろうと思うことがある」と、ヒゲの男は自分自身の行動がまるで他人事であるかのような錯覚を起こすことがあるといいだす。宗教画の女は自分の身近の人間もそういうことを言ってるということを教える。


「うちも若い頃はそういうんあったかなぁ、なかったかなぁ」と、宗教画のモデルの女は彼女らしい返答をするに留まる。


ヒゲの男はグチグチと余計なしゃべりに付き合ってくれたことを宗教画のモデルの女に感謝して、なにもする気が起きない以上は帰って寝るがよかろうと考え、そのまま帰路につくことにした。


常連の不思議な女と常連のガルパンの男の会話の端々にでてくる、「やる気スイッチ」なるものは一体、どこにあるものなのだろうか。


こういうヒゲの男のような人間のことを、気分屋というのであろう。気分屋の気分は天気と同じ、放っておけば親身に相談に乗ったのがバカらしいと思えるほどケロリと回復していることが多々あるのである。


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by amori-siberiana | 2017-10-25 12:40 | 雑記 | Comments(0)


北浜のビジネス街にある、昭和レトロなカフェのブログです。            大阪市中央区淡路町1丁目6の4 2階上ル