カテゴリ:雑記( 67 )

こんにちは、堺筋という大きな通りに面した北浜。そこにある猫のひたいのような小さな店、画廊喫茶フレイムハウスにて暇つぶしをしている阿守です。


今朝、北朝鮮がミサイルを発射した。そのミサイルは北海道を飛び越えて、東の海上に落ちたそうだ。朝から物騒なアラートによって叩き起こされた人も迷惑千万であろうが、都市部を中心に交通インフラのマヒであったり、ミサイルという逃げ場のない攻撃にさらされたとき、逃げ場がなくなる恐怖感であったり、商売における打撃であったりは、生きていくうえでとんでもないストレスになる。その疲労感たるや相当なものだ。


それが慢性的に継続していくことは、耐えがたい苦痛であり、勘弁していただきたいものである。


人間はストレスに慣れることはない。ストレスに慣れることが人を幸福にすることがないことを本能で知っているからだ。人はストレスを感じることで、それを絶対的に駆逐駆除しようとするものだ。なぜなら、理由はシンプルで、落ち着かないからだ。


個人の意志ではなく大衆が共通したストレスを持ち抱え、それが結集して暴発したとき、なにが起きるのか。これまでの歴史を振り返ってなにが起きてきたのかは明々白々。


ミサイルに怯えさせられることになるのはいつも一般人である。北朝鮮という腹芸を得意とする大根役者の後ろで、操り糸を垂れているのは誰なのか、みんなで探り出したいものである。ミサイルは打ち上げ花火の大会ではない、みんなを楽しませるものではない。


ただ、どちらにもスポンサーがいるということだ。


顧客の消費を促すのにもってこいなのは、「脅威」であったり「共通の敵(公共の敵)」の存在である。躊躇する大衆の連帯を派生させるのにもってこいなのも、「脅威」であったり「共通の敵(公共の敵)」の存在である。


そして、いつも災難に遭い、巻き込まれるのは一般人なのだ。


火薬に火がつかないことを祈るばかりである。文明とはなにか?、それは剣ではなくペンによる解決を見出すことではなかったか。


さて、昨日も朝から北浜のオフィスへ顔を出し、午後から画廊喫茶フレイムハウスに向かいました。北浜のご近所さんが主催される映画会が15時からあったのだが、諸事情により出席できず非常に悔しい思いをするが、是非もなし。


店に行くと版画家の柿坂万作さんが何やら言いにくそうに口を開く。これまでに何度もあったシチュエーションである。大体、この口調でスタートしたときは金の無心であることが多い。ちなみに後で気がついたのだが、今日の万作さんはDIESELのジーンズを履いていた。どうでもいいことだが。


「ああ、これは阿守さんには、お伝えしといたほうがええと思うことがあるんですけど…」


「どうぞ、何か言いにくいことでもあるんですか」


「実は隣の姉さんが来て、ちょっと三人で話しをしたい言われたんですわ」


万作さんのいう隣の姉さんとは、画廊喫茶フレイムハウスの隣にあるサロン喫茶フレイムハウスのオーナーさんのことである。一度、酒などの仕入れを終えて北浜のオフィスへ戻る途中にお会いしたことがあり、挨拶が遅れた自身の不調法をお詫びさせていただいたことがある程度の接点しかない。


三人というのは、隣の姉さん、版画家の柿坂万作さん、そして僕のことであろう。


「三人でですか?何の要件でしょうか」


「うーん、なんやろ…、なんか姉さんなりにあるんちゃいますか」と万作さんはことばを濁す。


「せっかっくのお誘いなんですけれど、要件のわからないものに出席する時間は持ち合わせていないので、断っておいてくださいますか」


「えええ?なんて…断ったら、よろしいやろ…」


「阿守は忙しい。と」


「はぁ…」と万作さんは釈然としない相槌をうつ。阿守はそのままタバコに火をつけ、万作さんは厨房へ入ろうとするが、思い出したように版画家は振り返り阿守にこういう。


「もしかしたら、店の椅子を返せいうて、いわれるかも知れんのですわ…」


「この店の椅子というのはお隣さまからの借りものなのですか?」


「そうですねん、また、ワシが椅子を作ればええことなんやけれども…」


なるほど、今のこのタイミングにて椅子の返却を迫られるとは、お店としてはなかなか困難な状況になることは自明の理。


「つまり、その件での話し合いということなんでしょうか?」


「うーん、ワシにはなんともいえんのやけれども…」


なんとも歯切れの悪い版画家の返答である。


「他になにか言いにくいことで、これまで黙っていたこととかありますか?」と訊く。


「いやぁ、他には特になんもないなぁ。面倒なことは全部、阿守さんが引き受けてくれるもんやろうと思とったんやけどなぁ」と万作さんは卑屈な苦笑いを浮かべるが、それをシラフで言ってるのだとしたら、狂気の沙汰だ。


ハッキリと断言するが、版画家の身元引受人や連帯保証人になった覚えは一切ない。


そんなことを話しをしていると、締まりの悪いドアがガチャリと開く。


青山ビルにてギャラリーをしている女と、彼女のギャラリーでイベントを開催していた坊主頭の女がお客さまとしてご来店される。先日、お二方からは直接連絡をいただいており、月曜にフレイムハウスで食事をしたいのだが、ベジタリアン用の料理ができるものだろうかと相談をいただいていた。


その日のうちにシェフの万作さんにそのことを伝えると、「わかりました、引き受けましょ。なんなりとできると思いますわ」と心強い返事をいただけた。こういうときの万作さんは頼りがいがある。あとは腕相撲のときも。


少し前に来店されていたグラフィックデザイナーの女を含めて四人でいろいろなことを話す。人にはコンプレックスがあるが、そのコンプレックスが自分や他人にとってのメリットとなるような場所で活動することが良いと、ギャラリーの女はいう。まったくもって、同感である。


坊主頭の女は「彼女はいつもこういうためになる話しをしてくださるんです」という。


そんな二人の女はギャラリーでのイベント期間中、揃って近くのバレエ教室(アンチエイジング)に通っているとのこと。本格的にバレエを踊るのではなく、バーレッスンなどで屈伸をするだけでも、随分と運動になるのだとか。


彼女たちの話しは聞いていて面白い。屈託のない意見をとても上品におっしゃってくださるので、真摯で手厳しい意見だとしてもすんなりと聞き手の側に入ってくる。そして何より前に向いている、だから彼女のギャラリーは居心地のいい場所なのだ。


彼女たちが食べたのは、万作さん特製の「ベジタリアンのためのトマトとたまねぎのパスタ」。ふたつの皿に盛られた、若干多めのパスタはみるみるうちに二人の胃袋へと納められた。味見をしておけばよかったと後になって悔いた。


そこから常連の不思議な女とグラフィックデザイナーの男、ガルパンの男、エジソンがやって来る。


話しの主題はアミニズムからどのように仏教へと日本人の信教は変化していったのかを手始めとして、本来の日本語とはどういったものなのか、オーパーツとは何なのか、土偶は宇宙人ではないのか、コロンビアの黄金ジェットとは?という話しになっていく。


カウンターでは万作さんとエジソンが「流体力学」について話しをしている。これほど万作さんの無邪気で嬉しそうな顔を見たことはないというくらい、エジソンから語られることばに目を輝かせていた。


もちろん解決など出ない。解決を出すことはそんなに重要じゃない、まず問いかけることが重要なのであるとは、ソクラテスの哲学だったであろうか。


多分、ソクラテス自身も例にもれず酒飲みだったのではなかろうか。



- 友と敵とがなければならぬ。友は忠言を、敵は警告を与えてくれる -


アテナイのソクラテス

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by amori-siberiana | 2017-08-29 12:02 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北浜にぽつんと建つ猫のひたいのような小さなお店。画廊喫茶フレイムハウスの阿守です。


昨日の日差しは厳しいものでしたが、吹きつけてくる風に秋の気配を感じました。この風があと少しもすれば、冷たくなり、冬眠という習慣を母体のなかに捨て去ってきた人間という種族に対してイヤがらせのように凍えるような風を送ってくるのかと想像すれば、今の熱気も名残惜しいものです。


さて、昨日の画廊喫茶フレイムハウスではタッキー国王杯のモノポリー大会が開催されました。お客さまも沢山きてくださり、無事、盛況のままに終えることができました。ご来店のみなさま、ありがとうございます。


タッキー国王も閉店後に「モノポリーはもう一戦したかったですね」とご満悦の様子であり、会計のときにも「僕、はじめてこのお店で適正な飲食会計の支払いができた」と驚いておりました。つまり、これまではボラれていたということを言いたいのでしょうが、人聞きの悪い話しです。


画廊喫茶フレイムハウスはいつも明朗会計。日本中のエンゲル係数を下げることのみが、この喫茶店の拠ってたつところ、大義名分なのですから。


モンゴル→北京→北浜へと来られたタッキー国王は、キャリーバッグを引きずりながら
、各国の気候にあわせるためでしょう、日本の今の気候から比べると、とてもおかしい格好で来店してくださいました。少し遅れてくるところが、人気者の証拠です。


予定時間を45分ほど過ぎたころ、モノポリーは5名で行われました。


タッキー国王、ミスター上仲、ベトナム人のタム、一般参加の女、そして総帥。


序盤は静かにゲームは進んだが、ある程度、プレイヤーが土地を持ち出すと各自が交渉に動き出します。モノポリーというゲームにて勝利するには、ひとつのエリアを買い占めることが必須。しかし、基本的にサイコロ運でゲームは進行するので、お目当ての買いたい土地に止まれないことがよくあります。そういったとき、自分の欲しい土地を持っているプレイヤーと交渉の場をもうけて、手に入れたりするのです。


総帥が、タムくんに交渉します。


「タムくん、あなたの持ってる赤い色の土地と空色の土地。これは僕と持ち合いになっているから、お互いのメリットのために交換しませんか?」


日本語があまり得意じゃなくモノポリーのルールすらわからないタムくんは、オロオロする。これは好機と総帥が英語で畳みかける。


「タムくん、僕には近い未来におけるお互いの繁栄が見えている。ここはメリットしかないので是非とも交換して欲しい。赤色の土地がいいかね?それとも空色の土地がいいかね?君の選択次第だ」


タッキーが凄まじい勢いで英語にて割り込んでくる。


「タムくん!ダマされたらダメですよ、もっと良いプランが僕にはある!タムくん!僕のプレゼンテーションを聞いてくれ」


それを皮切りにゲームはスピード感をまして、駒を進めるよりも交渉がメインになってくる。しかもなぜか英語メインになっている。薄暗い部屋でテーブルを目の前に殺伐としたなか、異国のことばが血気盛んに飛び交うのは、映画「ディアハンター」のワンシーンのようだった。


総帥がトイレに行ってるあいだに、タッキーがここぞとばかりに猛烈な交渉をタムくんへ持ちかけ、詐欺的手法で黄色のエリアを独占する。鬼のいぬまに洗濯とはこういうことか。


一般参加の女が不幸にもタッキーの土地に足を突っ込んでしまい、一発で総資産の70%ほどを失う。タッキーは自身への支払いに苦しむ彼女の土地を自分が高値で買い取ることで、彼女が破産しなくていいように首の皮一枚で生かす。


生きながら死んでいるようなプレイヤーを救うフリをして、実際にはいつ仕留めようかと考えるのに快感を得ているのは、なにもタッキーに限ったことではなく、世の中の縮図であろう。


「敵対買収(M&A)の基本は勢いとタイミングですから、いけるときには買う、ですよ」と満悦そうに語るタッキー。


タッキー以外のプレイヤーは独占エリアがないので、ここで対タッキー戦略を残存プレイヤーで練る。


総帥は自分のツタない英語力ではタムくんが調略できないことを知り、上仲くんに自分が画策する交渉を成立させるよう、総帥とタムくんとの仲介を頼む。


「阿守さんの交渉にタムくんを応じさせればいいんですね、わかりました。それで僕への見返りはなんですか?」


最近の若者は抜け目がない。背に腹は代えられないので、上仲くんに成功報酬として彼の欲しがっている土地を与えることを約束。上仲はタムに「阿守さんからの提案が現時点ではベストであろう」と甘言を伝えて、交渉は成功する。


スクランブル交渉により、三者が独占エリアをもつことになった。


が、ときすでに遅し。自分のエリアに先行投資してキャッシュがなくなったプレイヤー各人が運悪くタッキーのエリアに止まり、巨額を支払わされ、タッキーは苦労せず大金持ちになった。


上仲くんがいう


「…なるほど、こういうのが黒字倒産ですね。キャッシュフローの大切さを身をもって知りました」


結局、モノポリーはタッキーの大勝利に終わる。おめでとう。


そのあと、小休止してから、店内のみんなで「人狼ゲーム」をすることになった。ゲームを知らないものも半強制的に参加させられる。


9月28日に北浜のオフィスで行われる「北浜人狼」のゲームマスターに指名されているので、練習がてらお客さまにお付き合いいただく。おかげさまで、随分とゲームの進行についての不安は解消されました。


ゲーム終了後、アラタメ堂のご主人よりお借りしている人狼ゲームに必要な紙製のカードを確認してみると水滴によってヘロヘロになっているものが数枚ある。確かに酒場において水分は必要不可欠なものだが、一体、どこで…。


テーブルを調べてみると、冷泉さん(ハイタッチの男)とタッキーのテーブルの上が何故かビチャビチャ。犯人を探すのは案外、簡単だった。


その晩、なぜか夢に版画家の柿坂万作さんがゲーム中にいったセリフが何度か出てきた。


「ワシ、予言者ですねん…」


「ワシ、予言者ですねん…」

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by amori-siberiana | 2017-08-28 12:26 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、由緒正しき北浜にて猫のひたいのような店。画廊喫茶フレイムハウスにて大博打をしている阿守です。


昨日は朝のうちに南船場のパン屋「き多や」さんへ行き、版画家の柿坂万作さんが作り上げる「21世紀のイカレた奴らに贈るフレンチトースト」の素材となるバゲットを買いました。先日アップしたメニュー欄にのせておりませんでしたので、また追記しておきます。

バゲットを買ってお店に戻り、温かいコーヒーを飲んでいると、僕と同郷で今も香川県を守る矢野さんが来店してくださいました。先日より、彼が仕事のため関西に来ていることは知っていたので、ジラさずにさっさと店に来いよと思っていましたが、やっとということです。それでも久しぶりに感じなかったのは、大阪と香川の交通の便が発達して、距離が長いと思わなくなったからでしょうか。


僕が香川県から大阪へ出てきたときなどは、お金もなかったので高松から船に乗って、神戸の青木港まで到着して、そこから阪神電車に揺られて、右も左もわからない大阪に辿り着きました。辿り着いたからといって、そこに何かがあるわけではありませんでしたが、それでも香川県で煮えたか沸いたかわからない生活をしているよりは、随分とマシでした。


根拠のない自分の可能性を試したくて仕方がなかったのです。衝動的に出てきました。


当時、僕の同郷の仲間もタイミングを同じくして大阪へ出てきましたが、彼らにはすることがありました。僕は別にとりたてて音楽がしたかったわけではなく、就職がしたかったわけでもなく、ただ、鬱屈として退屈の代名詞であった自分の故郷から出たかったのです。


同郷の男と話し込んでいると、これまた久しぶりに加賀の女がご来店されました。僕がシベリアンニュースペーパーというバンドをはじめたとき、彼女の所属していたチームからのサポートがなければどうなっていたかわかりません。「ZOOBERIAN」なる珍妙なイベントもなかったかも知れませんし、エドワード・ゴーリーの絵本に音楽をつけることも、ヴィヴァルディの「四季」をレコーディングすることもなかったかも知れません。


いや、そんなに変わらなかったかも知れませんが、「もしも」話しはバカバカしいので、ストップします。


ランチの時間も終わり、そのまま北浜のオフィスへ行きます。


僕のいるオフィスにて、9月28日の木曜日。午後19時から「北浜人狼」というイベントが開催されます。一般人も入場可能だというこのイベントの狙いは「心理戦ゲームでコミュニケーション術に磨きをかけよう」というものです。


このイベントを企画された、アラタメ堂のご主人から「阿守くん、ゲームマスター(司会進行役)になってくれ」との使命を頂戴いたしましたので、それについてのザックリした説明をオフィスで受けていました。あまりにざっくりしていたため、ほぼ自習でした。


アラタメ堂のご主人から「阿守くん、人狼はしたことある?」と訊かれますので、無論だと答えます。


今はなくなってしまいましたが、Yahoo!ゲームにあった「人狼 ON LINE」。


そこで伝説のユーザー「安倍総理」というのがいましたが、はい、僕のことです。会話のすべてを安倍総理の真似をしてやっていただけなのに、えらく人気が出まして、僕の作った部屋はいつも活気に溢れていました。


「総理!国会中なのにこんなところにいていいんですか!?」


「ああ、ですからですね、あなたのそういった発言はですね、とても極端なんではないかと、私はですね、思うわけであります」


「総理が人狼ですよね?」


「そういったですね、間違った情報というか、なんというか、あなたのそういった発言はですね、印象操作をすることになりますよ、ルール違反なんじゃありませんか?ああ、違反じゃありませんか、すみません」


ただ、対面式での人狼をした経験はないので、進行の仕方などはフレイムハウスのお客さまたちにも協力してもらい、何度か訓練したのち、9月28日の大会当日までにはソツなくこなせるようにしておきたいものです。


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2017年9月28日(木) 19:00から20時30分

参加費:1000円(1ドリンク、お菓子つき) ※一般参加可能です。

司会進行:阿守総帥

会場:THE LINKS KITAHAMA Aルーム
◆大阪市中央区今橋2-3-16MID 今橋ビル1F

主催およびお申込み:アラタメ堂 主人 fukuda@aratamedo.jp


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そのまま二次会で画廊喫茶フレイムハウスへ誘導することが、最初から僕の目的だとは、誰も気づくまい。ワオーーン!


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by amori-siberiana | 2017-08-25 14:02 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北浜にある猫のひたいのような小さな店。画廊喫茶フレイムハウスの阿守です。


今日の北浜はすこぶる蒸し暑く、ほんの少し外に出るだけでも汗が噴き出すという有り様。少し歩いては汗をぬぐい、少し歩いては汗をぬぐいの酷暑にてブログをしたためております。


昨日も北浜のオフィスに顔をだし、夕方を過ぎてからは某社顧問の男とサーファーの上仲くんをお連れして画廊喫茶フレイムハウスへ向かいました。


以前、某社顧問の男を知人からご紹介いただいたとき、彼がカフェの経営コンサルタントをしていたということを僕が覚えていたので、一度、お店を見ていただきたかったのです。


お店に到着してみると、お客さまがすでにくつろいでおられまして、そのお客さまより東京土産のえびせん(柚子風味)と、「亡命ロシア料理」という本を含む数冊をお店に寄贈いただきました。ただ、自分が読みたくなったときにはまた取りに来るとのこと。なるほど、書庫代わりにもいいお店かも知れません。彼女自身、小説の登場人物のような名前をしていらっしゃるのです。


せっかくなので、某社顧問の男、上仲くん、洒落た名前の女、そして僕で画廊喫茶フレイムハウスの展望を論議のキッカケとして、そのままカフェの歴史やコーヒー文化(エスプレッソはどのように日本に入ってきたのかなど…)について話しはどんどん掘り下げられました。


そのうち、ハイタッチの男こと黒ずくめの冷泉さんがやって来られ議論の席に自然に混ざります。


フレイムハウスでのイベントに話しが及んだとき、洒落た名前の女がこういいだす。


「私、架空読書の会をしてみたいんです」


「カクウドクショ…?」、女以外の全員が顔を見合わせる。


「ありもしない本について、みんなで語りあうんです」と女は補足説明をしてくれる。なるほど、ここへやってくる酔っぱらいたちなら、幾らでもできそうなイベントである。


「つまり、適当に本のタイトルをつけて、それの読後感想をみんなで語り合うという会ですね?それは面白そうだ」と皆でやってみるが、すぐに笑いの絶えないくだらない架空読書の会ができた。


洒落た名前の女がいう。


「私、第二章からが好きなんです」


僕が応答する。


「ああ、主人公の西村が離婚してからだね」


冷泉さんが、すかさず反応する。


「阿守さん、どっち派でした?」


某社顧問の男も鋭くメスを入れてくる。


「作家の円城寺さん自身が童貞なのかゲイなのかって、一時期は議論の的になってましたけれど、そのどちら側として見解に立つかでも評価は分かれますよね」


上仲くんは聞き役としては最高のゲストだ、次はどんな架空感想がでてくるのかを好奇の目で周囲を見渡す。自分よりも10も20も上の大人たちが、ありもしない本について熱く語っているのだから、これは奇異であろう。


そうこうしているうちに、僕と冷泉さんのタバコが切れてしまったので、二人で近くのコンビニへ買い出しに行くことに。版画家の柿坂万作さんより、「阿守さん、氷も買うてきてください」と申しつけられているとき、ガチャと店の締まりの悪いガラス戸が開き、いちげんの女性が入って来られた。


僕と冷泉さんがコンビニから戻ってくると、いつの間にか彼女も会話に加わっており、話しは架空読書から旅行代理店「てるみクラブ」の破綻についてとなっていた。キャッシュフローがどれだけ大事なことなのか、顧問の男と洒落た名前の女、そしていちげんの女が上仲くんに説明している。


やたらと金に詳しいし、上仲くんへのアドバイスが素人じゃないと思って聞いてみると、いちげんの女は税理士事務所の代表取締役であり、それを聞いて「どうりで…」と腑に落ちた。


寺社仏閣税務などを専門的に扱う彼女自身も、相当な神社マニアだという。


「こういうみなさんのいるところで、訳のわからない私の趣味についてお話ししても…」と言葉を濁していたが、冷泉さんと顧問の男が許さない。


「こういうところだからこそ言いましょう」と口を揃える。


「ちなみにバカっぽい話しですいませんけれど、あなたのお好きな神社ベスト3を後学ため僕たちに教えてくれませんか」とは僕の発言。


「序列も私のなかでいろいろ入れ替わるので…、なかなか」と正直なところをいう税理士の女。


「もちろん序列じゃなくて構いません。お好きなところを三つ掻い摘んで教えていただければ幸いです」と一応ことわると、彼女は自分的なベスト3を教えてくれた。


同席していた誰一人、そのうちのどこもわからなかった。


ナンバーワンは丹後の神社だった、僕が上仲くんに補足説明する。


「丹後地方は行政区分としては京都になっているけれど、元々は違う文化圏の国だったのだよ。丹後の小さな神社か…、もしかしたら徐福と関係があるのかも知れない」と僕がいう。


「徐福!!」と仰天した声をあげて、税理士の女が目を丸くする。自分の好物を見つけたときの子供の目である。


「徐福ってなんですか?」と上仲くん。


「徐福っていうのは、ものすごく簡単に説明すると、秦の始皇帝から不老不死の薬を探してくるよう命じられて、日本に渡来してきた人の名前。丹後半島のどこかに辿り着いたという伝承があるよ」


「…不老不死の薬なんてあるんですか??」と不気味そうな顔で問い返すのは上仲くん。


「アレ、なんと言ったかな…。あなた思い出せません?」と僕は税理士の女に助けを求めるが、税理士の女も思い出せずにウーンとうなる。


「ホウライだ!思い出した!確か蓬莱(ホウライ)じゃなかったかな」と僕が思い出す。


冷泉さんが重い口を開く。


「上仲くん…、殴り合いしましょ」


税理士の女がウイスキーをストレートであおる冷泉に構わず発言する。


「それとか、日本の昔のことは竹内文書に記されてますから」


「ええっ!竹内文書!?あんなの読める人がいるんですか!?」とは仰天したのは僕。


「はい、日本で数人、古代文字を解読できる人が、確かにいます」と、いたって冷静沈着な彼女。


「でも、竹内文書は偽書だって評価もありますよね?」と、僕は自身の疑問をぶつけてみる。


「いえ、偽書ではありません」と彼女は言いきる。


これは面白い話しになりそうだ。


僕もこの際だからと心の奥に半開きにして閉まっていた、北浜自治州の話しを持ちだす。某社顧問の男はすかさずアイデアをくれた、神社マニアの女は目を輝かせながら「いいですね!」とこちらの軽挙妄動に付き合ってくれる。


店のテーブルにはいつしか、ミックスナッツがひとつの皿へ盛られていた。


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by amori-siberiana | 2017-08-24 16:08 | 雑記 | Comments(0)

こんばんは、北浜にある猫のひたいのように小さな店。画廊喫茶フレイムハウスの阿守です。


昨日は何をしていただろうか…。毎日、同じ場所でいると昨日のことなのか、それ以前のことなのかわからなくなります。


そう、オフィスでブログとメニューを考えてからお店へ行きました。お店に行くと珍しく、すでにお客さまが二名きておられました。ひとりはシベリアン時代のファンのかたで、東京でも名古屋でも大阪でも博多でもお見掛けした女性で、ぎっくり腰の女。


もう一名は、先の20日に画廊喫茶フレイムハウスで行われたアイリッシュイベントにお越しくださっていた女性で、吟遊詩人の女。


ぎっくり腰の女のカラシニコフ銃のようなしゃべりは止まらない。ほんに頭の回転の速い女で、またいちいちしゃべることが面白い。僕も本来、寡黙とは無縁のたちなので知らぬうちに早口になってしまう。


そのうち、ガルパンの男と温泉マニアの男が来店されたが、ぎっくり腰の女は止まらない。すさまじい速度で写経するように、ことばが編み出されてくる。ことばで十二単が織れそうな勢いに敬服する。吟遊詩人の女といえば、僕とぎっくり腰の女のしゃべりに挟まれてるのに、「やかましい!」と二人を引っ叩くことなどせず愉快に聞いてくれている。


気がつくと吟遊詩人の女のグラスに入ったコーヒーが氷が溶けだして、二層になっている。僕はコーヒーが水で薄められて二層になっているのと、ブドウを乾かしてレーズンとするのには我慢がならない。


なので、彼女のこういってみる。


「そろそろコーヒーを追加で頼んでみてはどうか?」


「いえ、これで構いません」


「もう、コーヒーと水がグラスのなかで分離してるぜ?」


「私、給料日前でお金が900円しかないんです」


なるほど、そういうわけなら仕方がない。そういえば、吟遊詩人の女は歌をうたっていたのだと、先日のイベントの日にチラと聞いていたことを思い出した。


「すいませんが、何か一曲歌ってくださいませんか?オリジナル曲で」


僕のそうした無茶な願いに彼女はギターをもちステージにあがる。ステージというほどのものではないが、ここでは誰がなんと言おうがステージなのだ。


数秒、ギターのコードの確認をした彼女は歌いはじめる。


僕とぎっくり腰の女のしゃべりは止んだ。ガルパンの男はガルパンのゲームを停止にした、版画家の柿坂万作さんは全身の鳥肌がたった。


約束の一曲が終わったが、四人の聴衆はまだ興奮が冷めない。


「すいませんが、もう一曲、いやできるだけお願いできますか?」と四人を代表して僕が彼女に伝える。


四人ともが歌を聞くにふさわしい位置に陣取る。唐突だったので不意を突かれたのかも知れない、次はしっかりと聞こうという姿勢だ。


そこから彼女は歌い続ける。


いや、参った、四人の心に響く歌を彼女はスキルとしてもっていたのだ。万作さんがいう、「ええと…、彼女、歌をうとうた瞬間にいきなり別人がおりてきたような感じでしたわ。ワシ、全身に鳥肌が立っとりますもん」。


ぎっくり腰の女は「音楽ができるってええな!」と嫉妬と敬意の入り混じった、ご機嫌なのか不機嫌なのかわからない反応をする。


しまいには、フレイムハウスの歌(仮)まで歌ってくれたのだ。


【Em】→【G】→【Cmaj7】→【B7】※グレゴリオ聖歌のように


万作はメシを食う
万作はメシを食う
万作はメシを食う
万作はメシを食う


マンサク、マンサク、マンサク、マンサク…


柿坂万作 Say I Love You
柿坂万作 I Need You
柿坂万作 Say I Love You
柿坂万作 I Need You


「阿守さん、はやくここで彼女にライブしてもらいましょう」


僕はガルパンの男からはじめて、そのようなセリフを聞いた。吟遊詩人の突然の登場に沸き上がった夜だった。常連の不思議な女が不在だったのが、とても惜しかった。


吟遊詩人の女は小型のハープも、弾きながら歌えるのだそうだ。見たい。
是非、「Bard's Song」とか歌って欲しいものだ、僕の知り合いの新進気鋭の小説家などは歯をガチガチさせながら狂喜することだろう。


時系列が前後するが、ランチは保険の外交員のおばさまたちが、時間つぶしに昼間っからビールをあおってくれたおかげで、売り上げは順調でした。





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by amori-siberiana | 2017-08-23 17:59 | 雑記 | Comments(0)

こんばんは、キタとミナミのあいだに位置する、本町よりもほんのちょっぴり雰囲気の違う町、北浜で猫のひたいのような店、画廊喫茶フレイムハウスを経営している阿守です。

画廊喫茶フレイムハウスはその名のとおり喫茶店です。


お昼は11:30から15:00まで営業しています、そして夜は18:00から深夜まで営業しています、お酒は頼まれれば昼間っからでも出します。


画廊だからといって以前、心斎橋であったような、童貞くさい大学生や理想が高いだけのフリーター相手に美人のお姉さんが出てきて絵画の押し売りをするようなことはしません。一般のお客さまを唐突に殴り合いへ参加させたりはしません。版画家の柿坂万作さんが彫刻刀でお客さまの命を削るようなこともしません。


お客さま、安心してお越しください。


アフリカのサファリツアーや知床よりは危険が少ない場所です。


南堀江ネイブの女から「阿守さんのブログ読んでたら、一体どんなとこなんかわからんから、もうちょっとわかりやすいの書いたら」と助言をいただきましたので、上記を書かせていただきました。


昨日は足を引きずりながら北浜のオフィスへ行き、野暮用を済ませてからお店へ向かいました。ランチタイムの常連さんである「めったに喋らない男」が来店しており、版画家の柿坂万作さんのヌーヴォー・キュイジーヌ(創作料理)のひとつ、「冷やしエスニック」を食べておられました。


そのあとお店に忘れ物を取りにお客さまが見えられ、お帰りを見届けてから、僕は無性にたこ焼きが食べたくなったので日本橋へ向かいました。日本橋にたこ焼きの「会津屋」さんができたおかげで、美味しんぼを読んで育った自分としてはありがたい限りです。


僕が香川県で住んでいるとき、たこ焼きというのはなんら魅力を刺激するものではありませんでした。ところが、大阪に出てきて当時の南森町にて探検がてらブラブラしていたとき、ズボンのポケットのなかの小銭で初めて大阪のたこ焼きを食べ、その違いに驚きました。


こりゃ、とんでもない美味しいものだ、こんなものが世の中にあるのかと大袈裟な表現ではなく腰が抜けそうになりました。当時の鮮烈な味の記憶は20年たった今でも保存されていて、僕はあの日からずっとたこ焼きが好きなままです。


会津屋のたこ焼きはサイズ感が見事。


遅めの昼食を終えて、お店に戻るといつもに比べて随分と早い時間にもかかわらず、ハイタッチの男がフレイムハウスでハイボールをチェイサー代わりにし、ウイスキーをストレートであおっていました。


ハイタッチの男は酔いが浅いと全然ハイタッチを求めてきません。ハイタッチの男がハイタッチを求めてこなければ、彼を誰かに紹介するとき一体何と紹介すればいいのかわからなくなります。そして彼の苗字はその風貌と違って、とてもありふれているのです。


「苗字を変えませんか?」


「ええっ!?阿守さん、ぼ、僕の苗字のことを言うてるんですか?」


「はい、もっと変わった苗字、なんというか、俗っぽい名前にしませんか。詐欺師っぽく」


「…例えば、どんなですか?」


「そうですね…、冷泉(れいぜい)さんとか」


「れいぜい…、ごめんなさい、どんな字、書くんですか」


「冷たいにイズミと書きます、ジークフリート・冷泉とか、どうですか」


「はぁ…、阿守さん、ガンダムですか」


「いえ、僕はガンダムを知りません」


掘り下げても何らの発展もしようもない会話だったので、お互いに苦笑してその場は終わり、せっかくハイタッチの男が来ているのだからと、ミスター上仲を呼ぶことにした。


ミスター上仲は起業家になるため昼夜問わずに、その仕込みに奔走する男。先日のアイリッシュのイベントの日など、お客の立場ながらお店を手伝ってくれたサーフィン好きの好青年だ。演奏中はずっと店の扉のところで立ってくれており、イングランドの近衛兵のように店を見守ってくれていた。なんとも心強かった。


ハイタッチの男はいろんな会社に出入りする「IT参謀」。決して表舞台には姿を見せぬ男であり、自分は企業の「黒子(くろこ)」であるという。彼の名刺の裏にも「黒子」と書かれていたが、僕は最初それを見たとき「ホクロ」と読んでしまった。


企業のホクロでは、まったく意味がわからない。


酸いも甘いも知り尽くし、顧客すら殴り飛ばしてきた北浜のジョゼフ・フーシェであるハイタッチの男に向けて、上仲君が考え、そしてこれから現実的なものにしていく起業のプランニングをプレゼンさせてみせたかったのだ。


結果は予想どおりでズタボロ。雑巾のようになった上仲君がハイタッチの男に向かって「今日は聞いていただき、ありがとうございました!」と謝意を述べる姿は、見ていて気持ちのいいものだった。この青年は放っておいてもどんどん成長していくだろう。


「また、殴り合いしよや!」とハイタッチの男は笑顔で言い、左足を引きずりながら店を後にする。


そういえば、ハイタッチの男も僕と同じで、先日、格闘家の男に左足を蹴られたのだった。


「本当に痛いものなんですか?格闘技の蹴りって…」と僕の素朴な疑問からスタートした、自分を被験者にしての実証実験であったが、イエス、本当に痛かった。


二度とバカな質問はしないぞと誓った僕でした。

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by amori-siberiana | 2017-08-22 17:36 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北浜にある猫のひたいのように小さな店。画廊喫茶フレイムハウスの阿守です。


最近の僕はシャレオツになり、ステッキなんかを持って北浜を徘徊しています。はい、「ぼ、ぼ、僕はバカだからおにぎりしか食べられないんだなぁ」ではなく、一昨日に店で行われたファイトクラブに参加した際、左大腿四頭筋を挫傷いたしました。でも、横断歩道を一回のターンで渡れないことなどを常日頃から経験することがないので、ご老人の気持ちがよくわかります。


いつしか自分も老人になるでしょう、老いとは考えようによっては惨めなものです。どれだけ慰めのことばを歴史上の偉人からとってきたとしても、それは根治療法にはならないのですから。僕は野心ある老人になりたいものです。3700才まで生きるつもりなので、まだまだ先になりますが…。


このブログをはじめて、一か月が過ぎました。おかげさまで、常に「ギャンブル」と「介護」のブログランキングでトップ5に入っているようになりましたが、一体どのような人たちが僕の駄文を読んでくださっているのか、なかなか興味深いものがあります。


どうぞ、引き続き、ひとりの男の人生における大博打をお楽しみください。


最近、日曜日のランチの時間にもお客さまが来てくださるようになり、とてもありがたいことです。昨日もいちげんさんの母娘、自己啓発セミナーに無理やり参加させられた不満顔の教師、見放題のとき星師匠と一緒に天井桟敷で観覧していた女がご来店してくださいました。


お客さまが帰られたあと、版画家で喫茶店の共同経営者である柿坂万作さんと経理をしました。


「あのー、これは阿守さんにいうとかないかんかな思うて、というかワシからのお願いがあるんですけど…」


「金ですね。要件を聞きましょう」


「ワシの自転車のカゴが壊れかけとるんで治したいんで、経費で出してくれんやろうか?」


「万作さんには給料をお渡ししていますけれど、自費で治さないのはどうしてなんですか」


「ワシ、店の仕入れ以外で自転車のカゴを使うないんで、これは店の経費で落としてええもんやと思うんです」


「あの、今回に限っては経費で出します。が、万作さんがどう思うかはご自由ですけれど。僕がこのお店に関わってからまだ一か月です。自転車のカゴはその一か月で極端に傷んだのではなく、ご自身の長年の使用による経年劣化が問題ではありませんか。とすれば、それまでに自転車を管理していた人が支払うべきだと僕は考えます」


「そういわれればそうですなぁ、ワシやなぁ」


店の経費というのは僕が神殿とか神棚にむかい、「万作より祈願があり候、天よ、我に経費を授けよ」と鐘を打ち鳴らして、かしこみかしこみ言ってれば天から降ってくるものだと思っているのだろうか。


なんとも「経費」というのは経済的に無責任な人にとって魔法の言葉に変わってしまうようだ。便利なものであるが、その便利さの根拠がどこにあるのか知らないと、ただの無節操になってしまうことを知っていただきたい。


そんなやりとりのあと、アイリッシュバンドのココペリーナのお二人が店にやって来られました。フィドルのさいとうさんと、ギターの山本さん。ホイッスルとバンジョーを弾く岩浅さんは私用が立て込んでおり本番前に合流するとのこと。


「いい空間ですね」とお二人から言っていただき、リハーサルが始まる。さっきまでの「経費」でクサクサしていた気持ちは驚くほどサッと消えた、抒情的な旋律と軽快なリズムを解き放ちたくて、フレイムハウスの窓を開け放った。経費の魔力よりも、音の魔力のほうが数段上なのだと知り、僕は嬉しくなった。


最近はお店でもココペリーナの音楽をよく流していて、耳になじんでいた。今、目の前でこの音楽を録音した人たち本人が演奏しているというのは、なんと奇跡的な高揚感をもたらすものであろうか。


本番前、無事に岩浅さんも来店され、沢山のお客さまにもきていただき、イベント自体も満員御礼の大盛況であった。万作さんもよく働いてくれた、お客さまからもいろいろな面において気遣いをいただけて、総帥は幸せであった。


ココペリーナの音楽は人生のようであった。


岩がゴロゴロしたところの雪解けの水、最初は小さい川。その小さな川に笹で作った舟を浮かべる、それがいくつもの支流をたどって、浮いては沈み、揺れてはひっくり返り。最後の最後には笹舟は海にでる。笹はいつしか塩によって傷み、海をあてどもなく漂う。


ただ、笹舟を運んだ水だけは、また雲となり山に戻って、川を流れ、海に出る。


アイリッシュ音楽特有のメロディーの反復、リズムチェンジ、曲の紡ぎ方、そして不器用なまでのユニゾン、その大胆で無骨な手法がより繊細さをひきたて、このメロディーを残そうとした先人の意志の強さを感じさせる。死ぬ間際の最期のひとこと。親から子へ最期にたった一言だけ残せるとしたら、どうするだろう。


そういったチャンスを言葉での表現に頼らず、一節のメロディーに込める人たちもいたのではないだろうか。


そんなことを考えながら、ココペリーナの演奏を聴いていた。


《一杯の紅茶のためなら、世界が滅びてもかまわない》


ドストエフスキーの書いたことばである。反体制派だということでシベリアに流刑されることになった彼、自分はもしかすると生きては戻れないかも知れない。そういった絶望的な不安のなか、流刑地へ行く途上、どこかの宿の主人の厚意によって飲むことができた温かい紅茶。


ドストエフスキーは紅茶を味わうことで、今までになかったほどの「生の実感」を得ることになった。


なによりの差し入れであっただろう。


ココペリーナの音楽は画廊喫茶フレイムハウスにとっても、同じであったことは確かだ。

ロシアの紅茶は小さいスプーンにジャムやはちみつなどを乗せ、それを舐めながら紅茶を飲むのが伝統だということを具体的に知ったのは、僕が大人になってからだ。


ココペリーナの皆さん、お疲れさまでした。また、近日中に演奏をお願いします。


ご来場のお客さま、ありがとうございました。誰か携帯電話(折りたたみ式のWHITE)を忘れていらっしゃいます。


演奏が終わったあと、北陸から亡命してきた男が僕にこういう。


「阿守さん、北浜自治州の件で自分にアイデアがあるのだ」と。


献策、ありがたく頂戴いたしました。


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by amori-siberiana | 2017-08-21 12:01 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北浜にある猫のひたいのように小さな店。画廊喫茶フレイムハウスの阿守です。


昨夜のイベント【英会話で世界支援を OSAKA KITAHAMA ESL Meet Up!】にお越しくださいました皆さま、ご来店ありがとうございました。


シラフで日本人同士が英語で話すとなると、僕なんかは気恥ずかしくなってしまうものですが、ほんの少しのアルコールがあることで、そのシャイな気持ちもなくなり、なんとか自己表現を英語でしてやろうと思えたものです。


オーガナイザーの上仲君が用意してくれた、自己紹介のフォーマット文章やその日の会話の議題などにそって、スムーズにイベントを進行してくれるので、あっという間の90分でした。


僕もいつも時間が考えていることを、英語に置き換えてしゃべってみると、こんな稚拙で平坦な表現でしか自分のことを相手に伝えられないのかと、とんでもない不自由を覚えました。まるで手足を縛られて、日常生活をさせられているような窮屈さを感じました。


英語力を鍛えれば、この窮屈さはどんどんなくなっていくのだろうと思えば、自然とこれから英語を勉強していかなければと考えています。自分自身を語ることばを持っていないと、これほどまでに自分の存在があやふやなものになってしまうのかと、驚きもしました。僕たちは無意識のうちに、相手が発していることばの端々や表現のクセから、その人のイメージを作っているのでしょう。


会も終盤に差し掛かったころ、フレイムハウスの扉が開いて、ハイタッチの男が黒の作務衣の装いで入ってくる。ギャラリーの女にハイタッチを求めるが、「どうして私があなたとハイタッチしなくちゃいけないの、嫌です」と拒否されて、相当凹む。これは愉快な光景だった。


そしてその後、イベントをしてることなんてまったく知らない、会計士の男もいちげんさんとして店にやってくる。僕が英語での自己紹介のフォーマットを会計士の男に渡して、自己紹介を促すと、「なんで、英語…?」という絶妙な顔をして英語での自己紹介をする。この対応力、さすが。


イベントの時間を過ぎても談笑は止まらないが、神戸の女がバスの時間があるのでまず帰り、アイルランドへ留学する女、北陸から亡命してきた男、ギャラリーの女も夜も更けてきたことなので帰宅の途につく。


残ったのは、ハイタッチの男と会計士の男、そして上仲君と僕、版画家の柿坂万作さんだけとなった。


ハイタッチの男は周囲を見回して、上仲君に穏やかな口調でこういう。


「上仲君、僕をどついてください」


また、はじまった。ここ最近、男同士のくんずほぐれつばかりを見させられている原因のすべては彼である。


「ええっ?殴れませんよ、そんなことしていいんですか?まず僕は人を殴ったことがないです」と躊躇する上仲君の発言は社会人として当然の対応だ。


会計士の男が、それなら自分が殴ってみたいという。


どうぞとハイタッチの男が腹を差し出し、会計士の男の強烈なパンチが決まる。ああ、この会計士は格闘技をしてるなというのが僕の目でもわかる。


すると、店の階段を誰かが上ってくる音がする。


入ってきたのは、これまたいちげんさんの北浜でIT会社を経営する男だった。また、とんでもないときに来たもんだな僕は思う。万作さんは彼にむかって「別に殴りあいに参加せなあかんわけやないですから」と遠慮がちに彼へ伝える。


彼は目の前で殴り合いを見ながら、ハイボールを飲んでいる。いつしか殴り合いには上仲君も加わっている始末だ。


「すいません、いかせていただきます!」、「来い!」、「うおおおー!」、「次は俺だな!」、「押忍っ!」、「うごぉ」…。という言葉が繰り返される、魂のルフランだ。


こんな茶番を見させられて、この経営者の男は何を思うのだろうか…。


突然、「すいません…」と経営者の男がいう。


みんなの注目が男に注がれる、次に何のことばを発するのか静聴の面持ち。


「僕の腹も殴ってくれませんか」と経営者の男が続けていう。


…なんと!ブルータス、お前もか!


ハイタッチの男が「ようこそ、ファイトクラブへ」という笑顔で経営者の男の腹を殴る。そのあとは攻守交替となり、次にハイタッチの男の腹を経営者の男が殴る。


経営者の男の重たそうなパンチを受けたハイタッチの男がこういう。


「あなた、鍛えてますね」


経営者の男は「はい、柔道で近畿3位でした。今もコナミスポーツで鍛えています」と答える、店内は「どうりで…」という反応をする。


万作さんがハッとしたような顔で経営者の男をみて口を開く。


「ワシ、このかた、何回かスポーツジムのシャワー室で見かけたことありますわ」


万作さんは家に風呂がないので、コナミスポーツジムの会員となり、そこでシャワーを浴びているのだ。版画家と経営者の男は互いが何時ころにジムを利用しているのかなど、意見交換していた、どうやら二人が重複する時間帯があるようだ。


「ああ~、やっぱりワシの思っとった人や、体毛濃いですよね」


「いや、濃くありませんよ」


万作、なんの話しなのだ、聞いているほうが気色悪くなってくる。


エリック・サティの「ジムノペディ」は古代ギリシアの祭りにて、青年がたわむれる模様が描かれた壺からインスピレーションを得たそうだ。


現代のキタハマにて、中年がたわむれる模様をみさせられたら、サティはどんな曲を書くであろうか。


気がつけば、僕以外、全員が腕相撲を延々と繰り返していた。そして聴こえてくる「近大節(※近畿大学の体育会系の歌らしい)」、地球はしっかり自転しており、北浜の夜は容赦なく暮れていく。


そうそう、僕が目指していたカフェはこんなカフェだったのだ。な、わけがないだろうが!


今日の画廊喫茶フレイムハウスはアイルランド祭りじゃ!


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by amori-siberiana | 2017-08-20 11:58 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北浜にある猫のひたいのような小さな店。画廊喫茶フレイムハウスの阿守です。


今日の画廊喫茶フレイムハウスは18時30分から20時00分まで、公用語が英語(English)になりますので、ご興味があられるかたは怖いものみたさついでにお越しください。


そして明日はアイリッシュバンド「Cocopeliena(ココペリーナ)」さんの演奏が19時頃からあります。こちらも当日、若干の席がありますのでフラリと遊びに来てください。入場は無料です。


さて、昨日は北浜のオフィスへコーヒーを飲みに立ち寄ったあと、その足でオフィスにいた同僚をつれてエイリアンさんのギャラリーに再訪いたしました。何かアイデアがあったわけではなく、魅力的なギャラリースペースを自分の身体に染み込ませておきたかったというわけです。


エイリアンさんと同僚と僕の三人で昼間からビールをあおりながら、具体的なプランや抽象的なプラン、北浜戦略、世界戦略、どうしようもないプランなどいろいろなことを談笑する時間、僕にとって愉快で実入りの多い時間でした。


そのまま一旦、千鳥足でオフィスに戻り、隣の席の男から「阿守さん、もしかしてお酒を飲みましたか?」といわれるので、無論イエスだと答えるとどうやら日中のオフィスには場違いなアルコール臭が漂ってて、非常に目立つとのこと。


なるほど…。では、さようならですと言い残して僕はそのまま北浜の青山ビルにある別のギャラリー「遊気Q」へ向かいました。時間にして17時頃、画廊喫茶フレイムハウスがオープンするのは18時~19時のあいだなので、まだ早くても1時間ほど暇があるのです。


さっさと店に行って掃除でもしてるがいいと思われるでしょうが、版画家の柿坂万作さんがフレイムハウスのシャッターを開けるまでは、合鍵を持っていない僕は入れないという顛末なので、知り合いのギャラリーで時間をつぶそうというハラ。


ギャラリー「遊気Q」に入ってみるとアジアのエキゾチックな服や雑貨、異国の匂いを封印したままのアクセサリーがところ狭しと飾られており、ギャラリーオーナーの女と托鉢僧のような女、そしてフェルト作家の女が談笑をしていました。暇を持て余している僕も談笑に加えてもらい、麦茶を飲みながら気になった服を試着しては脱ぎ、試着しては脱ぎを繰り返し遊ばせていただきました。


◆https://www.keimi.jp/yukikyu (ギャラリー遊気Qのホームページ)


現在の展示販売は8月16日~26日まで開催中です。是非、足を運んでみてください。


随分と居心地のよい空間だったので予想以上に長居をしてしまい、少し遅めにフレイムハウスに到着。万作さんは奥のテーブルで一心不乱に工作をしていました。


「ああ、阿守さんやったんですか、よかった。これの存在を知られたらワシ、国家権力によって殺されますよってね」と。


そのうち、偶然「遊気Q」で出くわした青いカーデガンの女、そして20年近くフレイムハウスに通い続けてくださるガルパンの男、万作祭のときに椅子を貸してくださったグラフィック・デザイナーの男が来店してきて、落ち着いた雰囲気の店内にてみんなで酒を飲んでいました。


僕がみんなで共有しているウイスキーボトル(タッキーが支払いをした小野さんの所有物)からショットグラスに酒を注ぎ込むと、ボトルが空になる。


さて、どうしようか。取り急ぎタッキーに電話をかけてみる。


「もしもし、阿守ですけれど、毎晩お疲れ様です。タッキーが主催する27日のモノポリー大会に参加したいという人が沢山いるけれど、タッキーの予定は大丈夫ですか?」


「はい!今のところ大丈夫です!いや、めっちゃ忙しくて今日も徹夜になるかもという勢いなんです」とはタッキーの返答。


「そうかそうか、いつもご苦労さんです。それで…、タッキーがお金を出した小野さんのボトルが空いてしまって、みんな飲むものが無くなって困ってるんだよ」


「…ごめんなさい、ちょっと意味がわからないです。つまり僕が自分で飲みもしないボトルをおろすということですか?」


「簡単にいえばそういうことになるね」


「あなた、絶対、最初のモノポリーの話題とかどうでもよかったでしょ」


「いやいや、あくまでモノポリーが用件の主題であって、ボトルの件は副産物のようなものだよ。これ以上、話しあってもラチが明かないから、もうボトルをおろしとくよ」


「ちょっと待ってください!あなたね、商売の根本原理からかけ離れてますよ。消費者が自己消費しないものに対して強制的に支払いを迫られるなんて、誰がどう考えてもおかしいじゃないか!」


「万作さん、タッキーからOKが出たのでボトルを下ろしてください!交渉成立です」


「畜生!このクソ野郎!」


この一連のやりとりによってフレイムハウスの店内は爆笑の渦に包まれた。念願の新しいボトルから注がれた酒は、バッカスの寵愛を受けたであろう甘美な香りを漂わせていた。これが勝利の美酒の味か。


少しすると、ドンドンドン…。


万作さんが「おっ、誰か来たな」と口を開く。


ガゴッ。建付けの悪い半締まりのガラス戸が開く。今、階段を上ってきたであろう外の男が恐る恐る店内を見まわして、こう言う。


「●●さん、いらっしゃいますか?」


●●というのは日本でそこいら中にある苗字であるが、この店の場合においてはそれは「ハイタッチの男」を指す。だが、一応確認のために僕が来客者に聞いてみる。


「それは全身黒ずくめの●●さんのことですか?」


「ああ、そのかたのことです。ここで合流するように連絡があったんです」とスーツケースを抱えた男は返答する。


「まだ来られてないので、奥の席で待たれたらどうですか?」と僕は促すが、彼は一旦店の外にでてハイタッチの男に連絡をする。どうやら、もう近くまで来ているとのこと。


5分後…。


ハイタッチの男、スーツケースの男、薬局の男、元プロサッカー選手の男が店にやってくる。それはそれはとんでもないテンションで入ってきては、壮絶な酒盛りがはじまる。


薬局の男が店にギターをあるのを見て、自分が弾くという。そしてギターを持ち、一般的なコードを弾くが、思っているような音が出ない。「あれ?チューニングが随分とズレてますね。俺、チューニングを合わします」と薬局の男がいう。


ハイタッチの男がそれを制する。


「お前、勝手に阿守さんのギターのチューニングを変えるな。これは阿守さん独自のチューニングになっているのだ」


「ええっ!そうなんっすか!?マスター、俺と一緒にセッションしてください」


マスターというのは多分、僕のことであろう。清水健太郎の「失恋レストラン」の歌詞を思い出して、少し笑えてくる。


♪~ねえ、マスター作ってやってよ、涙忘れるカクテル~


そのままギターのセッションへと流れ込む、これがなかなか面白かった。


「このマスター、だいぶヤバイっす、だいぶヤバイっす、これヤバイ感じの人っす」と薬局の男は連呼する。


「当然だ、お前のような奴が勝負できるような人ではないのだ」とハイタッチの男は薬局の男を容赦なくビンタする。なぜ、ビンタ?一体、何なのだこの男たちは?と腹がよじれる。


「痛っ!でも、俺、●●さんに殴られたっす!これ皆に自慢できるっす!ここまで飲みに付き合ってよかったっす!」


その言葉をきいてハイタッチの男は薬局の男に優しくこういう。


「よし、次は俺の腹を殴れ」


薬局の男はハイタッチの男の腹を殴る、次に元サッカー選手の男がハイタッチの男に促されて、黒ずくめの腹を殴る。薬局の男はそのままステージの上に半分、土下座の格好で酔いつぶれてしまう。


元サッカー選手の男は「俺も体育会系です、先輩を殴ったままでは気が済みません!だから次は俺の腹を殴ってください。そうしないと気が気じゃないんです」と妙な男気を見せる。さすがはサッカー選手だけあり、鍛え抜かれた筋肉は美しいものであった。


ハイタッチの男が遠慮なくサッカーの男の腹を殴る。ハイタッチの男が次は俺を殴れとサッカーの男にいう。延々と繰り返される酔っ払いの茶番劇にシラフで付き合うことはできないが、何度も何度も繰り返されるミニマリスムの寸劇に、バカバカしさと愚かしさを超えた、何かがあるような気がする。ハイタッチの毒が僕にも回ってきたのだろうか。


スーツケースの男はソファに腰掛け、その光景を微笑ましそうに見ながら静かに酒を飲む。家は箕面にあるらしいが、すでに帰る手段はタクシーだけとなっている時間。


常連の不思議な女が遅めにやってきた。その異様な光景をものともせず、普段のままに白ワインを飲む姿には女王クレオパトラの風格があった。


すると遅くにも関わらず、いちげんのジュエリーデザイナーの三人組も店にやってくる。


ステージには酔い潰れて万作さんの創作オブジェのようになった薬局の男。来客者など気にもせず延々と殴り合いをして笑いあう二人。


いちげんさんが、この光景をみてここの店をどう思うのかと、僕の好奇心はそそられて三人組の反応を待つ。


ジュエリーデザイナーの一人が連れに向かって口を開く。


「ね!やっぱり私の鼻は利くのよ、こんな面白いお店があったなんてね!間違いないと思ったのよ!」と。


おいおい、一体ここに迷い込んでくる人たちは、どういう感覚をした人たちなのだろうかと北浜の奥深さを改めて勉強させていただきました。まるで百鬼夜行である。


その夜、僕とハイタッチの男は腕を組んで途中まで一緒に帰った。


男同士で腕を組みながら、大切なものは何なのか、明日はどっちだと探して、彷徨っているのだ。


僕たちの後ろからサッカー選手の男と薬局の男もやってくる。彼らの会話が聞こえる。


「前を歩く二人は、いろんな意味でバケモンですよ」と。


とうとう僕も百鬼夜行の仲間入りと見なされたようである。


奈良県の天川村には特異な色をしたガーネットが発掘できる場所がある、僕はその場所を知っているが、まだ誰にも教えていないのである。

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by amori-siberiana | 2017-08-19 13:49 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北浜にある猫のひたいのように小さな店、画廊喫茶フレイムハウスの阿守です。朝遅くに「き多や」さんへ表敬訪問に行きまして、バゲットを抱えて北浜のオフィスへ出社し、今しがたパンを版画家の柿坂万作さんのところへ届けてきました。黒猫のジジも一緒です。


さて、昨日の夜のこと。


万作さんはいつものように工作に明け暮れて、テーブルの下は削られた木屑が散乱。ガルパンの男はスマホに目を落としたまま、ビールをあおり、僕は僕でギターの練習をしていました。お店というよりは、毎年のようにインターハイ出場など夢のまた夢という状態のなんらかのクラブの部室。


今日はこのまま来客もなかろうと思っていたが、そうではなかった。


まず、温泉マニアの男がやってくる。そしてその後、久しぶりに顔を出したのが、ギャラリー経営者で作家のエイリアンである。このあたりの人は彼女に敬意を表して「エイリアンさん」と敬称をつけて呼ぶ。その風貌は溢れる才気が抑えられずに、とても異質なオーラを放っており、地獄を見学して爆笑しながら帰ってきたようなふてぶてしさがある。


エイリアンさんが原案を出したドキュメンタリー映画は各方面で絶賛され、今でも日本のどこかを巡回上映している。


そして、順序が逆になっているかも知れないがギタレレの女が来店。ギタレレの女は「阿守さん、借金返済、おめでとうございます」との祝辞とともにミニマムサイズの給料袋と天の川ようかんを差し入れしてくれた。


さらに斥候の男もやってきて、エイリアンさんがボルネオのジャングル奥地へ行ったときの話しをみんなで聞くことになる。


「ジャングルの夜はやかましいのよ!ガッタンガッタン、キキキキー!そりゃあここらの工事現場のような音がするのよ」


ガルパンの男がいう「それって、金の採掘とかしてる作業音じゃないんですか?」


万作さんが口を挟む、「いや、ボルネオやったらルビーと違う?」


エイリアンはその全てをスルーして話しを続ける。


「それでね、ボルネオのジャングルの奥地にどんどんどんどん進んでいくでしょう!そこになにがあると思う?なんと、リーガロイヤルホテルがあるのよ!」


一同から「おお…」という声があがる。中之島にあるリーガロイヤルが商魂たくましく、ボルネオの奥地にまで触手を伸ばしていたことに呆れるような感嘆の声。


僕が口をひらく、「野獣なんかに遭遇はしなかったのですか?」


エイリアン、「ジャングルでは遭遇せんかったな、ジャングルに野獣なんておらんの違う?」


いやいや、あなたが遭遇しなかっただけで、絶対いるでしょうという反応を皆がする。


エイリアンはその反応を無視して続ける、「でも、そういえば夜になってジャングルを歩いたら、そこいら中で生き物の目が光るのよ。そりゃ光るってレベルじゃなくて、まるで都会のネオンのよう。町があるんじゃないかって光りなんだから!」


ボルネオの話しの途中で僕は自身のたばことミネラルウォーターが切れたのでコンビニに買いに出る。数分後、お店に戻ってくると話しはいつの間にか「豊田商事会長の刺殺事件」になっていた。ボルネオから豊田商事へと、どのような経路を辿ったのか僕は知る由もない。


全員を巻き込んでの話しは留まるところを知らない、夜も更けて、ギタレレの女が名残惜しそうに店をあとにする。エイリアンさんの話しは止まらない。


キッカケは北浜にできた射撃バーだった。


エイリアンがいう、「あそこの射撃バーで、何かの商品を撃ち落としたら100万円くれるっていうイベントをすればいいのに、そしたら行列よ!行列!」


温泉マニアの男がいう、「それって、法律に触れて取り締まりの対象になるんじゃないですか?」


僕がアイデアを挟む、「なら、発想をそのままに応用を考えましょう。パチンコ屋のように三点方式を用いるのはどうでしょうか」


一同がなるほどと、うなずく。


僕は話しを続ける。


「まず、射撃バーで撃ち落とした景品をもって、隣の喫茶店リヴォリで違うものと物々交換します。リヴォリで受けとった何らかをサロン喫茶フレイムハウスに持ち込んで、お金で買い取ってもらいます」


ガルパンの男がいう、「最終的な引換所には、古物商の認可が必要になるかも知れん」


エイリアンが僕のアイデアを推し進める、「サロン喫茶フレイムハウスで何らかのものをもらって、その足で画廊喫茶フレイムハウスにきて、万作さんの絵と交換する。絵なんて値段があってないようなもんだから、最終的にその絵を100万円で転売するという口実で100万円を受け取れるんやない?」


僕がいう、「万作さん、収入印紙が必要になりますね」


一同が爆笑となる。


それで最終的に交換した万作さんの絵を100万円で誰が引き取るのかということに関しては、誰も言及せずに話しはそこで終わった。…かのように思えた。


笑いも落ち着いたあと、ひと呼吸おいてエイリアンさんが口を開く。


「ヒリヒリと焼けつくような町にしたいな、歴史もある、暇を持て余した金持ちもおる、見どころも沢山ある。なのに北浜に足りんもんはなんやの」


僕が即答する、「英気を持て余した、金のない若者」


エイリアンは僕を指さし、口角を上げながら「正解!じゃあ、どうする」という。


僕は答える、「あらゆる事象において、その価値をつけるのは言葉です。文化や歴史や人生を記録するのも言葉であれば、有象無象の美醜云々に先駆けて必要なのがそれらについて語られる言葉です。言葉を失えば、人間は一秒前の自己の存在証明すら誰かに伝達することができません。なので、これからの若者や今の世代に北浜の文化を作らせるため、まずは言葉を編むにふさわしい土壌を提供するのが上策です」


エイリアンは爆笑しながら、「その先は!」という。


僕は「はい、北浜は大阪市から独立して、文芸的な立ち位置では自治州としての確固たる地位を築きます。大阪という地名を知らない外国の人たちでも、キタハマという地名は知っているという状況を将来的に作るのです」と答える。僕は自己のなかに長年あたためていたわけでもない、北浜自治州にむけての構想を一同に伝える。


エイリアンが「よし、資金提供を募ろう、この界隈でA社とB社が大きな資本を持っとるけど、そのどちらを調略する?」


僕が答える「A社とB社のどちらかを選ばないといけないのですか?」


ガルパンの男と斥候の男が「同業者やねん、どっちもいうんはなかなか難しいんやないかな」


僕はそれを聞いて答える「であるなら…、その同業者を結ばせるのです。薩長同盟のように似たもの同士は反発もしますが、結託すれば強い。船中八策については僕に任せていただければ結構です」


エイリアンはいう、「あんたビジョンが見えとるな、見えとるな、おもしろいな、それ、やろか!私のギャラリーをあんたにあげるわ!人脈もなんでも使うたらええわ!」


ええっ!?と一堂が顔を見合わせる。


エイリアンはその仰天を無視して続ける、「こんな面白い話しをな、飲みの席だけのことにしたらアカン、私は作家一本に転職いたします!」と宣言をした。


まず、その場にいる全員で北浜自治州の範囲を決める。


《東》:東横堀川
《西》:御堂筋
《南》:本町筋 ※タッキーの大好きなHOOTERSは残念ながら除外された
《北》:土佐堀


北と東を攻められたとしても、橋を切り落とすことで時間は稼げます。兵力は西の御堂筋側に集中させておきます、南が手薄になりますが、これは段階的に船場センタービルを要塞化することにより、難攻不落の防衛を実現することが可能です。と僕が発言する。


ガルパンの男が「第二次、大坂夏の陣やな」と吹き出しながら、相槌をうつ。


自治州の範囲内に大阪証券取引所がありますので、そこがこちら側にひっくり返るタイミングで独立の宣言日とすることにしましょうと、僕が発言する。


「初代の自治領主は船場吉兆の女将にお願いしませんか?」


「ダメだ、あの女将は今、北新地の住人となった」


エイリアンが「食糧はどうする?」と質問をする。


温泉マニアの男が答える「自分は八尾の人間なので、このパルチザンには加われませんが、農協にツテがあるので食糧の供給はいたしましょう。八尾の枝豆は絶品です」


「兵站は戦略において最重要課題ですので、ありがたいです!」とは、僕の謝辞。


僕も続ける「まず、北浜に住む人たちの意識において「自主独立の気運」を潜在的に盛り立てていくことが重要です。そのためにはいつまでも谷崎潤一郎にしがみつくのではなく、あらたな北浜文学が必要なのです。さも、元々あったかのような北浜気質を作るのです」


エイリアンがいう、「北浜についてやったら、私がこれまでに何冊も書いとる」


「それは例えばどういう話しなのですか?」と訊ねる。


「北浜のタワーマンション同士の住人がな、のぞきあいする話しや。ありとあらゆるところで、こっちとあっちのタワーマンションの住人同士がのぞきあいする話しや」


エイリアンの説明をきいて笑いが止まらなくなった。


「僕は香川県人なんですが、自分の知らないあいだに『うどん県』と言われ続けて、いつの間にか自分は『うどん県』の出身だと無意識に思い込むようになっていました。言葉というのは恐ろしいものです、なかったことをあったことのように記憶や意識を改竄するのですから」


僕がそう説明すると、別府生まれの斥候の男も同調する。


「俺も他人から温泉、温泉といわれて、そのうち自分が温泉に詳しいんじゃないかという気になっとるわ」と。


エイリアンが僕に問う、「自治州の東側、東横堀川を歩いたことがあるか?」


僕は「まだ、歩かない」と答える。


「東横堀川の河川敷には、ここに勝手に植物を植えるなと看板に書いてあるんやけれど、みんなが色んな植物を勝手に植えるから、そりゃあ多彩な植物が野生化して育っとる」


ガルパンの男が合いの手をいれる、「あれ、看板がなかったら、誰も植えんかったん違うやろか」


「僕はその話しを聞いて、ますます、この地が自主独立の気風を作るに適した地だと再認識しましたね」と僕が答える。


エイリアンが最後に「次に会うときは各人が何らかの具体的なプランを持ってくるように」と号令して、北浜の急造パルチザンは解散となった。


深夜の解散と時を同じくして、常連の不思議な女がやってきた。


エイリアンは僕に指示する、「彼女にもあなたのプランを全て説明しておくように」


常連の不思議な女は、私を巻き込まないでくれと苦笑する。


エイリアンも去り、落ち着きを取り戻した店内で不思議な女は、ボソリとこういう。


「独自の通貨を作りましょう」


なるほど、妙案だと僕も賛同する「やっぱり、通貨の単位は『サク(作)』ですよね」


1万作、2万作、3万作、10万作、100万作…。


そういえば、福沢諭吉の立身出世は、この地から始まったのだった。自分の顔が最重要紙幣として扱われていることを彼が知れば、どう思ったであろうか。


僕たちには想像しかできない。


アラフォーおっさんは、これよりエイリアンの住処である異世界へ行って参ります。


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by amori-siberiana | 2017-08-17 14:34 | 雑記 | Comments(0)


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