カテゴリ:雑記( 128 )

こんにちは、北浜にある猫のひたいのように小さな店。画廊喫茶フレイムハウス(近日:クント・コロマンサに改名)にて、天下無双の痴れ者を気どるヒゲの男こと、阿守のブログです。


さて、昨日のこと。


ヒゲの男は昼に店へいく。画廊喫茶フレイムハウスの日曜日のお昼は、店を開けていたり、閉めていたりと気分次第なので、前もって版画家の柿坂万作に「お昼に行くから、店のシャッターを開けておくように」と、ヒゲの男はメールをしておいた。店に到着すると、シャッターは開いており、星師匠が先にきて店内の掃除をしていた。


この日曜と月曜のイベントは一週間前の予約の時点で満席となっているため、普段、店内にあるテーブルを上の階にあげたり、仕入れをしたり、おでんとおにぎりを仕込んだりと忙しいのである。ヒゲの男は前日の日次収支をまとめたあと、日本橋にクーラーボックスを買いに行き、そのあと酒屋にたちより飲み物を仕入れる。


ヒゲの男が買い出しから戻ってくると、電気工事士の山本が到着しており、自身の楽器のセッティングを終えて、のんびりと水を飲みながらたたずんでいる。しばらくして、宗教画のモデルの女がやってくる。宗教画のモデルの女はやってきた早々にハイボールを飲みながら、星師匠と一緒に開店にむけて備える。


「ワシ、これやったら17時半くらいまで自由にしとってもええんですね」と、テーブルの片付けやおでんの仕込みを終えた万作はいう。そして、万作は唐突に「空がみたい」といいだして、店を抜けて散歩にでかける。まるで、高村光太郎の智恵子抄である。


あと、バイオリンを弾く王子が東のコロシアムから西の猫のひたいにやってくるのを待つばかりである。王子からはヒゲのところへ逐次、どのような状況なのかの連絡がメールにて送られてくる。


「忘れ物をしている、これこれこういう機材はあるか」

「演奏終了、これより空港へ向かう」

「搭乗口に到着、これより離陸する」

「これより着陸する、タクシーに乗る」


万作が空を見る散歩より帰ってきて、しばらくすると宣言どおり18時30分ジャストに王子がキャリーバッグを抱えて店に滑り込んでくる、これでスタンバイは整った。先ほどまで1万人から2万人ほどの前で演奏していた男が、猫のひたいに集まる25人のために空を飛んで、呆れかえるほどタクシー代を使ってやって来るという素敵さは、王子が人情味豊かな生粋の江戸っ子であることをヒゲの男に改めて感じさせるものであった。


店はいつもより1時間遅れで、その機能を開始する。イベントは大盛況となる。万作は厨房にて氷をガツガツ割り、返却されてきたグラスを洗う。星師匠とすでにベロベロの宗教画のモデルの女は食べ物や飲み物を来場者に供給していく。王子はバイオリンを弾き、電気工事士はベースを弾き、ヒゲの男は一心不乱にギターを弾く。


いい曲をみんなで作っていて良かったと、ヒゲの男はギターを弾きながら思うのであった。ヒゲの男はことあるごとに、自身が音楽家をしていたことで助けられる。猫のひたいのような小さな場所で開かれる、この閉ざされたイベントは演奏者も聴衆も総じて訳のわからない者はおらず、秘密結社の様相を呈している。


どれだけ遠くに離れていようと、どれだけ互いの環境が変わろうと、共通項であるシベリアでの抑留経験をもつものは、これ、皆が戦友のようなものである。ここにいる30人くらいは、そうである。


いや、正確にいうと28人くらいのシベリア抑留経験者と、1人のハーフ顔の酔っぱらい、そして1人の版画家というものであろうか。


無事に演奏が終わる。アンコールも終わり、全てを出し尽くした。するといちげんさんのオーストラリア人の姉妹がやってくる。どうやら音につられてやってきたそうなのだが、演奏は終わったばかりである。ヒゲの男はその日、一日分の精根は使い果たしているので、勘弁してくれと思いながら、チラリといちげんさんの方を見やる。


それが女性だとわかった瞬間に元気が復活してきたヒゲの男は「コンサートは今、始まったばかりなのだ」と適当なことをいい、彼女たちを店へと招き入れ、もう1曲演奏することになる。


女性に音楽を演奏してくれといわれ、断るやつはマヌケだ。


王子の帰還、それはこの場に集った者たちにとって、懐かしくもあり喜ばしくもあり、数か月前まではとても考えられなかったであろう、嬉しいハプニングのひとつである。我々はハプニングを心底、待ち望み期待しているのだから。


たこ焼きが食べたい、たこ焼きが食べたいと終演後にしつこくわめき散らす、王子に乾杯。


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by amori-siberiana | 2017-10-09 12:50 | 雑記 | Comments(2)

こんにちは、北浜にて猫のひたいのように小さな店。画廊喫茶フレイムハウス(近日:クント・コロマンサに改名)を経営する、ヒゲの男、阿守のブログです。


さて、昨日のこと。


秋の大祭、万作祭の第三夜であり、女将軍三部作(トリロジー)の最終日の開催であった。ヒゲの男は北浜のオフィスで執務をしたあと、店へ行く。店に行くと、版画家の柿坂万作とボランティアの星師匠が掃除をしている。ヒゲの男は早速、ギターの練習にとりかかる。


最終日はアハハの女が歌い狂う日である。吟遊詩人の女から渡されたタスキは、ガハハの女を経由して、最終目的地のアハハの女へ禅譲されるという具合だ。その大役を果たすためにアハハの女もキャリーバックを引きずりながら、ギターを抱えて画廊喫茶フレイムハウスへやってくる。さすがは魔女である、全身、黒ずくめの格好なのだ。


万作が濃い目のコーヒー、そしてカステラを一同に提供する。長方形で表面に凹凸のあるテーブルを囲み、一息を入れてからリハーサルを開始する。リハーサルといっても、舞台監督や音響屋や照明屋がいてというものではない、ただ、機材の電源を「OFF」から「ON」にするだけなのだ。


リハーサルが終わり、開店する。ファゴット弾きの男が最初にやってくる、西郷隆盛の肖像画のような愛嬌のある目をした男である。ただし、あれは西郷の遺族がいうには、本人とは似ても似つかないのだと苦言をもらしていることを、ヒゲの男は沖永良部島の男から聞いたことがある。


アハハの女との段取りでは、イベント全体を二部構成にして、最初の一部はアハハの女だけで大いに歌ってもらう。二部からはヒゲの男が登場して、二人で演奏するというものであった。ところが魔女は気まぐれなので、第一部の最初からヒゲの男に「ステージに来い」という。自分は後半戦からだとタカをくくって、ウイスキーをぐいぐい飲んでいたヒゲの男は意表を突かれて、酔っぱらったままステージにあがる。


魔女アハハに指名を受けて、回避できる術など持っているものなど、現代にはいないであろう。アハハの女は自身が弾ける限りの曲を弾き、そして唐突におかしなことを皆に向かって問いだす。


「レストランでウミガメのスープを頼んだ男が、そのあとに自殺をした、それはどうしてか?」


なんだ、急に魔女仕切りの裁判か何かが始まったのかと、一同はどよめき悩みだす。来場していたアラタメ堂は魔女の問うていることを知っているようで、幾つかのヒントを無知蒙昧なる来場者へ提供する。魔女と幼なじみであるというゲームセンス・ゼロの女も、この問いの答えについて知っていると豪語するが、なんだか見当違いなことばかりを発言して、稀にみるセンスの無さを露呈する。


ヒゲの男は自身の隣に座っていた、不動産広告デザイナーの男に「なにか考えを発言してみろ」と肩を叩いて促す。デザイナーの男は落ち着き払った声で、自己の思慮するところをことばにして発する。


「…自殺はアカンわ」


さすがはボンクラの二代目経営者のデザイナーである。素晴らしき発言、恐れ入った。店内の爆笑を誘うには、平仮名にしてたったの8文字のことばで良かったのだ。ヒゲの男は「ほれ、みたことか」と苦笑する。驚くことに参加しているのか、不参加なのかわからない微妙なラインにいた万作が答えを当てる。


魔女から質問の答えを訊いたあとにヒゲの男が語りだす。


「事実、そういう事例は歴史のなかに枚挙の暇がない。ひかりごけ事件とかウルグアイ空軍機がアンデスで遭難した事件などが有名だよ」と、物騒なことを言いだすが、酒の回っている一同は面倒くさいことを聞きたくないので、ヒゲの男は早く帰れのような雰囲気となる。


そこから、おでんを貪り自身の旺盛なる食欲を満たしたアラタメ堂のご主人(ヒゲの男はたまに彼のことをデタラメ堂と間違っていってしまう。他意はない)。自らステージに登壇して人狼ゲームを開始することを高らかに宣言した。訳もわからないまま、その場に組み込まれたいちげんさんのさすらいのイタリアン・シェフの男も強制的に参加させられるが、全ての戦いにおいて初日に吊られたり、初日に殺されたりして、さぞや暇であったことだろう。


さて、時間だ。


今日ほど粗雑で端的すぎるブログの内容もなかろうが、許していただきたい。


ヒゲの男は、今日はブログ以上にやらなければいけないことが多々あるのだ。なら、まとめて後日に書けばよかろうと諸君は思われるかも知れないが、毎日、いろんなことがあるので今のうちに書いておかなければ、明日まで記憶が持つかどうかの自信がないのである。


過去の記憶は、常に新しい鮮烈なる事象によって、どんどん上書きされていくのであるから。


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by amori-siberiana | 2017-10-08 12:44 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北浜にて猫のひたいのように小さな店。画廊喫茶フレイムハウスを助太刀しているヒゲの男こと阿守のブログです。


さて、昨日のこと。


午前中、ヒゲの男は北浜のオフィスで宗教画のモデルの女と話しをしていた。話しの内容は実にくだらないもので、自分たちの知り合いで誰が一番、乙女であるかというものだった。ヒゲの男は、すぐに一人の男を思い浮かべる。20年間、恋の戦争に全敗の男である不動産デザイナーの男だ。宗教画のモデルの女は、ヒゲの男が推挙した人物の名前を聞いて爆笑して同意する。


去年、破滅的な恋を経験した不動産デザイナーの男は、それ以来、ミュージシャンのことなど解りはしないが、とにかく轟音を求めて激しい系のコンサートに通い続けてるそうである。


「なんか、こうして話してたらフレイムハウスみたいやなぁ」と、のんきな声色で宗教画の女はヒゲの男に伝える。ヒゲの男はそのことばを聞いて、昨夜の売り上げを店へ回収しに行くことを思い出したので、行くことにする。


とにかく画廊喫茶フレイムハウスの再建に着手してからというもの、朝はまあまあ早く、そして夜は猛烈に遅いので、慢性的な睡眠不足なのをなんとかしなくてはならんとヒゲの男は考える。健全な食事、しっかりとした睡眠、そして日光浴。この三つさえあれば、これ以上、自身の人間性が歪まずに済むだろうと考えているのだ。


外は雨が降っており、ランチを少し過ぎた頃合いの店に到着すると、ガランとしている。版画家の柿坂万作がアトリエからドタドタと音を立てて下りてくる。下りてくるというより、重力に従順なる信徒が落ちてくるという感じだ。


ヒゲの男は日次収支を終わらせ、上の階にある版画家のアトリエからペルシア風の絨毯を持って下り、店の中で広げて、そこで寝ることにした。外からの雨音が、「眠れ、眠れ」と囁いているようで、自然の声に忠誠を示すがごとく眠ることにしたのだ。


…。


ヒゲの男は小一時間ほど眠った。頭はすっきりとしてギターでも練習しようかという気持ちになったので、そそくさと舞台に置きっぱなしにされているギターを持って、ジャラランとはじめる。


店は万作がシャッターを開けるのと同時に、その「喫茶店」という機能を世の中に誇るが、世の中のほうはあまり相手にしてくれなさそうな一日であることは、二人のヒゲの男にはわかっていた。


万作はおでんを作り、ヒゲの男はオルガンの横にある一番奥の席に深々と腰かけて、ロシア料理のレシピのような本を読みながら、この際なのでウォッカをストレートであおる。自分が以前に所属していた詩吟の会に「シベリア」という名前をつけておきながら、このヒゲの男はロシア料理なるものを食べたことがないので、本に書かれた文面を追いながら味をイメージしていくが、ハーブや香辛料が沢山入る料理がでてくると、一気に追いかけられなくなる。


与えられた情報と、自身の経験が折り合わない場合、それを仲介してくれるのは今回の場合に限っていうと、白樺で丹念に濾過されたウォッカなのである。


常連の不思議な女がやってくる。


「万作さん、エプロンはしないんですか」と、落ち着いた声で不思議な女がいう。そういえば、ヒゲの男は万作のためにと黒色のエプロンを買ったのだが、そのエプロンが活躍しているところを見たことがない。エプロンひとつで、結構、いい値がしたのだ。


「うーん、ワシ、どうもエプロンが苦手なんですわ。ほんでから、自分でも、なんでこないにエプロンが好かんのやろかと考えたんやけど、ワシの小さいころ、近所に目の細い女の子が住んどってから、その女の子が、なんていうたかな…。うーん、ワシが…(中略)…、というわけで、エプロンがトラウマになっとるんやなと、そういうわけなんやと、自分でわかりましてん」


…。


不思議な女は何も言わず静かに雨音に耳を澄まして、その音を愛でている。ヒゲの男は奥の席で静かに読書をしている。おでんもそろそろ煮えてきた頃合いであろう。


そんな頃合い、音響屋の浩司ばいがやって来る。店に入ってくる動作がチンピラのそれと同じであるのは、今に始まったことではない。店に貸していた、音響機材の一部を取りに来たのだ。


「随分と遠くへ行かれてたようですね」


「そうやで、1500キロ車で走ったわ。でも、オレ、昔…、何年前やったかな3200キロ走ったことあんで」


「すごい距離ですね」


「バンドのツアーしとったときにな、オレ一人が運転やったからな」


「けど、パチプロしてた頃は北海道まで行ってたんでしょう」


「行っとったな。大阪で打つ台がなくなってな、最初は名古屋に行ってん。そっから札幌行って、そっから最終的に広島まで行ったわ」と、誇らしそうに自身のノスタルジーを語る浩司ばい。


我が家に帰ってくるように店に来ていたガルパンの男が口を開く。「それって、なんで北海道まで行くんですか」と。


「あ、出禁(出入り禁止)になるんですよ。ボクら攻略法知ってたんで玉を出しまくって、出した分の金は店からもろて、ほんで出禁になるいう感じですね」


「古き良き時代…」と、苦笑しながら落ち着いた声でいったのは不思議な女だ。ヒゲの男は当時はロン毛で革パンを履いていたという浩司ばいを想像する、目当ての台を置いているパチンコ屋をシラミ潰しに日本全国駆け巡っていた、文字どおりシラミのような生活をしていた浩司ばいの姿を思い浮かべると、笑いが込み上げてくる。


ギタレレの女がやってくる。どうやら、はっさくさんという人工知能からメールが届いたそうで、7日と10日の来店が無理なので今日来てくれたのだそうだ。大変、ありがたいことだとヒゲの男は頭が下がる思いである。雨の中、駆けつけてくれて店で食事を摂りながら、浩司ばいのシラミ伝説をにこやかに聴いている様は、末期の患者に慈愛を示す看護師のようであった。


夜も更けてくる。明日から演奏三昧になることであるし、ヒゲの男も今日は早めに休むかと思っていた頃、不動産デザイナーの男がやってくる。万作が女子三人に囲まれて、鼻の下を伸ばしている写真を額縁に入れて、また持ってきてくれた。そう、いつしかヒゲの男が遠目にレンブラントの絵と見間違えた写真である。


万作はこの写真を人生の絶頂地点と考えているらしく、もうどのようなことがあっても悔いはないのだそうだ。


ガルパンの男はそれが気に食わない。「どうして万作だけがこんないい思いができるんですか?僕もしたいです。僕は4人がいいです」と、素直に胸のうちを話しだす。ヒゲの男と不動産デザイナーの男、そして当事者である万作は大声で笑う。


そこから一気呵成にガルパンの男は心中を語るが、これがことごとく面白い。不動産デザイナーの男もその勢いに乗じて面白いことをいう。


「へえこらへえこらして、仕事もろてね。ほんで深夜まで仕事するでしょ、次の日にそれがひっくり返ったりするわけですよ。デザイン作るときにレイヤーで、印刷時にはわからんように、くそったれ!とか書いたりしますよ」


「ひっくり返る恐ろしさは自分も何度か経験した。僕の場合は先日まで仲が良かった顧客が消費者センターに入ったり、警察に行ったり、裁判起こしたりされてましたからね。だから、顧客の見極めのために資産調査とか現地まで足を運んでました。最終的には人なんですよね」と、ヒゲの男も自身の経験を不動産デザイナーの男に返答する。


その夜は雨が断続的に降り続いた。


万作はヒゲの男のために、味噌に砂糖を溶いたものをおでんのタレとして作ってくれた。ヒゲの男の故郷は四国という島なのだそうだ、島という言葉から想起されるほどに遠くはない。それは世界地図を見れば誰でもわかることだ。


そこではおでんを辛子ではなく、甘い味噌で食べるのだ。故郷の味、故郷の方言、故郷の友。それらを故郷で味わうより、別の場所で故郷と遭遇したときのほうが味気を感じるのはどうしてだろうか。


そして、故郷というのは、どれくらいの距離があれば「故郷」と呼べるのであろうか。こんな大切なことが辞書にも載っていないのである。


ヒゲの男の故郷から見える山はどれも低い。その景観における低さは見ているものに優しさや、ゆとりを教えてくれるものでなく、退屈を助長して、常に新しい場所を求めよと、子供だったヒゲの男に脅迫してくるのであった。



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by amori-siberiana | 2017-10-07 13:34 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北浜にて猫のひたいのように小さな店。画廊喫茶フレイムハウス(近日:クント・コロマンサに改名)を根城にする、ヒゲの男こと阿守のブログです。


さて、昨日のこと。


ヒゲの男はアラタメ堂のご主人から、面白いボードゲームがあると紹介される。というよりも、アラタメ堂からはゲーム以外の話しを聞いたことがない。なんでもそのゲームは2万円以上するのだそうだ、ボードゲームにしては破格の値段である。ヒゲの男はその値段を聞いて、すぐに内容はビジネス啓蒙系で特定されたステータスの人に向けたゲームだなと直感して、どうしてもしたくなった。


つまり、ボードゲームの向こう側にありとあらゆる渦が透けて見えるのであって、こんなに面白いことはない。


アラタメ堂がいうには、その破格の値段のボードゲームを持っている知人がいるので、是非一緒にやってみないかということであった。


ゲームの名前は「7つの習慣」という。7という数字にまとめるあたり、キリスト教関連のニューエイジ団体であろうかと思って調べてみたら、ゲームの元になっている本は、超保守的な町として有名なソルトレイクシティ出身の男が出版したものだとわかる。


ソルトレイクシティといえば、モルモン教の総本山として有名で、ヒゲの男は「7つの習慣」をプレイしたくて仕方がなくなる。かの地には以前から興味があったのだ、その考え方などが如実に反映されているゲームならば、これは参加費を払っても体験してみたいもの。


アラタメ堂とヒゲの男は連れだって、梅田へ向かう。梅田のオフィスビルにある一室に入ると、テーブルの上にはすでにゲームがスタンバイされている。オフィスのオーナーであるウェブ解析専門家の男が招き入れてくれる、少しして出版会社の女社長もやってくる。二人とも初対面であったが、打ち解けるのはすぐであった。4人ともが好奇心の塊のようである。


4人がゲームが置かれたテーブルを囲み、まずはウェブ解析専門家の男がゲームのルール説明を丁寧にしてくれる。3人はその説明をうなずきながら聞く。


ゲームは3つの段階から成り立つ。自分は経営者であり、雇用をしたりプロジェクトをこなしたり相手プレイヤーと交渉したりして、最終的には各プレーヤーに与えられた、特定ミッションをクリアできれば、すごろくでいう「アガリ」となるわけだ。


3つの段階は以下のとおりである。


【1】私的成功

【2】公的成功

【3】成功の習慣化


プレイヤーは【1】→【3】にセクションを発展させながら制限時間内にクリアすることを求められる。大きい仕事をするとそれだけ報酬と信頼度はあがるが、それなりのスキルが揃っていないと仕事はできずに貴重な1ターンを無駄に費やしてしまうのだ。


ゲームの詳細については書けない。別に書けない内容なのではなく、書くと微に入り細に入りとなり、ブログの本題から逸れてしまうからだ。興味があるかたは、ご自身で調べていただけるとありがたい。すばるホールの向井さんもプラネタリウム・ライブのとき、そう言っていたではないか。


ゲームは2時間ほどで終わり、アラタメ堂とヒゲの男は一緒になって北浜へ戻る。行き先は画廊喫茶フレイムハウスである、アラタメ堂が版画家の柿坂万作が作ったおでんを是非とも食べたいとのことだった。


二人が店に入ると、常連のガルパンの男、常連の不思議な女、ギャラリーの女、エイリアン、そして関東っぽい女が何やら話しをしている。


ギャラリーの女がヒゲの男に向かってこういう。


「阿守さん、あなた、今日くしゃみはしませんでした?あなたのことをお話ししてたんですよ」


「ええ、急に鼻水とくしゃみが止まらなくなり、随分とティッシュを使いました」と、ヒゲは素直に答える。


ギャラリーの女は「フフフ」と笑うばかり。


ヒゲの男は確かにゲームの終盤から急に鼻水とくしゃみが出だして困っていたが、どうしてそのことをギャラリーの女が知っているのか、狐につままれたような思いであった。


アラタメ堂とヒゲの男が一心不乱におでんへかぶりついている頃、オーストラリア人の男が入ってくる。アラタメ堂が「おでん、食べなよ」とオーストラリア人に勧めるが、どうやら事前に焼き鳥を食べてきたそうで、お腹は膨れているとのこと。


エイリアンが何か企んでいる顔をして、ヒゲの男に向かっていう。


「阿守くん、今ね、面白いこと考えてるんですよ!それが具体的になったら、アンタに丸投げするから!」


「はい、存じています。北浜の緑化計画ですよね」と、ヒゲの男は返答する。


「そう!!」と、エイリアンは誇らしそうに断言する。


「わかりました、近い将来、グーグルマップで北浜を俯瞰したとき、ジャングルのように見えるよう尽力します」と、ヒゲの男はプロジェクトを快諾する。


不思議な女が話しを引き継ぎ、落ち着いた声でいう。


「北浜、すべてを芝生にしたいけれど、そうすると車のタイヤから変えないと」


「車道とそれ以外の道を明確に区別しましょう。車道は現状維持のアスファルトで、それ以外の道はすべて芝生としましょう」


不思議な女はヒゲの回答を聞いて、ニッコリと、だが、不敵に微笑んでうなずく。


オーストラリア人の男が「3階はどうなってる?」という。ヒゲの男は版画家の居住区になっていることを伝えると、自分もこういうところへ住みたいといいだす。シャワールームがないぞと念を押したが、どうやら彼はそういうのが平気とのこと。


実際、会社経営者になるまでは紆余曲折あり、シドニー郊外で、家を持たずにエルグランドのような車の中で生活しながら、夜な夜な火吹き棒をもって、ファイアーダンスをしていたのだということ。


ヒゲの男は、「ポンヌフの恋人」というフランス映画を思い出した。確か、そういうシーンがある、とても美しい恋の映画だった。


明日から大阪を離れるというオーストラリア人の男は、気持ちはすでにフィジーでのバカンスに向いているのか、とにかくよく飲み、ヒゲの男は初めて彼の酩酊の様相をみた。


ヒゲの男がテーブルをオーストラリア大陸に見たてて、メルボルンはどこになるのかとオーストラリア人の男に訊くが、彼は酔っぱらっていて、「あぁー…、わからないですねえ」という始末。


アラタメ堂はとにかく食べる。おでんを5品食べたあと、さらに5品を食べ、最終的にはコロマンサの目玉焼きを3つ乗せする「トリプル・コロマンサ」を頼み、ペロリとたいらげていた。


最近は目玉焼きばかりをみて、お月さまを見ていない日が続くのが、少し寂しいヒゲの男であった。


「7つの習慣」、上手にクリアできなかったヒゲの男は、再戦の機会を願うのであった。


緑を増やすこと、それはアイルランド人だけの専売特許では、どうやらなさそうだ。


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by amori-siberiana | 2017-10-06 13:07 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北浜にて猫のひたいのように小さなお店。画廊喫茶フレイムハウスに乗り込んで3か月目の阿守です。


ヒゲの男は一年の25%を猫のひたいで過ごしてみた。100人以上の人間と会い、面と向かって話しをする機会を持ったことで、ヒゲの男は経験とアルコール摂取量をこれまでより増やすこととなった。


さて、昨日の話し。


ヒゲの男は、道具屋筋に行く。版画家の柿坂万作がおでんを始めるのだが、その鍋の底が抜けているため、新しいおでん鍋を買いに来たのである。あちらこちらの金物屋をめぐって、なるほどこれがちょうど良かろうというものを買う。金物屋などに来るのはヒゲの男の人生において、二度目か三度目くらいではなかろうか。


道具屋筋のなかでも一番大きいくらいの金物屋に入る。店には延々とおっさんのナレーションがラジカセか何かでかかっている。


「階段があります。松茸ごはんに土瓶蒸しのこと考えて、落ちんといてや…」という言葉が何度も続くが、そのうち心地よくなってくる。ラジカセから耳に届く音質というのは、その独特な音質を知ってるものにとって、ノスタルジーを感じるのだ。


おでん鍋を買い、北浜のオフィスへ立ち寄ったあとに店へ行く。版画家の新料理、コロマンサの写真を撮影しにデザイナーの女がすでに来ており、コロマンサを撮影したあとにペロリとたいらげていた。ギター弾きの男も店内でコーヒーを飲んでいた。


ヒゲの男は早速、ギター弾きの男をつかまえて、一緒にイベントをしないかと問いかける。ギター弾きの男は唐突な申し出に「?」をその表情によぎらせたが、ヒゲの男は構わずにしゃべり続ける。


ヒゲの男がいうには、そのギター弾きの男とやってみたいイベント企画があるのだとのこと。ヒゲの男は譜面をもってきて、ギター弾きの男に見せる。ギター弾きの男は譜面を目でおいながら、「なるほど」と相槌をうつ。


一方的に説明を終えたヒゲの男はすぐに店を飛び出し、どこかへ消える。


…なにやら外でしているみたいだが、それはまた別の話し。


夜になり店に戻ってきたヒゲの男。万作は新しいおでん鍋をカセットコンロの上に設置して、おでんをぐつぐつと煮込んでいた。


店には常連のガルパンの男、不思議な女、温泉マニアの男、洒落た名前の女がいる。この洒落た名前の女であるが、この女の気だるさは相当なものである。気だるさにワインのようなランクがあるとすれば、この女が醸しだす気だるさはプルミエ・グラン・クリュの上位につけるであろう。


ヒゲの男はガルパンの男のテーブルに相席となり、スマホを取り出してガルパンを始める。つまり、ひとつのテーブルに向かい合わせで帽子をかぶった男二人が、スマホを取り出して同じゲームをしているというものだ。


洒落た名前の女は、本の名前が敢えて伏せられた、本の宣伝文と、2015年に封切された名画をモチーフにしたカクテルのカタログをヒゲの男にプレゼントだといって渡す。本当に謎ばかりを持ち込んでくれて、ありがたい話しである。


しばらくすると、オーストラリア人の男がやってくる。明後日にはオーストラリアへ帰国して、そのまま休暇をフィジーで過ごしたあと、11月に仕事で日本へ戻ってくるとのことだ。ヒゲの男も先日、珍しく万作が購入した絶景のガイド本を見ながら南の島に思いをはせるが、ヒゲの男は「冬」の美しさを持つ男なので、南に行ってはいけない。


そして不思議な女が、「隠れた常連」と呼ぶ二人のペアが店に来た。


万作が店の名前が変わるのだということを二人に告げるが、二人は現在の店の名前自体を知らないようであった。


「うーん、ワシが、もうアカン、この店、もうここまでや、あー、潰れるわ。いうときに一気に立て直してくれたんが、この人ですねん」と、言いながらヒゲの男を紹介する。


「どうもありがとうございます。阿守さんはメシアなのですね」と、ペアの男のほうが言う。


「いえ、そんなとんでもないです。好きでしたことですから」と、ヒゲの男は珍しく謙虚に引っ込む。


隠れた常連の女が、オーストラリア人の男にどんな魚を食べるのかという質問をする。


「そですね、私のオーストラリアでは、フィッシュは、バルマンディというを食べます」と、オーストラリア人の男は日本語を駆使して返答する。1週間に2時間だけ練習したにしては、なかなか冗舌である。


「バルマンディ…」


聞き慣れない魚の登場に、一同がその魚について調査を開始する。インターネットであったり、オーストラリア人への直接の聞き取り調査であったり色々だ。


疲れていたヒゲの男は珍しくこの日は早めに店から帰った。その小さな脳みそのなかに、沢山のフォルダが開いているので、ひとつひとつ整理するために睡眠を欲したのだ。


その夜、ヒゲの男は自身がクマに襲われ、とっさに川へ飛び込む夢をみて、実際、猛烈に寝返りをうちソファから落ちて目が醒めた。とてもリアルな夢だった。


大きなツキノワグマが山道のヘアピンカーブの向こうで、背伸びして木の実を獲ろうとガリガリしている。ヒゲの男の数メートル前には登山の格好をした山ガールが歩いている。クマはこちらに気づき猛然と追いかけてくる、あの巨体の悠然とした筋肉の動きからは想像もできないほどのスピードでこちらへ向かってくる。


逃げ出して数秒で、これは負けが決まった勝負だとヒゲの男は直感した。願わくは山ガールのほうへ行ってくれと、ヒゲの男は卑怯なことを祈る。


ヒゲの男の祈りが通じたか、クマは山ガールを追いかける。ところが山ガールの逃げ足はとてつもなく早い、垂直に切り立った壁を走って登り逃げていく。


クマはこれは相手にならないと諦めて、ヒゲの男のほうへ進路を変える。どうしてだかヒゲの男はスローモーションのような動きしかできない。生きるか死ぬかの間髪、ヒゲの男は「どうにでもなれ!」と橋から川に飛び込んだ。


夢だったのかとソファから床へと転げ落ちた自分に気がつくヒゲの男。転がり方が悪かったのだろう、首筋を寝違えた。


どうせ見るなら良い夢をみたいものだ。


フランスの作曲家、ラヴェル先生がボレロをBGMに、滝壺から空中浮遊しながら湧き上がってきて、夢の中でラヴェルの弟子であったヒゲの男は、他の弟子たちとともに喜び号泣するという夢を見たのが、これまでで一番良い夢であった


起きたあとも泣いていたくらいなのだ。夢を見ながら何時間くらい泣いていたものか。目が疲れていた。



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by amori-siberiana | 2017-10-05 13:13 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北浜にて猫のひたいのように小さな店。画廊喫茶フレイムハウス(近日:クント・コロマンサに改名)を営むヒゲの男こと、阿守のブログです。


さて、昨日のこと。


ヒゲの男は昼の時間に昨夜の売り上げを店へ回収しに行く。そしてその足で南船場のパン屋「き多や」に向かってはフレンチトースト用のバゲットを仕入れる。ちょうど、店主の女とスペイン人のマルコは休憩中で会うことはかなわなかったが、休憩でもしなくては体がもたないだろうとヒゲの男は感じる。ヒゲの男が店から帰るころに起きて仕事をしている人たちなのだ。


バゲットを抱えたまま、ヒゲの男は昨夜、店に来てくれた酒豪の女のところへ向かう。酒豪の女が経営するビジネスに一口乗ろうということだ。いざ、契約となったが支払いがクレジットカードのみということを知り、計画は頓挫する。


そう、ヒゲの男はクレジットカードなるものを持っていないのだ。


別に主義主張があってクレジットカードを持っていないのではなく、単にこれまでに持つ機会がなかったのだ。人生で一度だけクレジットカードを持ったことはあるが、ヨーロッパを放浪中にしこたま使い切ってしまい、帰国してから散々、親から罵倒されたことがある。それ以来は持つことがなかった。


現金を持ち歩くのがナンセンスな場面があれば、現金でしか成立させられない場面もある。なるほど、そろそろクレジットカードでも持っておくのがよかろうかとヒゲの男は考えるが、果たして画廊喫茶フレイムハウスのプロデューサーということで審査に通るものかどうか。審査において不適合だったとしても、最終的に腹の殴り合いで容赦してくれればいいのだが…。


そんなことを漠然と考えながら、御堂筋という大通りを東に進み、北浜のオフィスへ向かう。


ふと、ヒゲの男の眼前にビジネス街を飄々と歩く、猫背の男が現れる。ヒゲの男はそれが一目で不動産デザイナーの男だとわかった。先日、マッサージ屋で偶然にも遭遇した男である。最近、髪を短くしてヒゲを剃ったそうだ。毎度、恋に破れる愚か者という自身の運命の十字架を背負ったような猫背は遠目にも彼だとわかる。


ヒゲの男は何も言わずに不動産デザイナーの男を尾行する。


しかし、尾行を開始したはいいが、やたらにその歩みが遅いのでとうとう追いついて横並びになってしまう。不動産デザイナーの男は自身の隣を歩くのがヒゲの男だと気づく。


お互いにニヤリと笑ってその場は終わったが、不動産デザイナーの男と遭遇したおかげでヒゲの男はどうにもマッサージ屋へ行きたくなったので、結局、マッサージ屋を経由して北浜のオフィスへ向かうこととなった。


ヒゲの男が北浜のオフィスに到着すると、アラタメ堂が笑いながら開口一番こういう。


「阿守さん、ブログ読みましたよ、フレイムハウスに不穏の空気ありじゃないですか」


「はい、緊張感あるでしょう。あのままなんですから仕方がないですよ、夫婦喧嘩みたいなもんです」


その二人のやりとりを聞きながら、サーファーの上仲はパソコンで何やら作業してはいるものの、ニヤニヤする。


ヒゲの男は仕事を終えて、その足でバゲットを持ち抱えて店に行く。先ほど会ったばかりの不動産デザイナーの男が知人のつまらない事務職の女を連れて、二人で優雅にコーヒーを飲んでいる。


不動産デザイナーの男は飲食店を経営したいそうだ。


「このお店に来るようになって、ここって適当じゃないですか。ああ、こんなんでいいんやと思ったら、したくなっちゃってね」と、失礼なことを平気な顔でいう。


二人が座っているのとは別のテーブルには見たことのない本が置かれている。どうやら世界の絶景スポットを特集した本である。


「これ、どうしたんですか?」と、ヒゲの男は版画家の柿坂万作に訊く。


「ああ、これね、うーん、ワシも普段はコンビニの本屋で立ち読みだけして済ませるんやけど、おお、なんかええ本あるなぁと思うて、手に取ってみたんですわ。ほんでからに、大体こういう本はこれくらいの値段やろなぁいうて、頭んなかで勘定するんですわ。うーん、例えばこういう本やったら …(中略)…。思わず買うてしもうたいうわけです」


世界の絶景スポットが幾つか掲載されており、そこへ行く方法、予算、物価、日焼け指数(?)などがグラフになっているのである。ヒゲの男は本を読みだす。


「うーん、阿守さんは、そういう本、一語一句を逃さず読みはるんですね。ワシはそういうん無理ですわ」と、苦笑しながら万作はいう。


「そうですね、写真だけで絶景を見ても、もう写真慣れしてしまっているので、ピンと来ないんですよね。文章を追うことで、自分がそこへ行くのを想像して楽しんでます。だから、そこへ辿り着くのにどこでトランジットするんだろうとかのほうが興味深かったりします」


ヒゲの男はそのまま本を読み、万作はおでんを仕込む。おでん鍋を取り出して、おでんのネタを勢ぞろいさせて陣形を組んでみたのはいいものの、鍋の底に穴が空いていることに気がつく。今日は普通の大きな鍋を代用にするということにした。


すると、バレリーナの女がやってくる。モスクワのボリショイで研鑽を積んだ女だ。


バレリーナの女は店のおでんの匂いを嗅ぎながら、蓋をあけて香炉の前にいるかのようにその湯気を浴びる。


とにかく、バレリーナの女はおでんをガツガツ食べる、ヒゲの男も負けず劣らずガツガツ食べる。常連のガルパンの男、そして常連の不思議な女もやってくる。ガルパンの男はビールを注文してスマホを取り出し、早速ガルパンのゲームを開始。不思議な女は注がれた白ワインに口をつける。


しばらくして、ハイタッチの男こと冷泉が大勢を引き連れてやってくる。


冷泉は体調が万全ではないので、酒は控えて店のスタッフのように猫のひたいを行ったり来たりしながら、給仕に奮闘する。大勢はオルガン横の奥の席に陣取って賑やかに酒盛りを開始する。


偶然にも大勢のなかに、ヒゲの男と同郷の男が二人おり。その中の一人はヒゲの男の実家の隣町であることを知り、方言での地元トークが開始される。


「あそこのうどん屋、なしなっとるきん、どこ行ったか探っしょんやけどわからんのやがな」と、ヒゲの男は長年の疑問を同郷の男にぶつけてみる。


「あそこな、役場んとこに移転したんじゃがな。駅前のな、道おっきょするきんいうて、移動しとるわ」と、同郷の男は満足のいく回答をする。


ガルパンの男が「では、そろそろ」と帰ろうとすると、別府出身の斥候の男がやってきて、ガルパン仲間の登場にガルパンの男はまた席に戻る。そのうちヒゲの男がギターを弾き、冷泉が「乾杯」を熱唱する。


その真夜中の熱唱を聞きつけ、隣に住むベレー帽の男がやってきて、万作にいう。


「最近、賑やかにしよるやないか。こういうんは誰が企画しとるんや」


「うーん、ワシは企画するんは力がないんで、あのステージでギター弾いとる人が全部してくれとります」


ステージで「酒と泪と男と女」を弾き終えたヒゲの男は、ベレー帽の男から一杯おごられることになったので、マッカランのストレートを容赦なく頼む。ヒゲの男がそれを一気に飲み干すと、ベレー帽の男がこういう。


「あんた、名前はなんといいますの」


「はい、阿守と申します」


「阿守君か、ありがとう。賑やかなのはいい、これからも構わず大いにやってくれ」


「ありがとうございます!」


ベレー帽の老人からの粋な声かけを受けて、ヒゲの男は照れ臭かったが嬉しかった。シラフで熱唱を披露した冷泉も敢闘賞である。ギターを弾けるのが何人かいたので、ステージではセッションが繰り広げられたりもした。


いつの間にか水タバコの男もやってきている。いちげんさんで、ベロベロに酔っぱらった民泊経営の男が自身がいかに妻に尽くしているのかを延々と語りだす。


「15万円の靴が欲しいってどういうことなんっすか!!俺なんか、最高でも3万円の靴っすよ、15万円の靴ってどんな靴っすか!!」


そのあとすぐに何の関係もないスコッチウイスキーの話しへ飛ぶ。つまり、酔っぱらいの話しである。


ヒゲの男と冷泉は話し足りないことがあったので、キリギリスの店に移動する。久しぶりのキリギリスの店は深夜の4時前だというのに、大盛況であった。


キリギリスの主人が注ぐ素晴らしいワイン、そして丹念にドリップするコーヒーの美しき膨らみ。その全てに憧れて、自分もカフェをしてみたいとヒゲの男は数年前から考えていたものである。


どうして、キリギリスという呼称がついたのかは、定かではない。


ヒゲの男は冷泉とインターネットというものについて論じあった。当たり前に使っているインターネットというものについて、ヒゲの男は今さらながらに疑問に感じることがあるらしい。


冷泉はヒゲの男からの疑問を聞き、そして自身の目の前にあるコーヒーカップをながめながら、その疑問について真剣に答える。


エレガントで有意義な時間であった。男同士が真剣に語りあうのである。


ただ、つい先ほどのことなのに、ヒゲの男は自分がインターネットについて何の疑問を持っていたのか、冷泉がそれについて何と真剣に答えてくれたのか、まったく思い出せない。


ヒゲの男はこの絵画の中心の老人を見るたびに、ノリユキ・パット・モリタを思い出す。そう、ベストキッドの師匠だ。


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by amori-siberiana | 2017-10-04 13:58 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北浜にて猫のひたいのように小さな店。画廊喫茶フレイムハウスにて誇大妄想を抱く二人のヒゲの男たちの若いほう、阿守のブログへようこそ。


いつものように北浜のオフィスで仕事をしたあと、ヒゲの男は雨のなか堺筋の大通りを西から東へ渡り、居城である画廊喫茶フレイムハウスへ行く。雨はたまに激しく、たまに細雨となり、うっとうしくないほどの中庸を保ちながら断続的に降り続ける。


ヒゲの男が冥界への入り口のような階段を15段ほど上がり、開け放たれたままになっている店に入る。常連の不思議な女と常連のガルパンの男がおり、すでにその体内にアルコールを染みこませているところであった。


版画家の柿坂万作は厨房脇のこれまた小さなカウンターにおり、ヒゲの男に向かって開口一番こういう。


「阿守さん、このイベントなんですけど、スーマーさんのイベントが書かれてないんは、なんでですのん?」


なるほど、万作の言ってることは理解できた。小さなカウンターに貼り付けられている、これまた小さな黒板にヒゲの男がチョークでイベントの日程を書きつけているのであるが、そこに版画家の万作が以前に取り決めたイベントが書かれていないということでの不満なのだ。


店の黒板には


◆10月07日(土) 北濱サバト 大山藍
◆10月8~9日(日・月) 王子と総帥
◆10月10日(火) 平尾正和の文壇デビュー
◆10月21日(土) てつやの挑戦状
◆10月28日(土) 冷泉、命を削ったちゃんこ鍋


と、ヒゲの男は書いていた。万作がいうのは10月29日の日曜日にあるイベントのことである。ヒゲの男がイベントを常に5つずつ書いているのをどうやら知らないのである。


ヒゲの男は万作に返答する。


「ただ単に書くスペースがないからですよ」


そういいながらヒゲの男はオルガン横の席に座る。万作はどうにも釈然としないという面持ちで、さらに口を開く。


「うーん、なんか、こういうんはムカっときますわ。平尾さんの次の日(29日)にイベントあるんやから、一緒に書いたらええんと違いますのん」


ヒゲの男は驚愕した。この男は一体何を言ってるのだろう。つまり、万作の考えるところは、ヒゲの男が敢えて万作のイベントは黒板に書く価値なしと判断して、書いていないのではないかということだ。


なんという近視眼。どうして、物事に対してそこまで卑屈で陰謀めいた考え方しかできないのかと、ヒゲの男は版画家の言い分に心底ガッカリするが、これは説明しておかなくてはならなので、客がいるのも構わずに説明する。


「あのですね、万作さんが考えているようなことは一切ありませんから。そもそも、黒板に書くイベントの数は僕が考えてそうしているのです。情報過多になっても仕方がありませんから。それに続きの日でも、書くスペースがないときは王子と総帥の次の日だったとしても平尾さんのイベントのことは書いてませんでした。それはまいちんさんのときもそうですよ」


「うーん、それにしても次の日を書かんのは、なんかおかしいんちゃいますの?」と、同じことを繰り返すのは万作。


「ことわっておきますけれど、この問題はイベント云々ではなく、そもそもの原因として万作さんが阿守に対して不信感があるから生じている疑念ではないですか」と、ヒゲの男は突っ込んだことを訊く。


「不信感というか、うーん…。そもそも黒板を阿守さんに任せきりにして、ワシが書かんかったことに原因があるんで…」と、問題の主旨論点がズレたことを言う。


今回のことについて、版画家の柿坂万作が「自身のイベント」を中心にした視点でしか意見を言っていないのをヒゲの男は感じた。自身のイベントについて、ヒゲの男が除け者扱いにして黒板にも書かず、宣伝もしないと考えているのであろうか。もしそうだとすれば、これはただのおっさんの世迷言である。


「29日のことに関してですけれど、僕はすでに告知の文章を作っていますし、情報も収集しています。あとはタイミングなのですが、それがわかりませんか」


タイミングとはなんであろうか…。


ヒゲの男は29日のことをインターネットでも今のところ告知をしていない。29日はスーマーというバンジョーを弾きながら歌う男がやってくるのだが、入場料として2500円を客から前払い徴収することになっている。これは万作と歌手のあいだにプロモーターらしき男が介入して取り決められたことだそうだ。


さて、ヒゲの男は自身がセッティングする画廊喫茶フレイムハウスのイベントにおいて、入場は無料にしている。


理由はひとつ。


入場料を徴収するイベントの告知をすると、JASRACが楽曲使用料を求めてくるからだ。特にここ最近のJASRACの動きは活発で、梅田から心斎橋のエリアでバーやカフェを長い期間かけて巡り、情報収集したヒゲの男が知ったことはJASRACがどんな小さな店でも調査員を派遣してくるというものであった。今、南森町がターゲットとなっており、次に北浜に来るであろうことは察知している。


さらにそれに関連して、入場料を徴収しているということになれば、税務調査員もやってくる。先刻、隣の店が入られたばかりであることを万作が知らないはずはない。行政に目をつけられた瞬間、猫のひたいのような小さな店はどうにもならなくなるリスクを背負っていることがわからないのであろうか。


歌手とプロモーターは29日を無事に集客できてイベントが成功すれば、それでいいのであろうが、店側はそうではない。一度の甘さが後の取り返しのつかない事態のキッカケとなるのだ。だから、ヒゲの男はインターネットの告知については慎重であり、タイミングを待っている。屋号が変わるタイミングを。


ヒゲの男は画廊喫茶フレイムハウスに自身が関わるときに、たったひとつだけ版画家に要求を出した。


「イベント一切のことに関しては、今後、阿守に仕切らせて欲しいのです。そうすれば必ず店の経営を回復させてみせます。脳ミソが二つあっては混乱しますから、店が軌道に乗るまでの窓口はひとつにして欲しいのです」と。


万作はそれを快諾した。


ヒゲの男はウイスキーを飲みながら、その誓いのことを考えていた。喉元過ぎればなんとかというが、このようなバカバカしいことを何度も何度も繰り返さなくてはいけないのかと気が重くなる。


万作は万作で自身が良かれと信じるままに、ヒゲの男が書いた黒板のイベント告知の字をすべて消し。律儀に黒板へ縦に6分割の線を引き、チョークで新しくイベントを書き直す。


◆10月07日(土) 北濱サバト 大山藍
◆10月8~9日(日・月) 王子と総帥
◆10月10日(火) 平尾正和の文壇デビュー
◆10月21日(土) てつやの挑戦状
◆10月28日(土) 冷泉、命を削ったちゃんこ鍋
◆10月29日(日) スーマーのうた


パセリが切れたというので、雨のなか買い出しに行っていたヒゲの男は、店に戻ってきてそれに気づき、残念な気持ちで新しく書き直された黒板を見る。


ふと、見ると、王子と総帥の「帥」の文字が「師」になっていたので、こっそりと上の線を消して、「帥」へと訂正した。


店にはガハハの女がやって来て、自身の忘れ物を取りにくる。聞くところによれば、明日から南の島へ旅立つそうである。やってくるときもガハハ、そしてやっぱり帰っていくときもガハハであった。


グラフィックデザイナーの男、そしてオーストラリアの男がやってくる。オーストラリアの男は「雨だれの音をマイクで拾ってBGMにしてみてはどうか?」と思い切ったことを提案してくる。


ヒゲの男はマイクを窓のひさしの下にセッティングし、アンプのボリュームを上げる。


「ドン、ドン、ドン、ドン、ドン」


雨がうちつけるリズムは、天衣無縫に揺れながら、しかしそれが自然のやりかたなのだと教えているようでもあった。


会計事務所のオーナーと、いちげんさんの酒豪の女もやってくる。そしてウイスキーのストレートをハイボールのチェイサーで飲むという荒行に挑みながら、コロマンサのご飯なしに箸をつけている。


ヒゲの男はギターを弾いていたかった。いつも、心に重いものがあるとき、それを救ってくれたのはギターであったのだから。


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by amori-siberiana | 2017-10-03 14:03 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北浜にある猫のひたいのように小さな店。画廊喫茶フレイムハウスにて、救急救命士をしている阿守のブログです。


今日の北浜は雨。雨の日に限って手元に傘がないという日が多く、なんのために傘を持っているのか、雨の日はいつも釈然としない印象を持っています。39年間、天気と上手にお付き合いできた試しがない男なので、天候に左右される先物取引などに手を出したことはありません。


さて、昨日の話し。


ヒゲの男は昼に店で経理を済ませて、そのまま歩いて酒類を買い出しに行く。つい先日まで夏の暑さを背中に感じながら歩いていた堺筋も、今ではめっきりと秋の風が吹いている。夏の暑さよ、また、一年後までサヨウナラ。となるのであれば、もう少し夏が続いてもよかったかなと名残り惜しく考えていたヒゲの男であるが、夏に使い込んだ電気代の請求書が、版画家の柿坂万作より渡されたとき、もう二度と夏など来るな、と怒気に駆られたものである。


酒などの水ものは、重量があるので店に運び入れるため、星師匠に手伝ってもらう。夏の折にはバイオリンの王子や、ギター弾きの男、小説家もビールケースを抱えて運び込みを手伝ってくれたのである。


画廊喫茶フレイムハウスの今日の催しは、女将軍の第二幕ということで、ガハハの女が歌い散らすとのこと。


女将軍というタイトルは、ヒゲの男が大河ドラマから着想を得たかどうかは知らないが、昨シーズンの「真田丸」に一年を捧げていたヒゲの男は、真田丸ロスをいまだに引きずっていて、他のドラマに見向きもしない偏屈なのである。


草刈正雄を見に行くため真冬の大阪城へ行った。長野の上田城にも行き、真田親子が蟄居させられた和歌山の九度山にも行った。真田の六文銭が掲げられた旗を見るたびに、胸がときめくミーハーぶりであった。あまりに心酔して、登場人物のセリフを覚えて真似するうちに、ヒゲの男の会社でのしゃべりかたは、知らず知らず、いつしか戦国時代のようになっていた。


仕入れから戻ってきたヒゲの男はそのまま青山ビルのギャラリー「遊気Q」へ遊びに行く。


昨日、電源をONにしただけで鳴りだした複雑怪奇なる舞台音響は、そのまま何も触らずにOFFにしただけなので、またONにすれば勝手に鳴りだすだろうという安心感もあった。ヒゲの男の電気系統への理解は、ファミコン時代から発達していない。


すぐに電気系統を理由にしてリタイヤする鈴木亜久里なるF1レーサーと同じ心境で、電気系統だけはどうにもならないのだ。


そういえばヒゲの男が若い頃に熱狂したファミコンは、今のテレビゲームやスマホアプリのように洗練されておらず、その映りの具合は各家庭のテレビごとの個性が如実に出るものであった。旧友でマッドサイエンティストのパキスタンなる男の家のテレビなどは、ゲームの映りが悪くて、輪郭はぼんやり、色彩は曖昧模糊としており、どのゲームをしてもそれは印象派の画家クロード・モネの「ルーアン大聖堂」のようであった。


ヒゲの男は、オルセーやメトロポリタンなる美術館でルーアン大聖堂を目の当たりにしたとき、いつもパキスタンの家でやったファミコンを思いだすのであった。


北浜のクリニャンクールに行くと、ギャラリーの女が近づいてきて、品のいいイントネーションでこういう。


「あのね、今晩なんですけれど、お店はやってらっしゃいますの?」


「ええ、今日もやってますよ」


「それでしたら、後でお伺いしようかと考えてるんですけれどね」


「いや、来られないほうがいいです。今日は何が起きるかわかりませんから」


「来ないほうがいいなんて、どういうことなんですか?」と、ギャラリーの女は驚いたような目をしながら笑う。


実際、ヒゲの男には何が起きるかわからないのだ。いつまでたってもイベントに出演するはずのガハハの女はまだ店に来ないのである。


ヒゲの男はガハハの女から今日のイベントの概要を耳にしてはいたが、よくわからない部分が多々あった。二部構成で前半はガハハの女が自身の曲を演奏する。それはいい。ところが、後半はヒゲの男と一緒に小惑星を作るというのだ。ヒゲの男は「?」が頭をよぎっていたが、思い悩んでも仕方がないので、すぐにCocopelienaのギターの山本を招聘することにした。


ガハハの女と山本は長く一緒に同じバンドをやっていたので、ガハハの女とヒゲの男の中和剤としては最適である。もしやもすると、ガハハとヒゲは「混ぜるな危険!」の化学反応を起こすことも予期しておくことで、備えあれば憂いなしなのだ。


店がオープンする。オープンしてしばらくすると、入り口からガハハと笑い声が聴こえる。いよいよ御大の登場である。どうやら店がオープンする時間を知らなかったようである。


ファゴットの男、いろんな音楽イベントで目にする男などがそぞろにやって来る。後者の男が京都の日本酒をもってきてくれ、みんなで飲もうと酒を勧めてくれる。さすがは宴会、これではどちらが店で、どちらが客なのかわからないが、ヒゲの男も漏れなくいただく。


「いやぁ、こら、うまい酒でんなぁ」と、声を上げたのは大酒のみで版画家の柿坂万作であった。


この日も前日に引き続いての盛況にて、猫のひたいはぎゅうぎゅう詰め。万作は厨房で調理をしながら目が泳いでいるという状態であった。ヒゲの男も目を泳がせながら調理補佐をする。星師匠にいたっては、買い出しのために何度も同じコンビニへ行くので、しまいには店員に笑われながら、「大変ですね」と同情されたそうだ。


絶滅寸前~~~~~っ!」とガハハの女が唐突に叫びだす。これはもう演奏が始まっているのか?それともいよいよキレたのか…。そうしてイベントは前半はスタートした。まるで唐十郎の演劇の開始のようであり、不意を突かれた。


ガハハの女の世界へいきなり突き落とされた猫のひたいは、ガハハの術中にはまっていく。万作だけは、「ええと、オムライスが、あと何個やったっけ。ひとつ、ふたつ、みっつ…。ほんでピザ!ピザや!」と忙しさのおかげで術中にはハマらずにいる。


すると、ギャラリーの女が友人を連れてやってくる。


「あのね、来るなっていわれたらね、どうしても来たくなるものなんですよ」と、イタズラっぽい愛嬌のある目をして、ヒゲの男に自分がここへ来た単純明快な理由を伝える。


そして、ガハハの女の歌を聴きながら、ギャラリーの女は静かにこういう。


「昔はこういうところあったんですよ。行けば何か面白いことしてるっていうところ。ここは昔のような場所ね」


ヒゲの男はその一言が嬉しかった、「そういう店にしたかったのです」とだけヒゲの男は答えて、一心不乱に氷をグラスに詰め込んで、ジンジャーエールを注ぎ、客のところへ持っていく。


前半も終了するという頃、ガハハの女の曲「ミドリキミドリフカミドリ」を愛する男。ハイタッチの男こと冷泉が結婚式か葬式のどちらかの帰りというような格好でやって来る。訊いてみると前者であったとのことだ。


実は、冷泉は先ごろより体調を崩している。東京と大阪を往復しながら、仕事と飲みを苛烈に繰り返しているのだから無理もない話しであるが、客席一番前でウーロン茶を飲む冷泉の姿はチャーミングであり、笑いを誘うものであった。


そして訳も分からないままにギターを持って店へ来るようにとヒゲの男から要請された、Cocopelienaの山本も到着する。これで役者は揃ったのだ。


「えっ!?僕が弾くんですか?」と驚く山本であったが、本人以外の来場者の誰もがそうなるであろうことを予測、期待しているのであったから仕方がなかろう。


イベントの後半では、来場者よりお題をもらって、それをインスピレーションの源泉として曲を作るというものであった。出されたお題は小惑星とはまったく関係のなさそうな「うつぼのテールスープ」とか、「トレハロース(化学式:C12H22O11)」とかである。


そう、画廊喫茶フレイムハウスから「クント・コロマンサ」に改名する記念として、コロマンサのテーマ曲も作った。


先日、いちげんさんとしてやってきた笛の妖精もフェラーリに乗ってやってきては、自分のリコーダーを取り出しステージへ上がり、とても微妙な拍子解釈でジブリの曲を吹き出す。もうこの混沌とした享楽から抜けられない、ヒゲの男はこういうカオス事態に終始、頬は緩みっぱなしであった。


ガハハの女は笛の妖精にきく。


「絶滅したことありますか!?ガハハハ!」


笛の妖精は、即座に「ありますよ」と恥ずかしそうに答える。どうして、即答できるのか…。何のどの部分が共鳴しているのか、まったくわからない。共鳴してるのか乱反響しているのかもわからない。


誰が収拾をつけるとも知れない、ガハハの女の宴会は、一応の終了宣言を半ば強制的にして幕を下ろしたが、そこから宴会が何時まで続いたのかは、よくわからない。


ガハハの女を囲む宴会に参加された諸氏の行方は、誰も知らない。


次は女将軍三部作、ラスボスのアハハの女の登場である。それまでにはMPを復活させておかなければいけないと考えるヒゲの男であった。


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by amori-siberiana | 2017-10-02 13:26 | 雑記 | Comments(0)

やあ!みなさん!北浜にて猫のひたいのように小さな店。画廊喫茶フレイムハウスを版画家の柿坂万作と経営する阿守です。


さて、昨日のこと。


秋の万作祭という、よくわからない祭りを開催している画廊喫茶フレイムハウス。昼にヒゲの男が店へ行くと、万作は舞台を作るためにバーカウンターを解体作業する。ヒゲの男より早くに店へ到着していた、星師匠は店の掃除を開始して、そのあとに厨房で何やら手伝わされる。


ヒゲの男は昨夜、酩酊しながらなんとなく音響屋で福岡出身の浩司ばいから教えてもらったとおり、ミキサーという機械の電源を入れる。「すごい、音が出たぜ」と感動するヒゲの男であったが、この程度のことは誰でもできる範囲のことであろう。


しばらくすると、吟遊詩人の女がハープとギターを持ってやってくる。小柄な彼女の場合はギターとハープに抱えられてるように見えるのだが、よくこの階段をのぼってこれたなと感心する。


ヒゲの男は慣れない手つきでサウンドチェックなるものを始める。音の質はわからないので、取りあえず音さえスピーカーから出ればいいやという、なんとも音楽に従事していた人間とは到底思えないような心意気なのが、実にけしからん。


ヒゲの男が音楽家の時代、「あれ」といえばタッキーがしてくれた。「これ」といえば浩司ばいやテリーのような専門家がしてくれた、「できん」といえばステージ隣にいつも座っていたギター弾きの男がしてくれた、「わからん」といえば大きなコントラバスをわざわざ横倒しにして、電気工事士の山本さんが助けにきてくれた。


そして出来上がったのが、この電源のONとOFFにするだけの作業を奇跡のように思えるヒゲの人間なのである。


ナウルという国の人間が、「リン鉱石」という天然資源に恵まれた土地のおかげで働かずに暮らしていた。働くのはいつもその財力によって呼び寄せられた近隣諸国からの出稼ぎ労働者である。しかし、その資源が尽きたとき、自分たちの文化を教えるナウル人もいなければ、料理ができるナウル人もいなくなっており、なにもかも立ち行かなくなったというではないか。


ある程度の苦労はしておくのがよかろうということだ。


吟遊詩人の女のハープの音に多少、雑味が入るので、マイクの位置をどうにかしてみようと二人は試行錯誤する。


「あ、阿守さん、すいませんけど9Vの電源ありませんか。スーファミのやつです。私、忘れてきたみたいで」


吟遊詩人の女が愛用しているギターの音を豊かにする装置、エフェクターにそれを使って電源供給するのであるが、残念ながら画廊喫茶フレイムハウスにはない。ただ、9Vの電池ならばヒゲの男のがあるので、それを入れようということになる。


エフェクターを右往左往しながらこじあける、見てみると中には新品の9V電池がプラスティックビニールをかぶったまま、役目もなさそうにボンヤリと入ってる。これがそのまま使えるんじゃないかと考えた二人は、買ったときのままの姿でエフェクターに入っていた電池を使ってリハを続行する。


リハを再開して2分ほどで、電池の短い寿命は、途切れることとなった…。


それならばと、ヒゲの男の持っている電池に入れ替えてスタンバイは整った。


そしてこのヒゲの男の電池も、本番がはじまった途端に、短い寿命を終えることとなった…。


イベントは来客者の愛顧によって満員御礼となり、厨房では万作が忙しそうに「次は…、アレとコレと…、ああ、そうやった、ロイヤルミルクティーや!忘れとった」と、ブツブツいいながら二階と三階を行ったり来たりする。


そしてこういう日でも、やっぱりアラタメ堂は新しいカードゲームを持ってきていた。聞くところによると、ホリエモンがプロデュースした「人狼」なのだとのこと。オーストラリアの男と、泥酔しているSHEENAのやっちは延々とテクノミュージックについて論じあう。


会計事務所オーナーの男は、万作の目玉焼きがいかに予想を超えて見事なものかを、隣の席にいる女たちに力説をする。論より証拠だということで、早速、目玉焼きを気前よく注文していく。


オルガン側に陣取った一団(舞台からみて右翼側)と、正面側、そして入り口側の一団(舞台からみて左翼)は、それぞれに何やらてんでわからぬ話しをしたり、吟遊詩人の歌声に酔いしれたりしている。とにかく音さえなっていれば、自分は何かに包まれて守られているという安心感が生じるのを、人でごった返す厨房脇にてヒゲの男は感じていた。


吟遊詩人の女は宣言どおり、昭和歌謡と自身が作詞作曲した、本人以外が誰も歌わない曲をいったりきたりする。誰もが口ずさめる曲、誰もが未聴である曲、この両極が彼女を媒介として音となりブレンドされて発せられる。それはあたかも、吟遊詩人自身のルーツについて、ほんの少しのぞかせてもらったような気がするものであった。


吟遊詩人からみて、右翼側は神秘な静かなる深い海のようであり、織田信長を境界線として、正面側は太陽の日を沢山浴び、その自然の恩恵を一身に受けているようである。左翼側はとにかくやかましい。


ゆらゆらと干されたそうめんが風でなびくように踊る、ガチャガチャと鳴り物は出てくる、一緒に歌いだす、それは、我が世の春を謳歌せしめんという気焔を感じるようであった。


そう、昨夜は織田信長公がマルチリンガルの女を随行して、猫のひたいのような小さな店にご来場くださったのだ。最後に店にある切子のグラスを大いにお気に召されたようで、ひとつくれとご要望賜ったが、遺憾ながら代えの効かないものだったので、ヒゲの男は大いに笑いながら断った。


このブログをお読みのかたには、筆者が一体何を書いているのか、さっぱりわからないであろう。そもそも筆者すらわからないのだ、しかし、作り話しでもなんでもなく、起きた現象をそのまま書いているだけである。


いつまで続くか誰にもわからないが、ヒゲの男はこの場所が好きだ。


コーヒーを一杯で一日いられるような場所。


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by amori-siberiana | 2017-10-01 13:34 | 雑記 | Comments(2)

こんにちは、北浜にて猫のひたいのように小さな店。画廊喫茶フレイムハウス(近日、kunt Coromansa /クント・コロマンサに改名)にて、日々、精進しながら丁稚奉公している阿守です。


日本では一年前から予定されていたように、衆議院の解散にともなう選挙が行われることとなり、ヒゲの男の周囲でも風雲急を告げる趣となっている。ヒゲの男は以前の総選挙の折、自身の出自とも生活とも何の関係もない静岡の立候補者に肩入れと入れ知恵をして暗躍したことがあるが、それはなかなか退屈しないものであった。


勝敗の明暗を分けるのは打ち出す政策などでは一切ない。世の中の主流派(多数派)に自分が属するのかどうかだけの話しである。だから政治家は勝てる地域を綿密に調査して、そこへ笑顔で登場して、にこやかに握手を求めるのである。


皆が茶番と思いながらも、実際にはそういったシステムが世の中の基礎を作っているかと考えると、興味深いものがある。政治家というのは立候補して、さらには当選してからやっとのこと政治家となるのであるから、政治家としての資質が問われるのはそこからだ。それまでは個人の責任において何をしたっていいのである。


あくまで多数派に属していること、それが勝利の原則である。何かしたいなどと言うのは、実際はどうでもいいことだ。だから選挙は退屈しないものであった。


これが万民の幸せについての話しになると趣は全然変わってくる。その場合はよく吟味して確実な人間を選ばなければならない。ところがそんな人間はどこを探しても出てはこないのだ。


さて、昨日の話し。


ヒゲの男が店に行くと、常連の洒落た名前の女が来て、自分が持ってきて店に置いたままにしていた本を読んでいる。版画家の柿坂万作の姿がないので、どうしているのかと考えていると、どうやら上の階にて洗濯物をしているとのこと。


しばらくすると、常連のガルパンの男、常連の不思議な女、そしてグラフィックデザイナーの男がやってくる。話しの内容を聞いてみると、どうやら全身麻酔がどうしたこうしたという内容であった。


しばらくすると、オーストラリア人の男がやってきてビール、芋焼酎、ビール、ウイスキー、ビール、芋焼酎を注文する。不思議な女とヒゲの男は、店に置き去りにされている大正琴を使って遊ぶ。


翌日のイベントの機材を持って、音響屋の浩司ばいが店にやってくる。


「ほんまに阿守からくる連絡は金にならんことばかりや!」と、浩司ばいはブツブツいいながら、ヒゲの男と一緒に機材のチェックをする。ヒゲの男は10年以上、音楽の現場にいたはずであるが機材のことなどは他人任せでサッパリわからないので、初めてのものを見るような顔で機材を扱う。


「とにかく、すいませんが、電源のONとOFFだけの操作で機能するようにしておいてくれませんか」と、ヒゲの男は無茶をいう。


車で来ている浩司ばいは、万作が淹れたコーヒーを飲みながらギターを手にとって適当に音を鳴らす。ヒゲの男は大正琴でそれに乗っかる。ギターと大正琴でのブルースの演奏が始まる、いつの間にか来ていた「ケェッ?」の男も早速ながらギターでそのセッションに参加するよう、不思議な女から突かれるが、当人は「オレ?なんでオレが?」と加わらない。


「ケェッ?」の男がいう。


「それやったら、ビートルズのNorwegian Woodしたら、ええん違いますか?あれ、こないな大正琴みたいな音しとるやろ」


ヒゲの男がその曲をギターで弾き、浩司ばいが大正琴で冒頭のメロディを弾く、どこからか歌が聴こえてくる。素晴らしい英語の発音だ、誰かと思えばオーストラリア人の男がいつの間にかスマホで歌詞を探しだして、歌っていたのだ。


知らぬ間に選挙のプロの女もやってきて、さらにいちげんさんの女も歌声につられてなのかどうか知らないがやってくる。


すると、浩司ばいが選挙のプロの女を見て、「アレ…、どっかで会うたことあんな…」と言いだす。女のほうも身を乗り出して浩司ばいを見る。


「あっ!音響さんやんか!こんなところで何を、大正琴なんか弾いてはるんですか!」と、甲高い声で驚きを素直に表現する。どうやら二人は何らかの現場で一緒に働いた仲なのであろうことは場の全員に伝わった。


ここでは偶然をよく目にすることがある。酒場というのは、大体そうなのかも知れないが。


オーストラリア人の男がヒゲの男に訊いてくる。


「あなたは音楽家として活動していたのか?」


「そう、4年くらい前まではSIBERIAN NEWSPAPERというバンドをしていた」


そういいながら、ヒゲの男は自分が属していたバンドがどのような楽器編成によって成立していたのかを説明する。オーストラリアの男は、小さな声で何度も「SIBERIAN NEWSPAPER…、SIBERIAN NEWSPAPER…」と、まじないのようにつぶやく。


そして急に過去の記憶と一致したように、ハッとした顔をする。


「私はシドニーであなたのバンドの曲を聴いたことがあります。そう、ラジオから流れてきた、そのバンドの名前が確かにSIBERIAN NEWSPAPERだった。名前がユニークだから憶えてる、ヴァイオリンが鳴っていた」と、ヒゲの男に告げる。ヒゲの男は苦笑する。


「ほんまに阿守の仕事は金にならんかった!おもしろかったけどな!」と、浩司ばいがリフレインする。


「演奏家本人たちに満足な金が入らなかったのですから、あなたのところまで行き渡るはずがないじゃないですか」と、ヒゲは論点をすり替えて反論する。


ワハハと笑いながら「それもそうやな!」と、浩司ばいは納得の様相をみせる。浩司ばいは気が済んだのか、選挙のプロの女と猛烈に何かについて論じあっている。その気迫を横目にオーストラリアの男は、「これ、大阪って感じですね」とわかったようなことをいう。


オーストラリア人の男はヒゲの男にこの店を宣伝しようじゃないかと心強いことをいってくれる。


「うーん、宣伝してくれるんはええんやけど、ここの店の名前がそろそろ変わるんですわ」と、口を開いたのは万作。


「それ、面倒ね。なんという名前になるんですか?」


ヒゲの男はテーブルにある紙に、新しい店の名前を書く。


kunt Coromansa /クント・コロマンサ


それをみて、オーストラリア人は顔を真っ赤にして爆笑する。ヒゲの男もこのオーストラリア人がどこのどの部分が引っかかり、笑ったのか大体のことはわかるので、とくに驚きはしない。


「kunt」がとてつもなく卑猥な言葉を連想させるのである。スペル自体は違うのだが、つまり、連想する先は女性器である。


いっそ、「CO」を除けて「ROMANCE」か「ROMANSA」にしてはどうかとオーストラリア人が対案を持ってくる。これにはヒゲの男も爆笑する、一体何の店だかわかりゃしないねと三人の男は大笑いする。


これに釣られて外国人がやってきたら、そこにいるのは不機嫌そうに憮然としてる二人のヒゲ面の男なのだから、ロマンスを求めてやってきた客からしたらたまったものではない。


「英語のわかる外国人なら、みんながインスタにこの店を載せるはずだ」と、オーストラリア人の男は腹を抱えながら、太鼓判を押してくれた。


残念ながら、字画がよくないのだ。ROMANSAでは。


昼から卑猥な話しで失礼した。だが、一番盛り上がったのだ。


ホームシックにはならないのか?とヒゲの男が訊くと、彼は船が恋しいのだと、自身がシドニーに係留している大きな船の写真を見せてくれた。


ヒゲの男は船酔いがひどい。


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by amori-siberiana | 2017-09-30 13:17 | 雑記 | Comments(0)


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