カテゴリ:雑記( 198 )

こんにちは、北濱にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を経営するヒゲの総帥こと、阿守のブログです。


さて、昨日のこと。


ヒゲの総帥は二日酔いである。ところがこれまでの二日酔いとは違い、ウイスキーの二日酔いはビールなどのそれとは違ったもので随分と楽である。朝から動けることを確認したヒゲの総帥はそのまま支度をしてドマツ会計事務所のセミナールームへ向かう。今日はスタートアップ・ウィークエンドの二日目が開催されるのだ。今の自分より10才から20才ほど若い人間が何を考えており、どんなコミュニケーションを取り、どんな野望を持ち、どのような切り口で達成させようとしているのか知ることはヒゲの総帥にとっての至上命題であるのだ。


参加している面々は日本人もいれば外国人もいる、大学生もいれば社会人もいるという具合でそれぞれがチームに分かれて起業のアイデアと実現性を審査員に提出するというものである。ヒゲの総帥が二日間目の朝に到着したときには、すでに各チームがそれぞれの事業について目標を定めており、それを詰めていくという日である。イベントがあることを見越してアイデアを持ち込んできた人間もいれば、その場でアイデアを考える人間もいる。なんだか音楽のジャムセッションと似ているようだなとヒゲの総帥は自らの経験によってのみ例える。


ヒゲの総帥は耳をダンボのようにして、周囲の話しをいろいろ聞いている。そんなときヒゲの総帥に声を掛けてくるものがある、そのチームの起業アイデアはちょっぴり変わったレストランであるのだが、そのなかのメンバーがヒゲの総帥がカフェの経営をしているということで意見を訊きたいと声を掛けてくれたのだ。ヒゲの総帥は飲食の経営をしてまだ半年にも満たないのであるが、恐縮しながら彼ら彼女らのデスクへ案内されるのであった。するとガラス越しに全身が黒ずくめの男が見える、もちろん言わずもがなハイタッチ冷泉の登場である。冷泉は鬼コーチとして今回のイベントに参加している。


どんなレストランが面白いのだろうという助言を参加者から求められた冷泉は「SMの女王がずっとソファにおって…、そこらへんにおるおっさんらをシバキまくる…ぐふふ」といって一人で不敵に笑う。助言を求めた参加者はいう「失礼を承知でこんなこと言うんですけれど…、本当にカタギのかたですか?」、それを受けて冷泉はハッとした顔をして「めちゃくちゃ…、カタギ、です」と弁明をする。


しばらくしてヒゲの総帥はドマツ先輩に挨拶をして会計事務所を出て店に戻る。この夜はアラタメ堂のボードゲーム・イベントがあるので、その準備をしなくてはいけない。


店に戻るとアラタメ堂のご主人がやってくる、アラタメ堂は紙袋のなかに詰まったボードゲーム各種を店内のそれぞれのテーブルへ陳列する。陳列にはそれなりの法則性があるようなのだが、ヒゲの総帥にはまったくわからなかった。やたら目がキラキラした女と静かな男がやってくる、この二人もボードゲームが好きであり、そのきっかけは近所にあるボードゲーム・カフェなるものに足を運んでからというものだそうだ。いろんなカフェがあるものだ、案外SMの女王が常駐するレストランもアリかも知れんなとヒゲの総帥は考えたが、SMクラブとそのレストランの差別化がどうなるのかまでは謎であった。そしてその謎を冷泉に問う気もさらさらなかった。


ぞくぞくと来客がある、オルガン横の奥のテーブルでは山の向こうから来た男とブルーグラスの男とアラタメ堂たちが数字の書かれたカードに興じる。窓側のテーブルではヒゲの総帥と中年の星YUJIがガイスターというチェスのようなゲームに興じて、舞台正面のテーブルではアハハの女やゲームセンス・ゼロの女とその手下などが声を荒げて魚市場の競りのようなゲームをしている。入口付近の一番寒いカウンターのところでは常連のガルパンの男と斥候の男がビールを飲みながら星師匠と話しをしている。万作は厨房であれやこれやと創作料理に明け暮れる。


海賊の末裔もくればバイオリンを持つ女も雪崩れ込んでくる、しまいに冷泉までやって来る。来店の決着がそろそろついただろうという頃合いで人狼がスタートする。預言者である中年の星YUJIが初日の昼から飛ばし気味に発言をして、早速吊られる。屁のつっぱりにもならない預言者の死亡で人狼側が有利かと思われたが、人狼陣営を助けなくてはいけない裏切り者役のアラタメ堂が当てずっぽうにも各プレイヤーの白黒を正確につけてしまうことになったので人狼側は無残にも裏切り者の裏切りにより負けてしまうこととなる。


この日、アラタメ堂はトーナメント表を作ってきており、不朽の名作「バトルライン」なるゲームでトーナメント戦をするのだと意気込んでいた。


ところが本来なら10分程度で終わるこのゲームを40分にもわたる戦いをする女たちが現れたのでトーナメントは途中でポシャる。ヒゲの総帥はそれが愉快で愉快でたまらない。ゲームセンス・ゼロの女とバイオリンを抱えた女の100年戦争はギャラリーを含めての泥仕合を呈しており、どこかしら第三国の軍事介入でもない限りは終わりそうにないのであった。


夜も更けてゲームの盛況さが夢うつつに消え去ろうとした頃、ヒゲの総帥はゲームセンス・ゼロの女と平尾先生の名刺について打ち合わせをする。先日、ゲームセンス・ゼロの女が作成した陸サーファーの上仲の名刺。その出来ばえが良いものだったので、ヒゲの総帥はこの女に平尾先生が世の中へ出陣できるような名刺をデザインして欲しいのだという。ゼロの女は快諾してくれて商談はまとまる。


アラタメ堂は長年の友人であるドローンの男と二人で何やら高速道路を建設してどうのこうのするゲームをやっていた。


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by amori-siberiana | 2017-12-25 12:25 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北濱にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を経営するヒゲの総帥こと、阿守のブログです。


昨晩はしこたま飲んでしまった。冷泉が珍妙なるゲームをはじめたことにより、ヒゲの総帥とアラタメ堂のご主人はグダグダにされてしまった。腰を振りながらウイスキーの入ったショットグラスをあおるアラタメ堂のご主人はサーカスの道化のようであり、ピカソの描いたアルルカンの風情を持っていた。ヒゲの総帥も酷い二日酔いなので、読みにくい部分もあり明晰でない部分もあろうが許していただきたい。


さて、昨日のこと。


ヒゲの総帥が昼過ぎに店へ行くと、万作と野球狂の男が薄暗い店内で何かしている。元来、何をせずとも薄暗い店内ではあるが今日にいたっては随分と暗い。よく見るとテーブルの上にプロジェクターが置かれて、そこから発せられる光線は万作の描いている壁画に像を結んでいた。そこに投影されていたのは今から半世紀ほど前のドラマ「赤影」であった。このプロジェクターそのものは店のものではなく、ハイタッチ冷泉が自社の東京オフィスから店に持ち込んでくれたものである。猫のひたいのような店にしては上等なものであるが、上等なものなればこそ使い道に困っていたわけだが、念願かなってプロジェクターにやっと火が入ったという具合であろう。野球狂の男も満足げにプロジェクターからの映像を見ながら「これでテレビを持って来なくてよくなった」と嬉しそうだ。


これまでクントコロマンサで開催されていた野球を語る会においては、この男がいつもわざわざテレビを店に持ち込んでDVDの映像を流していたのだそうだ。


ヒゲの総帥はそのまま店を出て北濱のオフィスへ向かう。そこで作業をしたあと北御堂にあるドマツ会計事務所へ向かう、凍えるほどではない冬の夜にずらりと並ぶ御堂筋のイルミネーションはどうにも間抜けに見えた。夜を無暗に飾り立てて何を隠そうとしているのかと考えながらヒゲの総帥は歩き、15分ほどでドマツ会計事務所へ到着する。


到着するとドマツ先輩がおり、ヒゲの総帥は挨拶をする。今日から三日間にわたってスタートアップ・ウィークエンドというイベントが会計事務所の広いセミナールームで開催されるのでヒゲの総帥も参加をするというのだ。このイベントは起業のシミュレーション・イベントであり、三日間でまとめあげた起業プランを最終的に審査員へ提出して意見をもらうというものである。ヒゲの総帥はイベント自体にも興味があり、さらにはドマツ先輩自慢のセミナールームを見たかったのと、冷泉をはじめとして見知った人間たちがゲストで何かを論じるのを見たかったのもあり参加することに決めた。太陽の照っている時間にシラフのドマツ先輩や冷泉を見てみたかったということだ。


都会的なセンスに溢れ、各部屋がガラス張りになり日光もふんだんに取り入れられるようにデザインされたセミナールームはなるほどドマツ先輩が自慢するのも納得である。御堂筋を走る政治結社の声さえ聞こえなければ、ここは日本ではないようである。


ぞろぞろとイベントに参加する人間たちが集まってくる、少し遅れて全身が黒ずくめの男がセミナールームに入ってきた、ハイタッチ冷泉の登場である。参加者全員でご飯を食べ、最初にこのイベントの主旨などが説明され、そこから日程とタイムスケジュールが発表される。この参加者たちがこれよりチーム分けされスタートアップのアイデアをまとめて発表するという一連の作業がはじまるのである。


ヒゲの総帥は2時間ほど参加させてもらい初日は途中退席することとなる。そのまま北濱のオフィスへ向かいアラタメ堂のご主人が主催する人狼大会に参加をする。ヒゲの総帥が到着したときにはすでに第一戦が始まっており、幾人かがうつむいて、幾人かが顔をあげていた。司会は人狼マイスターの男であり名調子の柔らかい声が会場に響いている。ヒゲの総帥は第二戦から参戦することとなった。早めに終わった人狼の会、その参加メンバーを連れてヒゲの総帥はクントコロマンサへ向かう。


アラタメ堂のご主人、リンクスのオーナー、ドローンを飛ばす男、レイヤーの女、ライターの男、酒が飲めない男、ヘルベンツ、ヘソピのOLなどがヒゲの総帥に続いて堺筋を西から東へ横断して店にやって来る。すでに店内には常連のガルパンの男、不思議な女、グラフィックデザイナーの男、そして大学講師の男、乾いた笑い声をあげる不動産デザイナーの男が佇んでいた。


店内の熱気はどんどん上がり、真夏のような温度と湿度になるので氷の入った酒がよく売れる。いつしか冷泉と斥候の男もやってきて大団円に加わり皆で七輪を囲む、「これじゃ、昨日と同じ光景ですね」とヒゲの総帥は苦笑する。そういえばこの者たちは昨夜は同じシチュエーションで連歌をしていたのではなかったか。


冷泉が口を開く「笑ったらアカンいう、ゲームしませんか」と。不動産デザイナーの男がスタートの号令を出す、これで七輪の周囲にいる人間は誰も笑ってはいけないのだ。ヒゲの総帥はレイヤーの女に質問する「斥候の男の趣味は何だと思いますか?」と「ブルマ集め」と即答するレイヤーの女の答えにヒゲの総帥は笑い転げてしまい自爆する。最初は一度か二度のつもりであったが、気がつけばウイスキーのボトル一本を空けるほどに遊んでしまった。


ちなみに一番飲んだのはアラタメ堂のご主人とヒゲの総帥である。不動産デザイナーの男はバイクで帰るので笑ってしまった場合は冷泉が代わりに飲むことになっていたのだが、酩酊している冷泉はそれを忘れて不動産デザイナーの男を笑わそうと必死になり、笑ったが最後自身で酒を飲むことになるのであった。


本日、アラタメ堂のイベントがクントコロマンサである日だ。そしてなにより亡き父の誕生日でもある。ヒゲの総帥の父親は日本刀のコレクターでもあったが、ジョークの切れ味は悪かった。年寄り受けは良かったのだが。


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by amori-siberiana | 2017-12-23 12:03 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北濱にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を経営するヒゲの総帥、阿守のブログです。


冬至である。昼の時間がもっとも短い日である。ただし世界中でというわけではなく、北半球に限ってのことであるからして、地球のどこかはこの時期に酷暑が訪れているのであろう。そう想像するとなんとなく世界の広さを感じて豊かな気持ちになる。酸素の濃度が多少なりとも濃くなったような気がするのだ、多様な価値観とは人の好き好きの一面だけを捉えた単純なことではない。多様な価値観のという言葉の土台となっているのは、知らないことを知っているというソクラテスの原初的な哲学風景なのではなかろうか。


さて、昨日のこと。


ヒゲの総帥は北濱のオフィスでコーヒーを飲んでいる。客から返信されてくるアンケートの内容に爆笑したり考えさせられたりしながら遊んでいる。昼過ぎになりヒゲの総帥はデスクを立ってオフィスの近くにあるツタの絡まる青山ビルへ向かう。この男が青山ビルへ向かうということは、つまりギャラリー「遊気Q」に行くということとほぼ同意である。ヒゲの総帥は我が家のようにギャラリーへ入っていく、そこにいるのは今月26日までは大幅な値引きが行われている数々の商品と御年301才のギャラリーの女である。ギャラリーの女の隣には革ジャンのよい目つきをした口ヒゲをたくわえた男がいる。この男に会うのがヒゲの総帥が来廊の目的であるのだ。


この男は神戸の靴職人である。先日、ギャラリー「遊気Q」にて開催された彼の個展、そこにヒゲの総帥が訪れたときどうにも気になる靴があったのだ。馬の皮を使い渋い赤銅色に染まった靴はその質感や手触りといい、気品と緊張感を持っていたのでヒゲの総帥は気に入った。ところが試履してみると足のサイズが合わない、ギャラリーの女からの説明では一点ものなのでそれなら靴職人本人から採寸してもらうがよかろうと誘いを受けたのだ。まことに偶然であるが、総帥が狙っているのと同じ靴を狙うものが北濱界隈にあるという。ギャラリーの女がいうにはそれは人間ではないのだそうだ、そう、つまるところヒゲの総帥と同じ靴を愛でたのはエイリアン(10w Galleryのオーナー)なのである。


ヒゲの総帥は靴職人の男と靴のことについて話し込む、こうやって自分が詳しくない分野について話しを聞くのは自分の脳内の白地図にどんどんと文字や絵画が描き込まれていくようで愉快なのだ。このヒゲの男のこういうところは幼い頃より何も変わらない。


「今、お履きになっている靴のサイズを見せてください」と靴職人はいう、ヒゲの総帥は自分の靴のサイズを知らないので靴を脱ぐ。靴職人はその靴を受け取って文字を読みとる「7と1/2か」とフェデリコ・フェリーニの映画のタイトルのような言葉をつぶやく。「この靴は女性用に作っているので、阿守さんの足のサイズではこの靴は作れないのです」と靴職人はいう。足のサイズや足幅などを考えてみると、どうにもヒゲの総帥がお気に入りの靴のフォルムにはならないのだということを説明してくれた。


「阿守さん、ちなみにこれはどこの靴を履かれているのですか」と靴職人は問う、「はい、フェラガモです」とヒゲの総帥は訊かれたままを答える。「お幾らでした」とさらに問うてくるので「14万円くらいだったような気がします」と正直に答える。ギャラリーの女は「この人(ヒゲの総帥)はね、いいものを買って、それをずっと使う人なんですよ」とヒゲの総帥のファッションにおける思考を補足説明してくれる。「そうなんです、だから靴も二足しか持っていませんし、服も10着程度しかありません。こうなるとファッションというよりもユニフォームのようなものです」と自嘲気味に笑うヒゲの総帥。


「ちなみに靴の業界というのは明るくなってきているものでしょうか」とヒゲの総帥は問う。「材質については悪くなってきています。例えば阿守さんが履いておられるフェラガモも20年前と今では同じ牛革でも質が全然違います」「つまり、今は質が落ちていると…」とヒゲの総帥が聞き返すと静かにうなずく靴職人の男。「今の牛革というのは肥料に特別なものをいれて成長を異常に促進させて取っているのです」「ええっ、そんなブロイラーみたいなことが行われてるんですか」とヒゲの総帥は驚く。ブロイラーなどは人間の技術介入により成長促進と肥大化が極端に行われて、成長したまま放っておくと自分で歩行すらできなくなるのだ。靴職人の話しは続く、「さらには革というのは先物ですから、資本があるものが大量に買い占めます」「そうすると革の価格は自然と上がっていきますね」「そうです、高くても品質の悪い革が一般的になってしまうのです」という。これは技術の成長であろうか、それとも罪深き業なのであろうか、ヒゲの総帥はなんだか心が浮かない気持ちになる、割り切れない気持ちになる。牛たちのために般若心経でも読んでやらないといかんという気になる。


ヒゲの総帥と靴職人はそこから人生や仕事について話し込む。ヒゲの総帥が自身の数奇な人生を語り、靴職人も自身の数奇な人生を語る、ギャラリーの女は椅子に座って澄ましている。ヒゲの総帥はギャラリーを後にして一旦は北濱のオフィスに戻ったもののすぐに店へ行く。


ヒゲの総帥が到着してしばらくすると店で今月30日にイベントをする女将軍の二人がやってくる。アハハの女とアルセア・イズ・スリーピーである。ヒゲの総帥は女将軍たちとイベントの概要について3分くらいの説明をする、そこからは三人で七輪を囲んで解決することなきどうでもいい話しを延々とする。ヒゲの総帥がいうには歌合戦には以下のルールがあるという。


①歌合戦は互いがステージにいる状態で行われる。


②審査員が数名おり、一曲一曲について論評を述べて採点していく。


③オリジナルでもカバーでも良い。


審査員の人選もヒゲの総帥の厳正なる設置基準を超えたものだけがその任にあたれるという、ワルシャワで行われる5年に一度のショパンコンクールのようにしっかりしたものである。


ここで豪華審査員の陣容も紹介しておかなければならないだろう。※ところどころ伏字なのは女将軍たちの子飼いのファンたちが審査員を事前買収しないようにという懸念からと、審査員の安全上の理由から。


(審査員長) アラ●メ堂のご主人 ※某音楽雑誌社ライター


(審査員) ヤ●トコ ※某シベリアンなんちゃらのベーシスト


(審査員) NASAから超大物ゲスト来たる! ※現在、募集中


ヒゲの総帥が七輪を囲んで女将軍たちと話しをしていると、ギャラリーの女がやってくる。続いてエイリアンが仲間のエイリアンたちを連れてごっそりやってくる。オルガン横の奥の席とその手前の席にてギャラリーの女を含めたエイリアンの酒盛りがはじまる。店内で賑やかにやっていると全身黒ずくめの男が店に入ってくる、ハイタッチ冷泉だ。ハイタッチ冷泉は店に入って、オルガン方面を一瞥するとヒゲの総帥しか聞き取れないような声で「あそこ、ヤバイですね」という。奥の席ではエイリアンたちがAK-47のトリガーに指をかけたかのような言葉の弾丸を飛び交わせあっている。


常連の不思議な女とガルパンの男、斥候の男もやってきて、いつしか七輪を囲む。エイリアンの仲間の女が「やっぱり日本よね、こうして車座になっているとね」という、ヒゲの総帥は「こうなると連歌でもやりたくなりますね。季節もいいですし」と粋人めいたことをいう。それなら一丁やってみるかという流れになり、全員で歌を繋いでいき短歌とすることになった。


しらこなに~  (不思議な女)

わらべあしあと~  (ガルパンの男)

うたげあと~  (斥候の男)

ゆうかいされて~  (エイリアン)

はこづめになる~  (エイリアンの仲間)


まるで京極夏彦の世界である。


しばらくするとエイリアンの仲間の女が沖縄の出自だということで三味線を弾きながら沖縄の労働歌を歌ってくれることになった。ヒゲの総帥も不思議な女から一曲だけ沖縄の唄を教わったので最近はギターの伴奏をしているのだ。不思議な女が勧めてくれた沖縄の女性歌手の歌は魂そのものであり、優しさと鋭さを持ってヒゲの総帥に突き刺さってきた。不思議な女がその歌手のことを話しをするとどうやらエイリアンも知っているそうだ。話しを聞いていくと知っているどころか、不思議な女が持っているCDのジャケットデザインをしたのはなんとエイリアンその人だったのだ。この偶然に車座一同が驚くこととなった。


そして車座一同で「童神(わらびがみ)」を歌うこととなり、夜はどんどんと更けていった。店内には沖縄の言葉とさきほどあぶったスルメの匂いが漂っているのである。



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by amori-siberiana | 2017-12-22 17:07 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北濱にて猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を経営するヒゲの総帥こと、阿守のブログです。


さて、昨日のこと。


ヒゲの総帥は先日のクレームを受けて早速ではあるが店についての聴き取り調査に乗り出した。とはいってもそのクレームの提出の仕方は一風変わったものである、店側からの10の質問に答えてもらうというものだ。ところがこの質問の内容も随分と珍妙なことが書かれている。一体、これのどこが店の聞き取り調査なのだか本人以外は判然としないが、本人はかれこれ10年ほど殺るか殺やれるかのクレームばかりの世界で生きてきたのであるのだそうで、調査はこれでいいのだと勝手に納得している。この忙しい歳末に付き合わされるほうはたまったものではないだろう。


例えば質問の8番目など誰が問われたとしてもよく意味がわからない。どういう脈絡からの質問なのか。


◆質問:08


ゴーギャンの作品に「我々はどこからきて、我々は何者で、我々はどこへ行こうとするのか」というタイトルのものがあります。あなたはどこでも行けるとしたら、どこへ連れて行って欲しいですか?


さらに質問の9番目にいたっては滑稽味を帯びてさえいる、本当にこれで客側と店側の何がわかるというのであろうか。それでもヒゲの総帥はヒゲの総帥自身でなんらか考えがあってのことであろうから放っておくとする。心理ゲームなのかといわれれば、ヒゲの総帥はそういったどうにでも捉えれる曖昧な疑似スピリチュアルの世界とは本質的に全く違うという。


◆質問:09


あなたは弁護士です。今、目の前では柿坂万作とヒゲの総帥に対しての最後の審判が行われていますが、どうも状況は芳しくありません。このままでは二人とも地獄へ落ちてしまいます。弁護士のあなたがこの二人の情状酌量を求めるとすれば、どの点を訴求して地獄行きを回避させますか?


さて、ヒゲの総帥は顧客にメールを送ったあと、休憩がてらに外で出る。まだ何も食べていなかったので北濱のオフィスからほど近くにある「44区」と看板がかかったフレンチのレストランに入ろうとしたが、今日のランチはパプリカソースと黒板に書かれていたのでピーマンが苦手なヒゲの総帥はそこを敬遠して近くにイタリアンに入ることにした。


それからボンヤリする時間を過ごして店に向かう、美容デザイナーの女と同じタイミングでアラタメ堂のご主人がやってきて、そのあとで常連のガルパンの男もやってくる。ヒゲの総帥とアラタメ堂のご主人は新しく入手したというボードゲームに興じる。明後日にクントコロマンサで開催されるイベント「アラタメ堂の挑戦状」のために大量のボードゲームを紙袋のなかに詰め込んでやってきたアラタメ堂のご主人はよほど重かったのであろう肩で息をしていた。


美容デザイナーの女はアラタメ堂のご主人とは初対面であるが「阿守さんのツイッターでお顔を何度も見ているので、初対面という感じがしません」とのこと。ハイタッチ冷泉と並んでブログに書かれることの多いアラタメ堂のご主人については、ボードゲームばかりをしてて本来はどんな仕事をしている人なのですか?と第三者から訊かれることが度々ある。そのことをヒゲの総帥は笑いながらアラタメ堂に伝えると「もう僕のことは放っておいてくださいよ、ちゃんと仕事してるんですから」と苦笑で返してくる。それから温泉マニアの男もやってきてガルパンの男となんらか話しをしている。


夜も更けた頃、ヒゲの総帥と同郷の老人がやってくる。この同郷の老人が店に来るときは常に酩酊状態であり、もちろんのこと今夜も酩酊状態である。いつも井上陽水の「少年時代」を歌ってくれとヒゲの総帥に頼んできては、ヒゲに酒を奢るのが恒例なのであるが次に会うときにはそのことをすっかり風と共に忘れている。もちろん同郷だということも忘れている。


「なにか弾いてくれんかね」とこの夜もヒゲの総帥に頼んでくるので、ヒゲの総帥は少年時代を弾き語りする。老人は「!」と驚愕の顔をする、「僕はこの曲が本当に好きなのだ、なぜかしら好きなのだ、それなのにどうしてあなたはそれを見越したように突然弾きだせるのだ、こんな偶然があるものか…」という。これで最低でも三度目であるのでヒゲの総帥はおかしくてたまらないという顔をする。ヒゲの総帥はさらに自分の郷里が香川県であることをいうと、老人の目は見開いて「こんな偶然が…」と言葉を失う。もちろんこれも最低でも三度目である。


ドンドンと全体重を階段に乗せてのぼってくる音、冷泉がやってきたことを示す音である。ゴガッという音がして締まりの悪いガラス戸が開け放たれる、ぎょろりと店内を仁王のように見回して「ぐふふ」と笑いながら入店してくるのは、やはり冷泉だった。


老人はヒゲの総帥と冷泉にお前たちは何をしている人なのかと問う。ヒゲの総帥は「求職中」ですと笑いながら答える、冷泉も笑いながら「パソコンの先生…、みたいなもんです」と恐縮して答える。ヒゲの総帥はこの冷泉のパソコンの先生という言いかたが面白くて仕方がない、老人はパソコンの先生がそんな真っ黒い格好をして勤まるのかねと質問するが、それは一般論としてもっともである。


老人は今は現役からリタイヤして旅行三昧なのだそうだが、それでも最先端技術の講義などがあれば出席しては「現在」を捉えようとしているのである。「人間の感情をすら持つコンピューターが出来たとき、それを日本相撲協会のいざこざにあてはめたらどうなるのか?」という珍妙たる質問をしてくる老人。「人間の感情を持ったコンピューター…、それやったらやっぱり次はコンピューター同士が相撲協会で談合とかするんやないですか」と冷泉は答える。総帥は老人から奢られた日本酒とウイスキーでへべれけになってボンヤリしている。


老人は自分が香川から18才のときに親類を頼って上京した話しをする。行きたい学校があったがそこへは行けなかったという、そこまで話してまた何か歌ってくれとヒゲにいうのでヒゲと冷泉は一緒に歌う。老人は帰宅して、いつしか冷泉に「地獄車(ヘルベンツ)」と一方的に名付けられた女もやってきて歌だけはそのまま続く。


老人は布団のなか、自らがライオンになった夢でも見ているのであろうか。


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by amori-siberiana | 2017-12-21 16:05 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北濱にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を経営するヒゲの総帥こと、阿守のブログです。


ヒゲの総帥がこの店の再建に乗り出して、5ヵ月が経過することとなった。店の売り上げは周囲の協力が絶大であり、おかげさまで以前より300%~400%上がることとなっている。何よりいろんな人間と知り合えるキッカケになり、またヒゲの総帥自身が音楽への情熱を取り戻すこととなった。


さて、それでは版画家の柿坂万作はどうなのだろうか。彼は彼なりに今の状況をどのように捉えているのであろうか、「うーん、ワシは現状維持やったらなんでもええんです」とこれまでにも何度かヒゲの総帥は万作の言葉を訊いてきた。この現状維持というのはすでに破綻していたことなので、正確なことばにすると現状維持ではない。他力本願での現状維持などよほどの人徳者か宗教家でないと得られない境地である。店を存続させていく現状維持がままならぬからヒゲの総帥がやってきたのであり、その異常事態宣言を現状維持と捉えて冬の日差しに愛でられながらボケられては困るのだ。


ところがこの万作という男、ヒゲの総帥がやってきて現状維持をさせていることすら自分の運の良さと徳に由来するものと考えているフシがある。今の自分を成長や変更させると風邪でもひきかねないというような顔をする、その証拠に万作が抜本的な経営の見直しに着手したり意見したことは一切ない。潰れる前の状況のまま経営しているのである、今のはヒゲの総帥や仲間たちの努力による潰さない経営がそれを凌駕しているので事なきを得ているが、これではいつになってもヒゲの総帥は店を離れられない。ヒゲの総帥はそろそろ北濱独立のために次の段階へ進まなければいけないのである。


さて、昨日のこと。


ヒゲの総帥は店についてのクレームを複数の客より幾つか受け取った。その内容たるや看過できるようなものではなかった、こうしてクレームをいってきてくれる客はごく少数であろう。つまり氷山の一角であり水面下で潜在的に苦情を持っている人は随分と多いのではなかろうかとヒゲの総帥は考える。ちょうど頃合いも好い。年末の大掃除ということでヒゲの総帥はこれまでに店に来てくれた客に向けて挨拶がてら聴き取り調査を開始することに決めた。


クレームといえば聞こえは非常にネガティブなものになってしまっているが本来の意義は全然違う。世の中を改善してきたのはその根本にあるのはクレームなのだ。ルターの宗教改革も本能寺の変もアメリカの南北戦争もゲバラのゲリラもマルクスの共産党宣言もすべては大きくクレームという範囲に集約できるのである。そもそもクレームというのは正統な権利のことをいうのであって、言葉が日本へ来て熟成され、いつの間にか本義から離れてネガティブ・シンキングをイメージするものになってしまっている。いや、この際ネガポジの話しなどどうでもいいのである。振り返りというものは重要であり、今という現在は過去の集積によってのみ成立しているのだ。


ヒゲの総帥はまた皆に協力を仰ぐことになるのだが、クントコロマンサの大掃除のためにどうかクレームを聞かせていただきたいと願う。


別段、正義の味方を気どっているわけでは決してない。このブログはリアリティドラマである、ひとつひとつの要素はヒゲの総帥からのみ生み出されるものでもなければ、万作から生み出されるものでもない。多数の人の交流によって生まれているものだ、ヒゲの総帥はそれを編纂しているだけである。第一、クレームも出ないような店は存続する意義もないのである。


昨日は客が店内に落とし物をしたとのことで、ずっと捜索していたが出てこない。無くしたと思っていたギターのチューナーはケガの功名で出てきたのだが、どうにも落とし物はまだ出てきてないので捜索継続中である。



お店へのご意見などはこちらまで


takaoamori@yahoo.co.jp


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by amori-siberiana | 2017-12-20 11:06 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北濱にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を経営するヒゲの総帥こと、阿守のブログです。


将来の夢はゲリラです。でも、エロ行為はしますがテロ行為はしません。ダダイスティックな破壊活動にも興味がありません、ゲリラ救助とかゲリラ奉仕とかゲリラ寄付とかゲリラ親切とか、そういうものをできる人になりたいです。


2005年から2014年までSIBERIAN NEWSPAPER(シベリアンニュースペーパー)というバンドをしていました。元来はSOVIET HIPPIES(ソビエト・ヒッピーズ)という名前で活動していましたが、バンド名が過激だということで前者の名前に変更いたしました。革命を起こしたかったのです。2006年にはイギリスへ遠征して、2007年にはフジロックフェスティバルに出演しました。歌はなくバイオリンを中心に据えた異国情緒に溢れた素晴らしい音楽を生み出しました。


2014年に友人たちと会社を設立して内容は自他の安全のためここではハッキリ申せませんが、言葉だけで巧みに人を誘導する情報ビジネスをしておりました。2017年にその会社から離れて、今では沈没しかけていた北濱にある猫のひたいのように小さな喫茶店の再建するため、経営を一任していただいております。ただ、この喫茶店のマスターは僕のことを今の時代に珍しい若手篤志家だと考えているようです。


なかなかおもしろい人生を歩んでいます。社会との関わりかたや接点は変われど、その人間的な本質はあまり変わっていません。今となってはこの生き方を自分が望んだのか他人から望まれたのかも判然としません。


さて、昨日のこと。


先日のイベントのあと店内の電気系統に不具合がでていたので、ヒゲの総帥は電気の専門家のヤマトコに連絡して修理してもらえないかと依頼する。ヤマトコは仕事終わりにそのまま店に向かいますと快諾してくれ、ものの見事に修理を完了する。電気のことならヤマトコさんだなとヒゲの総帥は感動することしきり、「山さんは電気ゲリラだな」と勝手なことを思っている。元来、ヒゲの総帥が困ったときにその内容がなんであれヤマトコを頼りにして断られたことなど一度もないのである。


北濱のオフィスでヒゲの総帥が仕事をしていると、どうにも自分の席から異臭がする。いつかは収まるだろうと済ましていたが一向に異臭は留まることを知らないようなので原因究明に乗り出す。索敵の結果、ヒゲの総帥の靴下の臭いであると特定できた。原因がわかった以上はなんとか対策を練らないと仕事も手につかない。そういえば土曜日から靴下を代えていなかったのだ、土日は過酷な週末でこの男にしては服を替える暇も惜しむほど精勤したのだが、誰もこの男の精勤の結果などを異臭で報告して欲しくないのだ。


ヒゲの総帥はいろいろと逡巡したが結果的には靴下を捨てて、素足で冬の北濱をウロウロすることに決めた。ところがこの杜撰なる男は店に靴を置いたままにしており、今は店内用のスリッパで街中を練り歩いている始末なのだ。なので北濱のオフィスから店まで素足にスリッパという珍妙な格好で悠々と闊歩するのである。人が見ればまずこの男は変人に相違ないという意見になるであろうが、本人の了承のもとにその手に出るのであるから何を思われても自業自得なのだ。そしてすっかり腹を下してしまう。


店に行くと常連の不思議な女とハイタッチ冷泉がすでに来ている。さらにAI(人工知能)の開発者たちが来店して酒を飲んでいる、ヒゲの総帥はさっさと三階へ行きスリッパから靴に履き替えてウイスキーをチビチビやりながら、AIについての思うところを開発者に語りだす。


「どうせならAIが詐欺をするくらいになって欲しい。それとか、AIを麻薬のように中毒性を持つものにする。それぐらいの可能性があってやっと汎用性に繋がるのではないか。そもそも利便性に富んだものは良い方向にも悪い方向にも使い勝手があり威力のあるものでなかろうか。今の世の中は作る前からモラルがどうのこうのリテラシーがなんやかんや言われるが、そんなの気に留めてるとロクなことがない」と存外めちゃくちゃなことを言う。冷泉はそれを聞きながらニヤニヤする。


AIの開発者はAIが自発的に対人において詐欺ができるようになるまでには、まだまだ時間がかかるというが、そんなに未来の話しでもないのではないかという。常連の不思議な女も話しに混ざりAIの未来について語る。そのひとつひとつを丁寧に答えていく開発者の男たち、「あなたが考える理想のAIというのはどんなものか」というヒゲの総帥からの質問に「そつなく雑談できるAI」と答える。不思議な女がAIが人間にホスピタリティをもたらす可能性について語り、皆がうんうんと聞く。その向こうでガルパンの男はスマホを睨みつけながら戦場に戦車を展開している。


「AIとのコミュニケーションは言語を通じてすることになりますよね。ところ変わってペットというのは言語を巧みに操ることができませんが、人間にとってなくてはならない存在を占めています。ペットが持っていなくてAIが持っているのが言語だとしましょう、ならばAIが持っていなくてペットが持っているものってなんでしょう」とヒゲの総帥は頭がこんがらがりそうな質問をAI開発者に差し向ける。「うーん」と唸った開発者はなんだろうとヒゲの総帥に反対尋問をするがヒゲの総帥も同じように「うーん」と唸る。


AIマネージメントの男が口を開く、「AIと人間の大いなる違いならわかります。ある事例について(A)の選択肢の成功例が90%だとします、(B)の選択肢ならば10%です。AIなら迷わず(A)を選択しますが、人間はそうじゃない。可能性が不利に働くと知っていても状況によっては(B)を選択したりします。そこが確実に違います」という。ヒゲの総帥はこの言葉をきいて人間の面目躍如たりえると嬉しくなった。


しばらくするとアラタメ堂のご主人が民泊関連の起業家の男を連れてやってくる。彼は現在は大学に在学中ながら自分の会社を設立した野心家であるのだ。どうやら聞くところによると四国にあるという実家へ戻りたくなく、大阪に自分の存在する意義が欲しいとのことなのだそうだ。ヒゲの総帥も同感であった、このヒゲほどに郷土愛の薄情な男も周囲にいないのではないかと思うほどだ。ところがヒゲの男以上に郷土愛のなさそうな男が厨房にいる、版画家の柿坂万作である。随分と実家には戻っていないのだそうだ。


グラフィックデザイナーの男がやって来る。万作は三階から小説家先生の置き土産であるジャンベを二階へと下ろしてくる、グラフィックデザイナーの男がリズムを叩きだす、不思議な女とヒゲの総帥もジャンベを叩きだして、それに乗っかる。冷泉が人類創生のときのような声でどこにも属さない言語を発して歌いだす。長く長く続くセッションであった。


ガルパンの男は帰るといいだす。冷泉が声明のような音節で「なんで、帰るんやあ~あ~あ~あ~」と歌う、ガルパンの男も粋なもので高い声で同じように「もう~、こないな時間になっとるんや~あ~あ~」と返歌を贈る。その間中でも、ずっとジャンベによって三者のポリリズムは繰り返されている。


行き場のないグルーヴは北濱の夜更けを切り裂くのであった。


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by amori-siberiana | 2017-12-19 13:40 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北濱にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を経営するヒゲの総帥こと、阿守のブログです。


そもそも論、この特に人より優れたものを持っていなさそうなヒゲの男が何故に「総帥」などとある一部の少数民族から呼ばれるのかといえば、それはこの男が以前に音楽仲間と一緒に人を大いに感動させたことがあるのだそうだ。それ以来、敬称か蔑称かはおいといて「総帥」と呼ばれるようになった。大層、熱心に音楽家として活動をしていたのではあるが、ある日、一旦止めてみようということを全員の合議で取り決めて、それで止めているのであるという。


そこから3年ほど経ち、ヒゲの総帥は北濱を根城とするようになり、この地に火をつけてまわってやろうと意気込んではいるものの先立つものがない。明日の生活の確証すらない状態では北濱に火をつけるどころか自分の尻に火がついているようなものなのだ、こういったときアテになるのは、やはりシベリアなんちゃらに縁故のある者たちである。夏以来、店の経営が厳しくなると召喚獣のように度々呼び出されてきた音楽仲間や客たちであり、北濱で新しく知り合うことになった粋人たちであり、その成果もありのらりくらりではあるが年の瀬を迎えることができたのは上等の方であろう。


さて、昨日のこと。


冬の万作祭の第五夜であった。前日(第四夜)は深夜まで店で酒を飲み話し込んだこともあり、ヒゲの総帥が起きると昼過ぎであった。ヒゲの総帥はそのまま店へ行く。半開きになっている黄色い店のシャッターをくぐり階段を上っていくとバイオリンの音が耳に入ってくる、「随分早いな…」と考えながらヒゲが店に入るとやはりバイオリンの音の出所はバイオリン王子であった。なにやら難しそうな曲を難しそうな音階でトレーニングしている姿を見て「彼は音楽家だな」と思いながら自分に何かできることはないかと考えて「僕は飲み屋の経営者だ」と認識して王子の隣でウイスキーをチビチビやりだす。


しばらくしてヤマトコがやってくる、そして最後に小説家の先生もやってくる。万作は厨房で炊飯をして、星師匠は店内を磨き上げる。リハーサルがはじまるが、特に何もすることがないので早々に切り上げて総帥と王子は将棋を指し、小説家の先生は小説を読みだし、ヤマトコはすることがないのでおおかた自分のちんちんでも触っていたのだろう。結局、開店の時間を過ぎても将棋に熱中しすぎて店内に居残る二人は星師匠からシッシッと追い出されるように三階へ移動する。


【第一部】


01.緑の手袋をした私のフィアンセ
02.Slovenian Morning
03.Comical Salute
04.Pluto Lemonsky
05.Good Burning O'silk


【第二部】


01.Hysteria Siberiana
02.Modern Matryoshka
03.Celtic Fifth
04.Miss Silence
05.Perpetuum Mobile


【第三部】


01.The Mint
02.Words Robin Talks Are
03.Ever Frozen
04.柵から逃げ出し亡命する軍馬のはなし
05.サンジェルマンの殉教
06.My Evil
07.世界の果てへ連れ去られ
08.When I Die,I Shall Go Up To Heaven Like That Bird
09.Kimi ga Hoshii
10.Whalerider
11.Crossing the Tundra


第三部の途中、店の階段をドスドスと何者かが上がってくる足音がする。冷泉にしてはその足取りが若干ながら早い、ということはこの上がってくる人間はシラフであるということだ。ということはこの階段を上ってきているのは間違いなく豚である。ゴガッと締まりの悪いガラス戸が開く、案の定やって来たのは大阪のミサイルマンことタッキーであった。ヒゲの総帥が今夜は東京、信州、九州などからクントコロマンサに客が集ってくれたというやタッキーはすかさず「すいません、モンゴルからもです!」と注釈を入れてくる。まるで遠方であれば遠方であるほどそれに比例して信仰心が強固であるような物言いをする。万作はカモメ(When I Die~)の演奏に感動して立ちすくむ。


ウイスキーの飲み方を前日のロックからストレートへと変更した小説家の先生はこのままエスカレートしていくと来年にはガソリンや灯油などを飲んでいそうである。遅咲きの花ほど怖いものはない、そして酩酊した先生はいつものようにヒゲの総帥のギターを伴奏にこの世の終わりを歌い続ける。そのヴェルヴェットな声はいつも以上に深く、聴くものに失笑を与えるものである。王子が驚きながら「なんでみんな、こんなのをまともに聴いてるんですか」という、気がつけばタッキーも歌いだす。


【第四部】


01.冷たい太陽
02.時には昔の話を


タッキーが歌いだすとなれば自然と始まるのが隠れトリスタンなる集まりの洗礼式である。この集まりはヒゲの総帥が隠れキリシタン文化にインスピレーションを受けて惰性と打算と怠惰なるままに作り上げたるナンセンス音楽団であるのだが、これに王子が加わっての演奏をすることになる。


【第五部】


01.Mascaras
02.Great Journey Fantasia
03.Neue Land
04.Elegist
05.Tiger


やっと演奏が終わる。するとバチッという音がして店内の照明が突然と消える。ヒゲの総帥は近隣の人間から「やかましいからいい加減にしろ」と電気を切られたのかと思ったが、どうやら店内での電気系統のトラブルである。なんだか鈴木亜久里のリタイヤの理由みたいだ。ところが店内にいる者でバタバタするものはいない、「こういうのも風情があって良かろう」と済ましているような風流人ばかりである。版画家の万作が気を利かせてローソクと燭台を三階から持ってきて店内に灯す、王子とタッキーは音楽ビジネスの話しをしており、ヒゲの総帥はギターを持って薄暗いステージにあがっては好き勝手にギターを弾く。店内の客は思い思いに音楽を聴いたり、話し込んだりをする。薄暗い洞窟に閉じ込められたような空間と時間を共有すること、それは至福のひとときであり、その至福の根拠は自分たちの生が有限であることを皆が知っているからである。


そして、これはまだまだ革命前夜の話しである。と余った安物の赤ワインをラッパ飲みしながらと密かに不敵に笑うヒゲの総帥なのであった。


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by amori-siberiana | 2017-12-18 14:44 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北濱にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を経営するヒゲの総帥こと、阿守のブログです。


さて、昨日のこと。


ヒゲの総帥は北濱のオフィスでコーヒーを飲んだあと店に行く。この日はヒゲの総帥が音楽家だった時代の仲間がやってきて賑やかにやろうという趣向なのだそうだ。もちろんヒゲの総帥も参加をすることになっており、他にはバイオリンの王子という男が東京から、ドラムを担当する小説家先生が香川から、そしてベースを担当する電気工事士の男が近場からやってくるのであった。


ところがヒゲの総帥にはひとつだけ懸念があるようだ、それが何であるのかといえば先日のことである。音響屋の浩司ばいが店でのイベントのために持ってきてくれたミキサー卓、大きなものなので店の舞台の壁に立て掛けてあったが、その周囲を版画家の万作がギシギシと歩いたとき、あの巨体で床板がたわみその振動でミキサーがどかんと床に落ちる。ミキサー自体は事なきを得たのだが、ミキサー近くにあったコンセントプラグはミキサーが墜落するときに不幸にも巻き込まれ破壊の限りをされ尽くしたのである。


つまり、舞台の上のコンセントが使用できないという状態なのであった。電気がなければどれだけ高価なものであろうが、有益なものであろうが無用の長物となってしまう。万作はなんとか自力で修理しようとしていたが、形の合わないコンセントプラグを買ってきて、それが合わないと知るや数日はそのまま放置となっていたのだ。ヒゲの総帥はヤマトコに連絡をする「電源の復旧のために少し早めに店に来てくれませんか?」との嘆願にヤマトコからは快諾の返事があった。


ヒゲの総帥は店に到着して経理をする、万作はコンセントを復旧させようとするがどうにも上手くいきそうにないのでブツブツ独り言がはじまる。「万作さん、もうそろそろヤマトコさんが来るので後は専門家にお任せしましょうと」とドラマか映画に頻繁にでてくるようなセリフをいうヒゲの総帥。「うーん、なんかワシは役立たずですんません」としょんぼりする万作。「餅は餅屋というではありませんか。ヤマトコさんへまかり間違って絵描きの仕事が来たときには万作さんが助けてあげればいいのです」と適当なことをいう。第一、電気工事士の男にディエゴ・リベラよろしくな壁画の仕事を受注する人間は尽未来際なかろう。


しばらくしてヤマトコが到着する。万作からいろいろ説明を受ける、その話しをふんふんと聞きながら作業は開始される。作業が開始されてから10分が経過するかしないかのところであろうか、いきなり復旧されることとなった。さすが専門家であるとヒゲの総帥は大いに喜び万作は庭を駆け回る猫はこたつで丸くなる。すると小説家の先生が不健康そうな顔つきで到着して、さらにはメガネを新調したと噂のバイオリンの王子もやってくる。そして雁首ならべた音楽家たちはそれぞれセッティングをしてリハーサルをしだす。


王子がいう「あれ?阿守さん、もう音(ギター)が出来上がってるじゃないですか!」「うん、そうだ」「これって浩司ばいがセッティングしてくれたから?」「そのとおりだ」「やっぱ、そういうことなんだ」と王子が笑う。元来、このヒゲの総帥はそれこそ人生のほとんどを音楽家として過ごしていたが、自分のギターの音のセッティングなどには無頓着を決め込んでおり、そういったことは浩司ばいやタッキーや王子に任せきりで何もできないのに偉そうにヒゲなんかを生やしている。「浩司ばいにギターの音を作ってもらって、本番のときは電源をオン・オフするだけでいいようにしてもらったのだ」と他人の功績をあたかも自分の功績のように威張るヒゲの総帥。周囲は呆れる。


リハーサルも無事に終わり、開店時間もやってきて客も入ってくる。星師匠はヒゲの総帥から「万作はアテにならんから、ホットワインを作れるようにしといてくれ」と投げっぱなしにされたので、早いうちからホットワイン用のコップや食材などを買いに行っては店に入って試作品をいくつか作っている。


さて、客のなかには神奈川からわざわざ小説家先生の歌を聴きにきたという変人もいる、そういえばここ頻繁に先生の歌声を聞いているなとヒゲの総帥は考える、不変だと思われた世界が終わるそのとき聞こえるという絶望の音楽はこのようなものではなかろうかと想像したら愉快である。シベリアンなんちゃらという楽団のファンたちが集う、シベリアンなんちゃらを後から知ったであろう人間も来る、宇宙人もやってくれば常連の不思議な女とギャラリーの女もやって来る。バイオリンはギターに合わせて(A)440Hzで調弦されて、演奏がスタートする。店内は熱気でムンムンとする。


【第一部】

01:The Mint
02:Pluto Lemonsky
03:ボクの村は戦場だった
04:Good Burning O'silk
05:Whalerider
06:Modern Matryoshka


【第二部】

01:Perpetuum Mobile
02:Crossing the Tundra
03:Comical Salute
04:Hysteria Siberiana
05:Words Robin Talks Are


【第三部】

01:Kathomandu Noir (?)→Lithuanian Tanze
02:Ever Frozen
03:My Evil
04:When I Die, I Shall Go Up To Heaven Like That Bird
05:世界の果てへ連れ去られ
06:サンジェルマンの殉教
07:Goodspeed


演奏は無事に終わる、セットリストが合っているのかどうかは甚だ謎である、なぜならヒゲの総帥は本番のときにはしこたま酩酊していたのであるから。しかしながらこのセットリストが実際の演奏と合致していたならば、古今東西、「酔っていたので記憶にありません」といって情状酌量を請願する罪人の言い分は成立しなくなり、世の中はマシになるのではないかと思う。


終演後、いつの間にか恒例になった酩酊した小説家先生の歌声が店内に響き、各座席から失笑が漏れだしてくる。場末という言葉が上品に聞こえるほどの世界最低のバーがあるとすれば、多分こんな感じであろうと感じた。






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by amori-siberiana | 2017-12-17 14:36 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北濱にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を経営するヒゲの総帥こと、阿守のブログです。


いつの間にか年の暮れが迫ってきている。別段、迫ってきたところで命を差し出さなければいけないということもあるまいが、ようやく2017年(平成27年)が終わろうとしているのである。とにかく今年は長かった。様々なことが暴発した一年であればその時間の経過は感覚的に迅速であるはずが相場だが、ヒゲの総帥は例外なのであろう。


2017年の最初は神戸で迎えた。何をしに神戸に行ったのかはよく解らないが、仕事ばかりに嫌気が差して心斎橋の風景から逃れたかったのだろう。仕事で取り扱う額面が多ければ多いほどプレッシャーとストレスは相当なものであり、そういうものは一睡したくらいでは取り払われずに蓄積されるものである。一人の顧客から1億や2億を託され、そういう顧客が何人かいるだけで会社やヒゲの収入は安定していたが、それ以上にいつも逃げ出したい気持ちが大きかった。


そしてある男が会社の金を私的流用していたことが発覚する。春は会社の金を使い込んだ男の追及と調査に奔走したが時すでに遅しであった、そして夏には北濱クントコロマンサの経営再建である。ヒゲの総帥からの唐突な救難信号を即座に対応してくれ厚意を示してくれた以前の音楽仲間やファン、さらには旧友や常連客には感謝しかない。そして新しい出会いによってヒゲの総帥と友人になってくれたあらゆる分野の化け物たちにも感謝しかない。


思い返してみると数奇なものである。会社のことがなければクントコロマンサに関わることなどなかっただろう、ヒゲの総帥は会社の金を私的流用をした男を救えなかった。その男のところには再三のように訳のわからぬ輩から電話がかかって呼び出しをくらっていた、その男は涙を流しながら「また、ヤカラ言われるんや…」と絶望した顔をしていた。ヒゲの総帥も男泣きしながら「必ず救い出しますから」と答えて別れることとなった。


この男はヒゲの総帥よりも随分と年上であり、会社の代表者になってくれた男である。何かあったときには矢面に立つ覚悟があり、気風の良さを持っていたこの男を廃人のようにしてしまった連中をヒゲの総帥は許すことはない。今さらながら素晴らしいチームであり有能なろくでなしたちが集まった会社であった。会社で抱えていた業務を他社に引き渡したあとすぐに版画家の柿坂万作より「家賃を滞納してて金もなく店が来月で終わる」と教えてもらう。


立て続けにおっさんたちが自分の目の前で破滅していく様をこれ以上は見たくなかったというのが、この店に関わったヒゲの総帥の本心である。盛者必衰の自然の摂理、潰れるべくして潰れるという社会的淘汰の掟に反旗を翻したかったのだ。庭園というものは人の手を入れずに放っておけば薄情なまでな荒地となる、為す術もなく放置したままにせず、雑草の一本一本でも丹念に摘み取っていけば何とかなるということを試したかったのだ。


正直、ヒゲの総帥は北濱クントコロマンサに思い入れがあったわけではない。この地は好きであったが、この店に執着があるのかといわれればそんなことはどうでもいいことだった。店があればあるに越したことはなく、なければないで他に幾らでも代わりはある。ところがそれが自分の目の前で起きるとなると話しは別になってしまう。それはごく自然に「こうすれば難を逃れることができる」という生者の発想と結びつくのだ。イエスの復活然り、エジプトのピラミッドの中にいるミイラ然り。


目に見えるものでなくなって困るものなどほとんど無い。それは人でもそうだ。


ルソーは「人は二度生まれる、最初は存在するために、次は生きるために」という。同感だ、そして蛇足を承知で恐れ多いことながら言葉を付け足すとすれば、「人は二度死ぬ」ということをヒゲの総帥は考えている。最初は物質としての死を迎える、そして次にはヒゲの総帥の心のなかでその人が死ぬのである。目に見えない部分、手で触れないところで死していく。それでやっと死ぬのである。


さて、昨日のこと。


ヒゲの総帥は北濱のオフィスで国際宇宙ステーションが大阪上空を通過するというので、その時間を調べている。「アラタメ堂、午後18時過ぎに僕たちの頭上を国際宇宙ステーションが通過しますよ」と隣に座って仕事をしているアラタメ堂のご主人へ嬉々として伝える。「そうなんですか、そんなの見えたりするんですか」とアラタメ堂は言いながらパソコンをガチャガチャしだす、おおよそ国際宇宙ステーションの上空通過に関する情報収集をしだしたのかと考えたヒゲの総帥であったが、アラタメ堂のパソコンをのぞき込んでみるとディスプレイに映っているのは「人狼」のチラシであった。つまり、アラタメ堂はISS(国際宇宙ステーション)にはまったく興味がないのである。


ヒゲの総帥はISSの時間をメモして整体へ向かう、明日からの演奏のために筋肉を柔らかくしておかなくてはならんという気合である。整体が終わり店に向かう、すでにラーメンの男が来店している。そこから常連の不思議な女とガルパンの男、組長とフグ三昧の男、アラタメ堂と日本とロシアを繋ごうとした男、斥候の男と山の向こうの集落の男がやってくる。それぞれのテーブルで話しの市は栄える。


アラタメ堂たちは降霊術やテレパシーや超能力の存在についての話しをしている。店の中央ではガルパンの男たちがスターウォーズ新作の話しをしている、火鉢の周囲に展開している不思議な女とラーメンの男とヒゲの総帥は温泉について語り、オルガン横の奥の席では組長たちが若かりし頃の女性における武勲の話しをしている。


「あっ!」とヒゲの総帥はおもむろに頭を抱えだす。なにを大仰なことをと一同はヒゲの総帥に注視する。どうやらヒゲの総帥がいうには国際宇宙ステーションのことをすっかり忘れていたのだとのこと。一堂からは同情の言葉がかけられる、それを聞いたアラタメ堂は「そんなもんはYouTubeで見ればいいんですよ」と思い切ったことをいう。「そんな風情も情緒もあったもんじゃない効率的なこと言わないでくださいよ」と悲嘆に明け暮れるヒゲの総帥はいうが、店内はヒゲとアラタメ堂との温度差に笑いが起きる。不思議な女は自身がソ連に乗り込んだときの話しをしてくれる、そこで出会ったアルメニア人の男の子との言葉が通じなくとも心が通じ合った話しである。


組長たちはフグを食べて来たという。ヒゲの総帥が自分はまだフグを食べないというと、是非、食べてみるべきだと勧めてくれる。すると不思議な女とガルパンの男はヒゲの総帥に「せっかく食べるのなら肝を食べるがいいだろう」と丁寧に部位まで勧めてくれる。ヒゲの総帥がGoogleに「フグ 肝」と打ち込み検索すると最初に出てきた記事が「青酸カリの1千倍」という見出しであった。本当にありがたい御仁たちである。


日本とロシアを繋ごうとした男がいう「この店の店長は誰なんだ?」と万作は「うーん、ワシです」と挙手する。「この方は?」とヒゲの総帥の方を見るので総帥は「プロデューサーです」という。たった二人だけの店でプロデューサーという役職も失笑であるが、まあそれで本人たちが楽しいのなら一向に構わない。質問した男はさらにいう「この店のオーナーは誰になるのですか?」「オーナーという役職の定義がお金(給料や経費)の面倒を見ているということであれば現状は僕になりますね」とヒゲの総帥はいう。すると万作がテンション高めに話しに割って入ってくる「ええっ!オーナーはワシでっしゃろ、金でいうたらこれまでに150万は使うてます!」と。その答えを聞いてアラタメ堂は苦笑しながら「いやいや、万作さん、具体的な金額まではいいですから」とその場を取り繕う。


万作がオーナーでも経営者でも大王でも帝王でも役職やヒエラルキーは何でも構わないのだが、そのオーナーの家賃と給料、光熱費に食費、雑費などの全てを賄っているこのヒゲの総帥の立場をなんと説明するのが相手の求める質問に対して明快な回答であるのかを遺憾ながら万作は考えていない。オーナーに給料を出している人間はボランティア活動員とか人道主義者とか旧時代的なパトロンとでも説明するのであろうか。話しをややこしくするだけであるのだが、この版画家の被害妄想たるや相当なものであり説いて聞かせて理解できるようなタマではないのだ。


以前、会計事務所を経営するドマツ先輩とヒゲの総帥が店の宣伝方法について話しをしているとき、インターネット上の店の宣伝に使ったアカウントをドマツ先輩がヒゲの総帥に譲るという言葉が出た。その瞬間、「ええっ!この店のオーナーはワシやのうてドマツ先輩の名義になっとるんですか!ワシ、そないな話しは聞いとらんです!」と必死の形相になっていた。どこをどう考えればドマツ先輩がこの店を買収するという思考になるのかさっぱり解らないが、まあ、万事こんな調子なのである。そのうちヒゲの総帥も万作ビューでいけば盗賊の頭目くらいに片付けられるかも知れないが、そのときはそのときである。

そのあと、外資系保険会社の女と忘年会帰りのグダグダの上司を連れた若いサラリーマンがやってくる。とにもかくにも凄惨な忘年会であったそうで、随分と上司の男は他の部署の人間から呪詛の言葉を吐かれたのだそうだ。ヒゲの総帥は話しを聞くことぐらいしかできない男であるので聴き手に徹する。


白と黒が折衷したコントラスト具合の上司の男は酔っぱらって腕相撲をしようとアラタメ堂に言いだす。部下の男は「すいません、いつも酔っぱらったら腕相撲になるんです」と店にいる人間に対して申し訳なさそうに述べるのだが、この店たるや腕相撲くらいはハイタッチ冷泉のおかげで屁のかっぱであるので誰も頓着しない。


アラタメ堂との腕相撲で全戦全敗だった上司の男は火鉢に手をあてるヒゲの総帥にいう。「なんでオレがこんな誰も聞きたくないような重い話しをしてるのに、そんなに余裕なんですか」と。ヒゲの総帥はいう「自分と同じように弱く、悩んで、一寸先は闇のような人と出会えて安心してるからです。自分も四六時中、生きるということに悩んでいて自分の個性に振り回されているのだ」。


上司の男はその答えを聞くやニヤニヤして無言で握手の手を差し出してくる。そして立ち上がりながら呂律の芳しくない言葉で「兄さん、いつもここにおる?」という。「はい、おるようにします」「ホントに?」「ええ、今のところ他に行くところがありませんから」「なら、また、来ます」といって男は部下に横脇を抱えられながら退店した。


北濱のクリニャンクール、ツタの絡まる青山ビルのギャラリー「遊気Q」では一昨日から掘り出しものの名品、逸品、珍品が歳末バーゲンにて安くでている。ヒゲの総帥はあそこのギャラリーが好きである、そこに勢揃いする品物がこの世の中にどのような役割を果たすのかは解らない。ただ、物も言わずに愛されることをジッと待ち焦がれているそれらの作品から気品と尊厳を教えられるのである。


不思議な女は蚊に血を吸われたとき、自分の血が空を飛びどこか見知らぬところへ運ばれていくことに興味を持ったという。


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by amori-siberiana | 2017-12-16 12:57 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北濱にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を経営するヒゲの総帥こと、阿守のブログです。


さて、昨日のこと。


ヒゲの総帥は朝から北濱のオフィスでコーヒーを飲んでいる。そもそもここまでコーヒーを愛しており現状での生業が喫茶店ということも含めて、コーヒー側からなんらかの返礼でもあって然るべきではないのかなどと考えているヒゲの男であるが、今のところ何もなさそうであり。今後もなにもなさそうである。


オフィスで事務仕事を終えてヒゲの総帥は外にでる。店に行くついでに手頃なワインを二本ほど専門店で買う、これをどうするのかというとホットワインなるものを店で作ってみたくなったのだ。作り方は簡単で雑作もない。ワインをコップに入れ、それをレンジで温める。温まったワインのなかに糖蜜をひとさじ入れ、ぎゅっとレモンを絞るだけのものだ。これだけでしっかりした料理になるのだから驚きである。


ワインを二本、手からぶら下げて店の前に到着するが18時を少し回った頃なのに店のシャッターは閉まったままである。店に住んでいる版画家の柿坂万作に電話をするのも億劫なのでシャッターの前で待っていると隣のフレイムハウスの女将軍が「こんにちは」と挨拶をしてきたので、これ幸いとヒゲの総帥はシャッターが開くまでの時間を潰そうと隣のフレイムハウスへ入ってバーボンをチビチビやる。


店に入ってみると今年で開店20周年を迎えるそうで、非常に簡単ではあるがヒストリカル演出がされた写真が壁に貼られてあった。20年も喫茶店を経営するなど生半可なことではなかろう、石の上にも三年というがそれを七回り耐えるとは恐れ入った。ヒゲの総帥が本を読みながら酒を飲んでいると女将軍がやってきて産業廃棄物の領収書を見せられる。事業所からでるゴミは産業廃棄物扱いになりクントコロマンサとフレイムハウスは処理代を折半で出し合っている。どうも今月は額が多いようである。聞くところによるとゴミの量が多いので通常の倍額を産廃処理業者から請求されたのだとのこと。ヒゲの総帥は処理業者とフレイムハウス先生がどのような契約を結んでいるのか知る由もないが、言われたままに支払う。


「冬期別口料金」と領収書に書かれている処理業者は処理協会に登録されている社名とは微妙に違い、さらには事業主の名前も微妙に違い、所在地にいたっては協会登録名簿とは全然違う住所が記載されていたのだが、ヒゲの総帥はまあそれもいいさと済ましてしまう。処理業者側の帳面に素敵な工夫がされていることは言わずもがなわかりそうなものである。


女将軍は「隣の一棟建て(コロマンサを含む)を買い戻したい」のだとヒゲの総帥にいう。「そうするもいいでしょう」とヒゲの総帥は返答する。女将軍のエルサレムを必ず奪還しなくてはいかんという十字軍のような気概を見せつけられても、柳のように薄情なるヒゲの総帥にはその熱量の根拠が判然としないのでやり過ごすしかないのだ。「今、大家さんと交渉をしているんです、長期戦になるかも知れませんけれど、私が買いたいのです」「へえ、あそこに大家なるものがいるのですか」とヒゲの総帥は恐ろしいことをいう。大家がいなければ一体誰に月々の家賃を払っているというのであろうか、女将軍はヒゲの総帥の珍妙な返答に呆れ顔をする。「私が大家になっても家賃は払ってくださいね」とニコリとする女将軍であるが、それはただニコリとしているだけであって腹の底から笑ってなどいないのだろう。しかしながら美人であるのは確かだ。


ヒゲの総帥はフレイムハウスを出て、薄暗く細いエルサレムへと続く階段を上っていく。締まりの悪いドアを開くと版画家の万作が厨房にいる。「万作さん、ホットワイン用に赤ワインを買ってきました」「…これはこれは、ありがとうございます。うーん、ワシはホットワイン作りませんよ」「ええ、ワシ(阿守)が作りますからご安心ください」というやりとりがある。元来、この版画家から前向きな肯定意見が出てきたことはないのであるから、こう言ってくるであろうことはワインを買う前から予想できたことである。「うーん、あのホットワインいうやつですか、これまで美味しいと思うたことがないんです」と万作は言葉を付け足す、頭ごなしに拒否した根拠を後付けして帳尻を合わせようとしているのかしらんとヒゲの総帥は思うが「僕も同感です、あんなにまずいものを誰が飲むのでしょうね」と論点を四次元に持っていく。「えらい手間がかかるんでっしゃろ?」と万作はいう、「いえいえシンプルですよ。ワインを温めてそこに砂糖とレモンを入れるだけです」「えぇー、ごっつう手間かかりますやん、それごっつう手間かかりますわぁ」という万作。この論法でいけばカップ麺すらもごっつう手間がかかるもんに変わってしまいそうなので、ヒゲの総帥は会話をやめる。


しばらくすると常連の不思議な女、ガルパンの男、グラフィックデザイナーの男、そしてギャラリーの女がやってくる。ギャラリーの女は店の中央にあるレンガにつまづく。このレンガは練炭コンロと床のカーペットの間に敷いているものである。「こんなところにレンガを置いてたらつまづきますよ」と恨めしそうにギャラリーの女はいう、「うーん、そないにつまづくようなこともないと思うんやけれど」と万作は返答するがしばらくして万作がレンガにつまづく。「足の骨が折れればいいんですよ」と苦笑しながらギャラリーの女はその模様を見ている。そしてそのあとにまたつまづくギャラリーの女、これが大阪名物の天丼という笑いの取り方である。


そのうちレンガの上には練炭コンロが置かれて、見事な炎が立ち上がるを皆で見る。立ち上がる炎はそれこそ作りもののように美しく、その炎はこの世の真実をこちらに語り掛けているかのようであった。そこからはつまづく人間はいなくなる、なぜなら命にかかわるからだ。


ヒゲの総帥は炎を見るとしばしば何かを燃やしたくてたまらない衝動に駆られることがある。これは子供の頃からそうであったのだが、一度、ティッシュペーパーを燃やしていると大火事になりかけて肝を冷やしたことがあるのでそれ以来は火で遊ばないようにしている。旧友のシャフナー先生からも「今にその辺のもんじゃ物足りなくなって、他人の家とか燃やしたくなるんちゃうか」との忠告もいただいたことがある。火を見ると、なんだか自分を試されているような気になるのだ。


グラフィックデザイナーの男はどうやら高所がダメなのだとのこと。バイクでツーリング途中などで不意に断崖絶景のようなところへ行ってしまうと景色が怖いので顔を伏せて運転するのだそうだ。これでは対向車はたまったものではない、処刑ライダーが前方からやってくるようなものだ。「高いところへ行くと、そこから飛び降りてしまいそうな気がする」と語るのは処刑ライダーのグラフィックデザイナーの男である。ギャラリーの女も高いところとスピードが苦手なのだと話しだす。「なんだかね、高いところに行くと吸い込まれそうになるんですよ、二階の窓から外を見るのもダメだし、脚立の上でもダメなんですから」という、「それなら飛行機はどうなんですか?」とヒゲの総帥は素朴な疑問をぶつけてみるが飛行機はいいのだそうだ。「ということは単純な高所恐怖症ではなさそうですね」とヒゲの総帥は笑う。「だってね、飛行機なんて落ちたらみんな仕舞いじゃありませんか、だから大丈夫なんですよ」とギャラリーの女は笑いながらよくわかるようなわからないようなことを平気でいう。


「そうだ、阿守さんのカレンダーの話しなんですけれど、私、本気で考えているんですよ」と話しを急展開させるギャラリーの女。「あなたエイリアンさんから北濱の独身者のなんたるかを作るように言われてるんでしょう?」と話しを続ける、「はい、でも僕はロゴデザインだけのはずだったと思います」と総帥は珍しく恐縮する。「それで出来たんですか?」「いいえ、まだ取りかかってもいません」「なんという会のお名前でしたか」「確か北濱独身ミドルクラブだったように記憶しています」「ちょっと名前が長くはありませんか」とやりとりは続く、「名前はエイリアンさんが咄嗟に思いついたものなので、多少の変更はいいのではないでしょうか」と総帥は独断を先行させる。「ミドルがいらないんじゃない」といったのは不思議な女であったろうか、「それなら北濱独身クラブにいたしましょう、なるほどこれなら収まりもいい」とヒゲの総帥も納得する。


グラフィックデザイナーの男と不思議な女がクラブのロゴマークのラフ案を幾つかその場で描いて提出してくれる、どれもハイソサエティ独身貴族の栄光と寂しさが表現された秀逸なものであった。


「どうせならカレンダーのことですけれど、北濱独身クラブのカレンダーにしませんか?」とヒゲの総帥は巧妙に標的をすり替えようとする。「どういうのをお考えなんですか」とギャラリーの女はいう。「こうね、白のふんどし姿で腕組みしたクラブの会員が、那智の滝をバックに腕組みして並んでるなんてどうです」と月並みな想像力で月並みな解決案を示す。「せっかく独身貴族で貴族なんですから、日本っぽくないのがいいわね」とギャラリーの女。「そしたら、ヴェルサイユ宮殿の噴水の周囲にやはりふんどし姿で腕組みした会員を並ばせるという趣向はどうですか」とヒゲの総帥は代案を示す、「絶対、捕まりますよ」と言ったのはクラブの暫定的頭領と目されるガルパンの男であった。


上品に笑いながら「クラブは絶対発足させてくださいよ。うちのギャラリーを窓口にしてくれていいですから。でも、男同士の傷の舐めあいのようなクラブは嫌ですから、そこはきちんとしてくださいね。あくまで貴族的で紳士で」とギャラリーの女はビールを飲む。「若い生き血を沢山吸わないといけないんですよ」と自称、御年301才のギャラリーの女は愛嬌のある顔で微笑む。


不思議な女、ガルパンの男、ヒゲの総帥で練炭コンロを囲む。何を話し合うでもない、四方話しをして互いの存在を再確認するようである。グラフィックデザイナーの男はその様子を写真で撮影する。


そういえばヒゲの総帥が今は亡き父親と最後に語り合ったのも真冬の縁側の火鉢であった。それは初めてお互いが父と子というよりも、血のつながりはあれど別の個性を持った人間として触れ合ったような気がした。といってもあれこれ話しをしたわけではない、ただただ、「火鉢はいいな」と二人で冬の真夜中にタバコを吸っては消して、吸っては消してを繰り返していた。吸い終わったなら早く家の中に入ればいいものだが、火鉢から離れることが惜しかった思い出がある。母親がどこかの農家からもみ殻をもらってきて、それにつけた火は優しく柔らかな温かさに恵まれるような熱を他人行儀な父と子に施すのであった。


その数日後に父は息を引きとった。とにかく鶏肉が嫌いな男であった、幼い頃に自分の父(ヒゲの祖父)がニワトリを絞めるのを見てから食べられなくなったのだという。自分がどういうことを考え、どういうことを学び、どういうことをしてきたのか何も語ってくれない男であった。それでいて寡黙ではなく多弁で冗談と悪口が大好きな男であった。官憲や国家公務員には驚くほど平身低頭であるが、田舎で芸術家然として他人に「先生」と呼ばせて喜んでるような人間への舌鋒はそれはそれは苛烈を極めて凄まじかった。

ところが自分はどうかというと、毎日のように「先生はおりますか」と色んな人から電話がかかってきていた。もちろん電話の対応をしていたのは小さい頃のヒゲの総帥である。理不尽と不平等がどういった関数によって天秤をとっているのかわからないが、神祇釈教恋無常こんなもんであろうということは普段から家庭内の父からの所作で教わった。人の水を飲みて冷暖を自知するが如しである。


柏の樹は縁起が大変良いとされる。ゆずり葉といって新芽が出てきて若葉が古い葉を押し出すかたちで落葉するので、その様相が商売をしている者にとっての良い世代交代に例えられ縁起物となっている。


明日はいよいよ王子の来訪である。



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by amori-siberiana | 2017-12-15 15:09 | 雑記 | Comments(0)


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