こんにちは、北濱にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を経営するヒゲの総帥こと、阿守のブログです。


冬の万作祭の第二夜と第三夜が終了することとなった。第一夜から数えるとイベント開催時だけの三日間ですでに100名の客が猫のひたいに集まっていることとなる。今のところ床が抜けるとか停電やボヤ騒ぎになるなどのトラブルは起きてはいないのだが、これまで起きてないからといって今後も起きないというのは思考の停止を意味するもので、とっさのときの判断を鈍らせることになるだけである。さらにアルコールが良くない、大事を小事と捉えてしまうことがあるのだから、これがもっとも良くない。


さて、昨日のこと。


ヒゲの総帥は昼まで寝てる。昨夜は深夜まで旧交を深めながら、決起はいつなのかなどの論議に火がついたので就寝したのが遅かったのだ。就寝したというよりは失神したというが正しい表現なのかも知れない。元来、このヒゲの総帥は酒宴などを好むほうではなく、同業種の付き合いなども良くないどころか不躾であったほうなのだが、やはり仕事が仕事となると飲むようになるものである。諸先輩方がヒゲの総帥のために気を遣って飲みの席を用意してくれても、感謝の意などひとつも示さず勝手に帰宅することなど日常茶飯事であった。このような人間が先輩諸氏から可愛がられるはずもなく、そのうち誰も相手にするものがいなくなる。それでもこのヒゲの総帥などは鈍感なのか、悪びれることもなく「そんな付き合いはいらん」と超然として済ますので度し難い。


昼の仕事をササッと終わらせて店に行く。店に行くとすでに星師匠が昨夜の大騒ぎで店に塗り込められた怨念や雑念などを丹念に拭き掃除している。ヒゲの総帥はの喉が乾いて仕方がないのでスコッチウイスキーをチビチビ飲みだす。版画家の万作は買い出しに行っては戻ってきて、「あぁー、アレ買うの忘れた!」とまた買い出しに行っては戻ってを繰り返す。


夜の開店までまだ2時間くらいあるのだがシャフナー(ギタリスト)の知人が寒いなか店の前で待っているというので、店の中に入ってもらう。名古屋でプロモーターをしている男は店に入るなりヒゲの総帥のギターがYAIRIというメーカーなのに気がつく。


「おっ、ヤイリをお使いなんですね」「そうなのです、ひょんなことからヤイリさんからギターをお借りする縁が御座いまして」とヒゲの総帥は自分のギターを担当してくれているギター職人の男の名前を出すと、プロモーターの男も知った人物のようですぐに連絡を取ってくれる。ヒゲの総帥は身分不相応にもヤイリという国産のギターメーカーからギターを提供されており、有名人に並んでヤイリ社の要請によりサラサラと色紙にサインを書いたりしていたが、勝手に音楽から遠ざかり好き勝手していたので少々決まりが悪いのである。「今、担当者からメッセージがあり、阿守さんはお元気されていますか?とあります」とプロモーターの男は事情を察してかニヤニヤする。「それはもう元気にしております。阿守が三つ指ついてメッセージを拝読しておるとお伝えください」とヒゲの総帥は過剰な演出を盛り込ませる。そのあたりこのヒゲの男の肝っ玉の小ささを物語るものであろう。


しばらくすると、大荷物を背負った作家の平尾先生が店にやってくる。続いて電気工事士のヤマトコ、さらには今朝まで飲んでいたというシャフナーがやってくる。作家の平尾先生は国際交流が盛んにおこなわれる比較的近場のゲストハウスにチェックインするために一旦店を出る。さすがは作家、この取材根性たるや作品の糧となるとヒゲの総帥は感心していたが先生本人から訊くところによると要するに値段が安いからという単純な理由なのだそうだ。さもありなん。


万作が平尾先生に自転車を貸そうかと提案するがブレーキをかけると革命の火種のような金切り音がけたたましく鳴り響き、さらに鳴くだけで止まる挙動に信用が置けない自転車なので、作家先生は歩いてゲストハウスまで行くことになる。「うーん、お貸ししようと思とったんですけど、あの自転車やしなぁ、あんまり人様にお貸しせんほうが…」と万作はいう、「はよ、万作さんに自転車買うてあげんと」と平尾先生はヒゲの総帥のほうを見る、「金があればそうしてる、優先順位があるのさ」とヒゲの総帥は相変わらずウイスキーをチビチビやっている。


作家先生の帰還を待って予行演習を開始する、取り立てて問題もなさそうなのでサッサと演奏を切り上げて乾杯をする。そうこうしていると店はオープンして客がやってくるので、演奏者たちはそそくさと三階の万作のアトリエ兼控え室へと標高をあげてそこで飲みだす。ヒゲの総帥はヤマトコや作家の男にもウイスキーをストレートで飲んでみるように勧める、二人とも断る義理もないのでそのとおりにして酔っぱらいが出来上がる。ヤマトコなどウイスキーのあとに「やっぱり、ビールに戻します!」といってビールを飲むのであるから、その酩酊は相当なものであったろうと想像できる。


ビールの後にウイスキーはまだよろしいが、ウイスキーのあとにビールを飲んではいかん。アルコール依存症の亡者たちがなんとか安く酩酊状態を迎えたいときに使う手段であると万作が以前、ヒゲの総帥と冷泉に教えてくれたのがウイスキーのあとにビールを飲むという手法であったのだ。その至言の真意は如何にとヒゲと冷泉は試してみたが、ものの見事に二人ともが泥酔することとなった。


演奏の時間がやってきたので、それではと全員が聴き手を一か所に集中させて「オーッ!」という掛け声とともに上に挙げる。ようなこともなくダラダラと千鳥足で二階へ降りていき、そこからガエル・ガルシア・ベルナル四重奏団、取りあえずは最後の演奏会は開始されるのであった。


一応の演奏終焉後、興に乗った演奏家たちは持っている手札のすべてを切っていく。そこから手札を切り終えた彼奴らは、次にマイクを手に持って歌いだしながら身を切っていきだす。最後の最後にマイクを離さなくなったのは、泥酔する平尾先生である。平尾先生の歌の最中に年配の夫妻が店に入って来られたが、ソファに座った瞬間に立ち上がって帰るというくらいの壮絶な歌であった。熱唱の向こう側にある絶唱に辿り着こうともがく平尾先生の姿はカマキリのようで抱腹絶倒であった。


それにしても東京は寒いのだそうである。毎日のように東京から来た人間、東京から戻った人間と出会うが、皆が一様にそういうので多分そうなのであろう。


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# by amori-siberiana | 2017-12-11 17:00 | 雑記 | Comments(0)


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