こんにちは、北濱にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を経営するヒゲの総帥こと、阿守のブログです。


さて、昨日のこと。


昨日は冬の大祭「万作祭」の第二夜が開催される日である。ヒゲの総帥は北濱のオフィスでコーヒーを飲みながら事務仕事をこなす、この土曜日のリンクス(オフィスの名称)は暇であり室内にはゆっくりとした時間が流れる。一段落を終えてヒゲの総帥は仕事を終えてランチ営業をしているであろう店に向かう。店に行くとすでに御朱印集めをする東京の女が来ており名物料理コロマンサを食べ終えたあとであった。しばらくすると今夜演奏するギタリストの男がこの寒いなか「暑い、暑い」と汗をかきながらやってくる。ヒゲの総帥は最初この男が薬物でもやっているのではないかと考えたが、訊くところによるとギタリストの男がやってきた東京辺りは随分と寒いのだそうだ、防寒にヒートテックを着込んできたのはいいがどうにも大阪の気温とは折り合いがつかなかったようである。


東京の女も夜の演奏を聴きに来たのが主題であるため、夜の開演時間まで八百万の神のどれかを見物に行くといって店を出て行くことになる。ヒゲの総帥はギタリストの男(シャフナー先生)と夜の演奏のために予備演習を開始する。版画家の万作は握り飯の準備をして、星師匠は憑き物を落とすが如く入念にごしごしと店中のものを拭きだす。常連の不思議な女が「星師匠が執拗に掃除してくれたおかげで、以前までの店に漂ってた異臭がしなくなった」と感謝を述べていたのは、確か前々日くらいのことであったろうか。


ベーシストのヤマトコが来る、三人で適当に演奏してみるが幾つかの確認事項だけ論議してさっさと演奏をやめる。特に追及すべき事柄などもなかったのだ、追及すべき場所がなかろうものに使命感に駆られて芸術性を高めなくてはと無理に追及を推し進めると、そこにはロクなものが待っていないことを三人ともよく知っているのだ。


店は10分ほど遅れて開店をする、演奏はそこから三部構成(演奏→休憩→演奏→休憩→演奏→休憩)の形式をとって賑やかに行われることとなった。予行練習のときの音の感じが非常に良かったので、そのままの配置で本番の演奏をすることとなりシャフナーは舞台ではなく客席でギターを弾くことになった。あれもこれもを演奏する、客はあれもこれもを聴くことになる。客は演奏者から出されたものをそのまま享受しなくてはいけないのが通常の音楽イベントでありそれが一般的であるのだが、客が何を聴きたがっているのかに留意しない演奏家の演奏はつまらない。そこに熱量を割けないのは傲慢であろう。この日のイベントはそれを踏まえて、やっぱり傲慢で一般的なやり方によって進められるのであった。


全ての演奏が終わる。いつの間にか厨房前には全身黒ずくめの男、ハイタッチ冷泉が来ている。そして立て続けにゴガッと締まりの悪いガラス戸が開き一人の男が入ってきた、ヒゲの総帥は最初なんらかの面影を残すこの男が誰だったのか思案する時間が必要であったのだが、すぐにそれが日本のミサイルマンことタッキーであることに気がついた。なんというドラスティックな体形変化であろうか、ただの豚肉のようだったタッキーが今ではシャープな好青年になっているではないか。「ライザップに行きはじめました」と照れ臭そうにタッキーはいい、さらに「前もって断っておきますけれど、今日は歌いませんからね」と総帥に宣言する。「構わないさ、構わないさ、さあ入りたまえ。君のために演奏するよ」ということで予期しない第四部が始まる。


ヒゲの総帥は心のなかで「鴨がネギを背負ってきたな」とほくそ笑むのだが、あまりに心の中で笑い過ぎたのであろう、演奏中もタッキーの顔が七福神のエビス様にしか見えないので表情に心模様が反映されて口角が上がってしまう。タッキーはうっとりしながら酔い心地で「次にあれを演奏して欲しい」「せっかくなのでこれも演奏して欲しい」と次々にオーダーをしてくる。タッキーの酒の手が止まるとヒゲの総帥はそれを促す、タッキーに水分補給が行きわたりすぎて飲みのペースが遅くなるとヒゲの総帥がそれを飲む。星師匠は冷泉と談笑しながらも、しっかりと舞台上で行われている接待の動向に視線を向け、伝票に「正」の漢字を一画ずつ成立させていく。


またもやゴガッという音がする、ドアの開きが悪いのか客が入って来ない。ドアから一番近い場所にいる心優しき冷泉がドアを店内側から開ける、開けた瞬間、冷泉は殴られて「ぐはっ」と声をあげる。この唐突なること禅僧臨済の足跡をたどるようであり、ヒゲの総帥はその光景を見てニヤニヤする。やって来たのは会計事務所のオーナーであるドマツ先輩であった。そこからボリショイのバレリーナの女、副社長ばかりする男もやってくる、さらには近くの森ノ宮で舞台公演していた俳優連中もやってきて店内の喧噪は北濱の夜の静けさと反比例して煉獄感を帯びていく。酔っぱらって上機嫌のタッキーは俳優の男たちに向かって「劇をやってくれ、劇をやってくれ」とやかましい。


そして副社長の男が何か演奏してくれというので第五部が始まることとなる。夏場はうちわで王子をあおいだり、「ONDINE」を演奏するたびに店の時計を止めてくれる客の男がいるのだが、この男が店のオルガンを触ってもいいかとヒゲの総帥に訊いてくる。一向に構わないとヒゲの総帥は地球を滅ばせることも許そうなくらい寛大な返事を酩酊状態でする。男はオルガンを弾きだす。


「…?」どこかで聴いたことのあるメロディーだ。


なんと「EVER FROZEN」である。ヒゲの総帥とシャフナーとタッキーは驚愕した。この男、訊くところによるとシベリアンなんちゃらのCDの発売と同時にずっとこの曲が好きで耳コピしていたのだという。それならばと総帥とシャフナーもギターを持ち、そこから三人での「EVER FROZEN」がはじまった。「他に何が弾けるのだ」とヒゲの総帥は時計を止める男に問うと「QUALIA」もいけるという、ならばやるぞと演奏は再会する。このときのシャフナーのソロは稀に見る名演であった、それはそうであろう自分が生み出した曲を目の前でファンの男が伴奏してくれる、演奏家にとってこれほどの嬉しさがあるものか。


シャフナーは時計を止める係の男の健闘を称える。副社長は「やばい」を大量に口から発行する。冷泉は殴り合いをしたくてたまらない顔をする、俳優たちは社会主義におけるなんちゃらかんちゃらについて論議をしている。バレリーナと星師匠の話しについてはヒアリングできない。タッキーとドマツ先輩はM&Aビジネスの話しや社内監査の話しなどをする。


ヒゲの総帥は相変わらずヒゲを捻りながら、ヒゲに白いものが混じってきたことを気にしている。


そして今夜も演奏会は催されるのである。


d0372815_14470431.jpg


[PR]
# by amori-siberiana | 2017-12-10 14:47 | 雑記 | Comments(0)


北浜のビジネス街にある、昭和レトロなカフェのブログです。            大阪市中央区淡路町1丁目6の4 2階上ル