こんにちは、北濱にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を経営するヒゲの総帥こと、阿守のブログです。


そもそも論、この特に人より優れたものを持っていなさそうなヒゲの男が何故に「総帥」などとある一部の少数民族から呼ばれるのかといえば、それはこの男が以前に音楽仲間と一緒に人を大いに感動させたことがあるのだそうだ。それ以来、敬称か蔑称かはおいといて「総帥」と呼ばれるようになった。大層、熱心に音楽家として活動をしていたのではあるが、ある日、一旦止めてみようということを全員の合議で取り決めて、それで止めているのであるという。


そこから3年ほど経ち、ヒゲの総帥は北濱を根城とするようになり、この地に火をつけてまわってやろうと意気込んではいるものの先立つものがない。明日の生活の確証すらない状態では北濱に火をつけるどころか自分の尻に火がついているようなものなのだ、こういったときアテになるのは、やはりシベリアなんちゃらに縁故のある者たちである。夏以来、店の経営が厳しくなると召喚獣のように度々呼び出されてきた音楽仲間や客たちであり、北濱で新しく知り合うことになった粋人たちであり、その成果もありのらりくらりではあるが年の瀬を迎えることができたのは上等の方であろう。


さて、昨日のこと。


冬の万作祭の第五夜であった。前日(第四夜)は深夜まで店で酒を飲み話し込んだこともあり、ヒゲの総帥が起きると昼過ぎであった。ヒゲの総帥はそのまま店へ行く。半開きになっている黄色い店のシャッターをくぐり階段を上っていくとバイオリンの音が耳に入ってくる、「随分早いな…」と考えながらヒゲが店に入るとやはりバイオリンの音の出所はバイオリン王子であった。なにやら難しそうな曲を難しそうな音階でトレーニングしている姿を見て「彼は音楽家だな」と思いながら自分に何かできることはないかと考えて「僕は飲み屋の経営者だ」と認識して王子の隣でウイスキーをチビチビやりだす。


しばらくしてヤマトコがやってくる、そして最後に小説家の先生もやってくる。万作は厨房で炊飯をして、星師匠は店内を磨き上げる。リハーサルがはじまるが、特に何もすることがないので早々に切り上げて総帥と王子は将棋を指し、小説家の先生は小説を読みだし、ヤマトコはすることがないのでおおかた自分のちんちんでも触っていたのだろう。結局、開店の時間を過ぎても将棋に熱中しすぎて店内に居残る二人は星師匠からシッシッと追い出されるように三階へ移動する。


【第一部】


01.緑の手袋をした私のフィアンセ
02.Slovenian Morning
03.Comical Salute
04.Pluto Lemonsky
05.Good Burning O'silk


【第二部】


01.Hysteria Siberiana
02.Modern Matryoshka
03.Celtic Fifth
04.Miss Silence
05.Perpetuum Mobile


【第三部】


01.The Mint
02.Words Robin Talks Are
03.Ever Frozen
04.柵から逃げ出し亡命する軍馬のはなし
05.サンジェルマンの殉教
06.My Evil
07.世界の果てへ連れ去られ
08.When I Die,I Shall Go Up To Heaven Like That Bird
09.Kimi ga Hoshii
10.Whalerider
11.Crossing the Tundra


第三部の途中、店の階段をドスドスと何者かが上がってくる足音がする。冷泉にしてはその足取りが若干ながら早い、ということはこの上がってくる人間はシラフであるということだ。ということはこの階段を上ってきているのは間違いなく豚である。ゴガッと締まりの悪いガラス戸が開く、案の定やって来たのは大阪のミサイルマンことタッキーであった。ヒゲの総帥が今夜は東京、信州、九州などからクントコロマンサに客が集ってくれたというやタッキーはすかさず「すいません、モンゴルからもです!」と注釈を入れてくる。まるで遠方であれば遠方であるほどそれに比例して信仰心が強固であるような物言いをする。万作はカモメ(When I Die~)の演奏に感動して立ちすくむ。


ウイスキーの飲み方を前日のロックからストレートへと変更した小説家の先生はこのままエスカレートしていくと来年にはガソリンや灯油などを飲んでいそうである。遅咲きの花ほど怖いものはない、そして酩酊した先生はいつものようにヒゲの総帥のギターを伴奏にこの世の終わりを歌い続ける。そのヴェルヴェットな声はいつも以上に深く、聴くものに失笑を与えるものである。王子が驚きながら「なんでみんな、こんなのをまともに聴いてるんですか」という、気がつけばタッキーも歌いだす。


【第四部】


01.冷たい太陽
02.時には昔の話を


タッキーが歌いだすとなれば自然と始まるのが隠れトリスタンなる集まりの洗礼式である。この集まりはヒゲの総帥が隠れキリシタン文化にインスピレーションを受けて惰性と打算と怠惰なるままに作り上げたるナンセンス音楽団であるのだが、これに王子が加わっての演奏をすることになる。


【第五部】


01.Mascaras
02.Great Journey Fantasia
03.Neue Land
04.Elegist
05.Tiger


やっと演奏が終わる。するとバチッという音がして店内の照明が突然と消える。ヒゲの総帥は近隣の人間から「やかましいからいい加減にしろ」と電気を切られたのかと思ったが、どうやら店内での電気系統のトラブルである。なんだか鈴木亜久里のリタイヤの理由みたいだ。ところが店内にいる者でバタバタするものはいない、「こういうのも風情があって良かろう」と済ましているような風流人ばかりである。版画家の万作が気を利かせてローソクと燭台を三階から持ってきて店内に灯す、王子とタッキーは音楽ビジネスの話しをしており、ヒゲの総帥はギターを持って薄暗いステージにあがっては好き勝手にギターを弾く。店内の客は思い思いに音楽を聴いたり、話し込んだりをする。薄暗い洞窟に閉じ込められたような空間と時間を共有すること、それは至福のひとときであり、その至福の根拠は自分たちの生が有限であることを皆が知っているからである。


そして、これはまだまだ革命前夜の話しである。と余った安物の赤ワインをラッパ飲みしながらと密かに不敵に笑うヒゲの総帥なのであった。


d0372815_14443724.jpg


[PR]
# by amori-siberiana | 2017-12-18 14:44 | 雑記 | Comments(0)


北浜のビジネス街にある、昭和レトロなカフェのブログです。            大阪市中央区淡路町1丁目6の4 2階上ル