ある日のこと。


ヒゲの男が画廊喫茶フレイムハウスに首を突っ込みだして、間もない頃のこと。真夏にもかからわず、黒ずくめのスーツで全身を包んだ、明らかに怪しい男が店にやってきた。iCOSを吸いながら、ハイボールを飲み続け、そのうちハイボールをチェイサーにウイスキーのストレートを飲むようになる。とにかくやたらにハイタッチを求めてくる男であった。


その男こそ、ハイタッチ冷泉。店の来客者と来るたびに殴り合いをする男である。


ヒゲの男は最初に冷泉と出会ったとき、経験したことがないほど興味を持った。この一見して地獄の使いのような男の底にあるものは何なのかと、好奇心に駆られたのだ。


人は何をするために生まれてくるのであろうか。


こんな問いを長年にわたって持っていたヒゲの男は、ハイタッチの冷泉といろんな話しをして、なんとなくではあるが自分の考えが一歩進んだ。冷泉の友人である会計事務所のオーナーに蹴り飛ばされて、ヒゲの男は「あっ!」と感じたのである。


人は何をするために生まれてくるのか、そう、世のためになるように生まれてくるのだ。ということに気づいたのだ。みんなが喜び、楽しく屈託なく笑えるために行動する力は、それだけで自分の可能性を広げるものである。


そしてそれは、ヒゲの男がこれから北浜で猫のひたいを舞台として、巻き起こそうとしている騒動の根源的な動機ともシンクロするものであった。


冷泉はことあるごとに言う


「阿守さん、僕に、ちゃんこ鍋を作らせてください、命削って、作ります」


「材料費とかは皆から徴収しなくていいんですか?」と、ヒゲの男は聞き返す。


「ああ、そういうんはいらないです。ただ…」


「ただ…?」


「せっかく来てくれたからには、これ以上、飲んだら、死んでまうん違うか、いうくらい、飲んで欲しいです。ワハハハ」と、冷泉は豪快な高笑いをする。


酒の神から寵愛を受けているであろう、黒ずくめの男が威風堂々と高笑いするさまは、格好のいいものであった。無敵を感じさせるものだった。


10月28日の土曜日、画廊喫茶フレイムハウスには累々とした死体の山が転がっているかも知れない。


…だが、最近、冷泉は体調を崩した。聞くところによると見かけによらず、案外、身体をよく壊すのだそうだ。このままでは誰よりも真っ先に、燃え尽きた灰となるのは冷泉ではあるまいかとヒゲの男は考える。


当日、もし冷泉がアウトだった場合でも、代役として会計事務所のオーナーが、冷泉の代わりにちゃんこ鍋を作ることを宣言してくれた。


来たれ、命知らずたち!


※写真は、当日の鍋奉行、冷泉さんの若い頃です。後ろの方はEカップくらいでしょうか。


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# by amori-siberiana | 2017-10-05 17:15 | イベント | Comments(0)


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