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2017年9月27日(水) ◆筑前煮とスコットランド、吟遊詩人の女はディズニー。

こんにちは、この世の天国と奈落を体現したような町、北浜にて猫のひたいのように小さな店。画廊喫茶フレイムハウス(近日、Kunt Coromansa /クント・コロマンサに改名)を営むヒゲの男こと阿守のブログです。


さて、昨日のこと。


ヒゲの男は朝のうちに南船場のパン屋「き多や」へ行く。いつものようにバゲットを買い求め、おすすめのパンを女店主からすすめられて、それも一緒くたにして買う。ヒゲの男はどちらかといえば日和見的な反体制派であるが、美味しいといわれるものには、ひどく従順である。


最近、ヒゲの男の頭には数字ばかりが浮かんでいる。これはひとつにはヒゲの男が出納帳とにらめっこを始めたからというのも大きな要因だが、とにかく数字にさいなまされて眠れないことが多々ある。オイラーやフォン・ノイマンのように数字に魅せられているわけでは決してない。


例えば、画数である。先日、占い師の女から店の名前の画数としてよかろうと言われたときから、ヒゲの男は町を歩いて他の店の看板を目にしては自然に画数を気にするようになった。その昔、バルザックという作家は自身の作品に登場する人物の名前がどうも作為的でしっくりこないので、パリの街中を歩いて看板にかかれた名前をそのまま引用したそうだ。


「マツモトキヨシ…、19画か…、漢字にして松本清にしたら…、なるほど、やっぱり24画か」などと、詮無いことを気にしては歩みを止めるので、どこへ行くにも牛歩のようになる。


次には音楽の拍子のことである。賢明なる音楽家諸君は最初に4/4拍子だとか、3/4拍子だと決めれば、そのまま一曲のあいだはその拍子を絶対のルールとして守る。ところが、たまによくわからない音楽家が出てきて、ドタバタした拍子の曲を作って面白がってる不謹慎なのがいる。


例えば、SIBERIAN NEWSPAPERというバンドの「VETRO」とか「URBAN LANDSCAPE」などという輩である。


後者は12/8拍子と9/8拍子が交互にやってくるのだが、これがなかなか難しい。曲調が緩やかなぶん、さらにややこしくなってくるのだ。


なら曲調が激しければいいのかといわれれば、そうでもない。前者の「VETRO」という曲の中間部には、ところ狭しと地雷のように5拍子と6拍子が並べられている。


「6666 556 5565 656 5556 555 5656 555 3」だったであろうか、ヒゲの男は先日この曲を演奏したが、暗記するまでにやはり時間がかかった。


そして、次にやってくるのがアハハの女の曲だ。この女の曲には「赤い風船の遭難」とか「色眼鏡」とかいう、けしからん曲がある。ヒゲの男はそれを必死で暗記するが、どこかで前述の「VETRO」とごっちゃになりそうで怖い。


赤い風船の遭難

5556 5556 6565 6566 5556 5556 5556 6565 6566

色眼鏡

5555 5556 6655 6655 6655 6655 6666 6666


何度も何度も練習して呼吸する箇所を体得していないと、ずっと息を止めながら弾かされることになるであろう。


やっとのことで把握したら、次にやって来るのがイベント日程が一番近い吟遊詩人の女の曲にもそういうのがある。


6666 5555 5556 6666 6666 5555 5557 6666 6666


それにプラスされて、万作が仕入れ代を使って「うどん・どん兵衛」を198円で買ったとか、巻き寿司を自分用に買ったから398円を引き算しなくてはならないというようなことが起こり、ヒゲの男の頭は数字に支配されているのである。


もしもイベント中にヒゲの男がおかしな拍子を弾きだして、共演者を困惑させるようなことがあれば、それはヒゲの男の脳がショートして、万作の買い物の値段の数字で拍子を取っているか、はたまた、字画と混同して曲の拍子をとっているかのどちらかであろう。健闘を祈る。


夜になり、青いカーデガンの女がやってくる。


「阿守さん、ギャラリーのオーナーから伝言があります」という。


ギャラリーの女というのは、言わずもがなスパニッシュ建築の青山ビルに20年以上陣取って指揮を執る「遊気Q」を経営する女のことである。ヒゲの男たちはそこを北浜のクリニャンクールと呼んでいる。


青いカーデガンの女から伝言を聞き終えたヒゲは版画家の柿坂万作にウイスキーをストレートで注文する。


「あっ、それと…」と、思い出したように青いカーデガンの女はただならぬ、次のことを言いだす。


「お店に適した字画なんですけれど、間違ってるかも知れないとギャラリーの女が言ってました」


ヒゲの男は「今さら!?」と口にして唖然としながら呆ける、万作は厨房で爆笑をする。それを見て青いカーデガンの女は口に手をあてて、うつむき加減にニヤニヤする。もうここまで来たら何をやっても自然に転がっていくであろう、人事は尽くした、あとは天命ならぬ店名を待つばかりである。


少しすると吟遊詩人の女がハープ(竪琴)を重たそうに持ってくる、今日は今月30日のイベントに向けたリハーサルをヒゲの男とする日だったみたいだ。


常連のガルパンの男もやってきて、店のカウンターにある「ガールズ&パンツァー」のカードゲームを見つける。これはアラタメ堂のご主人の懇意によって拝借してきたものであるが、どうやらガルパンの男の食指はそそらなかったようである。


続いて、履歴書の女とピンクっぽいメガネの女がやって来る。この女たちは来店から退店までずっと二人で喋り続ける。世の中、それほどまでに語りつくせぬ想いがあるのかと、こちらが感心するほど喋る。


吟遊詩人の女が持ってきた、東京ディズニーランド土産の成田山の羊羹という、チョイスのよくわからない甘味を皆で頬張りながら、万作が淹れてくれた茶をすする。


茶をすすりながら、ヒゲの男は千利休のことばを思い出す。


家は洩らぬほど、食事は飢えぬほどにて足ることなり


こうして誰かがふいと現れて、甘いものを持ってきてくれ、絶妙なところで茶が運ばれてくる。ちらほらと適当に音曲を奏でてみては、愉快な心持ちになる。案外、ここはいいところだなとヒゲの男は感じた。


そんな折、ゴガっと締まりの悪いガラス戸が開き、いちげんさんのオーストラリア人がやってくる。とにかく日本で仕事ばかりしているので、来月は休暇を取ってフィジーで水中に潜り、槍で大魚を突くのが楽しみだそうだ。彼らは地球を満喫しているなと、いつもそういう欧米人の感覚にヒゲの男は感心するのであった。


で、結局、吟遊詩人の女はオーストラリア人の前でカントリー・ロードを歌わされる羽目になるのである。彼女はまた恐縮しながらもカフェオレ代をせしめた、払ったのはオーストラリアの男ではなく、なぜか、日本語が通じて段取りのわかっているガルパンの男だった。


夜も更け、そろそろ店を閉めるかという頃。スコットランド人の男が二人やってくる。


エジンバラに住んでいるとのことだ。ヒゲの男はエジンバラに滞在していたとき、バグパイプを買うか、それとも吟遊詩人の女が持つようなハープを買うかで悩んだ。どちらも欲しかったが、経済的な側面からどちらかしか買えなかったのである。


当時、KORNのジョナサンがバグパイプを抱えながら、悠然とステージにあがってくる様がクールだと感じていたヒゲの男は悩んだ末にバグパイプを買った。


もちろん、今ではタンスの肥やしである。


ヒゲの男は近い将来、スコットランドに移住するつもりであることは、20代の頃から名言している。生まれた国で死ななければいけないという法もなかろう。ただ、近い将来がなかなか来ないだけなのだ。エジンバラの駅に到着した瞬間、ここが自分が追い求めていた地だと震えたのは、今でも冷気にふれた肌が覚えている。


曇り空の北浜、外ではあちらこちらで色とりどりの傘が、その紋様を見せびらかしている。その鉛色に曇った空は、ヒゲの男がエディンバラ郊外の北海と繋がる入り江からみた、寂しくむせび泣くような空に似ている。スコットランドには面白い格言がある。


困っている相手を助けてあげても、またその人が困ったときに、あなたの名前が出てくるだけだ


本日、万作特製の筑前煮が、店にあるようだ。


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by amori-siberiana | 2017-09-27 13:23 | 雑記 | Comments(0)


北浜というビジネス街を独立させようと企む、ヒゲの総帥のブログです。
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