2017年9月29日(金) ◆チェコ・フィルハーモニー管弦楽団と笛の妖精とアラタメ堂の人狼ミスジャッジ。

こんにちは、北浜にて猫のひたいのように小さな店。画廊喫茶フレイムハウス(近日、kunt Coromansa /クント・コロマンサに改名)を営む、ヒゲの男こと阿守です。


さて、昨日の話し。


ヒゲの男はどうにも肩と腰に違和感を抱えたままである。北浜のオフィス(THE LINKS)に顔を出してみるが、いかんともしがたい違和感に耐えられず、近くにマッサージ屋はないかと探し回る。


すると、オフィスと画廊喫茶のちょうど中間地点に手頃なマッサージ屋を見つけて、そこへ入る。受付の女があと20分後からなら予約が取れるというので、それで構わないとヒゲの男は自分の名前を伝える。


ヒゲの男が受付の女に名前を伝えたとき、施術中であろう部屋のカーテンが揺れる。カーテンの向こうで「阿守くん…」と、気だるそうな冥界からの声が聴こえてくる。カーテンが持ち上げられ、向こうから最近ヒゲを剃った不動産デザイナーの男が、半身寝転がったままでヒゲの男を見る。


「あなた、こんな時間から仕事もせずに何を転がってるんですか」と、ヒゲの男は知人である不動産デザイナーの男に率直な感想をいう。


「お互いさまですよ」と、不動産デザイナーの男はお前も同類だというような目をして笑う。


昨日という一日はそのようにしてスタートした。


詩人のロートレアモンは、美しさを表現するために「解剖台の上での、ミシンと雨傘との偶発的な出会いのよう」ということばを残しているが、今回の出会いはそれとはまったく関係ない。


ヒゲの男は40分の施術カリキュラムを終えたあと、オフィスへ戻る。この日はアラタメ堂の主人が主催する「北浜人狼」というイベントがオフィスにて開催されるので、半ば強制的にゲームマスターの任を拝命しているヒゲの男は、1時間前にはスタンバイをしておかなくてはならないのだ。


イベント開始の時間がやってきて、続々と人がオフィスへやってくる。人狼を知っている人から、まったく要領のわからない人まで様々である。中には、わざわざ東京の出張先から新幹線で駆けつけてくれた人もいた。


そう、その人の名は、冷泉である。


ヒゲの男が自分用にとオフィスに置いていたウイスキーの「山崎」。開栓後、トクトクという心地よい音をたててヒゲの男のコップに少量が注がれたが、ヒゲの男が二杯目を注ごうとしたときには、ボトルの中身は80%を失っていた。もちろん、天使の分け前という洒落たものではなく、静かなるままに冷泉の胃のなかに収まっているのだ。


ゲームは盛況なままに最終ゲームを迎えることとなる。


最終ゲーム、ヒゲの男は司会進行をアラタメ堂に任せて、プレイヤーとして参加することとなった。配られてきたカードには「狼」が描かれてあった。


ヒゲの男は自分の仲間であるはずの狼たちを糾弾していく。どんどん身内切りをしていくのだ、霊媒師を生かしたままで率先して身内切りをしていく、霊媒師は昼間に切られた人間たちが狼であることを皆に伝えていく。ヒゲの男の仲間である狼たちも、ヒゲの男の戦略に乗っかってくれるので、場の信頼がヒゲの男に集約された。


しめしめ…、これで最終日を迎えれば十中八九、勝てるであろうと踏んでいたヒゲの男の希望は一瞬にして途絶えることになる。人狼であるヒゲの男が生きているのに、司会者であるアラタメ堂がミスジャッジによって市民側の勝利を宣言したのである。なんたることか、アラタメ堂!


しかし、なるほど、幾ら完璧な戦略であったとしても、予期せぬ外因によってそれが崩壊することがあるのだと、ヒゲの男は随分と教訓を得た。


北浜人狼は珍妙で凄絶なる幕切れとなった。冷泉は画廊喫茶フレイムハウスで新料理の「コロマンサ」が食べたいといいだす、ヒゲの男は先発隊として冷泉と人見知りの大学生の男を連れて店へ移動することにする。アラタメ堂一座は片付けをしてから後で合流するとのこと。


店に到着すると、常連のガルパンの男から大正琴のチューニングを頼まれる。どうやら、どこからか2000円で入手してきたもので、状態は多少のキズはあるが良品である。


ヒゲの男の祖母も大正琴を弾いていたが、ヒゲの男がイタズラで、祖母の大正琴を正規のチューニングからインド音階のチューニングなどに変更すると、祖母は烈火のごとくに怒ったものである。


ヒゲの男は大正琴の代わりにと、ガルパンのスマホゲームの部隊編成の調整をガルパンの男にお願いする。実はヒゲの男も、先日アプリをダウンロードしたのだ。頑張ってレベルを20くらいまで上げた、早くレベルを99にしてガルパンの男に追いつきたいものだとの野心がある。


ガルパンの男のレベルは最大値の99だろうからとタカをくくっていたのだが、ヒゲの男がガルパンの男の情報を見てみるとレベル136であった。なにごとも先入観は良くないものである。


すると、誰か複数人が細い階段をのぼってくる音がする。アラタメ堂が指揮する後続部隊が到着したのかと誰もが思ったが、店のなかに入ってきたのはチェコのプラハから来た4人組の外国人である。


ヒゲの男が彼らから聞くところによると、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の関係者であるという。


チェコ人の女が、ヒゲの男に訊いてくる。


「お前はチェコ・フィルハーモニーというのが何をしている組織なのか知ってるのか?」

「そんなことはもちろん承知だ」と、ヒゲの男は平然と折り返す。


本当かよ、デタラメで調子を合わせてるんじゃないのか?というような顔をチェコ人たちは苦笑しながらする。


「チェコ・フィルに関連する人の名前を知ってるか?」と、さらにヒゲの男に訊いてくるチェコ人の女。


「もちろんだ、冷戦時代に日本へやってきた、カレル・アンチェル指揮のチェコ・フィルの演奏は凄まじい名演だったようだ」と、ヒゲの男はさらに折り返す。


苦笑していた、チェコ人の年配の女の顔がカレル・アンチェルの名前を聞いた瞬間、驚愕に変わる。まさか、このような場所で今は亡きマエストロの名前を聞くとは思わなかった…、と早口に口走る。


ヒゲの男は俳優のトミー・リー・ジョーンズに似た、カレル・アンチェルがチェコ・フィルを指揮する白黒映像を若い頃に何度も何度も観ていた。昔にインプットした知識がこのようなところでアウトプットの機会を得るなんてと、なんだか嬉しくなった。


ここからはチェコ人は終始ご機嫌となり、ヒゲの男に酒を振舞ってくれる。そのころ、後続のアラタメ堂部隊が店にやってきて、さらには時を同じくしてヒゲの男と同郷のペーパーカンパニーの課長もまぎれこみ、店は足の踏み場もなくなる。


版画家の柿坂万作は多すぎる需要に対して、時間をかけながらもしっかりと客の胃袋を満たそうと供給をしていく。ほぼ、厨房から離れられない状態にあった万作は、さぞや疲れたことであろう。


冷泉がヒゲの男にアレを弾けという、アレというのは冷泉が大好きな「リトアニア舞曲」である。冷泉はことあるごとにヒゲの男にリトアニアを弾かせたがる、ガルパンの男はこの曲のタイトルを「アルバニアの踊り」と、ことあるごとに間違えて覚える。


吟遊詩人の女は、ヒゲの男からことあるごとに「カントリーロード」を歌ってくれといわれるが、こうしてヒゲの男自身にも鉢がまわってくるのは、世の中の因果が正当に機能しているからであろう。


しまいに冷泉はチェコ人に向けて、僕の腹を殴ってみませんかと参加希望者を募りだす。ところが、これには誰も応じない。チェコ人はこいつは何を言ってるのだ?と怪訝な顔をする。


当然である、誰しも外国へ行き、袋小路のようなバーに入りて、全身黒ずくめで半笑いの男から、「僕の腹を殴ってくれ」といわれて、気色のいいはずがない。その心中を察するやヒゲの男は面白くて仕方がない。


すぐにヒゲの男はスマホにて翻訳機能をたちあげ、以下の文章をチェコ語に翻訳して彼らに見せる。


「これは日本文化における最大級の歓待の作法である。日本の政治家が得意とする腹芸というものだ」


その翻訳文章を読んだチェコ人の男は爆笑しながら、その意図を他のメンバーに母国語で伝える。皆、一様にうなずきながら納得して、興味深そうに冷泉を見る。


アラタメ堂一座は隣の席に陣取ってオフィスでの人狼の熱が冷めやらぬまま、つづきを開始する。ヒゲの男と同郷のペーパーカンパニーの男がこの人狼に参加をするものの、すでに酩酊状態となっており、ゲームの序盤で排除されるもずっと手を挙げて参加を続けて、混沌としている。


その様は、脚気の調査のときに使われる、膝蓋腱反射そのものを見ているようであった。

チェコ人たちは帰り際に、ヒゲの男に何かオペラを歌ってくれという。ヴェルディをリクエストされたが、酔っているせいかヒゲの男には「乾杯の歌」のメロディーが出てこない。代わりにプッチーニの「誰も寝てはならぬ」のクライマックスを大声で歌う。


アッラルバ、ヴィンチェロー、ヴィンチェロ―!ヴィン、チェーーーーーロゥーーーーーッ!


店の窓を開け放していたため、ヒゲの男のお世辞にも上手とはいえない絶唱は外にも聞こえており、偶然にも店の前を通りかかったオーストラリア人から、グッドサインをもらう。数秒後にオーストラリア人は画廊喫茶フレイムハウス店内でビールをあおることとなった。


アラタメ堂一座からは、最終的に上仲とドローンを飛ばす廃墟マニアの男が残ることなる。夜も更けて、いちげんさんの広告デザイナーの男がやってくる。東京から出張で大阪に来ているこの男は、画廊喫茶フレイムハウスにとても懐かしいものを感じるという。以前は東京にもこういう場所が多々あったのだがと懐かしそうな目をしながら、白ワインをぐいぐいと飲む。


随分と深夜にも関わらず、また、いちげんさんがやって来る。


笛の妖精である。この男は常にリコーダーを持ち歩いているそうだ、一度、万作をコンビニで見かけたことがあるというのからして、妖精はこの界隈の住人なのであろう。


一緒に演奏したいというので、ヒゲの男はギターで伴奏しながら、妖精は天空の城ラピュタの「君をのせて」のメロディーを奏でだす。


次にヒゲの男がラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」のメロディをギターでそれとなく演奏すると、そのメロディに笛をかぶせてくる。


笛の妖精は足踏みオルガンにも興味津々で、何かのメロディーを弾きだす。


ヒゲの男はそのメロディーがベルリオーズの幻想交響曲に使用される「イデー・フィクス」のメロディーであることに気づいて驚いた。


次はヒゲの男の番である、ギターでストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」の導入部のメロディを弾く。すると笛の男はしっかりと譜面通りのアクセントを口三味線で入れてくる。


笛の妖精はオルガンで、ヒゲの男が聴いたことのないメロディを弾きだす。これには参った、ヒゲの男は何のメロディなのかわからないと答える。


「ブラームスのピアノ四重奏曲第一番をシェーンベルクが管弦楽曲に編曲したのの、ピアノバージョンだよ」と、笛の妖精は答えるが、そんなもの10000人いて、運よく1人が回答できるかどうかというような選曲である。


笛の妖精は自身が小澤征爾と対面したときの話しをヒゲの男にしてくれた。


笛の妖精はもっとヒゲの男と音楽の話しがしたいと言ってくれたが、ヒゲの男は睡魔におそわれており、もう限界だと妖精に告げて帰ることとした。


笛の妖精はいう


「やっぱり、音楽っていいものだね」


ヒゲの男は、うなずきながら同意する。


「でも、好きすぎて身を滅ぼしてはいけません。適度な音楽との付き合いを今の僕は探っています」と、ヒゲの男は笛の妖精にいう。


笛の妖精は、少年のようなあどけない顔と、老人のような苦みのある顔を同居させたような表情を浮かべながら、「…そうだね、そのとおりだよ」と返答する。


ヒゲの男は、この妖精が楽園の地獄をのぞいて来た者だと、直感でわかった。




そういえば、チェコにはこういう民話がある。


水に住む妖精ヴォドニックは、美しい人間の娘に恋をして、娘を水の中に連れて行き、妻にした。


2人には子供も生まれたが、ある日、娘が「母に会いたい」というので、子供を置いて家に帰らせてやると、そのまま娘は二度とヴォドニックのもとへ戻らなかった。


怒ったヴォドニックは自分たちの子供を切り刻んで


娘の家のドアの前に置いた。


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by amori-siberiana | 2017-09-29 17:54 | 雑記 | Comments(0)


北浜というビジネス街を独立させようと企む、ヒゲの総帥のブログです。
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