2017年11月04日(土) ◆国内留学はこうしてはじまった。

こんにちは、北浜にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を居城にして、そこで籠城戦をしているヒゲの男こと、阿守のブログです。


さて、昨日のこと。


ヒゲの男はクントコロマンサからほど近いホテルをチェックアウトして、そのまま店に向かう。「今日は好い天気だ」と中原中也の詩をふんわりと思い浮かべながら、階段をどんどんと登っていく。ヒゲの男が階段を登り終えたころ、また階段を誰かが登ってくる音がする、入ってきたのはいちげんさんの七五三の男である。


七五三の男が大きなカメラを持っているのを横目にコーヒーを飲みながら、ヒゲの男は、今日、シンフォニーホールでロシアの楽団がチャイコフスキーの大序曲「1812年」を演奏することを急に思い出す。ヤフオクでチケットを安く入札していたが、結局のところ元値と変わらなくなってきたので諦めていたが、どうしても行きたくなる。さて、どうしようかと逡巡したのち、思い切ってシンフォニーホールに電話をしてみたが、当日券は10000円の席のみだと告げられたので、気持ちは完全に切れる。


こんなに良い天気の昼間、なかなか10000円を音楽のために使えるものではない。


しばらくすると、また階段が鳴りだす。やってきたのは会計事務所のオーナーである。行きつけの店が祝日で閉まっていたので、仕方なくコロマンサ山に辿り着いたとのこと。注文するのはもちろんコロマンサである。


ヒゲの男は昨夜、ここで冷泉たちがキスをはじめて、どうしようもなかったのだということを会計事務所のオーナーに愚痴る。会計事務所のオーナーも昨夜、この喫茶店に寄ろうと考えたのだが、時間も遅かったために諦めたとのこと。


「僕、来んでよかったですわ」と、しみじみと実直な感想を述べる会計事務所のオーナー。ヒゲの男は「同感です」と述べる。


会計事務所のオーナーは目の前のカーペットをながめながら、こういう。


「…この場で昨日、そういうことが行われていたと想像しただけでも、汚いですね。おぞましい」と、呪いを祓うかのように言葉を繋ぐのがヒゲの男には面白くて仕方がない。


すると、また階段を登ってくる音がする。


「おお、今日は祝日やのに平日より忙しいな」と、版画家の柿坂万作はチラリともらす。やってきたのは見放題の女である、近場で買い物をしていたついでに立ち寄ったとのこと、手土産にこれまた上等な日本酒を持ってきてくれた。早速、昼間から日本酒を皆で飲みだす。


ヒゲの男はランチ営業を終えた店をあとにして、そこから歩いて20分ほどのところにある外国人観光客向けのホステルにチェックインする。一部屋に二段ベッドがずらりと並んであり、およそ30床ほどあるであろうか。ここだけ公用語は英語なのだ、という感じになっているホステルがヒゲの男の宿である。


到着早々、カナダ人が声を掛けてくる。


「お前はどこの国から来たのか?」


「酔った足で歩いて20分のところからだ」と、ヒゲの男はそのままを答える。


カナダ人は爆笑する。


正直に答えて笑いを誘っているのだから、これは確かに珍妙な光景なのであろうが、ヒゲの男は一向に構わない。カナダ人が大阪で観光すべきスポットを教えてくれというので、ヒゲの男はとにかく心斎橋のユニクロへ行けと適当なことを答える。


夜になり、ヒゲの男はまた歩いて店に行く。ベトナム人のタムが、群馬からの知人の女性を二人ほど店に連れてやってきていた。常連のガルパンの男もやってくる。タムはここ数か月のあいだ、ずっと京都に行くことが多かったのだとヒゲの男にいう。ヒゲの男が最後に京都に行ったのは、梅雨前の時期であったが、立ち寄ったバーで初見のイギリス人たちとクイーンの「ボヘミアン・ラプソディー」を歌った。ボックス席でヒゲの男が「ガリレオ」というと、バーカウンターにいるイギリス人たちも「ガリレオ」と歌い返してくるのが楽しかった。


群馬の女たちは明日には群馬へ帰るという、ここ数年、夏の暑さの盛りにいつもコンスタントに最高気温を叩きだす優秀な土地、それが群馬である。


ヒゲの男はタムと群馬の女たちが店を出たのを追うようにホステルに帰ることにする。ホステルの門限は23時であり、それを過ぎるようになると暗証番号をホステルのドアに打ち込んで開閉しなくてはいけないのだが、ヒゲの男にいたっては、その暗証番号が書かれたカードをホステルに忘れてきているのである。


店から出て夜道を歩いていると、「阿守、阿守」と聞き覚えのある声が前方からしてくる。ヒゲの男が視線を声のするほうに向けると、そこにいたのはタカハシン・コルテスという男であった。この男との付き合いも長い、ヒゲの男が音楽家であった時代、この男は音響屋をしており、あちこちを一緒に行った仲である。血色の悪い顔なのに、その顔の作りはラテン系のようであるからして、出会う人に奇妙な印象を与える。


確かドラキュラのいたルーマニアもヨーロッパでは珍しいラテン系の国ではなかったか。ルーマニアの吸血鬼はこういう顔をしていて、こんな感じで親しそうに往来する人を呼び止めては、血を吸うのであろうとヒゲの男は想像する。


コルテスと一緒にいるのはコルテスの両親である。コルテスは両親にヒゲの男を紹介する。


「前に話しとった、音楽仲間で、投資に詳しいヤツがコイツや。大儲けしとった」


コルテスの母親が一礼して、ヒゲの男に向かって口をひらく。


「いいところがあるのなら、教えてくださいませんか」


「もちろんです、南アフリカの案件になりますけれど、一瞬で破産するリスクもありますが構いませんか?僕のいうとおりにすれば確実に資産が200倍になります」と、ヒゲの男はニヤニヤして意地悪そうに母親に話す。コルテスの母親はそれを訊き、苦笑するにとどまり、それ以上は訊かないという感じであった。それで正解である。


ウォーレン・バフェットは「すぐに確実にもうけられるという話には即座にノーと言うことだ」といっていたが、その勇気を持っているコルテスの母親は、さすがだなとヒゲの男は感心した。


ヒゲの男はコルテスと一緒に彼の両親を近くの駅まで見送り、そしてコルテスとも別れてホステルへ戻る。


神学校の寄宿舎生活に憧れていたヒゲの男は、ちょっとだけ自分がイシュトヴァン・シュテファンになったような気がするのであった。


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by amori-siberiana | 2017-11-04 11:42 | 雑記 | Comments(0)


北浜というビジネス街を独立させようと企む、ヒゲの総帥のブログです。
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