2017年11月09日(木) ◆小説家の男とヒゲの男の安宿夜行。

こんにちは、北浜にある猫のひたいのような小さな店。コロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)にて、かごの中に愛と勇気を一杯詰めこんで、配り歩いているヒゲの男こと阿守のブログです。


さて、昨日のこと。


といっても日付が変わったばかりの頃。つまり、これから書くことは一般的な認識では一昨日の深夜ということになる。ヒゲの男と小説家の男は安宿にチェックインする、一泊で2000円。それでシャワーとトイレが完備されているのであるから、こんなにお得なことはない。チェックアウトも朝の11時なので、随分と良心的である。


安宿は老舗のうなぎ屋だったところを改装してゲストハウスとして利用しているとのこと。その低料金に惹かれてやってくるのか、それとも交流を求めてやってくるのか、圧倒的に外国人宿泊者が多い。ヒゲの男と小説家の男の二人とも、こういったドミトリーなホステル暮らしには慣れっこなので、なんら不便を感じるようなことはない。


とにかくヒゲの男が貧乏旅行をしていたその脇には必ずといっていいほど、この血色の悪そうな顔にギョロリとした目、そして出歯の男が影のようにいるのである。ヒゲの男にとってITの黒子は冷泉であるが、貧乏旅行においての黒子は小説家の男なのである。


ゴシック建築になど興味がないとロンドンで本ばかり読んでいた、この小説家の男を巧みにダマしてビッグベンまで連れて行った。いつもと地下鉄が違うと違和感をもっていた小説家の男だが、地下鉄の駅から出るや目の前にビッグベンなる建物が現れるや、言葉を失っていたではないか。


スコットランドでは海岸でドラムを演奏して、地元の奴に気に入られてパブへ行き、随分と酩酊した。湖水地方では小説家の男は何を考えたかボートを借りて、湖に漕ぎだす。静まりかえった不気味な湖であったが、ボートが湖の中心部へ到着したときに大雨が降りだす。小説家の男は半ばヒステリーになりながら、ボートに入ってくる水を転覆しないように掻きだしては、命からがら岸に辿りつくような冒険譚もした。その様子を小高い丘の上から見ていたヒゲの男は腹を抱えて笑っていた。


リバプールではビートルズゆかりの「キャバンクラブ」で演奏するということで、ホステルの英雄となり他のホステル宿泊客のほとんどがライブに来ることとなった。マンチェスターでは、日本円を5000円しか両替しない旅行をしている小説家の男に、ディジュリドゥ奏者がストリート演奏で稼いだ金を小説家の男に恵んでいた。


イタリアでは早朝に叩き起こされ、スイスではマッターホルン山麓で凍傷になりかけ、オーストリアでは洗濯ばかりをして、ミュンヘンではビアホールでたらふく酒を飲み、そのまま深夜列車に乗ってパリへ行く。パリではインラインスケートを履いて、毎晩のようにぐるぐるとルーブル美術館のピラミッドを回り、スウェーデンでは船に乗り、フィンランドでは落ちたリンゴをテニスのラケットで打ちまくった。


インターネットがやっと普及しだした頃だったので、ネット内にはそんなに多くの情報はなかった。そういった探し物をするのに一番有効だったのは、まだ紙の媒体であった。


ヒゲの男は当時のことを懐かしみながら、小説家の男と一緒にホステルのカウンターでカップ麺をすすっていた。カウンターの奥には段差があり、そこは座敷となっている。座敷にはテレビがあり、そのテレビが乗っかっている台にはスーパーファミコンと初代のマリオカートがある。ヒゲの男は地元ではマリオカートの神といわれていたのだ。


およそ20年ぶりにマリオカートをやってみるが、頭のなかではスムーズな動きをするはずなのに、実際はなんだか手につかない感じがする。イライラしたままゴールをすること、全盛期に比べて2秒も遅くなっていることにショックを受けて、ヒゲの男はマリオカートをやめて自室に戻りフテ寝をすることにした。


寝ては起きて、その日の宿泊先を決めて、そこへ移動して寝る。そして当時は連泊できる安宿が少なかったので、起きたらすぐに宿を叩きだされ、その日に泊まれるところを探すために電話をかけまくって、その宿がある用事もない街へ移動してという繰り返しだった。今になってみれば楽しそうな思い出に聞こえるであろうが、これはこれでなんらの安らぎも得られない苦難の旅であった。


人は安定が続いたときには、反乱を望み。不安定が続いたときには何に代えてもいいからと、安定を望む。いつだって人の考えることに一貫性などないのだ、その場その場で決めていたり、流されたり、大河の上に揺れる笹舟のようなものであろう。


店のことはどうしたのだ?といわれるかも知れないが、特に何もなかったのだ。いつものクントコロマンサ、1分間を誰が60秒だと決めたんだという具合で、ゆっくりと時間が流れていた。


さて、明後日の11日(土)のことであるが、北浜にあるツタの絡まる風情ある青山ビル。そこのギャラリー「遊気Q」にて、カンテ(スペインの伝統的な歌)とフラメンコギターのライブがある。歌いあげるのはエンリケ先生、入場は無料だとのことなので是非、時間に余裕があるかたは行ってみていただきたい。ヒゲの男は椅子をギャラリーの女に返却するついでに、見に行こうと考えている。


由緒あるポートピア'81(神戸ポートアイランド博覧会)の椅子は、まだ返却できていないのだ。


久しぶりにトニー・ガトリフ監督の「ベンゴ」という映画のサウンドトラックを聴いてみたくなった。これに出ているトマティートが、悪魔のように不気味で格好いいのだ。


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by amori-siberiana | 2017-11-09 19:01 | 雑記 | Comments(0)


北浜というビジネス街を独立させようと企む、ヒゲの総帥のブログです。
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