2017年11月10日(金) ◆エビのように死ぬまで殻を脱ぎながら生きる。

こんにちは、北浜にて猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)をプロデュースしている、ヒゲの男こと阿守のブログです。


そういえば先日のことである。


店に版画家でシェフの柿坂万作と常連のガルパンの男、そしてヒゲの男の三人がなにをするでもなく佇んでいると、誰かが階段を昇ってくる音がする。ゴガという音とともに締まりの悪いガラス戸は開け放たれ、そこにいたのは用心深そうな男であった。見るからに会社帰りという具合の男は、開口一番こういう。


「水タバコが吸える店ってここですか?」


店内にいた三者が一様に顔を見合わせて、「???」という表情を浮かべる。会社員の男は水タバコという語句で検索をかけたところ、GOOGLEがこの店を指示したということを説明する。なるほど、おそらく水タバコを吸う男が来るということを書いたブログが検索に引っかかって、この会社員はそのように考えたのであろう。


ヒゲの男は会社員の男が何を見てやってきたのか知りたいので、会社員のスマホを見せてもらう。会社員から受け取ったスマホには、肉切り包丁をもって気色の悪い笑顔を浮かべるハイタッチ冷泉の写真がある。よくこの写真を閲覧してやってきたものだと感心すると同時に呆れる。


「ここで水タバコは売ってはいませんが、アヘンなら店内を探してみると、あるかも知れませんよ」と、ヒゲの男はウソともホントとも取れないようなことを平然と会社員に伝える。


「うーん、水入れたコップ用意して、ストローでタバコを吸ったら同じになるんやないですかね」と、これまた珍妙なことを言いだすのは版画家の万作である。ガルパンの男といえば、自己のスマホの中にて戦車を展開して戦争中であった。


目当てのものがなかった会社員は店の階段をそのまま下りていった。毎日、とにかく何かある店である。


さて、昨日のこと。


クントコロマンサ店内では、メインテーブルでは妖精の女と友人が食事を楽しんでいる。オルガン横の奥の席ではヒゲの男とアラタメ堂、そして常連の不思議な女が量子テレポーテーションの話しをしているが、それについての専門的な知識をもった人間が誰もいないので、いつの間にか「どこでもドア」の話しになる。


アラタメ堂はエビが好きで仕方がないそうである。自身が福岡へ出張に行っていたころ、大阪で一番エビを食べる男という代名詞を背負って、ご苦労にも血気盛んにエビを胃袋へ詰め込んでいたそうだ。もちろんエビの頭のミソまで吸い出すとのこと、エビから見ればアラタメ堂のバタリアン的行動は看過できないものであろう。


時代が変わり、人間が自らの想像力と破壊力によって自滅し、エビがこの惑星のトップに立つことがあれば、世紀の虐殺者としてアラタメ堂は裁判なしで死刑になるのではなかろうか。


常連の不思議な女も北海道の知人がこちらにやってきたとき、自分たちがエビの頭の脳髄まで吸い出すのを見せたところ、野蛮人を見るような白い目で見られたのだという。「あなたたち、これは捨てるところよ」と諭されたのだと、笑いながら話す。


ヒゲの男とガルパンの男は有頭エビを好まないので、その北の国からきた人間の意見に同意するが、アラタメ堂や不思議な女いはくには、なにを隠そうエビの頭ほど美味なところはないのだそうだ。アラタメ堂はとにかくエビが食べたいといい、明日のランチは1900円もするエビを食べることに決めたと、宣言を出す。


エビというのは元来めでたい食べ物である。もちろん、色合いが紅白なところもあるが、それよりもその生き方が素晴らしい。


エビは生きているあいだ、いつまでも殻を脱いでいき、今の姿にこだわらない。世の中が冬支度をはじめようかという秋にエビは逆で殻を脱ぐ。株でいうところの逆張りである。エビは生きている限り、固執せずに殻から脱し続けて、いつまでも若さを失わない。よりよく変化することを繰り返すということで、エビはめでたいのだそうだ。


つまり、永遠の18才なのである。


ヒゲの男は1900円もあれば、この店で目玉焼きが17個ものっかったパーフェクト・コロマンサが食べられますよと爆笑する。その話しを厨房で聞いていた万作は「ワシ、それ頼まれても、作りませんよ…」と、事前に釘を刺しておく。不思議な女は「コロマンサで例えたらダメよ」と、苦笑しながらいう。


ヒゲの男の母親も甲殻類が好きで、母親の実家へ行ったおりにカニなどが出ると、それはそれは凄惨な食べ方をするのである。よくいえば豪快、よくいわなければ野卑に食べる。カニの殻のことごとくは剥かれ、臓腑はえぐられて、最後は血管に残った体液すら吸われるような思いをするカニの気持ちを想像するとヒゲの男はいつも食欲が失せるのであった。


ヒゲの男には変なところ潔癖な部分がある。


他人の家で出されるものが苦手である。おにぎりなどはその最たるもの、あと飲み物の回し飲みなども苦手である。スコットランドでギャレスという男からタバコが回ってきたときも、えらく躊躇したものだった。そういうこともあり、ヒゲの男は潔癖でできあがっているのかというと、そうでもない。他人がみたら驚くような部分で潔癖とは疎遠でガサツだったりする。


話しは量子テレポーテーションからエビの話しへ移り、さらには不思議な女が子供のころに見た、大気中で燃えながら降りてくる人工衛星の話しになった。不思議な女が友人の家へ、星の観測をするという口実でファミコンをしに行った日、空に謎の光が現れたのだ。不思議な女はそれが人工衛星が大気圏内に突入した際に放たれる閃光だったということを、後になって知る。


「それは貴重な体験をしましたね」と、ヒゲの男は羨望のまなざしで不思議な女を見る。扱いとしては「火球」になるそうであるが、夜空のショーのなかでもとびっきりの体験であろう。自分が見たいと思ったときに見られるものではないのだ、流れ星というものは毎晩、行くべきところへ行けば見られるものだが、火球となればこれはグッとハードルが上がる。そうそう見られるものではない。


ヒゲの男も火球を一度だけ見たことがある。岡山の山奥だった、星空の下に寝転がり、誰が聴くでもなしギターを弾いていると夜空にバチバチと火花を散らしたような閃光が走った。ヒゲの男はキリスト教徒ではないが、「いよいよアルマゲドンがやってきたのか」と、ミーハーにも終末思想が頭を過った。しかし、最後の審判はいつまで経っても訪れないので、後になって調べてみるとそれが「火球」だった。


ヒゲの男がその話しを母親にすると、母親も小さい頃、火の玉を見たことがあるといっていたが、どこかヒゲの男の見てきた火球とは雰囲気が違う。母親がいうには夜空ではなく、ふわふわと目の前を通り過ぎていったというのだ。なるほど、母親のいっている火の玉というのは、鬼火と呼ばれる怪異のものか、球電と呼ばれる自然現象であろう。


そういえば、今日は母の69回目の誕生日である。誕生日を迎えた母親に向けてメール以外になにもしていないが、どういうことをすれば一番の親孝行になるのか、ヒゲの男はいまだにわからない。わかろうとすればするほど、わからないのである。


母親からは「こんなに太陽の光がありがたい日なのだから、日光浴でもしてビタミンを蓄えておけ」と忠告の返信があった。


母親に69才になった心境はどのようなものか訊いてみた、母親からは一言だけ回答があった。


「複雑な年ごろです」と。


母親もまだまだ思春期なのかも知れない。


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Commented by セロー at 2017-11-11 02:02 x
食べすぎてエビに恨まれた末に甲殻アレルギー。
死ぬ前に食べたいのは、
タラバガニの極太の脚
クルマエビのエビチリ
タカアシガニの脚
イセエビの刺身
窒息して一番苦しいそうな。
Commented by amori-siberiana at 2017-11-13 16:20
> セローさん

僕はアレルギーではないのですが、大人になってからどうも甲殻類の旨味が臭味に感じられるようになってしまい、いつしか好んで食べられなくなりました。
by amori-siberiana | 2017-11-10 13:01 | 雑記 | Comments(2)


北浜というビジネス街を独立させようと企む、ヒゲの総帥のブログです。
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