2017年11月27日(月)① ◆ジウジアーロと人狼とミニマリズム。

こんにちは、北濱にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を版画家の柿坂万作と経営するヒゲの総帥こと、阿守のブログです。


さて、宇宙編が終了した後のこと。


ヒゲの総帥は途中退席したこともあって、比較的早い段階で高槻から北濱へ戻ってくる。店に到着すると、常連のガルパンの男、不思議な女、グラフィックデザイナーの男、青いカーデガンの女、よさこいの女が親戚のようにテーブルを囲み、なにやら話し込んでいる。奥の席ではヒゲの総帥が見たことのない男が、半死半生のような姿勢で椅子にもたれかかり眠っている。映画などではこの男がシーンの重要な場面で、くわっと目を見開き、「南の遺跡を探るのじゃ」と物語の展開で必要なキーワードを言ってくれそうなものだが、この男は特にそういうこともなさそうである。


ヒゲの総帥は今日の宇宙イベントが自身の期待したものではなかったことを懇々と話す。とにかく手を上げさせられてばかりで肩が痛いと不平不満ばかりをいう。そもそもアカデミックで協調性を求められる場面が苦手な男が、そういったところへ行くのが間違いである。ズービン・メータのブルックナーを聴きに行ったり、ゲオルグ・ショルティのドビュッシーを聴きに行くようなミスチョイスである。


グラフィックデザイナーの男が口を開く。「オレも先日、憧れのデザイナーが来たからイベントに参加してきたんだけど…」と経験談を話してくれる。概要はこうである、グラフィックデザイナーの男はジウジアーロのデザイナーが来るというので話しを聴きに行った。ジウジアーロというのは人の名前で、ジョルジェット・ジウジアーロというイタリア人の自動車デザイナーである。車好きなら避けては通れない傑物なのである。そのジウジアーロ先生と共にデザイン会社を設立した日本人デザイナーの男が大阪で講演会を開くというのでグラフィックデザイナーの男を含めて、車好きの諸氏はこぞって後援会に集まったという体である。


いよいよ先生がジウジアーロ・デザインの何を語るのかと会場に緊張感が走っていたが、先生が話すのは車とはまったく関係のないワインなんかの話しばかりで、いよいよ講談を聴いていて眠くなってきたとグラフィックデザイナーの男はいう。待てど暮らせどジウジアーロの話しになりゃしない、そのうち講演は終わってしまった。「えっ?ジウジアーロはどこいったん?」と会場まで足を運んだ聴衆たちが思う。次に聴衆から講演者への質問タイムが設けられた瞬間、一斉に手があがりジウジアーロの話しを聴けるに至ったという顛末であった。


「最後の質問タイムでみんなが同じことを思っていたということがわかったのですね」とヒゲの総帥は大笑いする。車といえば、ヒゲの総帥は誰も求めていないのに自身の昔話をしだす。ある夏の日、まだ高速道路も満足に繋がっていなかった高知まで叔父に連れられてフェラーリF40が来るというので見に行った。車好きの叔父がいうには、とんでもないイタリアの車が来ているというのでヒゲの総帥はナイトライダーのような車があるのだろうと期待していた。野を越え山を越え、とにかく車酔いするには最適な道を延々と車で走りフェラーリを見に行ったのだ。「高知の道はとにかく酷かった…」と当時の気分の悪さを表情に出しながら総帥はいう。隣に座っていたよさこいの女はギクリという顔をする。到着したのはいいけれど、人だかりの向こうにぽつねんとあるのは、鉄板で無骨に作られた平べったい車が一台あるばかりで、「えっ?これを見に来たんですか…」と子供心に感じたのだという。


不思議な女が「そういう意味では、江戸時代に象がやってきたのを見た人は期待以上のものを見れたんじゃないかな」と落ち着いた声でいいだす。ガルパンの男と総帥は江戸時代に象がやってきたルートについて論議をする。中国からではないか、いや、鎖国があったからポルトガル直轄統治のマカオ経由から船便という東南アジアルートではないかなどと、本題からかけ離れた詮無い議論は決着なく続いていく。


しばらくすると、ゴガッと締まりの悪いガラス戸の音がして、マスマティックの女がやってくる。このマスマティックの女は先日、アラタメ堂のご主人が主催した人狼ゲームのときに来店していた客である。ヒゲの総帥とマスマティックの女はオルガン横の奥の席へ移動して、なにやら話しをしている。どうやら年始にクントコロマンサにて自身が主催する人狼ゲームを開催したいのだとのこと、ヒゲの男はどうぞどうぞと歓迎の体を示す。


マスマティックの女の人狼の知識はヒゲの総帥など比べ物にならないほどで、先日、いろいろとこういう遊び方もあるのだと亜流を教えてもらっていたものだ。しかし、人狼に飽きたとき他のボードゲームを持っていないのでどうすればいいかとマスマティックの女はヒゲに相談する。ヒゲは「それならアラタメ堂と共同主催ということにしましょう。アラタメ堂は家族から敬遠されるほどボードゲームを所有していますから。アラタメ堂のご主人の所有物をアテにしましょう」と他力本願なアイデアを添える。「そうしていただけるなら、ありがたいです」とはマスマティックの女。


こうして本人の都合もなにもおかまいなしに年始のイベントが決まっていくのであった。

話しは前後するが、そういえば、ヒゲの総帥は講義に出席して目立ちすぎて失敗したこともある。偉大なる現代作曲家スティーブ・ライヒ先生の講演会に参加したヒゲの男は、どういうわけか他の聴講者を差し置いてオーケストラ譜の譜めくりを任命されることとなった。これは名誉なことかも知れないが、ライヒ先生の音楽たるや同じメロディーが細切れのようにずっと続くのである。つまりミニマムミュージックと呼ばれるものである。


文章にするとこんな具合である。


♪ステキステキステキステキステキステキステキテキステキステキステキステキステキステキステキステキステキステキステキテキステキステキステキステキ…♪


素敵な音楽であるのだが、あれ?今はどこの素敵を演奏してるんだったっけ?と訳が分からなくなり、冷や汗をかきながら譜めくりをさせられたのだ。途中でわからんくなったと放り出したいが、自分の背後に100名以上の聴講者の視線を感じるのでそうもできない。それ以来、ヒゲの総帥はあらゆる譜面に近づかないようにしている。いつ唐突に譜をめくってくれと命ぜられるかも知れないからだ。君子危うきに近寄らずというが、自分が一番危ういのだから近づくのはもっての他である。


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by amori-siberiana | 2017-11-27 12:00 | 雑記 | Comments(0)


北浜というビジネス街を独立させようと企む、ヒゲの総帥のブログです。
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