2017年12月08日(金) ◆ロシア革命と床屋は同時に発生した。

こんにちは、北濱にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を経営するヒゲの総帥こと、阿守のブログです。


さて、昨日のこと。


ヒゲの総帥は北濱のオフィスにて店の帳簿を見ながらうんうん唸っている。唸るだけではもの足らずヒゲを引っ張ったり捻ったりしながら帳簿をながめる。まるでヒゲからお金を出してみましょうといわんばかりの勢いであり、少々滑稽でもある。取りあえず店の運営において何を最優先順位にしてスズメの涙のようなお金をどう使っていくか決めていく。そういえば週末には演奏がありヒゲの総帥も舞台にあがりギターなどを弾いて聞かせるつもりでであるが、当分のあいだ髪を切っていないことに気がつく。もともと髪には無頓着なヒゲの総帥であったが、版画家の万作のように頭に筆を突き刺して済ましておくわけにもいかない。


どうにか安く済ませられるところはないかと美容室を探してみるが、どの美容室も予算をオーバーしてしまう。「そういえば…」とヒゲの総帥は気がつくことがある、北濱のオフィスの近くに創業1917年の床屋があったことを思い出す、1917年といえばロシア革命が起きた年である。日本でいうところの大正6年。つまり今年でちょうど100年という老舗、三世代に渡って家業を継続させているのか、それともまだまだ創業当時のスタッフたちが現役でやっているのかわからないが、100年続くというのは相当なものだろう。


どちらにしても1917年というのがシベリアっぽいから悪かろうはずがないと簡単な気持ちでヒゲの総帥は数十年ぶりに床屋へ行く。床屋の名前は「有馬号」という、屋号は「号」とつくだけあり昔は主人の苗字に「号」をつけるものだった。何も有馬記念で大当たりした資金を元手に主人が意気揚々と開業したわけではない。


店に入ると広めの待合室があり、三人の床屋がいる。本日の予約者の名簿をみるとずらりと名前が入っているので人気があるのだろう。ヒゲの総帥が行った時間には幸運にも客が一人であり、その客も髪が仕上がったのであろう、店のカウンターで勘定を済まして出ていくところであった。


ヒゲの男は真っ黒いレザーシートの床屋椅子に座る。年配の床屋がやってきてどういうふうにするのかと聞いてくる、髪が耳にかかってきたり襟足が延びていて決まりが悪いから、それを払拭してくれたまえとヒゲの総帥は注文をする。髪を切られる、耳元でのハサミの音が心地よく床屋の男のバリトン声が睡眠薬のように「眠れ、眠れ」と囁いてくる。昨日のことを思い出して書いていても、その音を脳内再生すると今も眠くなってくる。


ヒゲの総帥の頭は何度も首がそれを支えきれずに下に落ちる、床屋によって頭を上げられる。そしてまた引力と睡魔によって落ちる、また持ち上げられる。これではまるで敗軍の将が何度も首実検をされているような光景である。しかし入念に髪にハサミを入れていってくれる、そして顔剃りである。顔剃りなどされるのは中学生時分以来ではかろうか、手際よく床屋の男はヒゲの男の顔の産毛を取り落とし、剃り終わったあとはゆで卵のような肌になっていた。ヒゲすら整えてくれるのはなかなか気恥ずかしいものであったが、原生林のようになっていた口の上はピョートル大帝のようにエレガントなヒゲとなった。そして洗髪をされてドライヤーをあてられマッサージをされて床屋の組曲は終了となるが、その全てがまったくもって見事の一言である。これぞ職人と目からウロコの体験であった。


1時間40分もいたのに、値段は3900円であった。これまで美容室で幾らほど使ってしまったことか(!)


これからは美容室ではなく床屋に行くようにしようと決意するに至ったことを床屋の主人に伝える。「でかした」と一声が飛び、それならメンバーズカードに名前を書くがいいだろうというので、金がかかるのかと問うとそんな趣向はないという。「そんなら入ります」と義務のかからぬことを知るや否やヒゲは急に気軽になる。感動も冷めやらぬままにヒゲの総帥はメンバーズカードに名前を書きつける。金がかからないということがわかっていれば、謀反の連判状へでも名前を書き入れますという顔つきをする。


北濱のオフィスへ戻ると、ハイタッチ冷泉が仕事の打ち合わせで来ている。ヒゲの総帥は早速「そこの床屋の技術は凄いぜ」と今あったことを説明する。冷泉はふんふん言いながらアイコスを咥えてヒゲの話しを静聴する、するとふとヒゲの総帥は冷泉の身に着けている真っ黒いネクタイの柄に気がつく。


「それはいったい何ですか」「ああ、これ?これは豊臣家の家紋です」「そんなネクタイどこで売ってるんですか、大坂城?」「違います違います」と冷泉は笑う。今日の冷泉のネクタイは桐花紋柄であったのだ。数時間後、これと同じ質問を図らずとも常連の不思議な女も冷泉へ向けることとなる。


冷泉の仕事が終わるのを待ってヒゲは冷泉と一緒に食事をする。二人は食事をしながら今後どうするつもりなのかなど話しをして、そして店へ行く。どてら姿の万作は静かに絵を描いているところであった、少し日取りが早いのだがとあらかじめことわりながらヒゲの総帥は万作に来月分の給料を渡す。万作は自分がルンペンだったときの経験談を語りだす、ヒゲの総帥も自身がその職務上で知り合った日本全国の奇人たちのことを話す。


温泉マニアの男が来る、そのすぐあとに常連のガルパンの男と不思議な女がやってくる。しばらくしてから夜行バスの女がやって来る、この夜行バスの女は先週の冷泉のちゃんこ鍋に参加したあと、そのまま夜行バスに乗って東京へ仕事のため移動するほど豪快である。ヒゲの総帥も音楽家をやっていた頃はそのような移動スケジュールなど日常茶飯事であったので、たまに新幹線やハイエースのグランドキャビンなどで移動できるときは、どこか外国へ出かけるような高揚感すらあった。


ヒゲの総帥はおもむろにデレク・アンド・ザ・ドミノスの「レイラ」の導入部をギターで弾き、「レイラ」の部分を「冷泉(レイゼイ)」にしてガルパンの男と歌う。酔っぱらっているのか知らないがこれがやたらと冷泉には愉快だったみたいで、真っ黒い物体が腹を抱える。それから不思議な女、冷泉、夜行バスの女、ヒゲの四人で歌うことにする。


夜も更けても歌の灯火は続いていく。田舎のお通夜のときに線香を切らしてはいかんとの決まりがあるようにどんどん歌を紡いでいく。その最中にやってきたのが北濱最強の男クモン提督である。クモン提督もその歌つなぎに混ざってくる。しまいにはアミニズム崇拝をしている未開の土人よろしく声の重奏が延々と宵闇に響くこととなった。


明日はいよいよガエル・ガルシア・ベルナルでの二日間の演奏である。


風は強く、雨は冷たい、それでもやっぱりギターは好きなのだ。


d0372815_18041618.jpg

[PR]
Commented at 2017-12-09 11:03 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by amori-siberiana at 2017-12-09 11:10
> ウツボカズラさん

ウツボカズラ!(笑)

こちらこそいつもお世話になっております、ヒゲは技術者の介入により、快活に揃いまして意気揚々と黒光りしております。

はい、是非ともヒゲ冷やかしにお越しください。
by amori-siberiana | 2017-12-08 18:05 | 雑記 | Comments(2)


北浜というビジネス街を独立させようと企む、ヒゲの総帥のブログです。
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31