2017年12月22日(金) ◆イタリアの靴は隙がなく、イギリスの靴は野暮ったい。後者には愛嬌がある。

こんにちは、北濱にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を経営するヒゲの総帥、阿守のブログです。


冬至である。昼の時間がもっとも短い日である。ただし世界中でというわけではなく、北半球に限ってのことであるからして、地球のどこかはこの時期に酷暑が訪れているのであろう。そう想像するとなんとなく世界の広さを感じて豊かな気持ちになる。酸素の濃度が多少なりとも濃くなったような気がするのだ、多様な価値観とは人の好き好きの一面だけを捉えた単純なことではない。多様な価値観のという言葉の土台となっているのは、知らないことを知っているというソクラテスの原初的な哲学風景なのではなかろうか。


さて、昨日のこと。


ヒゲの総帥は北濱のオフィスでコーヒーを飲んでいる。客から返信されてくるアンケートの内容に爆笑したり考えさせられたりしながら遊んでいる。昼過ぎになりヒゲの総帥はデスクを立ってオフィスの近くにあるツタの絡まる青山ビルへ向かう。この男が青山ビルへ向かうということは、つまりギャラリー「遊気Q」に行くということとほぼ同意である。ヒゲの総帥は我が家のようにギャラリーへ入っていく、そこにいるのは今月26日までは大幅な値引きが行われている数々の商品と御年301才のギャラリーの女である。ギャラリーの女の隣には革ジャンのよい目つきをした口ヒゲをたくわえた男がいる。この男に会うのがヒゲの総帥が来廊の目的であるのだ。


この男は神戸の靴職人である。先日、ギャラリー「遊気Q」にて開催された彼の個展、そこにヒゲの総帥が訪れたときどうにも気になる靴があったのだ。馬の皮を使い渋い赤銅色に染まった靴はその質感や手触りといい、気品と緊張感を持っていたのでヒゲの総帥は気に入った。ところが試履してみると足のサイズが合わない、ギャラリーの女からの説明では一点ものなのでそれなら靴職人本人から採寸してもらうがよかろうと誘いを受けたのだ。まことに偶然であるが、総帥が狙っているのと同じ靴を狙うものが北濱界隈にあるという。ギャラリーの女がいうにはそれは人間ではないのだそうだ、そう、つまるところヒゲの総帥と同じ靴を愛でたのはエイリアン(10w Galleryのオーナー)なのである。


ヒゲの総帥は靴職人の男と靴のことについて話し込む、こうやって自分が詳しくない分野について話しを聞くのは自分の脳内の白地図にどんどんと文字や絵画が描き込まれていくようで愉快なのだ。このヒゲの男のこういうところは幼い頃より何も変わらない。


「今、お履きになっている靴のサイズを見せてください」と靴職人はいう、ヒゲの総帥は自分の靴のサイズを知らないので靴を脱ぐ。靴職人はその靴を受け取って文字を読みとる「7と1/2か」とフェデリコ・フェリーニの映画のタイトルのような言葉をつぶやく。「この靴は女性用に作っているので、阿守さんの足のサイズではこの靴は作れないのです」と靴職人はいう。足のサイズや足幅などを考えてみると、どうにもヒゲの総帥がお気に入りの靴のフォルムにはならないのだということを説明してくれた。


「阿守さん、ちなみにこれはどこの靴を履かれているのですか」と靴職人は問う、「はい、フェラガモです」とヒゲの総帥は訊かれたままを答える。「お幾らでした」とさらに問うてくるので「14万円くらいだったような気がします」と正直に答える。ギャラリーの女は「この人(ヒゲの総帥)はね、いいものを買って、それをずっと使う人なんですよ」とヒゲの総帥のファッションにおける思考を補足説明してくれる。「そうなんです、だから靴も二足しか持っていませんし、服も10着程度しかありません。こうなるとファッションというよりもユニフォームのようなものです」と自嘲気味に笑うヒゲの総帥。


「ちなみに靴の業界というのは明るくなってきているものでしょうか」とヒゲの総帥は問う。「材質については悪くなってきています。例えば阿守さんが履いておられるフェラガモも20年前と今では同じ牛革でも質が全然違います」「つまり、今は質が落ちていると…」とヒゲの総帥が聞き返すと静かにうなずく靴職人の男。「今の牛革というのは肥料に特別なものをいれて成長を異常に促進させて取っているのです」「ええっ、そんなブロイラーみたいなことが行われてるんですか」とヒゲの総帥は驚く。ブロイラーなどは人間の技術介入により成長促進と肥大化が極端に行われて、成長したまま放っておくと自分で歩行すらできなくなるのだ。靴職人の話しは続く、「さらには革というのは先物ですから、資本があるものが大量に買い占めます」「そうすると革の価格は自然と上がっていきますね」「そうです、高くても品質の悪い革が一般的になってしまうのです」という。これは技術の成長であろうか、それとも罪深き業なのであろうか、ヒゲの総帥はなんだか心が浮かない気持ちになる、割り切れない気持ちになる。牛たちのために般若心経でも読んでやらないといかんという気になる。


ヒゲの総帥と靴職人はそこから人生や仕事について話し込む。ヒゲの総帥が自身の数奇な人生を語り、靴職人も自身の数奇な人生を語る、ギャラリーの女は椅子に座って澄ましている。ヒゲの総帥はギャラリーを後にして一旦は北濱のオフィスに戻ったもののすぐに店へ行く。


ヒゲの総帥が到着してしばらくすると店で今月30日にイベントをする女将軍の二人がやってくる。アハハの女とアルセア・イズ・スリーピーである。ヒゲの総帥は女将軍たちとイベントの概要について3分くらいの説明をする、そこからは三人で七輪を囲んで解決することなきどうでもいい話しを延々とする。ヒゲの総帥がいうには歌合戦には以下のルールがあるという。


①歌合戦は互いがステージにいる状態で行われる。


②審査員が数名おり、一曲一曲について論評を述べて採点していく。


③オリジナルでもカバーでも良い。


審査員の人選もヒゲの総帥の厳正なる設置基準を超えたものだけがその任にあたれるという、ワルシャワで行われる5年に一度のショパンコンクールのようにしっかりしたものである。


ここで豪華審査員の陣容も紹介しておかなければならないだろう。※ところどころ伏字なのは女将軍たちの子飼いのファンたちが審査員を事前買収しないようにという懸念からと、審査員の安全上の理由から。


(審査員長) アラ●メ堂のご主人 ※某音楽雑誌社ライター


(審査員) ヤ●トコ ※某シベリアンなんちゃらのベーシスト


(審査員) NASAから超大物ゲスト来たる! ※現在、募集中


ヒゲの総帥が七輪を囲んで女将軍たちと話しをしていると、ギャラリーの女がやってくる。続いてエイリアンが仲間のエイリアンたちを連れてごっそりやってくる。オルガン横の奥の席とその手前の席にてギャラリーの女を含めたエイリアンの酒盛りがはじまる。店内で賑やかにやっていると全身黒ずくめの男が店に入ってくる、ハイタッチ冷泉だ。ハイタッチ冷泉は店に入って、オルガン方面を一瞥するとヒゲの総帥しか聞き取れないような声で「あそこ、ヤバイですね」という。奥の席ではエイリアンたちがAK-47のトリガーに指をかけたかのような言葉の弾丸を飛び交わせあっている。


常連の不思議な女とガルパンの男、斥候の男もやってきて、いつしか七輪を囲む。エイリアンの仲間の女が「やっぱり日本よね、こうして車座になっているとね」という、ヒゲの総帥は「こうなると連歌でもやりたくなりますね。季節もいいですし」と粋人めいたことをいう。それなら一丁やってみるかという流れになり、全員で歌を繋いでいき短歌とすることになった。


しらこなに~  (不思議な女)

わらべあしあと~  (ガルパンの男)

うたげあと~  (斥候の男)

ゆうかいされて~  (エイリアン)

はこづめになる~  (エイリアンの仲間)


まるで京極夏彦の世界である。


しばらくするとエイリアンの仲間の女が沖縄の出自だということで三味線を弾きながら沖縄の労働歌を歌ってくれることになった。ヒゲの総帥も不思議な女から一曲だけ沖縄の唄を教わったので最近はギターの伴奏をしているのだ。不思議な女が勧めてくれた沖縄の女性歌手の歌は魂そのものであり、優しさと鋭さを持ってヒゲの総帥に突き刺さってきた。不思議な女がその歌手のことを話しをするとどうやらエイリアンも知っているそうだ。話しを聞いていくと知っているどころか、不思議な女が持っているCDのジャケットデザインをしたのはなんとエイリアンその人だったのだ。この偶然に車座一同が驚くこととなった。


そして車座一同で「童神(わらびがみ)」を歌うこととなり、夜はどんどんと更けていった。店内には沖縄の言葉とさきほどあぶったスルメの匂いが漂っているのである。



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by amori-siberiana | 2017-12-22 17:07 | 雑記 | Comments(0)


北浜というビジネス街を独立させようと企む、ヒゲの総帥のブログです。
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