2017年12月27日(水) ◆小さなカフェの小さな話し。トトゥ。

こんにちは、北濱にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を経営するヒゲの総帥こと、阿守のブログです。


本日は昨日よりも一層風が冷たく外を歩くだけでも財布の中から1000円ずつ無くなっていくような気がする。


さて、昨日のこと。


ヒゲの総帥は北濱のオフィスでコーヒーを飲む。隣にはいつものようにアキラメ堂のご主人がおり、なにやらカタカタとパソコンを打っている。仕事をしているのだか、新たなボードゲームを購入しようとしているのかは判然としない。ヒゲの総帥も何をするでもなくパソコンを触ってると着信がある。かけてきたのはミスタープラムという男だ。


このミスター・エックスとヒゲの総帥は15年来の知人であり、ヒゲの総帥が音楽家として駆け出しのときにメディアの面で多大な尽力をしてくれた男である。当時、ミスタープラムはメディア部門のプロデューサーをしていたが、そこが他社に譲渡されたタイミングで野に下り、そして今は法曹界で多忙を極めているとのこと。


ミスタープラムは不動産関連での70億から80億の話しがあるので相談に乗って欲しいとヒゲの総帥に連絡をしてきた。久しぶりの億の間である。ヒゲの総帥の以前の仕事においては月曜日と木曜日は常に100億4700万の話しばかりであったが、そんな毎日にとことんウンザリしていたようだ。クントコロマンサという店の再建に乗り出してからは100円や200円の話しばかりなので逆に活気が出てきたものだ。ヒゲの総帥は電話で当該不動産要件の概要をプラムから聞き、電話でするような話しでもないのでよければ北濱のオフィスへ来ないかと誘う。ミスタープラムは14時と16時にアポイントがあるのでそれ以降なら大丈夫と返事をする、ならば17時頃にヒゲの総帥が滞在する北濱のオフィス「ザ・ジンクス」で会おうということになった。


ヒゲの総帥はミスタープラムからの電話を終えたあと、その足で特殊な不動産売買の知恵を借りるべくして船場ビルディングにある忌部の事務所へ向かう。忌部というのは人生で手痛い失恋を経験してからというもの、ニヒリズムの極致を地で行くような男であるが容姿は端麗で、頭脳明晰でもあるのでヒゲの総帥はそういった場面のときはいつも忌部のことをアテにしている。


この船場ビルディングは大正14年に建てられたもので、そのレトロモダンと総称される建築物だけを目当てに観光客もよくここを訪れる。ヒゲの総帥が船場ビルディングの門を開ける、静かな佇まいの中庭を歩く、左右にそれぞれ多種多様な事務所が軒を連ねており、この場所自体がなにかひとつのミニマム・アトラクションの会場のようである。ヒゲの総帥が中庭を散策していると門の向こうから忌部が都合よくやってきた。唐突な珍客だが別に驚く様相もなく忌部の事務所へ案内され、そこで先述のプラムからの話しをオブラートに包みながらもことの本質を忌部に問うヒゲの総帥。


忌部はこの辺りの不動産開発の状況や一般的な不動産売買の基礎をヒゲの総帥に教える。「なるほど…、やっぱりな」とヒゲの総帥は腑に落ちることがある。ネットで調べることは誰にでもできることだが、ヒゲの総帥は以前から必ず足をつかうことにしている。ネットで拾える情報などというのは、つまり誰でも拾えるものであり、そういった情報には常に発信者の利益が絡んでいるのである。その利益は何も金銭に限ったことではない。便利な世の中であるが、その簡便なることと物事の正しさや順序は比例するものではない。


自身の欲しい情報を得られたヒゲの総帥は忌部に礼をいい、そのままツタの絡まる青山ビルのギャラリー「遊気Q」へ向かう。こちらは大正10年に落成しており先述の船場ビルディングと並んで観光客には人気のスポットである。御年301才と吹聴するギャラリーの女はピンクを基調とした柄のニット帽をかぶっており、それはどこか新疆ウイグル自治区あたりの辺境の女を想起させるものであった。ヒゲの総帥は店に灰皿がひとつ足りないのだと伝えて、ギャラリーの女からアンティークの灰皿を購入する。「これはとてもいいものなんですよ」とギャラリーの女は灰皿を新聞紙とプチプチで梱包しようとするが途中で面倒臭くなったのだろう、ヒゲの総帥が紙袋を渡されて中を見ると、裸のままの灰皿がぽんと入っているのみになっていた。


ヒゲの総帥は北濱の「ザ・ジンクス」へ戻る。オフィスでは忘年会が開かれるのでその用意にザワついている。ミスタープラムがやって来るので応接ソファへ案内する、昨日までエストニアの日本料理屋の経営者の男が居座っていた場所である。偶然、通りがかったアラタメ堂のご主人にも同席してもらい、さらに宗教画のモデルの女、しまいに全身が黒ずくめの男も同席することになる。この黒ずくめの男こそかの有名なITコンサルタント冷泉彦彦である。ミスタープラムはそれぞれクセ者たちと談義をさせられる羽目になるが、本人はいたって楽しそうである。


ヒゲの総帥はさらにジンクスのオーナーの男とプロデューサーの男をミスタープラムに紹介する。ジンクスのオーナーの男の背筋の良さは芸術的であり、顔を西洋人にすれば地中海に眠るトルソのようで、このジンクスにおいてベストを常に着用しているのはオーナーの男かヒゲの総帥かというところである。ジンクスのプロデューサーの男は切れ味の鋭い男だ、物腰は柔らかいがそこがまた迫力に繋がっている。若くして起業しているので、同じく起業を目指す陸サーファーの上仲などは常に彼からの教示を仰いでいる。


いつの間にか忘年会は始まり、ミスタープラムは勝手に参加させられることとなった。


ヒゲの総帥はミスタープラムをジンクスへ置き去りにしたまま店へ行く。忘年会に参加せず先に店に到着していた冷泉から企業コンサルタントの男を紹介してもらい談笑をする。なかなか腕っぷしの強そうな男で何かしてるのかとヒゲの総帥が問うと、もっぱら釣りでジギングをしており鍛えられているのだろうと返事をする。ヒゲの総帥は釣りをする環境に恵まれていたにも関わらずまったく興味がなかった自分を戒めている。ヒゲの総帥の父親はクルーザーを所有していて、仁尾町のマリーナに停泊させていたがヒゲの総帥自身が乗船したことは一度しかない。父と一緒に過ごす時間が何故だかずっと苦痛だったのだ。船だけではない電車にしてもそうだ、ヒゲの総帥の父親は春夏秋冬それぞれの季節にはJRの電車を借り切って自身の好きな場所までノンストップで行っていたが、それにも一度しか参加したことがない。やっぱり、それは父と一緒に過ごす時間が苦痛だったからだ。


当時はそういう父親が普通だったが、今、冷静に考えてみると一番身近に狂人がいたものだと笑えてくる。自身の事業のために毎日毎日、朝の2時や3時に起きて仕事をしていた父に迷いや悩みはあったのだろうかと、この頃よく考えることがあるがすでに鬼籍に入っているのでインタビューできない。


亡き父は坂本竜馬と吉田松陰、そして勝海舟を愛していた。たまに右翼団体にも資金提供をしており日本刀を収集していた、若かかりし頃のヒゲの総帥はそういった旧時代的な趣味を持つ父を恥じていたが、それはヒゲの総帥自身が母方の田舎に行くことが多く、そちらが完璧な共産党員だったことも関係あるだろう。水と油の親戚はほとんど相まみえることはなかった、ノンポリの田舎の女たちだけが相互を行き交い親戚同士の出島的な役割を果たしていただけだ。女は鳩のように賢いのだ。そして蛇のように狡猾である。


オルガン横の奥の席にはコンサルの男と冷泉とヒゲの総帥。窓際の席には組長が座って酒を飲んでいる。正面の席には忌部とコピーライターの男、デベロッパー代理店の男、そしてデザイナーの女に宗教画のモデルの女。カウンター近くには常連のガルパンの男と東洋の魔術師が陣取る。それぞれが何らかの話しをしているかアルコールを体内に入れて精神を燃焼させている。


冷泉とデベロッパーの男が殴り合いを開始する。互いに格闘技出身であるので壮絶な打ち合いが開始される、組長は嬉しそうにそれを眺めながら酒を飲む。夜も更けたころアラタメ堂のご主人とゲームセンス・ゼロの女、さらには陸サーファーの上仲と学生起業家の男が酔っぱらってやって来る。


全員が揃ったところで酩酊していた冷泉がハッとした顔をする。「そしたら…、そろそろ…、笑ってはいけない、ゲームを…しましょか」と発する冷泉、学生起業家の男は冷泉に目をつけられないようにと風景になろうと店内で己の気配を消す。


笑ってはいけないゲームがスタートされる。


ヒゲの総帥は学生起業家の男に向かって黒ずくめの男ハイタッチ冷泉を指さしながらこういう。


ヒゲの総帥 「あなた、この人の名前を知ってますか?」
学生起業家 「か、加藤さん…」
ヒゲの総帥 「そうです」
学生起業家 「…」
ヒゲの総帥 「下の名前を知ってますか?」
学生起業家 「いえ…知らないです」
ヒゲの総帥 「カトウトシヒコといいます」
学生起業家 「トシヒコさん、トシヒコさん」
ヒゲの総帥 「この名字の最初の『カ』と名前の最初の『ト』をですね、入れ換えて声に出してみてください」
学生起業家 「トトゥ カシヒコ…」


「ギャハハハ」アラタメ堂のご主人がこらえきれずに爆笑する。「お前な!アカンわ、ちゃんと発音せえや!なんやねんトトゥって!」と学生起業家に恨み節を発しながらウイスキーを飲まされる。


ヒゲの総帥の好きな映画に「アメリ」というのがある。主演の女優はオドレィ・トトゥという。この映画はなんだか冬に見ると元気が出てくるのである。世の中、まだまだ捨てたものじゃないという気持ちになれる。


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by amori-siberiana | 2017-12-27 14:41 | 雑記 | Comments(0)


北浜というビジネス街を独立させようと企む、ヒゲの総帥のブログです。
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