2017年12月28日(木) ◆仮想インタビューと母親からの信頼。

こんにちは、北濱にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を経営するヒゲの総帥こと、阿守のブログです。


さて、昨日のこと。


ヒゲの総帥は北濱のオフィスを抜けて南船場にあるパン屋の「き多や」へ向かう。そもそもヒゲの総帥が北濱で商売をするとなったとき、最初に助言を求めにいったのがパン屋のオーナーであった。「喫茶店なんて、お金もった暇人がするもんやで」と素晴らしいアドバイスをいただいたが、まさに現実はそのとおりであった。この日はフレンチトースト用のバゲットを買いに行く。


バゲットを抱えて店に行く。すでに大学生の女が帝王のように椅子に腰をかけて、我が家のように振舞っている。女の目の前には見たことのないギターケースがあるので、ヒゲの総帥はこれをどうしたのかと女に訊ねると、どうやら実家にあったギターを持ってきたのだとのこと。ヒゲの総帥はケースを空けてみる、出てきたのはヤマハのクラシックギターである。これがなかなかご機嫌な鳴りをするので、そのまましばらく弾く。


それからニューヨークで高校生をしているスズマサがやってくる。スズマサは冬休みの課題を抱えており、その内容が「自分の近くにいる奇人変人からその人生に何があったのかを聞いてくる ※家族をのぞく。800文字以内」というものでインタビューをしたいのだという。ヒゲの総帥はそれなら版画家の万作などは格好の標的になろうと推薦するが、スズマサはすでに標的が決まっているようで、それは眼前のヒゲの総帥であった。


スズマサからインタビューを受けるヒゲの総帥、その途中に常連の不思議な女がやって来る。さらには全体重を階段に乗せて昇ってくる音がする、ゴガッという締まりの悪いガラス戸が開く、入ってきたのは全身が黒ずくめの男。華族のハイタッチ冷泉であった。大学生の女は念願叶い冷泉と初めて遭遇できたことでテンションが上がる。そこから水タバコの男もやってくる、この男とヒゲの総帥はチェ・ゲバラを愛する同志である。


「うーん、阿守さんの人生を800文字におさめるんとかは失礼になるんちゃうかな」と万作はモルモットとなったヒゲの総帥を気遣うが、ヒゲの総帥は「できるものなら、575の俳句くらいにまで短縮してくれていい」といたって平然としている。不思議な女はニヤニヤしながら白ワインを飲む。冷泉と水タバコの男はカウンター前の席で何やら意見交換をしている。


インタビューが終わる。書生のスズマサ君はヒゲの総帥の口から語られた人生をニューヨークに持ち帰るため、パソコンを駆使して記録を保存する。その最中、スズマサは自分は映像の仕事に興味があるといいだす。「ならば、この店のCMをi-PHONEだけですぐに製作してくれ。コンセプトはこの店に誰も来るなというものだ」とヒゲの総帥は支離滅裂なことをいう。「聞いたことのない依頼ですね、でも、クライアントの要望は絶対なので頑張ります」と返事をする書生君。早速、店のCMの撮影が開始された。今回ばかりは人を巻き込むのが得意な冷泉も巻き込まれた形になる。


「U2のボノだか共同制作者のブライアン・イーノだかが言っていた。レコーディングの現場に一台のテープレコーダーしかなかったとしても、我々は素晴らしいアルバムを作るだろうと。その言葉を僕はハッタリだとは思わず、本当にそうなるのだろうと感じる。つまり、大事なのはハードやソフトの進歩のように目立つところにあるようなものではなく、その根底にあるものなのだ、しっかり撮れ」とヒゲの総帥は講釈を垂れながらスズマサに放り投げる。しかし、その詭弁の裏側にあるのはスズマサが撮影に夢中になっているあいだ、ヒゲの総帥は静かにゆっくり酒が飲めるという明確な理由がある。


撮影が佳境を迎えた頃、アラタメ堂のご主人がやってくる。これ幸いと出来上がったCMの品評会が開始されることとなった、審査員はアラタメ堂のご主人とデザイナーである不思議な女。それぞれからこうしたほうがいいという意見をスズマサはうんうんと聞く。アラタメ堂のご主人が出した得点は「43点 特記:見るべきものはある」であった。まずまずであろう。


ヒゲの総帥はその模様を見ながら、自分が若い頃にこうした大人たちとの出会いがあれば良かったのにと思う。自分がアレをしたいコレをしたいと考えることを、その場で実践して評価をもらえてアドバイスをもらえるような環境が欲しかった。もしかすると出会っていてヒゲの総帥が気がつかなかっただけかも知れないが、気がつかないのであれば、それはなかったことと同じである。


世の中、地球のほんの少し先で地獄を見ている人間がいるのに助けに行かず、えらく遠くにいるらしい神に祈りを捧げたりする不器用さである。確かにそれが人間なのだ。2017年、世の中は仮想通貨だインバウンドだ、乗り遅れるな乗り遅れるなと皆が躍起になっている。考え方がどんどん投機的になってきている、最終的にはこの騒ぎの詰め腹を誰が切らされるのかと想像すると、どうにもいたたまれない気持ちになる。こんな日はバーバーの「弦楽のためのアダージョ」でも大音量で鳴り響いていただきたい。それなのにいつまでたってもベートーベンの第九をプログラムに詰め込んで、シラーの訳のわからない経文じみた説教を大威張りで歌っているようでは何も起こらない。


CMを撮り終えたあと、書生スズマサに自身の母親から電話がかかってくる。「阿守さん、代わってくれますか?うちの母です」という。ヒゲの総帥は大いに恐縮しながら電話を受け取り書生のご母堂さまとお話しをさせていただく。幾つになっても母親というものを話しをするときは背筋が伸びて緊張するものである。


母親が息子をこの店に送り込んだということは、息子の話しからヒゲの総帥やこの店にいる大人のことを信頼しているということである。これはとても名誉なことである。


インタビューに慣れていないスズマサのために、過去に音楽雑誌社でインタビュアーをうんざりするほど担当してきたアラタメ堂がインタビューのコツを教える。ちょっとした寸劇だ。アラタメ堂のご主人はインタビュアー、ヒゲの総帥は通訳、不思議な女は超有名な海外の大物歌手という設定で劇は開始される。これが面白くてたまらない、厨房で万作は「これはおもろいな」と笑いまくる。


できあがったCMをお見せしたかったのだが、アラタメ堂を経由してスズマサから転送されてきたデータには音声しか入ってなかったので、また今度。


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by amori-siberiana | 2017-12-28 17:09 | 雑記 | Comments(0)


北浜というビジネス街を独立させようと企む、ヒゲの総帥のブログです。
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