2018年01月02日 ◆ワシ至上主義との戦い。

こんにちは、北濱にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサを経営するヒゲの総帥こと、阿守のブログです。


元旦にしては多少の暖かさを残す北濱。人通りはまばらで時折往来する人たちを見かけても、何かしらの用事を抱えているであろう感じである。明らかにいつもの北濱とは違うという様相である。


さて、昨日のこと。


ヒゲの総帥は夕方に店へ行く。店に行くと常連のガルパンの男がビールを飲んでおり、版画家の柿坂万作は店内でうろうろしている。ゴガッという締まりの悪いガラス戸が開け放たれた瞬間に「昨日のアレはなんだ!」とヒゲの総帥は怒号をあげる。万作は「うーん、アレといわれても、ワシにはさっぱりわからんのですが、何を怒っとるんですか?」という。ヒゲの総帥は万作に詰め寄る、お互いの顔は数センチのところで睨み合いとなる。誰かがヒゲの総帥の頭を後ろから押せば、接吻してしまうような距離である。


ヒゲの総帥は万作があらゆる人に感謝を忘れ、自身の気分によってというには度が過ぎて体たらくな仕事をしているといい、改善の余地なくばこの店などは潰した方がマシだという。そもそも家賃と給料をヒゲの総帥からもらうようになってからというもの、それが当たり前になり万作は周囲に気を遣わせるようなことばかりをしているのだ。思い当たるフシがあったり、何か反論があるかとヒゲの総帥は万作に問う。


「うーん、ひとつ確認ですねんけど、ワシが阿守さんを雇っとるんですよね?」と万作がいう。ヒゲの総帥はこの意表を突いた言葉に思わず大声で笑ってしまう。「俺がお前に雇われなくてはならんいわれがどこにある」「いや、それより、お前って誰にいうてますねん」「お前にでんがな、柿坂万作君!」「うーん、最初の契約と違うやないですか?」と万作はいう。


「まあ、阿守さんも落ち着いて、万作も冷静に」と常連のガルパンの男はスマホでガルパンをしながら二人に呼びかける。


「万作さんが僕を雇ってるということですか、それは初耳でした、どういった了見でそうなりますかね?」「うーん、経理を誰がするかいうことだけの話しやと思いますねん。阿守さんやなくてワシがしたらそれはワシが雇っとるいう話しになりますやろ?」「いえ、あなたの理論はまったく理屈が伴っていません」「そうやろか…」と万作は考え込む。なるほどこの版画家が我が物顔に振舞うには、それなりの屈折して歪曲した現状認識の土台があったのかとヒゲの総帥はハッとする。しかしながら、こうも短期間に自分の都合のいいように歴史を書き換えられてはたまったものではない。


そもそも…。


夏の暑い日。


「来月で店が潰れますねん」と万作はヒゲの総帥にいう。聞くところによると家賃を滞納しており客からも金を借りており、冷蔵庫も潰れているという状態であった。「よかったら、阿守さんここの店してみませんか?」と万作は話しを持ってくる。「ほう、幾らで貸してくれるのですか」とヒゲの総帥が万作に問うと、家賃分だけあればいいという。万作がいうには自分は外へ働きに出るからというのだが、ヒゲの総帥がここの店をしたとしても不用意にちょんまげの男が出たり入ったりするのは勘弁して欲しい、それに万作には万作の魅力がありここまで店をやって来たのであろうからいなくなるのは勿体ない。それならということで万作にはここに残ってもらい、人件費も払うので家賃を含めて総額で幾らだとヒゲの総帥は訊く。万作はその金額をいい交渉は成立した。


「家賃も払うてくれて、ワシを雇うてくれるいうことは阿守さんがこの店のオーナーいうことですな」と万作はいうが、ヒゲの総帥は「対外的にはプロデューサーということでいいではないですか」という、万作は「なんで?」と問い返すが、常連のお客さんからしても阿守という男が急にオーナーになったとして共感を得られるはずもないし、目立てば目立つほど出来なくなることの方が多いので、実質的にオーナーは自分であったとしてもそれは場合によって使い分ければいいと万作に説明する。万作は「そないなこと考えたこともありませんでしたわ、ワシからしたら天使みたいなもんや」と言っていた。


その半年後には、ワシが阿守さんを雇っとるという話しをシラフでするのだから困ったものである。ワシ原理主義である、いや、原理などより以前のワシ至上主義だ。


つまり、ワシ至上主義(別名:ワシズム)に則って考えると、ワシの住居へ勝手に人を沢山連れ込んできて、ワシに炊事させて、ワシに掃除させて、なんでワシはこないに毎日を束縛されて生きなあかんのや。ワシにはワシの生活のリズムがある、ワシの予定が優先されて然るべきだ。と考えが帰結して、それが行動に出るのも当然であろう。しかし、それはまったくもって現実と違う。そんなだから客足は遠のいて行ったのだ。


ヒゲの総帥は万作に説明する。これこれはこうで、これこれはこうでしたよねと糸をほどくように説明する。「うーん、そうやったかも知れんな…」と版画家は考え込む、「あまりにも自分の都合によって事実が変わっています。だから公私混同できてしまうのです」とヒゲの総帥がいうと、「うーん、ワシ、頭おかしいんかな」と万作がいうのでヒゲの総帥は「そうだ」と相槌をうつ。


二人は椅子に座りながら話しをする。


その特異な性格のおかげでいろんな人が嫌な思いをさせられてきてるのだ。なんでもかんでもワシの運があるということで片付けて、ワシは救われて当然、ワシ以外は皆が下郎というような考えが行動や表情で出る。周囲の皆は理解がある人間ばかりなので「変人」で片付けてくれるが、それはお前の資質に惚れてるからではなく、周囲が大人だからだ。と万作にいう。協力してくれる人、イベントしてくれる人、お客さん、皆が大人だから大目に見てくれているのだ。それに甘えきって絵も描かずに腹ばかり出やがってと散々にいう。


けれど、柿坂万作には魅力もある。夢もある。ヒゲの総帥は柿坂万作の夢を果たすために前に進んでいる、それなのにヒゲの総帥が連れてきたお客に対してくだらんことをするな。メモして買い物へ行け、伝票はきちんとつけろ、相手の言葉にまず否定形から入るな、開店時間をごまかすな、状況を読め、なんでも自分が一番と脳たりんなことは考えるな、などなど説明する。「ワシも…、絵を教えてくれいう人がおって、ちょっと書かせてみたら、ほらできた、俺は上手なんや、いう人間には教えるんが一番苦手ですねん、もしかしたら、それに自分がなっとったんやないかと、なんというか、ごっつい反省しとります」と万作は自己の経験に基づく話しをする。


そしてヒゲの総帥への不満も漏らす。「片付けは全然せえへんし、なんでワシがこの人の片付けせないかんのやろと思いますねん」というので、ヒゲの総帥は素直に詫びて今後は改善すると約束する。


「こういう話し合いも必要ですよ、二人で共同経営者なんですから」とガルパンの男は絶妙な間合いで言葉を入れてくる。


ヒゲの総帥と万作はお互いに非礼を詫び、そして新年の挨拶をする。そういえば新潟の米マイスターからもらった大吟醸は新年まで開けずに置いていたのである、皆で乾杯することにした。やっと年が明けるような気がした、とてつもなく美味い酒である。


ゴガッと締まりの悪いガラス戸が音をたてて開く。


そこに立っていたのは新年早々、上下とも軍服に身を包んだエイリアンであった。元旦からいろいろと凄まじいテンションである。


この日のエイリアンのマシンガントークは実によかった。エイリアンの止まらない話題によって店内に残っていた我々の怒号の痕跡は完全に消滅して、「長者盛」の大吟醸の香りに溢れることとなった。



新年早々、お騒がせをしたが、今後ともクントコロマンサを宜しくお願い申し上げます。


謹賀新年。


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by amori-siberiana | 2018-01-02 17:57 | 雑記 | Comments(0)


北浜というビジネス街を独立させようと企む、ヒゲの総帥のブログです。
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