2018年01月06日(土) ◆北濱の三賢者はイエスを迎えにこない。

こんにちは、北濱にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサを経営するヒゲの総帥こと、阿守のブログです。


さて、昨日のこと。


ヒゲの総帥は北濱にあるオフィスへ行きコーヒーを飲む。仕事熱心なアラタメ堂のご主人はすでにデスクに着座しており何やらごぞごぞしている。かと思えばさっさと荷物をまとめてどこかしらへ失踪する、なるほど昼から近くで開催される人狼大会に顔を出すのだなとヒゲの総帥は理解する。年始早々でもフットワークの軽いアラタメ堂のご主人の背中を見ながら、オフィス内の見知った人たちと新年の挨拶をかわすヒゲの総帥。この男でも不惑となれば腹の中では何を考えているかわからないが、外面だけは社会人よろしくそれなりにできるようになるものである。


ヒゲの総帥は昼過ぎに店へ行く、店には版画家の柿坂万作がおり厨房で今夜のための仕込みに入っている。星師匠もやってきて店中を磨き上げる。この日は通常より30分早く開店することになっているので、万作はいつもより30分早めに風呂へ行く。北濱の街を自転車のブレーキ音をけたたましく鳴らしながら、頭に筆を突き刺して雪駄姿の男が疾走する姿は一般人にどのように映っているのかヒゲの総帥は想像するが、万作という人間の存在に慣れてしまった今ではファーストインプレッションを想像することは困難である。


17時半頃にはアラタメ堂のご主人と今回の人狼イベントの主催者であるマスマティックの女、さらに熱闘を終えたばかりの人狼プレイヤーたちが店にやって来る。そこから一時間が経つと店内は人で溢れかえる、人狼をプレイする者、プレイしたが中途で夢破れて処刑される者、そのどちらにも属さないゲームを見ているだけの第三陣営などが混雑混在する。途中、グラフィックデザイナーの男がやってきたが、「すごいことになっとるな」と冷静沈着な一言を発して消えていった。


山の向こうから今ではお馴染みとなったファラオもやってくる、ブルーグラスの男もやってくる、いつも北濱人狼でプレイするよりも複雑になった人狼を見て好奇心旺盛な顔をする。複雑といっても煩雑怪奇ではなくゲームバランスはよく考えられており、多様性に富む内容となっている。一般的な人狼ゲームの主軸となる村人と人狼という二極化の要素は薄まり、その代わり各人が何らかの役割を担当するというどちらかといえば「村」というよりは「演劇的」な要素が強まってるなとヒゲの総帥はウイスキーをちびちびやりながら見ていた。ジェイムズ・ジョイスのユリシーズを読んでいるようであった。


人でパンパンに詰まった店内、ヒゲの総帥はいよいよ締まりの悪いガラス戸の外側にいきタバコを吸う。万作は狂ったように料理を作り、洗い物をする。星師匠は社会主義だった頃のソ連の食糧供給を彷彿させるよう懸命に飲み物を提供する。階段上で佇むヒゲの総帥の視覚に何やら黒いものが入ってくる、その黒いものはニヤリと笑いながら階段を上がってくる。ハイタッチ冷泉である、さらにチンピラの男と副社長ばかりする男も一緒である。ただ、残念ながら店内は満員御礼ということなのでどこかで時間を潰してきてくれとヒゲの総帥は三人に伝える。


新約聖書によれば東方よりやってきた三人の賢者は神の子を求めて星に招かれるまま西へやってきたという。もしもこの黒ずくめで人相の良いとはいえない三人が唐突に我が家へやって来たとすれば、幾ら我が子が神の子だと玄関の外で三人から怒鳴られてもカギを開けることはないだろうと想像しながら階段を下りていく三賢者を見送る、ヒゲの総帥は一人で失笑している。


それからしばらくして三賢者は店に戻ってくる、人狼ゲームの最中であるがハイタッチ冷泉は人狼ゲームの中心に居座って酒を飲みだす。群衆の中へ異質のトリックスターが登場すればどのような集団心理が働くのかヒゲの総帥はニヤニヤしながら「これは大実験だぞ」と注目するが、気がつくと案外さっさと駆除されていた。三階のアトリエは来場者のコートや荷物置きになっており、それと並行して先ほどまではゲームセンス・ゼロの女にインタビューをしたいというイタリア帰りのJKが来ており、しっかりとインタビューをしていた。


いよいよ店内に居場所がなくなったヒゲの総帥は椅子を猫のひたいのような小さな店の猫のひたいのように小さな廊下へ持ち出して、冷泉とチンピラの男、さらには副社長ばかりやる男と酒をあおりだす。この三賢者ともすでにしこたま酒を飲んでいるらしく、暖房のない廊下でも大して寒くないのだというが、なるほど人はこのようにして凍死していくのだなと生理機能検査をしてるような気分になるヒゲの総帥。そのうちチンピラの男とブルーグラスの男は難しい病気の話しをしだす。副社長は92~95%くらい睡眠しており、冷泉は誰かを殴りたくてウズウズしだす。


この日の店内はオルガン周辺では人狼、カウンター側ではそれ以外の客がおり、ヒゲの総帥はカウンター側しかいられなかったので、ゲームにおける感想などは主催者たちに委ねることとする。


夜も更けて、人狼イベントも終了する。常連のガルパンの男と斥候の男が連れだってやってくる。副社長の男はゾンビのようになりながらどこかしらへ消えていく、チンピラの男は一番奥の席から広角レンズ的な視線で店内を見る、アラタメ堂のご主人はぐったりとソファにもたれかかり、ゲームセンス・ゼロの女はアヒルのような口をして酒を飲む。冷泉は舞台に敷いたイシュトヴァン・カーペットの上で寝転がり、ヒゲの総帥はその横であぐらを組んでウイスキーを飲む。ファラオはいつの間にか山の向こうにあるという故国へ帰っていた。万作はビールを飲み、星師匠は売れ残りをバーカウンターの奥でつついている。


静かな夜だ、チンピラの男はこの店のこんな雰囲気がトム・ウェイツのデビューアルバムに収録されている最後の曲「Closing Time」とリンクするという。


ゆったりとしたうねりのあるピアノの波を、あのひび割れて使い物にならなくなった鍋がからから転がるようなラッパの感じ、なるほど、確かにクントコロマンサはそんな感じだ。


そういえば、昨日のイベントの最中、万作が階段脇に飾ってあった自画像が落下して道路に転がっていた。幸いこれといった損傷はなかったわけだが、そのことを知ったゲームセンス・ゼロの女は隠れキリシタンの「踏み絵」のようであると表現して場の笑いをとっていた。それを聞いた万作は「ということは、ワシのことをイエス・キリストに見てくれるいうことやな」と得意げであった。


三賢者は厨房のイエスを連れ去ることなく、酒だけ飲んで帰った。


ちょうど三賢者の物語の頃、確かに夜空ではとても稀な現象が起きていたのだ。星があちこち動き回る、そんな不思議な夜空であったことを皆は知っているだろうか。


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by amori-siberiana | 2018-01-06 15:35 | 雑記 | Comments(0)


北浜というビジネス街を独立させようと企む、ヒゲの総帥のブログです。
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