2018年10月08日(月・祝) ◆エストニア音楽祭

ヒゲの総帥はステージにいる。このブログを始めたときからは想像ができなかった光景である。不思議なものである、音楽なんてキリの良いところで辞めてよかったのだと、公言していた男が幾人もの観衆の前で僧侶のような恰好をして椅子に座っているのである。


目の前にはバイオリン王子がいる。その奥にはピアノ工房の男がおり、右を見ると出っ歯の小説家がドラム要塞で籠城している。そして自身の背後には電気工事士の男が低音をずんずんこれでもかと言わんばかりに尻へ響かせる。


「まさに、絶景だな」とヒゲの総帥は心のなかで呟く。


左側に目をやると、音楽を訴求してくる者たちの眼差しを感じる。なるほど、彼ら彼女らが自分の背中を押しているのかと感得する。来たくてもこの場へ来られなかった人もいるだろう、生きたくても生きられなかった人もいるだろう。「音を繋ごう、どんどん音を繋いでいこう。ここ(ステージ)にいる以上、他にすることなんてないのだ」とヒゲの総帥は小説家の男が叩きだす6つのカウントを聴く。バイオリンが我らを天上に連れていく、ピアノが氷のように割れだし、ベースの低音は相反する地獄の深さを物語る。




01.Ever Frozen (エヴァー・フローズン)
02.Crossing the Tundra (クロッシング・ザ・ツンドラ)
03.Comical Salute (コミカル・サルート)
04.Perpetuum Mobile (ペルペテゥウム・モビレ)
05.Goodspeed (グッドスピード)
06.世界の果てへ連れ去られ
07.君が欲しい




終演後、ヒゲの総帥はギターをしまい込んで、バイオリン王子と連れ立ち近くのコンビニへ酒を買いに行く。もちろん打ち上げはあるのだが、それよりも今、酒が飲みたかったのだ。これは晩酌などではない、すでに次への一歩が始まっているという酒なのだ。


シベリアンでやりたいことは山ほどある、北濱でやりたいことも山ほどある。できることなら力を手に入れて役所すら何とかしてやりたい。それらは自分がやりたいというより、率直にいえば自分が誰かの代わりにというものかも知れない。


シベリアンのメンバーがいなければエストニアの素晴らしいミュージシャンたちと交流することもなかったであろう。カコフォニー・フィールズのドイワ会長とゴッドテールがいなければシベリアンに白羽の矢が立つこともなかっただろう。演奏を見たいという人がいなければ、コンサートが開催されることはなかっただろう。天候が嵐であったならば随分と面倒なことになったであろう。


ヒゲの総帥の力など、どこにも働いてはいない。だからもっと働きたいのだ。自分ができる範囲のことならばなんでもしてやろうと考えてる。ヒゲの総帥はこれら全てに影響されながら、そして彼ら彼女らの存在自体が自身の滅茶苦茶な人生における誇りでもある。


ヒゲの総帥の頭の中で常に離れない自問自答がある。


「お前はあと何年、生きるのですか?」というものだ。


ふとしたとき、なんでもない日常を過ごしているときいつも心の中の自分がこの問いを持ち掛けてくる。厄介な心である。あと何年生きるのかの答えはいつも出ない。だからいつ死んでもいいような生き方をするように心掛けた。生きられない天命を与ってしまった人の分まで生きようと心掛けた。享楽的に生きたいとは思わない、どれだけ苦しくとも悲しくとも痛くとも、目がくらむような希望だけを吐き捨てて死んでやろうと考えている。


それにしてもドイワ会長には頭が下がる。


エストニアからの素晴らしき来賓が日本へ到着したとき、空港のゴッドテール君からヒゲの総帥へメールが来た。


「来ましたぜ!アニキ!」


このしたたかで聡明なる興行主たちは、どうすればヒゲの総帥のスイッチが入るのかをよく心得ている。まったくもってヒゲの男はパブロフの犬である。だが、それは嬉しいという言葉を遥かに超えている。


「まさに絶景」


バイオリン王子、ピアノ工房の男、小説家の男、電気工事士の男。そしてカメラ屋の息子。ゲームでいえばパーティーというのだろうか、その辺はなんでもよい。


彼らをこの斜に構えた角度からストレスなく見られ、呼吸や視線を間近に感じられるという絶景スポットに置かれた、ひとつの椅子。


この椅子が私の居場所で死に場所だ。


そうありたい。


ドイワ会長、ありがとう。


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Commented by セロー at 2018-10-11 00:21 x
行くぜ アニキ!
Commented by amori-siberiana at 2018-10-16 01:09
よく来たな!セロー!
by amori-siberiana | 2018-10-08 23:19 | 雑記 | Comments(2)


北浜というビジネス街を独立させようと企む、ヒゲの総帥のブログです。
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