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こんにちは、北浜にて猫のひたいのように小さな店。画廊喫茶フレイムハウス(近日:Kunt Coromansa /クント・コロマンサに改名)を経営するヒゲの男、阿守のブログです。


雨模様の大阪の北浜。ヒゲの男はお気に入りの傘をさす。エリザベス女王ご用達のフルトン社の傘であるのだが、その特異な形状のために傘をしまいこむのが難しい。どうしてもシワがよってしまうのである、「女王陛下はこの傘をどうやって畳み込んでいるのだろうか…」などと、ヒゲの男は考えていたが、陛下本人に聞く術を持たないので考えるだけ徒労である。


さて、昨日のこと。


デザイナーの女が「柚子リキュール」を店に持ってくる。自身が行く焼き鳥屋で飲んでいるもので、とても飲みやすいのだそうだ。どうか店で使ってくれという。


「うーん、ワシ、こういうん苦手なんですわ。なんちゅうか、申し訳ない気持ちになるんです。お客さんからもろたお酒を、他のお客さんにお金とって出すいうことは、えらい気がひけてしまうてね。よかったら、そのままの値段で買い取らせてもらえんやろか?」


厨房でリキュールの瓶をながめながら、そういうのは版画家の柿坂万作である。万作は聖人君子のような瞳でヒゲの男を見る。


「どうか、万作さんのしたいようになさってあげてください」と、ヒゲの男も万作の意見に同意して、デザイナーの女にアドバイスをする。


デザイナーの女も快諾してくれ、いよいよ柚子リキュールは画廊喫茶フレイムハウスの完全なる持ち物となった。


しかし…。ヒゲの男はいつぞやの日のことを思い出す。


まだ、ヒゲの男がこの喫茶店の客だった頃、万作は客からもらったウイスキー「マッカラン」をそれなりの値段でヒゲの男に出していたのではなかったか。相手が女性だと、人の主義主張も変化するものなのかと、ヒゲの男は静かに苦笑する。まこと人間らしい。


つづいて、怪談作家の女が、大分のかぼすを手土産に店へやってくる。聞くところによると、隣のサロン喫茶フレイムハウスにも別の怪談作家がやって来るようで、今日はフレイムハウス行脚をするとのこと。常連のガルパンの男、常連の不思議な女も混ざっての怪談話しに花が咲くこととなった。


常連の不思議な女が、その落ち着いた声で話しだす。


「母の田舎、四国なんですけれど、そこに行ったとき田舎だから部屋も多くて広いの。そこで寝るとき、いつも夜は部屋の木目が人に見えてたの。だけど夜が明けて、どこのどの部分の木目が人に見えていたのか確認に行っても、見当がつかなかったの」


ヒゲの男も木目が人の目に見えていて、眠れぬ夜を過ごした経験がある。そういったとき、いつも母の胸をまさぐりながら怯えを殺して寝ていたものである。


怪談作家の女がいう。


「私は阿守さんが、いつぞや書いていた怪談話しがとても好きなのです」


「えっ?僕が…ですか?」


ヒゲの男には自身が怪談話しを書いた記憶がないので、キョトンとする。


怪談作家の女がこれまでに聞いた怪談のなかでもベストスリーに挙がるという、ヒゲの男の怪談を思い出しながら話してくれる。それはヒゲの男の実家にある、彼の今は亡き妹のピアノの話しであった。


そういえばそんな経験をしたことがあったなとヒゲの男は思いだした。なるほど、怪談といわれれば本人にそのつもりはなかったが、確かに怪談であろう。ヒゲの男の母親は妹が帰ってきていると気がついたときの話しである。


怪談作家の女が隣のフレイムハウスへ行くのと交替に、ギャラリーの女と版画家の女、そして絵描きの男がやってくる。万作の新作料理「コロマンサ」を突きながら、この料理を絶賛する。


後から入ってきた、トレーラー運転手の男と、忙しそうな男の二人組もその様子を見て啓示を受けたのか、「コロマンサ」を注文する。


万作は新料理コロマンサのインスピレーションの源泉がハイタッチの男こと冷泉や、会計事務所オーナーの男であることを語りだす。腹の殴り合いを起因とした、文字どおり腹を痛めて生まれた料理なのである。


そして唐突にはじまる、絵しりとり。サムネイル程度の大きさの絵を描いて、それが何を描いているのかは伏せたままで、しりとりをするというものだ。ヒゲの男も多少なりとも絵心があるのだが、対戦する人間がデザイン関係の人間ばかりなので、自分の描く絵がひどく稚拙にみえて、恥ずかしい思いをする。


隣のフレイムハウスでのイベントを終えて戻ってきた怪談作家も加わっての、絵しりとりは延々と続いていく。


デザイナーの女が帰宅するを境に中断された絵しりとりのあとは、怪談作家の女の主人が現代芸術の収集家だということを発端に、現代芸術の話しとなる。とにかく家に収まりきれないほどの作品が家にあるとのことだ、もし泥棒がその家に入ったとして、その中から何を持っていくのか泥棒の芸術的審美眼や慧眼に興味があるなと、ヒゲの男は不謹慎なことを考えながらニヤつく。


そういえば、怪談作家の女がこんなことを言っていた。


「私が怪談を愛するのは、それが、あの世の存在と、この世の存在の境に位置するという特性をもつからです」


先日、照明屋のテリーという男からヒゲの男のところへ唐突なメールがあった。(この男はいつも唐突なのだが…)


「芸術とは、もっとも美しいウソである。これは誰のことばだったか?」という内容であった。


もちろんのこと、これは作曲家のドビュッシーのことばであることをヒゲの男はテリーに伝えた。ドビュッシーのいう芸術とそうでないものの境、ウソと真の境はどこなのであろうかと…。ヒゲの男は怪談作家と不思議な女がクリスチャン・ ボルタンスキーの話しをしているのを聞きながら、ふと考えていた。


芸術と芸術でないものの境について、えらく古いインタビューで、偉大なるルノワールの息子が興味深いことを語っていた。


ここに書き出すと、注釈も入れて長くなるので書きはしないが。そのことば、ヒゲの男に確かな何かを与えてくれるものであった。


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by amori-siberiana | 2017-09-28 14:13 | 雑記 | Comments(0)

【王子と総帥 悪魔バイオリンの音色は我々に目覚めよと咆哮する】 /2017年10月08日(日)20時ころから。10月09日(祝・月)の19時ころから。


【前編】2017年10月08日(日) /予約受付開始、10月01日の正午12時00分より。


◆出演:バイオリン:土屋雄作、ギター:阿守孝夫、ベース:山本周作


【後編】2017年10月09日(祝・月) /予約受付開始、10月02日の正午12時00分より。


◆出演:バイオリン:土屋雄作、ギター:阿守孝夫、ベース:山本周作、ドラム:平尾正和




画廊喫茶フレイムハウスにバイオリニストの土屋雄作さんをお迎えしてのプレミアム2DAYSでの演奏会を開催いたします。夏の万作祭(千秋楽)でも土屋さんには助けていただきましたが、もちろん秋の万作祭でも助けていただきます。スコットランドの格言でもそういうものがあります。


王子と総帥、そして日毎に増えていく召喚獣たちの素晴らしき演奏をご堪能ください。


ごめんなさい!この日はモーツァルトを超えちゃいます!


両日ともに先着25名、入場料は無料です。土屋さんの交通費と宿泊費くらいをみんなで割れるくらいの寄付があれば十分です。


お問い合わせは


takaoamori@yahoo.co.jp


土屋雄作さんに関する情報は以下のとおり。


◆https://www.yusaku-tsuchiya.net/ (ホームページ)
◆https://www.facebook.com/soundcreator.violinist (Facebook)
◆https://twitter.com/yusaku_tsuchiya (Twitter)
◆https://www.aliake.asia/ (自身のバンド ALIAKE)



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~はるか昔のこと…。スコットランドとは正反対側の島国の話し~


近鉄奈良線にある河内小阪という駅の前を歩いているのは、王子と総帥であった。二人は何やら議論を繰り返している、駅前にあったコーヒーショップに入った二人はそこでも議論を繰り返す。王子はいつもどこへ行くときでも、悪魔バイオリンが入ったケースを右の肩からかけている。


二人の議論の内容は、新しいアルバムの製作についてである。


最初は「GAVOTTE」という曲を入れるかどうかについてスタートした議論は、お互いの共通した意見によって入れないということになる。


「厳しいものを作りたいですね、ぶちかましてやりましょうよ」と、王子はいう。


「そう、厳しいものを作ろう、ぶちかましてやるのだ」と、総帥は王子のことばをオウムのように復唱する。


二人が血気盛んに何をぶちかまそうとしているのかは、その当事者でなければわからない。とにかく、ただならぬことをしてやろうと考えていることは確かだ。


とにかく、それが2ndアルバム「COMICAL SALUTE」への第一歩であった。


そこから数日が流れ、王子と総帥、そして電気工事士と小説家、酔いどれギタリストとピアノ工房の社長、さらにはタラコ唇の男の7名が、とある離島に集結した。


離島を選んだのは賢明な判断で、そこから逃げ出せない状況を作った。そういう意味での雰囲気作りをするのは、当時のマネージャーであるタッキー国王の得意分野だった。何かが起こることは、何かを起こす前から予感していた。


名プロデューサー、リック・ルービンやブライアン・イーノ、映像作家ミシェル・ゴンドリー的な手法である。作品が生まれざる得ない環境を事前に戦略のなかに組み込んでおくのである。あとは放っておけば、音楽家たちが勝手に発火する。


王子は「GOOD BURNING O'SILK」という爆発的な曲と、「COMICAL SALUTE」というユーモアをふんだんに散りばめた曲を持ってきた。


総帥は「MISS SILENCE」という朝の曲と、「NEW DELHI STREAM」という夜の曲を持ってきた。


緩やかな出だしではじまった、MISS SILENCE。その6分30秒ほどの曲の終盤は、最初の4分をしっかり使って抒情的に進行していくが、最後の2分は絶唱する。王子の弾くバイオリンのメロディーをそこで初めて聴いた総帥は驚愕した。


自分が表現したいがどうすればいいのか解らないと思っていた意中のことを、そのまま音にして王子が一発目から出したからである。一発目から(!)


しかし、この曲は相当な魔力をバイオリニストに要求する。何度も演奏できるものではないのだ。


そして今回、特別にこの曲の封印は解かれ、猫のひたいのように小さな店でその全容を現すのである。


はじまりの重厚な文章の割に終わりはざっくりしてるな、という印象があるだろうが、いい時間になったので仕方がないのだ。


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by amori-siberiana | 2017-09-28 12:19 | イベント | Comments(0)


北浜というビジネス街を独立させようと企む、ヒゲの総帥のブログです。