こんにちは、北濱にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサ(旧名:画廊喫茶フレイムハウス)を経営するヒゲの総帥こと、阿守のブログです。


ヒゲの総帥がブログに東の冬は寒いそうだと書いたからではなかろうが、昨日からえらく寒くなってくる。ヒゲの総帥が生意気だということで冬将軍が東から西を伺っているようである、寒中歩くだけで身を切られるような気持ちになるのはどうにも好かん。ヒゲの総帥は元来、耳が寒さに弱くすぐ耳たぶが切れてしまうのでジャミロクワイのような帽子を深々とかぶりだす。


さて、昨日のこと。とにかくおかしな一日であった。


土曜と日曜の狂騒からヒゲの総帥が目覚めると昼前である。こんな時間まで寝ていたのならば北濱のオフィスへ行く前に店に立ち寄ろうと考えて店に行く。店のシャッターは開いてはいるものの、のれんは出ておらず階段の脇にある立て札も「準備中」と無愛想にこちらを睨みつける。準備中とはよく言ったものだ、どこのどの辺をみてあらゆる飲食店は「準備中」と済ましているのか判然とはしない。今の準備中には休業中や酩酊中や外出中も含まれるのであるから、さぞや準備中の一言が背負わなくてはならん言質は多いのだろう。


店の階段をすたすたと登って行くと冬のか弱い日差しによって店内は薄暗く、その薄暗いなか版画家の万作が本尊のように鎮座して缶ビールを飲んでいるのである。ヒゲの総帥は舞台の上に出しっぱなしになっているギターの機材などを片付ける、昨夜までの雰囲気が色濃く残るステージの散らかり方であった。


しばらくすると準備中で暖簾が出ていないにも関わらず誰かが階段をのぼってくる。ゴガッと締まりの悪いガラス戸の音がして外部者の視線が店内に注がれる、その泳ぐ視線がヒゲの総帥でピタリと止まる、男はそれならよかろうという体で入ってくる。飄然たる登場をするのは不動産広告にかたよったデザイン会社を経営する忌部という男である。


「あれ?準備中になってなかった」とヒゲの総帥は忌部に無駄と思うが一応聞いてみる、「ああ、出てたね」とまるでその立て札になんらの効力を見い出せないようなことを風のようにいう。ヒゲの総帥がきょとんとしているのに構わず忌部は万作に問いかける「万作さん、何できます?」「うーん、まだ準備中やけど、今やったら、うーん、コロマンサ、オムライスやったらいけます」「コロマンサまだ食べてへんから食べよかな」「はい、コロマンサ。ダブルにしますトリプルにします?」「ダブル…、トリプル…、なにがどう違うんですか?」「うーん、一般的な女性やったらダブルをおすすめしとるんですが、お腹がごっつう減っとるんやったらトリプルでも食べる人はおるんですわ」「そない唐突にダブル、トリプルどっちにするいうて聞かれても、内容がわからんから…」「うーん、ダブルやったら400円でトリプルやったら500円の違いですねん」「いや、そういう意味やなくてコロマンサって何料理ですの」「ん?卵、目玉焼き」「なんかわからんけどトリプルで」と忌部は追及の虚しさを感じたのか言われるままにトリプル・コロマンサを注文する。ヒゲの総帥は互いの歯車の噛み合わない会話が面白くて仕方がない。万作は万事こうなのである。


「万作さん、もうお客さんも来られましたし店を開けますか?」とヒゲの総帥は厨房に入ってコーヒー豆をガリガリと挽く万作に問う。「うーん、いや、まだオープンできる状態やないんでそれで準備中にしとるんですわ。オープンする用意がなんもできてへんのです」と万作はいう。ヒゲの総帥は忌部と顔を合わせて、この状態といつもの状態のどこがどう違うのかまったく解らないという表情をする。見る限り、いたっていつもどおりのクントコロマンサであるのだが。万作にしか見えぬ段取りの深淵があるのだろうと、それ以上は突っ込まずに万作の段取りが整うまで暖簾も出さず準備中のままにしておくことにした。


するとまた誰かが階段をのぼってくる若い男である。入ってくるなり「万作さん、オムライスとホットコーヒー」と注文をする、万作は「うーん」と唸りながらも厨房でもう一度コーヒーをがりがり挽きだす。しばらくするとまた誰かが階段を昇ってくる、その足音を聞きながら万作は「どないなっとるんやろか」と独り言をつぶやく。入ってきたのは妖精の女であった、「万作さん、今日は何ができるんですか?」と万作に訊ねる。「うーん、コロマンサ、オムライス…」「オムライスは前に食べたから、他になんかありませんか?」「うーん、イカなしの焼きそばやったらできるかな、できんかな、できるかな」と冷蔵庫をゴソゴソしだす。妖精の女は「そしたらイカなし焼きそばで」というが、厨房の万作からは返答がない。忌部が大きな声で「万作さん、イカなしの焼きそばやって」とオーダーを仲介する。ヒゲの総帥は昼間から腹を抱えて笑い転げる。これではどちらが客でどちらが店なのかわからない、世の中にこんなに面白いところがあろうかと心中で店のことを絶賛する。


ヒゲの総帥はそれぞれの客に準備中だったのを知っているか?と問うが、若い男は暖簾が出てなくても万作さんが中にいるだろうから入るべからずなど気にしたこともないという、妖精の女にいたっては暖簾の存在すら気がついてなかった。忌部はわざわざ準備中を確認してから上がってきた。ヒゲの総帥もここの客だった頃、よく「準備中」の立て札を勝手に「営業中」へと反転させて階段を昇っていたものである。「あれ?準備中になっとりませんでした?」と万作はヒゲの総帥に問うのだが、「いえ、営業中でしたよ」とヒゲの総帥はシラを切ったままタバコに火をつけて本を読みだす。「おっかしいな…、ワシも最近ごっつぅ物忘れが激しいなってきとるんで…」と万作がアタフタするのを見るのが好きだったのだ。


その珍妙な光景を後にしてヒゲの総帥は北濱のオフィスへ行く。いつものようにコーヒーを飲みながら仕事を開始する。お隣には東京出張から帰ってきたばかりのアキラメ堂の主人が居座る。ヒゲの総帥がメールチェックをしていると、とてもおかしな件名のメールに気がついた。件名:フローズン他多数の【匿名希望】です。とあるのだ。


「フローズン他多数とは何のこっちゃ」と思いながらヒゲはメールを開く。「クントコロマンサ Amoriさま」と本文の最初に書かれてあるからには、ヒゲの総帥に読んで欲しくて送ってきたものなのであろう。ヒゲは構わず読み進める。「直にご挨拶が間に合わないまま、更には整わない文章で申し訳ありません」とあるのでこのメールの差出人はどこか遠くにいるのかまたは幽閉や軟禁状態になるのだろうと勝手に思う。


「匿名のお客様のことなのですが、そっとしておいていただけると幸いです…」と次に来るので、「ははん、僕のブログについての意見であろうか」とヒゲの総帥は思うが匿名の客というのは、一体誰のことであろうか。ヒゲの総帥は最初は気のない感じであったが、やや乗り気になってくる。本文は続く「お気づきかとは思いますが、、各地の各立場と各担当との住み分け&線引きがなかなか難しいため、各地のスリーパー&フローズンと同時進行の学び舎と化しております」。「なるほど学び舎とは恐れ入った呼び方だ、大方学校のことでも指すのではないか」と勝手な自己解釈で読むが、ちょっと日本語が変だなと感じる。


「なかでも匿名のお客様のご様子が見えなくなると、逆に諸々とよからぬことを想像してしまい不安&心配&若干危ないので、あのぐらいでしたら、むしろ見えていた方が安心かと考えております」と来たときには、つまり最初は匿名の客のことを書くなという苦情に捉えていたがこの場にいたっては書いたほうがいいというのでヒゲは一向に釈然としない。ヒゲを引っ張ったり抜いたりしながら次を読む。「私はなるべくわかりやすく斬られながら危機管理&セーフティネット担当のようでして」とあり、いよいよおかしくなってくる文面に興味が沸く。「読みと動きと手際が悪く、大変申し訳ありません…。」と来たときには「いえいえ、どういたしまして」と誰に対してかわからぬことをヒゲの総帥は心のなかでつぶやく。


「水面下もしくは並行して同時に勉強中&出番待ち&準備中の、人達が一応居てますので、こちらはおそらく大丈夫です」となる、「いろんな人が水面下でいろんなことをしてるのだな、そしてそちらは万事整ってるということか。それにしても居てますというのは唐突に河内弁のような言いようじゃないか」とヒゲは怪訝に思う。「ご迷惑とご心配を沢山ほんとうにありがとうございます。なるべくちゃんとやりますので、ネット上で関わる人数をどうか増やさないでいただけると幸いです……」。いよいよ佳境を迎えたなとヒゲの総帥は膝をぽかんと叩く。「そして、引き続き平和に音楽中心に笑かしていただけると皆の学びと平和になりますので、よろしくお願い致します」とくるので、そう簡単でもなかろうとヒゲは笑かしていただけるようよろしくお願いされても困るという顔つきをする。


「自分の役割が落ち着きましたら、あとで謝罪に伺います…。あとまわし的で申し訳ありません…。よろしくお願い致します…。」できるなら来ないでいただきたいと率直な感想を誰に聞こえるでもなく口にするヒゲの総帥。「乱筆乱文失礼致します。身体も心も資本ですので、なるべくお休みください…。私も休みます…。」とうとう一緒に休暇を取らされた、やられた!とヒゲの総帥は思う。本文はそれぎりでそれ以上は何もなかった。


これを怪文書といわずしてなんというのだろうか、ヒゲの総帥は早速隣で暇そうにしているアキラメ堂に自分に向けて怪文書が来たことをまるで栄誉であるかのように伝える。「危ないですよ、気をつけてくださいよ」とアキラメ堂のご主人はヒゲの総帥に賞金首がかかっているような言いかたをする。ヒゲの知り合いにかの高名なチューリング博士でもいるのであれば、この文章の何たるかの性根を露見させてもくれるのだろうが、そういう知り合いはいないので放っておくしかないのだ。


そのあとは宇宙人を自称する人からのメッセージを受け取るがこちらは文章がエレガントでユーモアがあり意思疎通ができたのでホッとする。


それにしても毎日毎日、飽きもせずにいろいろなことがあるものだ。一日を振り返ってみると苦笑ばかりが出てくる一日であった。


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by amori-siberiana | 2017-12-12 19:04 | 雑記 | Comments(0)


北浜というビジネス街を独立させようと企む、ヒゲの総帥のブログです。
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