ピアノ会社を運営して4期目を迎える軍司がコロマンサにやってきた。その肉厚だけでいえばラフマニノフのようである男らしい手からヒゲの総帥に手渡されたのは、アルメニア・コニャックの最高級である「アララット」であった。旧約聖書の創世記にて描かれたノアの方舟が漂着したという神聖なる山の名前が冠せられたこのコニャックをヒゲの総帥は是非とも一度は飲んでみたいと思っていたのだった。


アララト山というのはアルメニア人からすれば他の民族からは想像もできないほど偉大な山なのだ。それは山というものを越えて、ひとつの民族の精神的なオベリスクなのかも知れない。終戦になってもフィリピンのジャングルに籠り、一人戦争を継続させていた小野田少尉。鈴木という冒険家が彼をジャングルにて見つけて帰国するよう説得した際にも「富士を見たくはないか?桜を見たくはないですか?」と問うて促したという。つまり、風景というものは写実を飛び越えて人の心に染みついた精神にもなるのであろう。


ヤルタ会談にてこのコニャックを飲んだであろうチャーチルはこの飲み物が気に入ったようで帰国の際に「アララット」を爆買いしたという、もちろんアルメニアに所縁のあるスターリンなども愛飲していたであろうことは歴史のページをわざわざめくらなくとも想像するに容易である。実際、スターリンはソ連の国民的ドリンク、ウォトカよりもコニャックを愛したというではないか。そんな男がアララットを見過ごすわけはない。


このコニャックにまつわる逸話を知っているヒゲの総帥は軍司からアララットを手渡されて狂喜する。軍司に関してはこれが二度目のコロマンサへの来店であったのだが、一回目について書いても記憶があやふやなのでやめておく。とにかく軍司は二度目の来店であることは確かなのだから、それでよかろう。


待ち合わせは北濱のオフィス「ザ・ジンクス」であった。この日はジンクスにて宴が行われており、その終了間際にきた軍司を駆け足でジンクスに集ういろいろな人へ紹介する。ジンクスのオーナーで背筋がピンと張りつめた弦のようなカサイという男、そしてプロデューサーのカナガワという男、さらには彼らの共通の知人で常に基盤を持ち歩くツマダという男などである。そしてお馴染みの宗教画のモデルのような女や北濱最強のクモン提督、学生起業家のダダヤマであったりサイコメトラー佐藤、ライターやアプリ制作者や動画制作者などに軍司をそれぞれ紹介していく。


「ピアノのことならこの男、藤田ピアノ工房になんでもお任せください」という即席の口上を面白半分に作っては、集まった各位へ自分の旧友を紹介していく。


「ピアノいいですよね。ちなみにグランドピアノって幾らぐらいするんですか」と淡い空色のベストを着用しているジンクスのオーナーが軍司に訊いてくる。


「そうですね、俗にいう高級ピアノといわれるものであれば4000万くらいですかね」と軍司はすらりと事実を事実のままに伝える。率直にそんなに高いんですかという表情をするオーナーの男、なんとも愛嬌のある顔をする男である。こういう男に衆愚政治クソ食らえの独裁政治などをしていただきたいものだ。


「会社役員の何人かのクビを切り、浮いた金でピアノでも買いましょう」とヒゲの総帥はジンクスのオーナーを焚きつけるが、その話しには絶対に乗らないという感じであったことは誰もが予想できるところであろう。


そのまま軍司を連れてコロマンサへ向かう。


ゴガッという締まりの悪いドアを開ける、そこにいるのは常連と冷泉たちであり、この夜が深くなることをすでに物語っていた。


軍司が持ってきたアララットを開けて皆で乾杯する。芳醇な香りは異国での夜更けを思わせるようであり、幻惑のなかに登場してくるいにしえの酒はこういうものだと教えてくれるのであった。耳の奥からはリムスキー・コルサコフの「シェエラザード」のあのメインメロディーが聞こえてくる。


これが、あのアララットか・・・。


ヒゲの総帥はグラスに注がれたコニャックを揺すらせて匂いを楽しむ。万作が軍司のところへやってくる。


「うーん、これ、中身ジム・ビームですやんね?」


柿坂万作、確か今年で48才とか49才とかになるのではなかったか。アララトの風景に罪はない。



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by amori-siberiana | 2018-03-31 22:51 | 雑記 | Comments(0)

先日はアラタメ堂がクントコロマンサと同じく月に一度開催しているゲームイベントがあった。


北濱にあるオフィス「ザ・ジンクス」にて行われるこのゲームイベントは、その内容を「人狼」というゲームに特化したものであり、ひたすら人狼ばかりをやるというものである。このひたすらというのは、禅僧の只管打坐のようなもので、いつしかそれによってアラタメ堂自身の悟りが開けるのかどうか見ものである。(頓悟でも暫悟でも悟りかたはなんでもいいのだが。)


ヒゲの総帥も初回から参加してはゲームマスターを命じられたり、ゲームに参加したりと大いに楽しませてもらっている。この会の良いところは外に対して開かれたものであり、ジンクスとなんら関係のない人でも参加費を払えば参加できる。そのゲームを契機に外から来た人がジンクスのオフィス内部を歩き回って、新しい収入をジンクスにもたらしてくれれば幸甚なのであるが、アラタメ堂たちがミーティングルームを使って遊んでいるあいだでも仕事をしている人間たちがいるので、無理な相談なのかも知れない。この辺りはシェアオフィスの難しいところでもある。


どんな人が参加しているのであろうか、少しのぞいてみよう。


主宰者のアラタメ堂についてはこれまでも触れているので割愛させていただこう。


まず、ミムラのおっさんという人物は外せない。このミムラのおっさんという人物が誰の紹介によってどのような経緯でアラタメ堂のイベントへやって来るようになったのか誰も知らない。その風貌は常に自治会費を払ってくれない雑居ビルを寝床にする探偵のような感じである。酒を飲みながらゲームに参加して、早々につるし上げられるので遊戯時間より待機時間のほうが多いという始末である。それなのに毎回参加してくれており今では常連である。


そしてカサイという背筋が芸術的に素晴らしいジンクスのオーナーの男も参加している。ところがこの男、最近は何やら室内のゴルフレッスンというインドアなのかアウトドアなのかよくわからない分野のことに生きがいを見い出したようであり、アラタメ堂のイベントへの欠席が続いている。そろそろこの辺で密室で行われる根暗でインドアなゲーム会へ戻るよう奮起していただきたいものである。


そして鬼と火事。鬼はウェブデザイナー、火事は21世紀を轟かせる類まれなる画家である。さらにはヨリミチ先生というライターの男が参戦してくる。火事にライターというのは物騒だという人がいるかも知れないが、ここ二人はそんなに接点はないので着火しないであろう。そして北濱人狼の特別顧問役としてカノキチという男が参加をすることがある。他にもいろいろ参加してくれるのであるが、全員を全員のまま書いていたのでは収拾がつかないのでこの辺りで切り上げる。


この日の人狼も大いに盛り上がる、今回は学生起業家のダダヤマが初参戦、さらにはアハハの女もジンクスへ乗り込んでくる。


ダダヤマは初参戦とはいいながらも、結局のところはイベントの用意など雑用をさせられる要員であるのは幾ら勘の悪い本人だとしても理解しているところであろう。以前までならその役目を陸サーファーのディエゴが拝命していたのだが、ディエゴは今、故郷の温泉街をシリコンバレーにすべく実業家の指揮下のもとで大いに活動しているのである。


ヒゲの総帥は一度目の人狼のゲームマスターを任されていたが、途中からアラタメ堂とダダヤマが用意した安酒による酩酊状態へ入り、なんだか気持ちよくなりゲームの進行を自身は半分ほど放棄して初対面のキダム君に任せてボンヤリしている。次の回からはカノキチ君が安定のゲームマスターをすることになり、ヒゲの総帥はお役御免となり大いにコミュニケーションを楽しむ。


このカノキチという男、ゴールデンウィークにそれはそれは壮大なる500人~1000人規模での「人狼文化祭」というものを開催するという。場所は名村造船跡地のクリエイティブセンターである。


「名村さんか・・・」と人狼文化祭のチラシを見ながら、ヒゲの総帥は懐かしい日のことを思いだす。

ヒゲの総帥はヤマトコを通じて造船業の名村将軍には随分と可愛がってもらったものである。可愛がりといっても角界のそれではない、今もお元気でおられるだろうか。


年の老い若い関係なく、男女の性差なく、恋しい人というのはいるものである。


名村将軍に何を教えられたとか、何を伝えられたとかではない。ただただ、名村将軍が若造であったヒゲの男のどこを気に入ってなのかはわからないが、「飲みにこい」と呼ばれて一緒に酒宴へ参加した。それだけで何ら彼らにとって益をもたらさないであろうこのヒゲの若造であるが名誉な気持ちになったものである。自分が認められたという充実感にひたっていたのであろう。


そういった思い出は忘れない。


なのでヒゲの総帥やアラタメ堂も学生起業家のダダヤマを可愛がっているが、こちらおn可愛がりは角界のそれとあまり違わない。




人狼文化祭

2018.05.03(木)~04(金)

【場所】名村造船所跡地 クリエイティブセンター大阪

【一般前売】1day:1800円 2days:3200円

https://jinrohbunkasai.wixsite.com/2018


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by amori-siberiana | 2018-03-24 17:43 | 雑記 | Comments(0)

土曜日はアラタメ堂のご主人のイベントであった。


月に一度の恒例となっているクントコロマンサでのボードゲーム大会。ボードゲームの種類もさることながら、そこへ集う人たちの特異なキャラクターに目がいきがちなイベントでもある。誰しもどこかしら他人や多数派とは相容れない特異なところを持ったものではあろうが、そういったものは客観性の視点においてピックアップされなければ本人すら気がつかない次第である。つまるところ、自分で自分のことを「変わり者だから」と自称する人間のほぼ全員が漏れなく月並みな生き方をしていることは多々あることなのだ。


そして回数を重ねるごとにいつもの顔ぶれというのがある。


まず、アラタメ堂のご主人。


ボードゲームをこよなく愛する男であり、脱サラしてフリーになったのをいいことに好き放題ボードゲームのイベントへ参加しているようである。ヒゲの総帥とは同じオフィスを共有しており、そこでの二人の会話はやかましい。誰も笑えないようなブラックジョークをお互いに乗せて乗せてを繰り返すので、そのうち議論の本題などはわからなくなる。


そして、ファラオ。


この男のニックネームを「ファラオ」と命名した冷泉のネーミングセンスたるや脱帽である。ファラオを名付けられて以来、この男の存在価値は一気に上昇することとなった。それまで取るに足らない田舎の百姓程度の扱いだったのが、ファラオと名付けられて以降は来店するたびに国賓級の注目度をクントコロマンサでは誇るようになった。それくらい名前というのは重要なのだ。


「談合チンコロクラブ」という自身の会を主宰して、細々と山の向こうで活動しているのであるが、最近は北濱まで進出してきているという具合である。


さらには、ゲームセンス・ゼロの女ことアシム。


クリムトの愛人エミーリエ・フレーゲが好んで着ていたような服を身につけてやって来るウェブデザイナーである。ここ最近はウェブなんちゃらとか、なんちゃらデザイナーという職種の人と会うことが多い。どこからどこまでがウェブでどこからどこまでがウェブでないのかヒゲの総帥にはわからないが、このアシムはそのデザイン技術を生かしてアラタメ堂の挑戦状たるイベントのデザインを務めている。


まずこの三人を北濱オリガルヒの主軸と考えるのがシンプルであろう。


ここに社会主義の国へ研修ばかりいく、スージーなる女が加わる。このスージーというのがもしやもすると一番サイコパスなのかも知れないとヒゲの総帥は考えている。そして永遠のメンヘラことヤッチというブルーグラスの男も加わり、彼の盟友である永遠の京都大学院生のドツボ博士も加わる。そして独特の抑揚のないイントネーションで鋭く相手の矛盾点を突いてくるゲーム界の検視官ことYU-JI。人間の個性を極端にカテゴライズするのはナンセンスではあるが、どちらかといえば非体育会系の人間が週末に集まり、隠密で行う三回忌のようなイベントである。


あとシベファンたちがやって来る。このシベファンというのは今は亡き砂漠の王国「楼蘭」の住人のような人たちであり、これまでの例に漏れず特異な人ばかりである。ヒゲの総帥はこのトルファンだかシベファンだかいう人たちと一緒に酒を飲み、大いに語り合うのが好きである。そしてアラタメ堂の知り合いたちも然りである。最近ではヒゲの総帥の役所での上司も加わわって、魑魅魍魎がストレートフラッシュで出揃う感じとなる。


前置きが長くなったが・・・。


この日のテーマは「ブラフ」である。ブラフというのはダマしダマされるという理解で構わない。どうせダマすなら死ぬまでダマして欲しかったという昭和歌謡の歌詞があったそうだが、まずそんなところである。


さて、このブログをお読みの皆さんは家族を含めて他人をダマしたことがあるであろうか。ヒゲの総帥はもちろんある。このダマすという行為は倫理観や道徳観から見てもよからぬことと論じられることも多いが、ダマすことについて深く考察していくと実際はそうでないことも多々ある。つまるところ、この詐術という術をどういった人間が使うのかで詐術の善悪も決定するのである。そしてその決定はその時代と後の時代では評価も異なるのである。ダマしダマさればかりの世の中も酷いものだが、ダマしダマされのない世の中よりは幾許かマシなような気もする。


英雄のいない時代は不幸であるが、英雄を必要とする時代はさらに不幸であるといったのは、ベルトルト・ブレヒトであったであろうか。


ホラ吹き男爵にしても、サンジェルマン伯爵にしても、ティル・オイゲンシュピーゲルにしてもその詐術の根底にあったのは、面白きこともなき世を面白くという高杉晋作と通ずる何かがあったように感じるのは、いささか論拠が極端であろうか。


訳のわからない論文は宜しいとして店内へ目を向けることとする。ヒゲの総帥は昼間から酔っぱらっているのである、せっかくの休日であるからブログなどサッサと切り上げて酔いどれのときを過ごすのが良かろう。


税官吏の男が仕切るテーブルでは「アンロック」なるスマホのアプリとカードを連動させたゲームが行われる。ちゃぶ台のある舞台ではペルシャ風の絨毯の上でアルハンブラ宮殿のタイルをどうたらこうたらという「アズール」というゲームが行われ、カウンター近くでは「ワンナイトマンション」という物騒なゲームが行われる。さらにはドツボ博士が助手と一緒に持ち込んだ例の「アヴァロン」というゲームが進行している。


この日、小説家の平尾先生はアヴァロンしたさにわざわざ四国から大阪まで来られたそうだ。円卓の騎士の物語を熟知している平尾先生にとっては生唾が出るような世界観のゲームであったらしい、先生は終始ご満悦の表情であったろうと思う。


しばらくするとジローがやってくる。すでに酩酊状態のヒゲの総帥たちは「もう頭を使わない野球拳のようなゲームをしたい」と勝手なことを言いだす。そしていつの間にか冷泉が東京からの客を連れてクントコロマンサへやってくる。店内の坪面積の8割はボードゲームに使われ、残りの2割は殴り合いに使われるという次第であった。ゲームの勝った負けたであがる歓声や悲鳴、そして店の入り口からあがるバキとかドカとかの打撃音の後の阿鼻叫喚。この店が天国と地獄のあいだ、煉獄に位置することをよく教えてくれる状況であった。


そういえば、「神曲」という大著を興したイタリアのダンテはこんなことを言っていたを思い出した。


―お前の道を進め、人には勝手なことを言わせておけ。―


ここに集まるのは、そういった奴らばかりである。


アラタメ堂の挑戦状は昼から始まり、日が変わってからも続いた。版画家の柿坂万作は昼から「うーん、この人数やったらイベントを断っとったんやけどな・・・」などとグズグズいう残念極まりない始末。この男は一体どうなってしまったのであろうか。


ヒゲの総帥は「シヴィライゼーション」というゲームをしたい。このゲームをピアノ工房の男と夜更けも夜明けも関係なく、昼夜問わずにずっとやっていた時代を思い出す。ゲームというのは人生の濃縮ジュースのようである。


シヴィライゼーションがしたい。


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by amori-siberiana | 2018-03-21 12:26 | 雑記 | Comments(0)

「ほな、殴り合い、しましょか・・・」


「ええっ!?もう!?」


冷泉の口から出た唐突なことばに一同は驚く。冷泉の弟のジローが「トシちゃんまだ、そういう雰囲気じゃないから。な、見たらわかるやろ?まだそういう雰囲気じゃないやんか。トシちゃん、これは喜楽じゃないから」と冷静に黒ずくめの兄を制する。


「うん・・・、ほな、また後でしよか」と冷泉は弟の言うままに今回ばかりは引き下がる。このジローというのは黒ずくめの兄が母親の子宮へ置き忘れてきたであろう理性などを、しっかりと引き受けて生まれてきているようである。柔よく剛を制すという言葉もあるようだが、ヒゲの総帥はこの二人の兄弟のことが羨ましい。若い頃に妹を亡くしているヒゲの総帥からすると、それは永遠に手に入らないものであるからだ。


タッキーは冷泉が殴り合いという言葉を発するや否や、「もう5分きたので、帰ります」とカウンターを離れようとしていたところであった。ヒゲの総帥は「まあまあ、もっとゆっくりしたまえ」とタッキーを席に戻し、自身のスマホをタッキーの目の前に置く。そのスマホには美人の女性のポートレイトが映し出されていたわけだが、タッキーは帰ることも忘れて食い入るようにそれを見ている。格闘経験のあるテリーにいたっては、この黒ずくめの男が相当な手練れであることを感じとり、俺に関わらないでくれオーラを身にまといだす。


ヒゲの総帥はジローからもらったパルタガスの葉巻をくゆらせながら、両者の間で時間と空間を揺られている。テリーはタッキーのほうを見ずに小言をいう、タッキーはその小言にビジネスマン口調で応戦をする、その応戦を受けてテリーはさらなる迎撃をタッキーに加える。タッキーはその迎撃に対して言葉と理屈の弾幕を張り、さらに応戦する。両者の空間で揺られているヒゲの総帥はニヤニヤしながら、心のなかで「はっけよい、はっけよい」と怒鳴り散らして軍鶏に奮起をうながす鉄拐仙人のごとくに扇を振っている。


まずもって、この二人が口論をしていないところを見たことがない。いつもこうであるのだ、ヒゲの男が総帥をしていた音楽団で遠征に出たときもその道中で二人は喧嘩をしだし、途中のサービスエリアにて「お前は(車から)下りろ」、「いや、テリーこそ下りろ」と剣突を食らわせあっていた仲なのだ。


拳をジローによって封じられた冷泉は二人に対して、「もう、二人とも、男の子なんやから、もう、ええやないですか、そのかわり・・・」と言い寄るが、その言葉の次に「殴り合いしましょ」が来ることを誰もが想像できるので、二人ともまともに取りあおうとしない。取りあえば即座に殴り合いに巻き込まれることは自明の理であるのだから、このときだけは両者とも想いを共有いていたことになる。ヒゲの総帥にはそれがおもしろくてたまらない。


日が変わっても二人の会話は続く。途中、二人の会話に入ってくる客があったのだが、「絶対にこの二人の会話に入ったらアカンよ、そういうことを求めてるわけじゃないねんから」とビッチの女店長が言葉でその客を制する。ヒゲの総帥はその瞬間、このジローに紹介されたバーに惚れることとなった。


人には教えられる「間」と教えられない「間」があるという。その教えられないほうの「間」のことを、「魔」というのだそうだ。この「魔」を知っている人間がその場にいるのといないのでは全然違う。


酒はどんどん出てくる。登場した酒はどんどん体内へ放り込まれる。どんどん議論は白熱してくる、テリーとタッキーの会話は無尽蔵な化石燃料を掘り当てたように終わることがない。会話のテンション的にはとっくに終わっているような感覚なのだが、さすがは付き合いが長く酒も深いだけに引き出しは多そうだ。


唐突にヒゲの総帥は「新曲が出来たのだ」と二人に伝える。どんなのか聴かせろというのでヒゲの総帥はビッチ店内にあるギターを手に取り、出来たという新曲を聴かせる。「テーマはなんだ?」とテリーがヒゲの総帥に訊く、ヒゲの総帥は「次こそ、バッハだ」と即答する。ヒゲの総帥が珍妙な曲を弾きだす、二人ともきょとんとする。20秒ほどで曲は終わり、ヒゲの総帥は自らが奇跡を起こした偉人のような目つきで「どうだ」と誇らしそうにするが、二人とも口を揃えて「意味が、わからん」という。その光景をみて冷泉とジローは失笑する、ビッチの女店長は「私はこの曲、大好きだ」と公言する。


ヒゲの総帥は奇跡は一度だけだと言わんばかりにギターを元あったところへ戻して、パルタガスの葉巻をくゆらせながらウイスキーをおかわりする。


曲というのは不思議なものである。


音の羅列が曲と認識された瞬間、世の中には「この曲」とそうではない曲の二つが存在してしまうのである。まさにバッハの偉大さは、その荘厳な響きやテクスチュア以上にここに集約されるのではなかろうか。


そしてそれは何も音楽に限ったことではない。いつの間にかジローも帰り、脂汗をかきだしたタッキーと終電を乗り過ごして当て所のなくなったテリーが宿り木にとまる滑稽な鳥のようにカウンターにひっついている。


さらに夜も更けると、二人の会話は母音だけで成されているかのような独特なリズムがあった。そのリズムはよほどに気だるく、行ったこともない国、キューバを感じさせるようであった。


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by amori-siberiana | 2018-03-20 20:03 | 雑記 | Comments(0)

タッキーとテリーは犬猿の仲である。


元来から犬猿であったわけではなく、いつの間にか仲が悪くなったようである。タッキーからすると「一方的にテリーが僕のことを嫌ってるんですよ」と困り顔をする。テリーからすると「アイツはいい加減だから」と取りつくシマもない様子。


そんな二人を合わせて仲直りさせようということを目論んだのはヒゲの総帥。それが両者のためになるのかどうかそんなことはどうでもよい、そうなることがヒゲの総帥にとってのメリットになるのだ。赤壁で曹操軍を討つためには呉と蜀が手を結ばねばならんということもあるのだ。


さて、ここ数日のことであるがブログの更新は滞っていた。これについては仕方がないフシもある、ひとつには時期的なものであり、もうひとつにはヒゲの総帥の仕事に関係することである。ヒゲの総帥はこの冬から役所へ潜入して仕事をしている、もちろんのこと公務であるからして真面目に就業している。役所というのは古今東西、人あるところならばどこにでもあるが漏れなくそのどこも三月が暇であろうわけがないのだ。「そりゃ、三月に暇な役所なんてありませんよ」とはバイオリン王子の言葉である。


更新が滞っているあいだ、大事から些末までいろいろなことがあったが今回はタッキーとテリーの日について書いておきたい。


泥酔した両手が武器の韓国人とか、バイオリン弾きの親父とか、声楽家の女とか、マナー講師の女とか書きたいことは沢山あるのだが、それはまたどうしようもなく書くことがないときに書こう。書くことがどうしようもない日を作るには、書くことがどうしようもない日を過ごせばいいだけのことだ。とにかく三月は眼圧がおかしくなるほど忙しいのだと理解を求めたい。決して、クントコロマンサが忙しいわけではない。最近、版画家の柿坂万作が店でダラダラしていると忠言をいただく次第である。


昨年は海外での仕事、大ホールでの仕事によく励んだ舞台照明のテリー。少し前になるがモーターヘッド(イギリスのバンド)をこよなく愛するこの男は、かのバンドの象徴的な存在であるレミー・キルミスター氏が亡くなったあと、彼の故郷を訪ねたという。レミーが亡くなったという一報をヒゲの総帥がニュースで知ったときには、そこからテリーに声を掛けられるようなものではなかった。テリーの慟哭が声などではなく恐ろしき雲を伝って空から降り注いでくるようであった。


愛しいものを失ったとき、それまで投げ続けた愛しさを何で埋めればいいのであろうか。失ってから知ることもあれば、失うまえから失ったあとを知ってることもある。無限という概念に美は宿らない。テリーの作り上げる照明には一抹の物語がある、それはリヒャルト・ワーグナーのように華美で誇大妄想的に狂ったものではなく、慎ましく梅一輪ほどの美しさを知った男の物語なのだ。


ヒゲの総帥はテリーをバーに誘う。このバーというのはハイタッチ冷泉の弟のジローが教えてくれた「ビッチ」という名のバーである。テリーはいつの間にか手巻きタバコに代わっている、ヒゲの総帥がどうしたのかと訊くとアメリカン・スピリットの味が変わったからだと応答する。なるほど、精神や主義主張というものは時代の流れによって転ずるのが相場だ。


ジローがやってきてキューバ産の葉巻をテリーとヒゲの総帥に勧めてくれる。毎晩のように銘柄を訊ねるのだが一夜明けるとやっぱり覚えていない、ただ、確かなその葉巻の香りだけは腐りかけた鼻腔と服に染みついている。


「テリー、そろそろタッキーと仲良くやってくれませんかね」とヒゲの総帥は単刀直入にテリーへ切り込む。テリーは聞こえないフリをして酒を飲む。「もうそろそろ偏屈テリーをおしまいにしましょうよ」とヒゲの総帥は二杯目となる濁り酒の立山をぐいと飲み干す。「それなら、今、俺の目の前にタッキーを連れてきてくれ」とテリーはいう、ヒゲの総帥は了解したとタッキーに連絡をする。


「はい、もしもし」と下水管の底から聴こえるような声が電話から聴こえる。どうにも相当に疲れ切っているタッキーの声である、ヒゲの総帥は前述の旨をタッキーに伝えてなんとかこちらまで出てきてくれないかと相談する。「・・・わかりました、けど、面白くなかったら5分で帰るかも知れませんよ」とタッキーはヒゲの総帥に釘を刺す。


もしも、テリーとタッキーが殴り合いをしだして店を壊すといけないため、ヒゲの総帥はジローに冷泉を連れてこれないかと相談する。何かあったときには冷泉の熱き拳によってテリーとタッキーの二人を即座に失神させていただかなくてはならないからだ。そして勢い余って咆哮する冷泉をすぐさま筋骨隆々のジローが殴って失神させるという平和をヒゲの総帥は見込んでいる。


10分後、冷泉がニヤニヤしながらビッチへやって来る。すでに酩酊状態であるらしいのだが、冷泉の酩酊状態以外をほとんど目にしないヒゲの総帥からすれば通常運転そのものである。


しばらくして、タッキーがやって来る。カウンターに座る五人。左からテリー、ヒゲの総帥、タッキー、冷泉、そしてジローという並びである。目の前にはテキーラが運ばれてくる、それを五人がぐいと飲み干す。カウンターにはハブとマングースが手術台の上で偶然出会ったように異様な緊張感が漂っている。


緊張と緊張の架け橋、冷泉がひと言だけ言葉を発する。


「ほな、殴り合い、しましょか・・・」


「ええっ!?もう!?」


一同が唖然とする。


後編に続く。


本日はアラタメ堂主催のボードゲーム大会がクントコロマンサで開催されます。どうぞ、みなさま奮ってご参加ください。


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by amori-siberiana | 2018-03-17 12:39 | 雑記 | Comments(0)

こんばんは、北濱にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサを版画家の柿坂万作と共同経営している、ヒゲの総帥こと阿守のブログです。


本日はノー残業・デーなる洒落たものであるが、そのようなことはなんのその朝礼の開口一番から残業を勧められるヒゲの総帥であった。やるべきことはすでにやったので、いつ頃に撤退しようかと様子を見ているのだが、どうにも先方がそれを許してくれそうにもない。そのうち機会もくるだろうとそれまでは雌伏するもいいさと高楊枝を気取ってはいるものの、その実、いいように利用されているだけかも知れない。まったく素敵な世の中である。


さて、日曜日のこと。


この日はいろいろと予定を間違えて認識していたこともあり、ぽっかりと何もすることがなくなった。風の噂に聞くところでは、小説家の平尾先生がなにやら大きな仕事の依頼を受けたとのこと。その一環として豚王ことタッキーにインタビューをしているとのことなので、ちょうど近くにいたヒゲの総帥は朝食がてらにインタビュー場所である喫茶店へ踏み込む。


ヒゲの総帥は星師匠と喫茶店へ到着する。確かに平尾とタッキーがいる。タッキーが「このシチュエーションはどういうことですか?なんでアモさんがここにいるんですか」と困惑気味に平尾先生へ訴える。「いや、阿守が近くにいるというから、喫茶店でインタビューをしている最中だと伝えただけだよ」と先生はいたって平静。ヒゲの総帥も「ということだ、タッキー。それ以上でもなければそれ以下でもない、どうぞ存分にインタビューされてくれたまえ」と目の前のサンドウィッチと深煎りのコーヒーを体内に取り込む。


お互いに背中合わせとなる席に座ったヒゲの総帥とタッキーは、側面の鏡越しに会話をするのだが、この光景はどこかスパイ映画によくある密談のワンシーンを想起させるものであった。


平尾先生はこのあと、しばらくしてから名古屋へ向かいシャチョーと呼ばれる男と会うという。その日は名古屋で一泊して、朝からシャチョーが指揮を執る有名ラジオ局にゲスト出演するとのことだ。先生が名古屋へ旅立つまでにまだ時間が少しあるので、店を移動して皆で昼食を摂ることにした。ヒゲの総帥は先ほどまで朝食を摂っていたのだが、インターバルもなしに昼食を摂ることになる。


居酒屋へ入る。平尾先生とヒゲの総帥は昼間から酒を頼み、そして酒の肴を頼む。車で来ているタッキーはノンアルコール・ビールを注文するが、ヒゲの総帥は容赦なくタッキーのグラスに日本酒を注ぎ込む。


「いや、勘弁してください。飲んで逮捕されたりしたら、えらいことになるんです」というタッキー。「そんなもの代行タクシーで帰ればよかろう」とヒゲの総帥は切り返すが、どうやら前日から駐車場に置きっぱなしにしているらしく、駐車料金もバカにならず代行タクシーの代金もバカにならないということなので、それは確かに無駄な金だとヒゲの総帥も理解を示して、タッキーのグラスに注がれたビールもどきと日本酒の混合液を自分で飲み干す。


この世で面白いこととは何か、についてそれぞれが論じ合う。タッキーがなにかいいことを言った気がしたが残念ながら覚えていないので、書けない。


いよいよ平尾先生の電車の時間が来たというので、先生を3割ほど送りだして残り7割は放置したままヒゲの総帥とタッキーは駐車場の方向へ歩き出す。なんせ今日一日は特に何もすることがないのであるから、こんな美味しい男を放っておくわけにはいかない。是が非でも離すものかと酔っぱらいのヒゲの総帥はタッキーにくっついて歩く。


タッキーの車に乗り込み、タッキーの家の駐車場まで随行する。そこからカラオケへ行くことにする、タッキーの案内のもとにカラオケ店を幾つか回り、ここがよかろうという場所に落ち着く。これまでノンアルコールで通していたタッキーもハイボールを2杯ずつ猛烈な勢いで飲み干し、一瞬にして10杯ほどのグラスが空になる。


タッキーとヒゲの総帥の酒の勢いは止まらないまま、5時間ほどカラオケ店で歌い続ける。お互いが歌った曲のタイトルでしりとりをしていくという趣向なのだ。くだらない発想のワリには普段は歌いもしないような曲を歌うことになるので、随分と盛り上がった。


「そろそろ、このへんで切り上げようか」とお互いが考えていたとき、ゲームセンス・ゼロの女ことアシムが合流するというので、場所を変えて飲み直そうということになる。ヒゲの総帥が北濱で一番好きなバーである、「ピンク&ガン」へ千鳥足で移動する三人。途中、せっかくだからツタの絡まる青山ビルにあるギャラリーへ行って、展示会の片付けをしようじゃないかと立ち寄ってみるが門が閉まっている。裏口をガチャガチャやってみるがどうにもカギがかかってビクともしない。


一向は潔いほど簡単に諦めてバーの階段を下りていく。すぐにアシムがやってきて四人で飲みだす、アシムが好きだという映画「セッション」について賛否両論となり互いの見解などを論じ合う。「いやー、あの緊張感がたまらないですね」というのはタッキー、「好きもの同士、勝手にやってろって感じだ」というのはヒゲの総帥。星師匠は双方の意見に耳を傾けながらニヤニヤしている。


「そうだ、アモさん、そろそろ僕のことを豚王と書くのやめてくれませんか」とタッキーはおもむろに自身への論評へ異論を唱える。確かにタッキーはライザップで専門のトレーナーについてからというもの、去年の夏から20キロ近くも痩せたとのこと、なるほどそろそろ豚王のレッテルを剥がしてもよかろうと、ヒゲの総帥は了承する。


「さらにですね、サラッと僕のフェラガモの靴のことをこき下ろさないでくださいよ」とタッキーのオーダーはやかましい。先日、ヒゲの総帥はアラタメ堂のイベントの宣伝のブログにて韓国の仁川空港にある60%OFFの微妙に型落ちしたフェラガモと書いたが、それは確かに全てタッキーの実話を基にしているのであった。ヒゲの総帥はそれを聞いてウイスキーを吹き出すほど笑い転げる。


「なんだ、そんなところまで読んでるのか?」とタッキーに訊くと、それはそうだと無言で頷くタッキー。


そろそろ酩酊も度を越してきた頃なのでこの辺で、と皆が腰を上げたとき冷泉からタッキーへ連絡が入る。どうやら水曜日にコロマンサへ来て欲しいとタッキーを誘ってるとのこと、「冷泉に今は阿守と一緒に飲んでいるとメールしてみな」とヒゲの総帥はいう。タッキーはそのままを冷泉へ送信する。


それから20分後・・・。


バーにいるヒゲの総帥の目の前には全身が黒ずくめの男、冷泉が座っている。


「あの、なんでもいいです。一発で酔えるもんを、ください」と珍しくシラフの冷泉はバーの女性店員に告げて、そこから立て続けにウイスキーをあおりだす。冷泉を加えて議論は白熱していくが、一体何の議論をしていたのかはもちろんのこと覚えていない。どうせ、ロクでもないことなのは明々白々である。


冷泉は自身の旅行土産として驚くほど美味い泡盛を持参してきていた。タッキーは泡盛が大好きだという、アシムなどは酒であるならなんでもいいという様相。しかし、ここで飲むわけにもいかず、一行はコロマンサへ場所を変えることとした。


コロマンサでは版画家の万作も交えての泡盛の試飲がはじまる。そのうち気がつけば冷泉の弟のジローも合流して、さらにはポーランド人とインド人もやってきて、皆で泡盛を試飲する。ウイスキーのように芳醇でオーク樽の香りが楽しめる風変わりな泡盛は皆から絶賛を受ける。


タッキーは流暢な英語で外国からの旅行者へ話しを振っていく。ヒゲの総帥にいたっては英語どころか日本語もヒアリングが煩わしくなっているのである。タッキーはジローの胸の筋肉をさわりながら、キャッキャキャッキャと終始楽しそうではあるものの、意味もなく本気でヒゲの総帥に尻を蹴りあげられる。ヒゲの総帥もタッキーに尻を蹴られる、冷泉はポーランド人とインド人に殴られて、ジローは兄貴から殴られる。


星師匠とアシムはその模様を、反転する地球の向こう側から見ているような顔で、笑みを浮かべながらながめる。まるで世界の終わりについて考えているように。


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by amori-siberiana | 2018-03-07 21:26 | 雑記 | Comments(1)

こんばんは、北濱にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサを版画家の柿坂万作と共同経営するヒゲの総帥こと、阿守のブログです。


この週末は気温がぐんぐん上がり、久しぶり、身体が陽光に照らされて汗が噴き出すという具合であった。ヒゲの総帥はクントコロマンサの経理など一切をすべて万作に返上したが、いきなり抜けては客足が遠のくということで期間を決めて共同経営の枠内に収まることとなった。


さて、この土曜日のこと。もちろんそれ以外の曜日でも多角経営の男が飛び込んできたりとか、ギャラリーの手伝いで翌日からとんでもない筋肉痛になったりとか、なんだかんだあったのだが、なんだかんだをそのままなんだかんだと書いていては今の時間が足りなくなるので流れ去るままにしておく。ひとつひとつを惜しんでいては、前に進めないのだ。それがいくら個人的に貴重であろうとも。


土曜日のこと。


店に海外アーティストを招聘する男たちがやってくる。アーティストといってもそんじょそこいらのアーティストではない、世界中で評価されていながらも日本での認知度がそうでないアーティストを選りすぐって連れてくるのがこの男たちの得意とするところである。そして特筆すべきはトラッド・ミュージックに偏っているということである。


トラッドというのは、つまるところ民俗音楽だと平易に考えていただいて結構。それ以外の捉え方もあるが、こんな凡愚なブログでトラッドのなんたるかを語るほど暇でもなければ、そのようなことをしても一文にもなりはしないので無駄だからだ。先日、ブルガリアン・ボイスの女性コーラス隊を日本へ来日させ、見事に大ホールでの公演を成功させた陰の立役者がこの男たちである。


ゲイのような格好をしているのがドイワ。ジョーダン・ルーデスのような白ヒゲを生やしているのが、オッガという名前の二人組だ。


ヒゲの総帥は若かりし頃、彼らの事務所へ乗り込んで海外のすごいミュージシャンと対決させろと直談判を申し出たことがある。もちろんアポイントなしで乗り込んだのであるが、そこから付かず離れずの微妙なお付き合いをさせてもらっている。


ゴガっという締まりの悪いガラス戸が開く、そこに現れたのは電気工事士のヤマトコと小説家の平尾正和先生である。もちろん、二人とも来客中のプロモーター二人組とは旧知の仲である。


今回もロシアの大物バンド、「オタヴァ・ヨ」を梅雨が明けた頃、日本へ連れてくるのでその折にはヒゲの総帥に宴会部長になってくれと彼らから要請が入った。ヒゲの総帥はロシアとのパイプが欲しかったので願ったり叶ったり、すぐ快諾することになった。しかし、ヒゲの総帥だけがウォトカを飲まされたのでは失神してしまうだろうことから、すでにその宴会へは冷泉も誘ってある。「わかりました・・・、全員、ぶっ倒したらええんですよね。ぐふふ・・・」と不敵な笑いを浮かべていたが、そのへんの細かいニュアンスのことはドイワとオッガには伝えていない。


しばらくすると、常連のガルパンの男もやってくる。アラタメ堂と学生起業家のダダヤマもやってくる、そしてゲームセンス・ゼロの女ことアシムもやってくる。


学生起業家のダダヤマは、33歳で独立した個人事業主であるドイワにいろんなことを相談する。オッガとヒゲの総帥はマニアックな音楽の話しで互いがカラシニコフ突撃銃を撃つかごとくに言葉の殴打、凄まじき白兵戦がはじまる。そこにマニアックな知識を持つ元音楽ライターのアラタメ堂も加わってくれば、ヤマトコも参戦してくる。


ダダヤマは今月中には自分の会社の名前を考えなくてはならないという。先日もアラタメ堂とヒゲの総帥に相談していたが、この二人の先輩がまともにダダヤマの悩みに取りあうわけもなく、ただただイジり倒されて笑いの種にされて終わった。


先日などは「清掃業なのだから、バルデラマという名前でどうだ」とヒゲの総帥がダダヤマにいう。


「バルデラマ・・・、いいですね。どういう意味ですか?」とダダヤマは至極当然なことを訊ねる。


「スペイン語で常に新しくって意味さ」と適当なことをいうヒゲの総帥。「バルデラマはいいですね」とダダヤマは感心することしきり。バルデラマが何なのかわかっているアラタメ堂はクスクスと笑いをこらえてウイスキーをあおる。


ダダヤマが「バルデラマ」という言葉をググってみたところ、出てきたのはモップのような印象的なヘアースタイルをしたコロンビア代表のサッカー選手が出てくる。「いやいやいや・・・、なんやこれ、もう!まともに考えてくれよ」とダダヤマは不機嫌にいう、アラタメ堂とヒゲの総帥はそのダダヤマの反応に吹き出す。


もちろんのこと、この日もダダヤマは来店早々からイジられ倒す。自らが考えた法人名を発表した途端にあれやこれやと矢継ぎ早に新案を出されて、パニックになる。そしてそのどれもが面白半分なのだから始末に負えない。そもそも相談する相手を間違えているのである。


ひとしきりダダヤマで笑わせてもらったあと、ヒゲの総帥はおもむろにドイワとオッガという二人の大先輩に話しをぶつける。


「そろそろ日本へ良質な音楽を輸入するばかりじゃなくて、良質な音楽の輸出に着手してみませんか」と。




https://www.harmony-fields.com/




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by amori-siberiana | 2018-03-06 22:01 | 雑記 | Comments(0)

こんにちは、北濱にある猫のひたいのように小さな店。クントコロマンサを経営するヒゲの総帥こと、阿守のブログです。


逃げる二月というが今年にしてもその逃げ様は相当な早さであった。もう気がつけば三月である、そしてそのうちに四月となるのであろう。ヒゲの総帥の好きな歌手の詩に「四月には皆殺し」というのがある、随分と物騒なことを朗々と歌い上げるのでなかなか愉快だ。


しぃ~が~つ~には~、みぃ~な~ごぉ~ろし~、うぉ~おおおお~♪


これをハイタッチ冷泉が歌えば絵になりそうであるが、あまり世間的に知名度のある歌手ではないので楽譜もなく、どのような伴奏をしているのか耳コピするのも面倒である。ヒゲの総帥は耳コピを苦手としている、コピーしてもコピーしてもどんどん原曲から遠ざかってゆき、しまいには一体これが何なのかわからなくなってしまう。それでも捨てるのは勿体ないので、そういった異物を自分の作曲と称して世間に発表していただけである。


さて、先日のこと。


ヒゲの総帥は夕方を過ぎて北濱のオフィスへ向かう。「おっ!総帥」と声を掛けてくれるのは偶然オフィスに居合わせた殿様のような笑い方をする副社長ばかりする男である。「これはこれは殿様ではありませんか」とヒゲの総帥は副社長へ挨拶をする。この互いを総帥や殿様と呼び合う二人のことを周囲は怪しく見ていたであろうが、そのようなことは北濱ではお構いなしである。


ヒゲの総帥はオフィスで簡単な事務作業を済ませたあと、パソコンを片付けて猫のひたいのように小さな店へ向かうことにした。細い階段をのぼり、ゴガっと音のする締まりの悪いガラス戸を開く。版画家の万作が昼行燈のようにぼんやりしている。


「万作さん、これまで八カ月のあいだですけれど、ご苦労さまでした。無事に店は立ち直りましたし、三月からこのお店を万作さんへお返しします」とヒゲの総帥は頭に筆を突き刺した万作に伝える。万作は嬉しさをかみ殺して寂しさを強調するような微妙な顔をするが、その複雑怪奇な表情にヒゲの総帥は笑いだす。


「これまで僕がやっていた経理なども全て万作さんにお返しいたします。それで三月分の家賃ですけれどこれは僕からの餞別のようなものなので返していただかなくて結構です」

「うーん、返せいうても全部家賃に払うてもうたし、返せんのですけどね」と苦笑をするのは版画家である。


「それと店にある釣り銭や仕入れのために置いているお金なんですけれど、これらもすべて差し上げます」


「うーん、今までの仕入れとか電気代とか払うたら残らんのとちゃいますか?」と神妙な顔つきを万作はするが、ヒゲの総帥はそれならそれでよいという。


版画家の万作とヒゲの総帥は握手をする。せっかくだからウイスキーで乾杯でもしないかとヒゲの総帥は万作を誘う、万作はショットグラスを二つ持ってきて、そこへスコッチウイスキーを注ぐ。二人はお疲れ様でしたと乾杯をしてぐっと酒を飲み干す。


酔っぱらって冗舌になった万作は自分が三階のアトリエで開発している、とんでもない発明がもうそろそろ出来上がりそうなのだと語りだす。これが完成すれば億万長者になることは間違いないのであると胸を張って述べる。ヒゲの総帥はそうだろうそうだろうと、適当に頷きながら拝聴している。そこから万作は自分がルンペンをしていた時代のことなどをご機嫌よろしく語りだす。ヒゲの総帥はこの版画家がなんとか店を助けてくれないかといってきた日のことを思い出していた。


「うーん、そう考えれば、ひとつだけ心残りがあるな」と万作はいう。


「ほう、その心残りはなんですか?」とヒゲの総帥は問う。


「そら、せっかく阿守さんもここでバーを経営するいうことになったんやから、商売のノウハウをワシから学んでもらたらよかったのにいうことですわ」と万作は気持ちよさそうに喋りだす。


「商売のノウハウを・・・ワシから・・・」とヒゲの総帥はマヌケのように万作の言葉を復唱する。


「そう、ワシも阿守さんにきちんと教えてへんかったからなぁ」と照れ臭そうに笑う万作であった。


一体、この男は何を言っているのであろうか・・・。とヒゲの総帥は怪訝に思う。


そこから万作は「ワシは色んな人から狙われている」という類の陰謀論を語りだすが、ヒゲの総帥はこの手の話題にはいつもウンザリしていたので聞いているフリをしてやり過ごしていた。ふと、自分のギターを持って帰りたいとヒゲの総帥は思った。それはギターが盗まれるとか壊されるとかそういうことではなく、ずっとここにいさせるのは憐れに思えたからだ。


しばらくすると、山の向こうからファラオがやってくる。そして常連の不思議な女もやってくる。ヒゲの総帥は常々ファラオをアイコン化してボードゲーム界の重鎮のようにしたいと考えていた。そして彼の存在感を大々的にアピールするデザインをゲームセンス・ゼロの女と考えていたので、すぐに「生ける素材が来たぞ」とゲームセンス・ゼロの女ことアシムを店に呼ぶ。そこからはひたすらファラオを被写体にしての撮影会である。ここに不思議な女のセンスも加わり、素晴らしい写真が幾つも撮影できたのである。


そんなファラオがアラタメ堂に挑戦状を突き付けるゲーム大会が3月17日(土)にここである。これは見逃してはいけないイベントなのだ。


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by amori-siberiana | 2018-03-03 15:02 | 雑記 | Comments(0)


北浜というビジネス街を独立させようと企む、ヒゲの総帥のブログです。
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