「アラタメ堂、その今風の髪形をやめてアイパーをあててみたらどうですか」


唐突なヒゲの総帥の一言に一堂は爆笑する。「僕の髪形はそんな今どきですか?」とアラタメ堂は苦笑しながらヒゲの総帥の提案には乗らない。「大体、今の床屋でアイパーとかパンチパーマをあててくれるところないから、それはそれで希少ですよ」と言葉を続けるアラタメ堂の主人。


不動産デザイナーの男はカラカラ笑いながら、自身が中学生のときすでにパンチパーマをあてている同級生がいたことを話し出す。ガルパンの男もそれを聞きながら、昔は梅田のナビオにナビオ族というのがいたということを教えてくれる、「ナビオ族!懐かしいですね」とアラタメ堂は大笑いする。ヒゲの総帥はナビオ族なるものは初耳だったので、それらが具体的にどのようなものであったのか聞き取る。話しは違うが、ナバホ族の伝統的なあやとりのテクスチャには日本のそれとはまったく違う異国情緒がある。


「お二人はどういう経緯でお知り合いになられたのですか?」


「ねこふん」目当てでやってきたいちげんさんの劇団員の女が口を開く。唐十郎の演劇を鑑賞した帰りにコロマンサに寄ったそうなのだが、ヒゲの総帥とは劇の話しやドキュメンタリー映画「ゆきゆきて、神軍」という共通項の話題が多く、それらの話しですでに打ち解けている。アラタメ堂やガルパンの男も仕事の付き合いがら劇などにも詳しい。不動産デザイナーの男は興味深そうに次の話題は何がくるのだとジンジャーエールを飲みながら、身を乗り出す。


劇団員の女のいう、お二人というのはアラタメ堂のご主人とヒゲの総帥のことである。


「ああ、ある女性が仲を取り持ってくれたのです。阿守さんと福田さん(アラタメ堂)話しが合うんちゃう?と軽い感じで」とヒゲの総帥は端的に説明する。ある女性というのはもちろんのこと宗教画のモデルの女のことである。


話しをしてみるとアラタメ堂とヒゲの総帥はすぐに意気投合した。とにかく世間を斜に見ているところ、ブラックユーモアが大好きなところ、普通の人が気にも留めないような余計な知識を遥かに広く、そしてとんでもなく浅く(本人たちは深いと信じている)持っているところなどである。つまるところ滑稽味が好きな二人なのである。


音楽の繋がりもあった。ヒゲの総帥がイケイケドンドンで音楽活動をしていた20代の頃、アラタメ堂のご主人も「ハングル・ライフ」というフリーペーパーを作る会社の創立メンバーとしてバリバリ働いていた。


ある日、まったくもって無名な自分たちのバンドをすぐ表紙にするようにとハングルライフへ殴り込みに来たヒゲの男がいる。彼がいうには、そうすることで必ず死に絶えようとしている音楽界を救うことになるのだそうだ。もちろん根拠などあるわけがない。当時、ハングルライフは大阪と東京に事務所があり、これは大阪の事務所での話しであったのだが、次の日にはそのヒゲの男は東京の事務所にも同じように殴り込みに来たのである。


もちろん言うまでもなくヒゲの男はこのブログの執筆者のことである。おかげさまで小さくではあるがバンドは雑誌に紹介されたし、そのあとハングルライフの社長のデラックスという男から伊丹空港での演奏の仕事をもらった。人の縁というのはいつどこで結び目を作られるのか、ほとほと解らないものである。


アラタメ堂は一連の事情を劇団の女に話しをする。へぇ、そういう経緯が・・・と納得する劇団の女、次に向き直って第二の質問が飛んでくる。


「お二人はどういう経緯でお知り合いになられたのですか?」


劇団員の女のいう、お二人というのは不動産デザイナーの忌部とヒゲの総帥のことである。


「ああ、ある女性が仲を取り持ってくれたのです。阿守さんと忌部さん話しが合うんちゃう?と軽い感じで」とヒゲの総帥は端的に説明する。ある女性というのはもちろんのこと宗教画のモデルの女のことである。


先ほど聞いたのと同じセリフが聞こえたことで、こちらもいちげんさんのパティシエの女はクスクスと笑いだす。以前からコロマンサが気になっていたのだが、どうにも一人で入る気にはなれなかったところを忌部から偶然にも連れて来られたのだという。店の前に到着した瞬間、「えっ!?ここ!?」と感じたのだと教えてくれる。


パティシエの女は近くにある「第六感」という店でずっと働いていたのだという。朝は5時に起きて夜は日が変わろうとする頃まで働く毎日という生活を送っていて、休日は何もせずに一日寝ているというのが常だという。ヒゲの総帥は第六感のデコポンのケーキは良いものであると偉そうに品評を述べる、パティシエの皆さんには努めてもっともっと酸っぱいのを作って欲しいとも嘆願する。アラタメ堂はそれなら梅干しでも食ってろとヒゲの嘆願を一刀両断する。


世間は今日から大型連休。ヒゲの総帥も役所勤め、アラタメ堂も会社勤め、唐突に差し出されたこれまでにあまり経験のない連休に、あたふたと戸惑うのである。


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by amori-siberiana | 2018-04-28 11:51 | 雑記 | Comments(0)

ヒゲの総帥のもとに裁判官の女から連絡が入る。


内容はこれこれの日にコロマンサへ出廷するようにとのことであった。ヒゲの総帥は要塞化した職場から離れて、一旦北濱のオフィスへ立ち寄り雑務をしてからコロマンサへ行く。


ゴガっという建付けの悪いガラス戸を開ける。


ヒゲの総帥は店全体に視線を送る。オルガン横の奥の席、その中央に裁判官の女がどしっと座り、その両脇をがっちりと醤油売りの女とアリスの女が固める。なるほど査問会の用意は万端であるという具合だ。


「おやっ・・・」と、ヒゲの総帥はいつもは自分が座っている席に見たことがある顔があることに気がつく。なんと、ルイという男である。こいつは驚いた10年ぶりに見る顔がそこにスーツを着てネクタイを締めて鎮座してるではないか。キューバで住んでみたり、世界中をあちこち放浪していた瘋癲(フーテン)の男が猫のひたいのように小さな店を訪れるとは思ってもみなかった。ヒゲの総帥は三人官女たちにルイを紹介する。


「今日は死ぬまで飲むぞ」という勢いの総帥をルイは「阿守さんも変わりませんね」と笑いながら手で制して、これから梅田で商談があるのだという。彼も今はヒューレット・(マザー)ファッカードというパソコンの会社で働いており、今日は出張で大阪に来ているのだとヒゲの総帥に説明する。偶然、近くに来たものだからそれならばと寄ってみたという次第である。


このルイという男は若かりし頃、ヒゲの総帥の家に乗り込んできた男だ。当時、ヒゲの総帥がやっていたワールドほにゃららというバンドの曲をラジオか何かで聴いて「これだ!」と思ったそうだが、そのバンドがすぐ解散をすることになり、「どうして解散するのだ!」と見ず知らずのヒゲの総帥の家に怒鳴り込んできたのだ。ヒゲの総帥が三人官女たちにそう説明すると、「そんな挨拶もなしで、いきなり行きましたっけ?」とルイは言うが、ヒゲの総帥はそのインパクトを忘れはしない。


なぜならカコフォニー・フォールズのドイワ会長に対して同じようなことを自分自身がしていたのだから、因果応報というのはこういうことかしらんと、ルイの登場によって腑に落ちた記憶があるからである。


とにかく変わった男なのだ。「彼は当時、ふんどしをはいていたのだ」と総帥は三人官女に語りだす。彼の出身大学が「ねこふん」の仕掛け人である、あのエイリアンと同じだということは、なんとなくすぐに解る。年齢・性差は関係なくどことなく同じ匂いを持つ両名なのである、といってもあの陸の孤島にある大学が人をそうさせるのか、またはそういう人が集まってしまう大学なのかはヒゲの総帥などには謎のままだ。


それはそれは鋭利に磨かれた知性と感性を自分だけでは消化しきれず、周囲にも容赦なく叩きつけてジハードしにくる男、それがルイである。


ルイは「また来ます」とヒゲの総帥と握手してキタへ向かう。残されたヒゲの総帥と三人官女はくだらない話しをダラダラしながら、ああでもないこうでもないと酔狂のままに論じ合う。


そこから湧き出された言葉は、コロマンサの開け放たれた窓から外に出て、しゃぼん玉のように夜に音もなく消えるのであった。


それにしても、バザエフ。あなたの燃えるような瞳は、どういう信念を持てば、手に入るのだろうか。


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by amori-siberiana | 2018-04-27 21:47 | 雑記 | Comments(0)

ボードゲームの大作「シヴィライゼーション」はどうなったのかとよく訊かれる。そういえばその日のことは多忙であると、かこつけて文面にしていなかった。


アラタメ堂のご主人はヒゲの総帥の言葉巧みな罠にはまってしまい、「シヴィライゼーション」というボードゲームを購入することになった。今のご時世、モノを買おうと決めてパソコンのボタンを押せば、カード決済で次の日にはその商品が届くというのが当然となった。ヒゲの総帥の若い頃などは、LUNA SEAのインディーズ版のアルバム「LUNA SEA」を買うために怪しげな通販専門のレコード屋へ電話をかけて、中学生の小遣いをブチ込んだ現金書留を怪しげな店へ送ったりして難儀であった。今では京都に住んでツイッターに晩飯ばかりアップしている旧友のらっきょも黒夢のインディーズ版をこっそり買っていた。


当時は大きくなったら髪を伸ばして化粧をするのだと意気込んでいたが、今となってはリンスやコンディショナーすら面倒くさがる、ただのおっさんになっているのだから、未来は面白い。そして困難だ。なにより危険だ。


さて、せっかく大枚をはたいて買ったゲームなのだからタンスの肥やしにするのは勿体ないということで、日時を設定して「シヴィライゼーションの会」なるものを北濱のオフィス「the ジンクス」で開催することとなった。


ヒゲの総帥とアラタメ堂はもちろん参加。さらにはピアノ工房の軍司、そして宗教画のモデルの女が加わることとなった。軍司にいたってはドイツのフランクフルトから帰国して、そのまま参戦するという強行軍である。宗教画のモデルの女は一見してボードゲームなどしそうにないのだが、案外こういった戦略系のゲームには一日の長があるのだと胸を張る。


ところがこのゲーム、生半可ではないのだ。まず、ゲームのセッティングに随分と時間がかかる。例えるならば将棋やチェスで駒を並べるようなことだと考えればよい。このセッティングに相当な時間と労力がかかるのだ。主催者のアラタメ堂のご主人にしても家でセッティングの練習をしていたが、あまりにも困難なため中座してその日は寝てしまったそうだ。ボードゲームが好きで好きでたまらない男すら睡魔へ引き込んでしまうという、ホメロスのオデュッセイアに出てくる人魚(またはセイレーン)の秀逸な描写に似た危うさを持つのがシヴィライゼーションである。


結局、アラタメ堂も仕事が忙しくなりシヴィライゼーションには手が付かず、そして当日を迎えることとなった。一堂が介したのはいいが、そこではサクっと他のゲームをすることで全員が合意したというまでである。気の毒なのは宗教画のモデルの女である。


「うそぉ~、せんの~。うち、一応ひととおりは勉強してきたのにぃ」と、らしくない意外な言葉を吐く宗教画のモデルの女をよそにアラタメ堂はせっせと「パンデミック」というゲームを用意する。このゲームはこのゲームで面白かった。世界に悪性のウイルスが蔓延するのを防ぐという参加者全員の協力型ゲームであるが、これはこれで軍司がやかましい。


ヒゲの総帥が自由気ままにウイルス退治に出かけようとすると、「おい、お前、お前はここに駒を進めろ。ウイルスを全滅させる」と軍司がいう。ヒゲの総帥は言われたとおりにする。そしてまたヒゲの総帥の次のターンとなり自由気ままにウイルス退治に出かけようとすると、「おい、阿守、次はここに進め。ウイルスを全滅させる」と軍司は人殺しのような顔つきで迫ってくる。協力型なのか脅迫型なのか解らないボードゲームであった。


結果的にシヴィライゼーションはまったくしなかった。今ではヒゲの総帥の上司の手元にあり、上司に説明書を熟読してゲームが楽しめるようにしてくれと頼むヒゲの総帥とアラタメ堂のご主人であった。


最近は軍司と会う機会が増えた。シベリアンなんちゃらという音楽隊から離れてから、何年も会ってなかったのだが、不思議なものである。


先日も軍司と飲みに行った。焼肉を食べたあとに「ピンク&ガン」というヒゲの総帥が行きつけのバーで飲む。ピンク&ガンは北濱では最高位のバーであろう、バーというよりも地下に潜むの宇宙事業団ベースキャンプのような雰囲気を持っている。革命の香りがほのかにするのだ。


そのままコロマンサへ行くと、難波でワインバーを経営するヤースケという男が飲み仲間を連れてやってくる。このヤースケとヒゲの総帥が会うのは久々だ。ヒゲの総帥とヤースケが一緒に遊んでいたのが今から13年ほど前のこと、「何歳になった?」とヒゲの総帥はヤースケに訊く、「30になりました」と答えるヤースケ。一瞬、年齢の勘定が混乱したヒゲの総帥であったがよく考える。そういえばヒゲの総帥とつるんでいた頃、ヤースケは17才であったのだということに気がついた。


27才の人間が13年経つと40才になるのに、17才の人間に13年足しても30才にしかならんのか!不公平だとヒゲの総帥は憤慨する。


そんなヤースケは小説家の平尾先生の生徒だったこともある。もちろんエロ小説ではない、ドラムの生徒だったのだ。


ヤースケのワインバーは難波にある。ヒゲの総帥は去年の秋頃こそっと店を訪ねたが、そのときは折悪く店自体が休みの日であった。


ヤースケと再会した後、ヒゲの総帥は冷泉に「連れて行きたいワインバーがあるのだ」とメールを打つ。


「はい!お願いします!楽しみです」と遠くにいるであろう冷泉から、快い響きが返ってきた。難波で飲んで、そして少し歩けばジロー行きつけで女帝マスターの気風が気持ちいい「ビッチ」がある。そこでまた飲んで、さらに少し歩けばキリギリスの店がある。さらにもう少し歩けばヘミングウェイがやってる「ツァーリ・ボンバル」がある。


歩けばどこへでも行けるものである。


写真は「ピンク&ガン」らしき店



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by amori-siberiana | 2018-04-27 20:33 | 雑記 | Comments(0)

ガシャン、ガシャン、ガシャン。


機械的な音ではあるが、それはリズミカルではなく不器用そうに響く。ヒゲの総帥と呼ばれる男は、一心不乱に膨大で圧倒的、そして淫靡で甘美な書類の束にむけてパンチで穴をあける。ヒゲの総帥がパンチで穴あけをするまでに紆余曲折あったのだが、それはまたタイミングのいいときに話すことにしよう。


ヒゲの総帥の新しい上司は訊ねる「どうして役所で働いているのか」と、ヒゲの総帥は「調査したいことがあったのです」と正々堂々と答える。「それはスパイのようなものなのか」と上司は答える、ヒゲの総帥は「つまり、そういうことです」とこれまたバカ正直に答える。上司は笑いながら「随分と頭が沸いていらっしゃるようで」といい、ヒゲの総帥の告白を真剣に取りあってはくれない。ヒゲの総帥も苦笑しながらガシャン、ガシャン、ガシャンとパンチ作業に没頭する。


さて、北濱にある猫のひたいのように小さな店クントコロマンサにおいては、6月の中旬まで「ねこふん」なるイベントに参画しており、いちげんさんが度々顔を出すようになってはいるが、版画家の万作が語るには「うーん、お客が来てもコーヒーの注文だけが多いんで売り上げにはなっとらんですわ」とのこと。今週のコロマンサは静かである、全身が黒ずくめの冷泉も東京でビジネスに専心しているのだから仕方ない。


さて、今日は「渡辺」について書かなくてはいけない。


「渡辺」というのはヒゲの総帥の故郷にある、うどん屋だ。ヒゲの総帥が小さい頃から母親に連れられて行っていたのが「渡辺」である。ずっと通い続けているうどん屋で、ヒゲの総帥のなかでは「うどん屋=渡辺」という認識であり、世の中には二種類のうどん屋しかないことになる。ひとつは「渡辺」。もうひとつは、それ以外である。


お出汁の味が豊かであるとか、麺にコシがあるとか、そんなことはどうでもいい。この味とともに思い出すことが多々あるのだ、喜怒哀楽、小さい頃から今の今まで変わらぬ味がそこにあることは無上の幸福であり、そこはヒゲの総帥にとって記憶の花束である。


死ぬほど貧乏だったときも渡辺、せっかくの休日なのにどこにも行けなかった悔しさをもって味わった渡辺、初めて骨折した日も渡辺。葬式も法事も渡辺、高校中退したときも渡辺、家出する決心をしたのも渡辺。渡辺という言葉は単なる名字の名詞ではなく、ヒゲの男にとってはヒゲを生やす前からの自分と向き合える、故郷のオベリスクなのである。


渡辺のためなら死ねる。渡辺を奪われてなるものか。我ら、渡辺に帰ろうではないかと、その胸中は少しだけエルサレムから追い出されたユダヤ人と通じるところがあるかも知れない。なのでどれだけヒゲの総帥に渡辺という知人ができて、気安く「ナベ」と呼ぶことがあったとしても、オベリスクのことを略称で呼んだりしたことはない。


渡辺は国道11号線沿いにある。道路向かいのほぼ正面には警察署があり、治安的には比較的素晴らしい立地にあるのだが、昼どきなどは駐車場(隣り合って二か所ある)が一杯になり、いろいろと混雑する。車の往来がひっきりなしの国道から駐車場に入ろうとする車と、出ようとする車がタイミング悪く鉢合わせすると、渋滞を引き起こしてしまいまあまあの混乱を招いているのを見かけるのだ。


そんな渡辺に、最近フレンチの巨匠が来た。巨匠といってもそんじょそこいらの巨匠らしきボンクラとは違う、とんでもない大物だ。連れて来たのはタッキーである。


元来、渡辺目当てではなく、軽くうどんを食べれるところというのでタッキーが巨匠をエスコートしてやってきたのだが、その巨匠が「日本でここが一番だ。こんな出汁は味わったことがない」と感激していたのだということをタッキーは嬉しそうにヒゲの総帥に教えてくれた。「アモさんが、渡辺、渡辺いうし、平尾さんに聞いても渡辺だというから連れて行ったんですけど、これが見事に大当たりでしたよ」とご満悦の様子。


「渡辺は出汁がいい」


事あるごと慣用句のようにヒゲの総帥の母親が言っていたことが、地球をぐるっと回って証明されたような気がして嬉しくなり、ヒゲの総帥は母親にすぐその話しをした。


母親は息子からの報告を聞き終えたあと、渡辺の真の凄さを語り始める。渡辺の出汁がいいのは解ったこと、店内がとにかく機能的で無駄が一切ないのであると母親は語る。


客が店に入る、目の前で大将がうどんを打っている。そこが肝心なのだと強調する。店主が客が入ってきたところをすぐ確認できるのだ、そして席に着座して注文する。注文を終えてコップに水をいれてそれをチビと飲む、そして次の瞬間には目の前には注文したうどんが出てきている。このスムーズな流れに渡辺の神髄があるのだと論ずる。


つい最近、母親は他のうどん屋へ行ったのだそうだ。店に入っても厨房が奥にあり店主の顔が見えない、客が来ているのか来ていないのか気がつかない様子であり、そのちんたらさ加減が気に食わず母親は何も食べずに店を出たのだという。


うどんという食べものが、その味わいかた、楽しみかたについて世間で極端に論じられるようになってからというもの、いつしかうどんというものは紋付き袴をはかされたり、十二単を羽織ったりさせられているような気がするのだ。


これは蕎麦やラーメンにはない気楽さが、うどんにはあった時代をよく知る人間のことばである。


写真は小説家の平尾先生のTwitterより、無断で転載。


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by amori-siberiana | 2018-04-26 20:12 | 雑記 | Comments(0)

アキラメ堂のご主人は多忙である。


というより多忙になったのだ、人には様々な状況があるもので、アキラメ堂も小遣い稼ぎをしなくてはいけなくなったのだという。そういう顛末なのでアキラメ堂のご主人も厭々ながらではあるが、大きな大きな会社へ乗り込むこととなった。


アキラメ堂のご主人はヒゲの総帥を飲みに誘う。どこかの店で落ち着いた状態で話しをして、そこからコロマンサに行きましょうということなのだ。以前から気になっていた店に入る。いつもは電柱に止まる鳩の群れのように大勢のサラリーマンたちで人だかりができている立ち飲み屋であり、入店できそうにないのだが、この日は幸運にもスペースがあるとのことで念願が叶う。


「僕は今日は生ビールからいきましょうかね!」とアキラメ堂は珍しくハイボールではないものを頼む、ヒゲの総帥もそれに乗っかり久々のビールを選択する。


いつもコロマンサばかりであるが、たまにはこういう違うところへ来て飲むのもいいものですねとヒゲの総帥が言おうとしたとき、アキラメ堂がヒゲの総帥をつつく。ヒゲの総帥は突かれた指先をみて、そこから次にその指が差す方を見る。指はヒゲの総帥を突いたあとでカウンターの向かい側を差し始める。スーッと目でアキラメ堂の指を追っていく総帥。


そこにいたのは、全身黒ずくめの男、冷泉であった。これではコロマンサである。


いきなりステーキという店があるが、いきなり冷泉というのもなかなかのものである。確か先日もえらく深夜まで冷泉とカラオケで飲んでいたのではなかったかとヒゲの総帥は苦笑する。このカラオケも最終的にはマイクなしの壮絶なものであったが、同行したタッキーと冷泉は念願の殴り合いを果たして、互いに何かを共有していた。ヒゲの総帥はこの殴り合いのどこかに、フランスの哲学者メルロ・ポンティの香りを感じるようになっているのだが、多分勘違いであろう。


先日も地下鉄のなかでキンタマと陰毛の話しを延々としゃべる男の声がするので、どんな奴なのだろうと電車のガラスの反射越しに語り部を見てみると、黒ずくめの冷泉であった。


とにかく四月は冷泉月間というべき確率で冷泉と遭遇するのである。


「つ、次で、ハイボール、何杯目ですか・・・?ぐふふ」と冷泉は店のスタッフに訊く。「そうですね、次で7杯目ですかね」と店のスタッフは快活に返事をする。「そしたら、もう一杯ください」と滑舌悪くオーダーしたかと思った瞬間、冷泉の目は見開く。そしていきなり一大決心を相手に述べるかのようにハッキリしたトーン高めの声で冷泉はこういうのだ。


「(ウイスキーが) 濃いめの!!」


ヒゲの総帥とアキラメ堂はその様子に失笑しながら同じようにハイボールを頼む。そのまま二人はコロマンサへ一旦立ち寄ったのち、冷泉の弟のジローが行きつけだというワインバーへ向かう。もちろんそこにも冷泉はいるのである。ヒゲの総帥はワインをたしなむ、いつしかドローンを飛ばす男たちもやってくる。常連の不思議な女もおり、ジローも合流してくればいつしか北濱のいつもの夜のようになる。


アキラメ堂のご主人はその多忙を根拠に一時的にはイベントを休むという。ヒゲの総帥は賛成であった、これまで毎月のようにコロマンサでイベントを企画してくれたアキラメ堂の主人に対して店側として至らない部分が多々あったのだが、それでも継続して店を賑やかにしてくれたアキラメ堂のご主人には頭があがらない。


冷泉、アキラメ堂、そして常連の不思議な女と、ヒゲの総帥が店を立て直すにあたって協力なサポートをしてくれた歴々と並びながらいただくワインは、どこの貴族の畑で収穫されたブドウよりも生き生きとした旨味を感じた。ヒゲの総帥は酔っぱらいながら、もうひとつのアキラメ堂主催のイベント「北浜人狼」をファラオに引き継がせてみたらどうかと提案する。「ファラオ?いつも初日に吊られるだけの人にですか?彼、人狼にあまり興味なさそうですよ」とアキラメ堂は笑いだす。


ファラオというのは山の向こうで談合チンコロクラブという自身のボードゲームイベントを主宰する男である。初回にコロマンサへやって来たときに人狼ゲームへ参戦し(または、させられ)、毎ゲーム初日に村から排除されるという苦行に遭遇した男である。誰が人狼なのか議論をしてもラチがあかないから、とりあえずファラオを吊っとこか。という結論へ向かわせるように民衆の集団心理を巧みに操り、見事、道化を演じたファラオの手腕は素晴らしいものであった。


もし、あれがファラオによる作為的で心理的な集団誘導でなかったとすれば・・・、そんなのただのイジメである。


ヒゲの総帥はファラオに人狼を引き継いでみないかと、北濱に縁もゆかりもない、もっといえば会場となる北濱のオフィス「the ジンクス」に来たこともないファラオにメールを送る。


回答はこうであった。


「なんで僕に振るんですか!?」


エジプトの言葉に修正するとこうなる。


【لماذا تسمح لي بأخذ لعبتك؟】


文字の起伏や形状とは関係なく、どうやらファラオに脈はなさそうである。つまるところ、ヒゲの総帥はゲームセンス・ゼロの女と一緒にファラオをモチーフにしたチラシを作りたくて作りたくてたまらないだけなのだ。



アラタメ堂の挑戦状の再開を皆で待とうではないか。ありがとう、アラタメ堂のご主人。お疲れさまでした。



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by amori-siberiana | 2018-04-22 20:00 | 雑記 | Comments(0)

猫ふんじゃったなギャラリーたち VOL.10


こちらを通称で「ねこふん」という。


ねこふんというのは、猫をテーマにした展覧会をギャラリー合同で開催する大阪の猫まつり。個性的な23の猫展のなかに我らが北濱クントコロマンサも参加させてもらっている次第だ。


首謀者のエイリアンのギャラリーはもちろんのこと、ツタの絡まる青山ビルの一角を占めるギャラリー「遊気Q」も参画しており、自称302才のオーナーも握り飯を握る女を招聘したり、レトロ歌謡のポッポーず♪を招聘したりと忙しそうである。


クントコロマンサの壁画は「ねこふん」ということで、柿坂万作画伯の筆により猫が婆様と一緒に描かれている。ここでインスタ映えを狙うもよし、殴り合いに巻き込まれるもよし、猫じゃ猫じゃとおっしゃいますがと歌いだすのもよし。この期間中、我々は猫の手先となるのである。


詳しくは


https://winfo.exblog.jp/29697688/


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by amori-siberiana | 2018-04-22 13:04 | イベント | Comments(0)

ガシャン、ガシャン、ガシャン。


機械的な音ではあるが、それはリズミカルではなく不器用そうに響く。ヒゲの総帥と呼ばれる男は黙々と書類に番号を自動回転式のスタンプで刻印していく。「役所というのはハンコを押すだけの仕事」とあきれ顔で語っていたのは役所勤めを一度もしたことのないヒゲの総帥の母であったが、なるほどそのとおりだなと感じる。この仕事をナンバリングという。


ところがヒゲの総帥はこの単調な仕事を嬉々としてやっている。もちろん満面の笑みを浮かべてという気色の悪いものではないが、彼は彼でそれなりに楽しんでナンバリングをしている。ガシャン、ガシャン、ガシャンという音は事務所内に響き渡る。


ヒゲの総帥がナンバリングの仕事をもらうまでには紆余曲折あった。4月の第二週目であったと思うが、とことん退屈な仕事の手伝いをさせられていた。自身の部署における仕事が比較的早くに片付いたので遅れている部署へ応援にいったのだが、それは地獄のような単調作業であった。ヒゲの総帥は相棒のテッドと半分眠りながら仕事をして、終業時間を待ちわびるというものであった。


一念発起、「このままではいかん、地獄はいつまで続くのだ、生きる意味は?」とヒゲの総帥は思い立ち、遅れている部署の責任者に一体これはどうなっているのだと聞く。聞きたいことは三点だけであった。


この作業があとどれくらいあるのか。

この作業のデッドラインはいつなのか。

この作業の全体における重要性はいかなるものか。


返ってきた答えは①については絶望的、②については残り4日、③については重要というものである。ヒゲの総帥は上司に「それならば必ず期日内にしあげてみせるので、この仕事に関しては任せて欲しい」と偉そうなことをいう。気前のいい上司は「やれんの?」と苦笑しながらヒゲの総帥を見る、ヒゲの総帥は「そちらの部署からこの仕事における応援の人員を割くことはできますか」と問うてみるが、「その余力はない」と言われる。


自分のデスクに戻ったヒゲの総帥は隣に座る相棒のテッドにいう、「我に余剰戦力なし、とのことだ。僕たちだけで絶望に立ち向かおうではないか」。百貫デブのテッドも苦笑いしながら「延々とペカらないジャグラーを回し続けるようなもんですね」と元パチンカスだった経験に基づく独特の表現で呼応する。


聖人でもない限り、いつか花よ咲けよと何もないアスファルトへ向けて水をやり続けることはできないだろうが、それに比べればまだ光が残されているものであろう。


おもしろいもので、そこからは仕事が楽しくて仕方がなかった。仕事でやることは全く同じなのだが、自身が戦局の真っただ中にいながら仕事をするのと、ただ訳も分からず仕事をしているのではその意識に数光年の差がある。意識が高くなれば自然と仕事のプロセスは良い方向へ流れる、結果的に打ち捨てられかかっていた重大なミッションは見事に達成されることとなった。終わったあとは疲れ果ててブログを書く気になどなれなかったし、毎晩寝ながらでも仕事のことが夢に出てくる有様であった。


それが発端かどうか知らないが、達成した次の週のはじめにヒゲの総帥は異動を申し渡されることになった。その部署は訊くところによると随分と困難な状況に陥っているという。「阿守さん、先週はご活躍ありがとうございました。そこでご相談なのですが・・・」とこれまで話しをしたこともない管理統括の上司から言われて、その場で異動を打診された。毒を食らわば皿までもが信条のヒゲの総帥は異動命令を快諾をした。そして異動先での結果次第での昇進についても打診される。上司、上司といって一体どこの誰が上司なのか文面ではわからなくなるであろうが、ヒゲの総帥は途中参加の一番の下っ端なので周囲は同僚か上司しかいないのである。


異動は23日の月曜日からというので、それまでにいろんな仕事をして臨機応変の感覚を磨いておきたいのだとヒゲの総帥は自身の部署の「魔女」といわれる上司に相談する。そして休憩がてらに与えられた仕事がナンバリングであったというわけである。


ガシャン、ガシャン、ガシャン。


膨大な書類をナンバリングしてファイリングしたあとヒゲの総帥はデスクに戻る。



「非常に意義のある仕事であった」とヒゲの総帥は誇らしそうな顔でテッドにいう。「何がですか?」とテッドは間抜けな顔をする。「テッドは入定(にゅうじょう)という言葉を知ってるか?」とヒゲの総帥は間抜けな顔に構わず話しを進める。テッドは存じ上げないと答える。


「即身成仏するために、つまり、この身のままで仏となるために密閉された空間に進んで僧が入っていくのだ。入ったが最後、もう二度と生きて出ることはないという覚悟を持ってね。それが入定という行だ。そして密閉された中でお経を読みながら、鈴を鳴らす、つまり死ぬまでね」。テッドはふんふん言いながらヒゲの総帥の話しを聞いている、話しは続く「鈴が鳴りやんだとき、入定した者は仏となったというわけだ」とヒゲの総帥は語る。


「へえ、そんなんがあるんですか。それが、ナンバリングの仕事と何の関係があるんですか?」と当然のことをテッドは聞き返す。「テッドも勘の悪い男だな。僕がナンバリングをする、その音が事務所内へ響き渡る、すると気にするしないに関わらずとも、ああ、阿守は生きているのだなという全体へのメッセージになっているということを言いたいのだよ。行政のクソ退屈極まりない仕事からでも、それ以外の意味合いも見いだせるのだということを言いたかったのだ」と、やや迂遠な説明をする総帥。テッドは「そんな大仰な・・・」と苦笑をする、ヒゲの総帥も自分で言っておきながら釣られて苦笑する。


「付け加えるけれど、僕はナンバリングの仕事は死ぬまでに一度はしてみたいと思っていたのだ」と総帥は胸を張る。「ほう、その心は?」とテッドも仕事の手を止めて聞いてくる。


「うん、テッドのように海外旅行なんてクソ食らえの人間には解らんだろうが・・・、外国へ行く際にはまず入国手続きというものがあるのだ。何をしにこの国へやってきたのか、どこで泊まるのかなどを役人から質問される。そして予定調和的にパスポートへスタンプを押される」と諭すようにいう。


「それくらい知ってますよ、失礼な」とテッドは不機嫌そうである。そのやりとりを横耳で聞きながら隣の席の女は思わず吹き出す。


「まず、飛行機から降りて空港内で入国審査官に指で来いと呼ばれ御前に行く。そこから自分のパスポートを丁重に差し出すだろう。一連の質疑応答のあとパスポートにスタンプがガン!と押されるわけだが、それが海外は驚くほど雑なのだ。その良い意味で雑、悪い意味で雑、しかしながらそんな感じでスタンプを押された瞬間、自分は確かに日本の外へ出ることができたのだという幸福感が全身を貫くのだ。日本では絶対にあり得ないというセンスで乱雑にスタンプは押されることで、世界の広さと多様性を感覚的に知るというわけだ。」


まるでポスターを貼りまくって世界一周の船旅をしてきた誇大妄想の田舎者という目つきで、ヒゲの総帥は大いに両手を広げて語る。


「それで実際に自分も入国審査官のつもりでナンバリングをしてみたわけだが、どうにも丁寧に押してしまう。上下のラインであるとか左右のバランスであるとか整いすぎて動きがない。動きがないと面白みがない。面白みがないということは説得力と魅力がないということだ」とヒゲの総帥は説明する。


ちょうど昼の休憩時間がやってきたので二人は席から離れてセキュリティ・チェックをしたあと事務所から退出して長い廊下を歩きだす。歩きながら話しは続く。


「次は外国っぽくしてみるかと雑にナンバリングしてみるんだが、そうするとどうにも書類に押されるスタンプは作為的になってしまう。狙ったボール球という具合で勢いがない、そして作為的な雑さほど格好の悪いものもない。つまるところ、そのスタンプを押す仕事を何万回もこなすことによってようやく得られる境地があのパスポートへのスタンプなのだなと確認することができたという次第だ」とヒゲの総帥はテッドに説明する。「そこまで前向きな気持ちでナンバリングする人も珍しいでしょうね」とテッドは笑う。


「でも、役所でのナンバリングと入国審査官ではそもそも違うのでは?」とテッドは当たり前のことをいうがヒゲの総帥は平然として「手をあげて、振り下ろす。刻印するという意味では同じことだ。仕事は違えど行為としては同じだよ。仕事は社会性を主体とするが、行為はそれ以前のものだからね」と自己の極端な達観見識を述べるヒゲの総帥。


一昨日の金曜日、ヒゲの総帥はテッドといつものように並んで仕事をする。仕事時間の半分くらいはヒゲの総帥が延々と職場をネタにしたブラックジョークを畳みかける、テッドは「横隔膜が痛い・・・」と腹を抱えてずっと笑う。いつもの光景である。


終業時間が終わっても二人は仕事をする。


「一時的な異動ならいいんですけどね」とテッドはヒゲの総帥にいう。「董卓のようなテッドをここに残していくのは危険極まりないが、仕方あるまい」とヒゲの総帥はいう。「なんてこというんですか、失礼な」とテッドはいう。このテッドというデブが隣にいなければ、ヒゲの総帥の仕事への理解度は全然おぼつかないものであっただろうと思う。とにかく仕事はできるが、隣でよく眠る男であった。


ヒゲの総帥はニンマリしながら右手をテッドの前に差し出す、「これまでありがとな」。


テッドもニンマリしながらヒゲの総帥の手を握る、「こちらこそ、あちらでも頑張ってくださいよ」。


最後の最後にやっと互いはいつのまにか友人であったのだと確認できた。


世の中はいろんな紋様で溢れている。


アルゼンチンの洞窟にある紀元前9500年頃の無数の手。人類の黎明期に、人々は時代の足跡を絵で洞窟に残した。抽象的であれ写実的であれ、その絵は描き手にとって意味のあるものだった。それはアルゼンチンだけではなく、スペインもそう、アフリカでもそう。


その手たちはこう言っている


「わたしたちはここにいた!」と。



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by amori-siberiana | 2018-04-22 12:37 | 雑記 | Comments(0)

大正時代に竣工したツタの絡まる青山ビル。そこの一画には自称302才の女が経営するギャラリー「遊気Q」というのがあり、ヒゲの総帥は何を買うでもないのだがよく足を運んでいる。つい先日まで外壁工事をしていた模様でツタを外から見ることはできなかったが、いつの間にか工事は終了したようで今では人間の血管のように伸びるツタの絡まり具合を眺めることができる。


今は革の鞄作家と帽子作家とが展覧会をしており、ヒゲの総帥も立ち寄ってきた。取るに足らない話しをしながら、キシリトールのガムを3個ほどつまんで一気に口に入れるヒゲの総帥。くちゃくちゃとクロマティのようにガムを噛んでいると、奥歯が欠けた。


さて、軍司と共にカコフォニー・フォールズのドイワ会長を訪ねたヒゲの総帥。


今年のカコフォニー・フォールズは随分とヒゲの総帥にとって旨味のあるミュージシャンを招聘している。先日のブルガリアン・ボイスの公演も然り、6月にはロシアの大物ミュージシャン「オタヴァ・ヨ」、そして10月にはなんといってもエストニアから「トラッド・アタック」を連れてくるのである。このトラッド・アタックというバンドの勢いといったらとんでもないものである。エストニアで日本料理レストランを経営するマークからもトラッド・アタックは要注意だと警鐘のような情報を仕入れていたヒゲの総帥、これは嬉しくてたまらない。


今日は軍司と一緒にドイワ会長の頭のなかをのぞいてみたかったのだ。


玄関を開けるとキッチンへ通される、キッチンにはすでに料理が並んでいる。今日は相方のオガは不在とのことである、とにかく何か飲むものを出してくれとヒゲの総帥はドイワ会長に催促する。出てきたのは真っ黒いエストニアの子供でも飲める酒だ。


「子供でも・・・飲める、酒?」とよくエストニアの法律を知らないヒゲの総帥は注がれた真っ黒い液体を飲むが、これが驚くほど不味い。ところが軍司に限っては「いけるな」と感心したように飲んでいる。この男と味覚の面で合致した記憶はこれまでの四半世紀の付き合いにおいても、あまりない。


ヒゲの総帥はもっと飲める酒を出せとドイワ会長をせっつく。スミッチという名の女がスープと共に日本酒を持ってくるので、ヒゲの総帥は日本酒をなみなみとグラスに注いで飲みだす。次にビールが出てくるので、グラスにビールを注いでそれを飲み干す。テーブルの上にワインがあるので、ヒゲの総帥はさっさとそれを開けるよう無遠慮にドイワ会長へ催促する。


赤のワインが開栓される、ヒゲの総帥は一口飲む。「なんだこれは、とんでもない安物だな!」と一喝してワインの瓶を取り上げて、ヒゲの総帥はマラカスのようにガシャガシャと瓶を振りだす。ドイワ会長は「めちゃくちゃ失礼やな」と苦笑して、軍司もその光景に大笑いをする。ドイワ会長と軍司は飲まずに何やら話しをする。


ヒゲの総帥は到着早々に飲み散らかして早速、泥酔状態になりフローリングの床に寝だす。メリッサという小さい女の子がやってくる、ヒゲの総帥は肩を叩いてくれと偉そうにいう。メリッサはとんとんとヒゲの総帥の肩を叩いては、すぐに逃げ出す。スミッチが布団とリクライニングソファをキッチンへ運び込んできて、どっちにするかをヒゲの総帥に訊く。


「死ぬなら確実に布団の上がいい」とヒゲの総帥は布団を敷いてもらい熱したヤカンのようになった顔のまま目をつぶる。すぐにガーガーといびきをかきだす。気がつくといつの間にかゴッドテールという名の男が論議に混ざっている、ドイワ会長は自身のビジネスの方向性などを軍司に話す、ゴッドテールはそれらをジッと聞いている。「ゴッドテール君か・・・、これは賢い人間の話しの聞き方だな」とヒゲの総帥は急に起き上がり議論に混ざる。


ドイワ会長は自身が比較的最近においてコロンビアの首都ボゴタへ行ったときの話しをしだす。


・・・。


話しの内容を忘れた。


ヒゲの総帥が一生のうちで一度は生で聴きたいと思っていたブルガリアン・ボイス。その公演を偶然にも主催していたのがドイワ会長一派であり、公演ホールにて数年ぶりの再会であったがその変わらぬ姿勢がヒゲの総帥は嬉しかった。


6月のオタヴァ・ヨ。そして10月、飛ぶ鳥を落とす勢いのトラッド・アタックは必見である。


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by amori-siberiana | 2018-04-09 19:31 | 雑記 | Comments(0)

寒い日が続いている、北濱にも冷たい風がヒューと音をたてて人々を襲う。堺筋沿いに植えられた木々はザワザワして、建設途中のタワーマンションやホテルなどは寒中にそびえたち、それらは皆一様にうつむいて悲しそうにも見える。


先日のこと、ヒゲの総帥は職場から退庁ののちすぐに北濱のザ・ジンクスへ向かう。今週はひどくつまらない仕事を延々とさせられた、これほどまで自分の名字を何度も何度も書かされる仕事が世の中にあるものかと、相棒の百貫デブのテッドに苦言をもらす。


「こんなのは人間性の否定だね。ほら、旧ソ連のKGBがやっていた拷問とよく似ているじゃないか。自分の名前と住所とパスポート番号だけを延々と繰り返させるアレと同じだよ。文明人がすることじゃない」と毒を吐く、テッドはそれを隣で聴きながら滑舌の悪い口調で「まあまあ、それはそうですけど」と苦笑をする。


ヒゲの総帥とテッドは自分たちの仕事をさっさと終わらせているので、他の部署の手伝いに回された一週間なのだが、ここがホントに酷い。雑草を抜いて、そしたらまたその雑草を植えて、またその雑草を抜いて・・・というような仕事をしているのだ。断言しよう、これを三カ月も続けてやればヒゲの総帥の頭はパーになるだろう。役所仕事の闇は随分と深そうである。自分たちの楽しい仕事を続けるには、その仕事を早く片付けるのではなく、だらだらと調整しながら処理していくのが一番頭のいい方法だということが身に染みて理解できるのだ。


とにかく散々な目にあった一週間であった。いくら社会経験だとしても我慢ならない時間を過ごしたような気になる。


最初はそうでもなかった。他部署への助っ人を頼まれて、ひどくつまらない仕事を与えられたときでも「こういう単純作業を延々と繰り返すことも肝心だ。禅の世界に只管という言葉があるが、まさにこういうことさ」とヒゲの総帥はテッドにいう。テッドは「そんな言葉があるんですね」と云々と頷きながら左利きの手で書き物をひたすらする。「テッドのように前途暗く、ヘッセの小説でいうところの車輪の下敷きになっているような男では、禅の世界はわかるまい。そもそも座禅なんか組めん体つきじゃないか」とヒゲの総帥はえらく超然とする、「なんてことを言うんですか、失礼な」とテッドは反論しながら、やっぱり左利きの手で書き物をしている。


ところがこの超然も二日目になると意気消沈して、随分とアホらしいことをしているように思えてきたのであった。自分にしたいことがないとき、自分が生きていくうえで暗中模索なとき、こうした単純作業をこなすのは心的にも大きな功績を呼び込むこともあるのだが、ヒゲの総帥はどうやら現状はそうではないようである。


ジンクスに到着する。


「いやはや、退屈な仕事をしてきました」とヒゲの総帥はオフィスにいたプロデューサーのカナガワ君に吐露する。短く整えられて照明の具合によっては銀髪にも見える頭部を持つカナガワ君は「それで、いつまでやられるつもりなんですか」と目を細めて笑いながらヒゲの総帥に訊いてくる。ヒゲの総帥はそれから陸サーファーのディエゴの現状などをカナガワ君から教えてもらう。ディエゴは要領の悪い若者なのだが、愛嬌があるのが良い。要領というものは人から教わることができるが、愛嬌は誰も渡してくれなければ、そんじょそこいら道端で拾うことも買うこともできない。ところが愛嬌だけでは生きていけない世の中なので、ディエゴはカナガワ先生のところで現在、修行中なのだ。


ヒゲの総帥はディエゴの師匠と話しを終え、ジンクスの前に停められた車に乗り込む。そこから日本と北欧をなんとかして無茶苦茶にしたい男ことドイワの会社「カコフォニー・フィールズ」の本拠地へ向かう。車を運転するのはピアノ工房の軍司である、軍司は明後日からドイツへ出張とのことだ。


車内で「ミュンヘンか?」とヒゲの総帥が問うと、「いや、フランクフルトやねん」と軍司は返答する。「確かに国際空港もあるしな、フランクフルトなら合点がいくな」とヒゲの総帥はいう、「お前、フランクフルトでおったことあるん」と軍司は運転しながら訊く、「うん、ある。ロクな思い出がない。女性からファック・ユーと言われたよ」と不穏なことを平気でいうヒゲの総帥。軍司はガハハと豪快に笑いながら車は高速道路に入ってゆく。


「そういえば・・・」とヒゲの総帥は思いついたように口を開く。


「軍司、キイデヤンスという会社を知ってるか」とヒゲの総帥は続ける。軍司は「知ってるで」と笑いながら答える。


この「キイデヤンス」という会社は大阪では少し知られた企業なのである。もちろん、「株式会社 いいでやんす」ではない。いいでやんすはとんでもない零細企業だが、キイデヤンスはことごとく若い社員が年収2000万を叩きだすことで有名な会社である。ヒゲの総帥はアラタメ堂やミカン爆弾の男たちからキイデヤンスのことをチラホラ聞いていたが、それはそれは随分と特異な会社であるのだそうだ。


キイデヤンスのことをよく知る軍司は笑いながら「お前、キイデヤンスの車を見たことあるか?」と訊く、「まだ見ない」とヒゲの総帥は答える。「そっか、お前のおる北濱辺りにはキイデヤンスは出没せんかも知れんけど、こっちはよう見るで」という軍司、ヒゲの総帥は話しを聞かせろと目でせっつく。軍司の話しは続く、「あいつら秒単位で会社に行動を管理されてるから、キイデヤンスの車はいつも、かっ飛びやで」とグフフと笑いながらヒゲの総帥にその模様を教える。


この「かっ飛び」という表現がツボにはまったヒゲの総帥は腹を抱えて笑う。なるほど、「かっ飛び」以上に相応しい言葉はなさそうだ。


いつしか高速道路を下りて車を走らせると、外見がヨーロッパ風の家が増えてくる。


その中のひとつに例の「カコフォニー・フィールズ」が確かにあるのだ。とにかく、ヒゲの総帥などがプラネタリウムにある大型投影機械などを自由気ままにさわって遊び呆けられたのは、この会社の頭領が底知れぬ変人であったからであろう。



後編に続く。



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by amori-siberiana | 2018-04-08 19:51 | 雑記 | Comments(0)

再三再四、なにかあるごとにブログへ登場する流浪のウェブコンサルタント、その名をアラタメ堂という。最初の頃はアキラメ堂とかデタラメ堂とか呼ばれることもあったが、今ではアラタメ堂という屋号にて絶大な人気を得ており、最近は出張イベントもこなす男がまたコロマンサに参上する。


今回のお題は人斬りならぬ大喜利。冷泉が来れば大喜利でも人斬りになろうが、それはまだどうなるのかわからない。


以下、アラタメ堂からのメッセージをご紹介。



ハロー。ワハハハハ!ワハハハハ!アーッハッハ!


私がアラタメ堂だ。君たちがその不確定な人生のなかで確定申告に急いているとき、私は優雅に何かしらのポワレを食べている。君たちがその限られた可能性しか残されていない人生において辛酸を舐めているあいだ、私は優雅にやっぱり何かしらのポワレを食べている。


七転八倒とか七転び八起きとかいうだろう、要するに七回目に倒れたあと、どうするかなのだよ。愚かな奴はそこで焦るのさ、鈍い奴は倒れたことにすら気づかない。私という人間がプリンを好む理由もその辺にある。プリンというのは哲学なのだよ。


目の前に大きなプリンがひとつあるとするだろう。そのプリンをどうするね。プリンの周りには無数の人間たちが乞食のように群がっている。誰もがそのプリンを自分は他の人間より多く食べたいと願っていると仮定しようじゃないかね。どうやればひとりひとりが最大の満足を得られるようになるのか考えてもみたまえ。


そう、解決方法はたったひとつさ。プリンを切り分ける役の奴が最後にそのプリンを取ればいいのだよ。切り分ける役の奴というのは、自分だって損をしたくない訳なのだから、おのずと正確無比に平等にプリンを切り分けるだろう。つまり、その役を誰がやるのかって話しだよ。ボードゲームにはそれが全て詰まってるというわけさ。聞け、愚か者たち!!これから大事なことを話すからな。ありがたく正座しながら読むのだ。


ひらめきと発想力で勝負!
大喜利系ゲームで大笑いしよう

北浜にあるカフェ&バーの昭和レトロな雰囲気のなか、ほろ酔い気分でアナログゲームに興じるお気楽イベントです。今回の特集は「大喜利」。絵を見てイマジネーションを働かせたり、キーワードから連想したり、ユニークなしりとりやカルタに挑戦したり。
簡単なルールですぐに盛り上がれる大喜利系ゲームで楽しみながら言葉のセンスを磨きませんか!?


【特集企画】

◆空白を埋めるベストな回答は?「私の世界の見方
◆不思議なイラストから言葉を紡ぐ「ディクシット
◆英語禁止!日本語でどこまで言える?「ボブジテン
◆絵柄を重ね合わせてお題を伝える「ピクテル
◆話しているのは何の体験?「黄金体験
◆最初と最後の1文字でしりとり「ワードバスケット
◆漫画のセリフでカルタ遊び!「ヒットマンガ
◆お絵描きと伝言ゲームをミックスした「テレストレーション」など

◎厳密には大喜利じゃないゲームもありますがご容赦を!

【ボードゲーム・ラインナップ】

◆協力系の「パンデミック」「HANABI」「コードネーム
◆対戦型の「バトルライン」「TOKYO HIGHWAY」「ガイスター
◆ブラフ系の「スカル」「ババンク」「ごきぶりポーカーロイヤル
◆パーティーゲームの名作「なんじゃもんじゃ」のほか、
◆「トロイカ」「ボトルインプ」「ペンギンパーティー
◆「犯人は踊る」「コードネーム」「ナインタイル
◆「ブックメーカーズ」などの人気ゲームでも遊べます!

もちろん大人気の人狼もやります!!

ルールは簡単なものが多いですが、きちんとご説明します。
未経験者、初心者も安心してご参加くださいね。

19時スタートですが、閉店迄なら何時からでも参加OKです!

北浜のビジネス街にある、昭和レトロなカフェ

クント・コロマンサ

大阪市中央区淡路町1丁目6-4 2階上ル


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by amori-siberiana | 2018-04-07 16:51 | イベント | Comments(0)


北浜というビジネス街を独立させようと企む、ヒゲの総帥のブログです。
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