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OBPというのは大阪ビジネスパークの略称である。まだその地に詳しくはないので大した概要を伝えることはできないのだが、ビル群の一角のなかに「アカデミア」という場所がある。アカデミアとは復古主義的で良い名前だ、哲学者のプラトンやアリストテレスを想起させる。


偉大なるプラトンはこう残している「愛に触れると誰でも、詩人になる」と。


さて、先日はアカデミアにてアラタメ堂のご主人が主催する「人狼」の会があった。人狼が何かといえばコミュニケーション・ゲームである、もちろんこれは酷く暴力的で簡単な説明の仕方なのだが、ヒゲの総帥は専門ではないので説明は割愛させていただく。


少し遅れて到着すると、セミナールームのような場所に参加者が集められ、すでにアラタメ堂のご主人によるルール説明が開始されていた。この場所を自己の活動の基盤とするヨコミチという男もいれば、小説家の平尾先生もちょこんと椅子に座っており、その奥には不動産デザイナーの男もダルそうに座っている。まるで人材派遣会社での就職説明会のようであるが、知らない場所に自分の見知った人が多くいるので不思議と違和感はない。


初対面の人も多いので、それぞれに名札がアラタメ堂より配られ、そこへ名前を書き込む。小説家の平尾先生は「平尾」と書く。もちろん先生、目下のところ絶賛名前を売り出し中なので、こういうところでもソツなく名前を売っておくのは得策であろう。ところが抜作の平尾先生は名刺を忘れてくるという失態もソツなくこなす。この文才溢れる先生を満たしているのは、ヒゲの総帥と同じ「過不足」であろう。何かに対して心血が注がれる分、何かに対してまったく無頓着なのである。


ヒゲの総帥から遅れること15分くらいであろうか、ゲームセンス・ゼロの女ことアシムもやってくる。この女はゲームセンスがゼロのくせに随分とゲーム会には参加をしてくるではないか、聖書には「困難だと思っても、自らすすんで、灯りをつけよ」という言葉がある。ヒゲの総帥にはアシムが自らのゲームセンスに絶望することなく、困難に立ち向かいそれこそ殉教者のように見られる。


ヒゲの総帥はこっそりとアシムの名札に「キリスト」と書き込んだ。「ちょっ、やめてくださいよ!」とアシムは拒否反応を示すが、いつの間にかすんなりと皆から「キリストさん」と呼ばれていて、それを享受していた。


不動産デザイナーの男こと忌部は自分の名前を「メガネ」にしていた。誰も彼がメガネをかけているところを一度も見たことはないのだ。さすがのセンスだなとヒゲの総帥は感心する。ヒゲの総帥は自身の名札に「ミミズク博士」と書き込んだ。そのときから、場が解散するまでヒゲの総帥はミミズク博士になれるのである。


一回目はヒゲの総帥ことミミズク博士がゲームマスターをする。人狼の熟練であろう男から「(このマスターはあまりに下手くそなので)次からは僕がゲームマスターをします」とさっさと交替要請が出される、ハリルホジッチ監督のように恨み節でもいうのかと思えば、ミミズク博士はさっさとマスターの座を放棄する。


さて、メガネが先ほどから大きな茶封筒を持っているのが気になるミミズク博士。茶封筒の中身はもちろんのこと近い将来に開催されるであろう、タッキーとジンクスのメンツでのワイン会のチラシと見当がつく。ミミズク博士はすぐに見てみたいと、メガネを誘い喫煙ルームにてデザインを見せてもらう、茶封筒から出されたチラシを見てミミズク博士は「パーフェクトだ」と一言だけ発した。


実際、それはパーフェクトなのである。


メガネは、「こういうデザインをアシムさんと一緒に組み立てていきたいですね。お互いデザイナーですから、カッカッカッカ」と乾いた笑いとともにミミズク博士に伝える。ミミズク博士もそれがよかろうと云々とうなづく。


会の解散後にアシムへそのことを伝えると、最近はゲーム会を開くことが少なくなったアラタメ堂のご主人を問い詰める。「なんで最近、ゲーム会をしてくれないんですか。デザインする機会がないじゃないですか」と訴求する。アラタメ堂のご主人がコロマンサで主催していたゲーム会のリーフレットをデザインしていたのは、アシムであることは誰もが知っていることである。戦場へ出る機会を失った傭兵ほど怖いものもない。


夜は暮れる。


平尾先生とミミズク博士は京橋の街を歩きながら、若い頃には電車がなくてもレールの上を延々と何時間も歩いて帰ったよなと思いだす。田舎育ちだから普通にできた経験であったが、大阪ではなかなかそんなことはできない。もちろんリスクはある、深夜の回送電車にひき殺されそうになったこともある。


それでも、まだそれなりに生きているではないか。お互い。一人は小説家となり、一人はミミズク博士となる。


これはまだ携帯電話すら普及していなかった時代のその辺に幾らでも話しのひとつである。


北濱にある猫のひたいのように小さな店、クント・コロマンサでは版画家の柿坂万作が婆さんと猫の壁画から一転、怪魚ピラルクを縦横無尽に描いている。


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by amori-siberiana | 2018-05-27 14:06 | 雑記 | Comments(0)

北濱のオフィス「ザ・ジンクス」をさも自分の実家のように扱い、四六時中ジンクスの日当たりのよい応接スペース。ソファ、さらにオランダ製であろう絨毯にて足を伸ばしているダダヤマ社長。


そんなダダヤマは本当に自社の法人名を「いいでやんす」にした。


元々、ダダヤマは自社の名前を別に考えていたが、ヒゲの総帥から「そんな面白味のない名前はやめたほうがいいね。自分が事業することで社会貢献ないしは皆に喜んで欲しいというなら、それを前面に出せばいいのだ」と勝手なことを言われる。「それならどういう名前があるんですか!」とダダヤマはヒゲの総帥を問い詰める。


「みんなに“いいね”と言って欲しいんだから、そのままにすればいいだけだ。いいでやんす!と花魁言葉にしてみたらどうだ」とヒゲの総帥はいう、アラタメ堂はハイボールを飲みながら吹き出してダダヤマに向かい、「お前、それいいぞ、もうイイデヤンスにしとけよ」と片棒を担ぐ。ダダヤマは「誰がそんな名前にすんねん、相談する相手まちごたわ!」と年長者二人の意見を退ける。


ところがあれから間もなく、ダダヤマは「いいでやんす」にて法人登記することとなった。もちろん社判も「いいでやんす」で作ったという男気である。この「いいでやんす」という会社をこれからは皆で見守っていこうではないか。


さて、先日のことである。


ヒゲの総帥は不動産デザイナーのところへ向かう。特に用事がなくとも不動産デザイナーの男の会社がある船場ビルヂングを訪れるヒゲの総帥であるが、今回ばかりはどうにも用事があるようである。


ガラガラと引き戸を開く、さすがは大正レトロである。いつしか自分もデモクラシイの一員になったような錯覚を引き起こす場所である。カラカラと乾いた笑い声の男と仏頂面のデザイナーが出てくる、茶も何もでない会社であることは承知しているのでヒゲの男は自分で飲み物を買ってきている。このカラカラと乾いた笑い声の男の名前を忌部という。


ヒゲの総帥は忌部に相談を持ちかける。「忌部君に頼みたいことがあるのだ、もちろん金にはならん」と平然といいきるこの男に社会的な羞恥心はなさそうである。忌部は「やりましょか」という、この男も相当おかしい。具体的に何を頼むのかといえば、北濱のオフィス「ジンクス」で近い将来に開催されるであろうワイン会のポスターをデザインして欲しいと忌部に伝えたのだ。会の概要を2つ、3つほど伝える。忌部は納期はいつなのかとヒゲの総帥に問う、これこれこれくらいだとヒゲの総帥は適当な日取りを決める。


ものの10分ほどで打ち合わせは終わり、ヒゲの総帥は忌部の会社を出て、そのまま単身「ジンクス」へ向かう。


ジンクスに到着するとザワザワしている。人の出入りも激しい、受付の女に訊くところによれば常にバッグのなかに回路基板を入れて持ち歩く男がシリコンバレーについてセミナーをするとのことである。元々はシステムエンジニアとのことだが、ヒゲの総帥がこれまでに出会ってきた同職種の人間たちとはその雰囲気に一線を画すものがある。太陽のように明るく、破壊力と受容性が一身に宿っているような体躯と顔つきをしている男であり、ヒゲの総帥のことも気にしてくれている。


この男、今はシリコンバレーにも拠点を持って仕事をしており、生の体験談を聞けるということでジンクスは人だかりができあがり盛況であった。考えるよりも肌で感じるほうが早かろうことを皆、よく知っているのである。ヒゲの総帥はシリコンバレーに行ったことはないが、デスバレーには行ったことがある。シリコンとデスでは大いなる違いがあるだろうが、それはまた別の折に触れよう。


奥の席ではジンクスのオーナーのマンホー、そしてプロデューサーの中津川が鎮座して回路基板の男のプレゼンテーションを頷きながら見ている。最後列にはドクター佐藤、そしてダダヤマもちゃっかり参加している。


しばらくするとゲームセンス・ゼロの女ことウェブデザイナーのアシムがジンクスにやって来る、いつの間にかアラタメ堂のご主人も来ておりライターの女と一緒に仕事をしている。ライターの女は「殺したい奴が一人いるのだ」とブツブツ言いながら、それでも仕事をやっつけている。ヒゲの総帥たちはその様子に苦笑する。


ヒゲの総帥はジンクスに集う先輩たちにアシムを紹介する、目的を終えたヒゲの総帥たち一行はそのままコロマンサへ移動する。


猫のひたいのように小さな店、クント・コロマンサに到着すると先ほどの不動産デザイナーの忌部が知人を連れて来ている。常連のガルパンの男はやはりいつものようにスマホから視線を外さずに、心は戦場にあるようであった。


「アレ、できましたよ」と忌部はヒゲの総帥にさらりと伝える。「ええっ!?もう?」とヒゲの総帥は驚くとともに、この男ならばそれぐらいの芸当は難なくこなすであろうことを心のどこかで見越していた自分の勘が当たったことが嬉しかったのもある。つまり、ワイン会は壮大なるユーモアに満ちるということが決定された瞬間でもあった。


話しはいつしかダダヤマの話しになる。ヒゲの総帥はダダヤマに提案する。


「民泊だゲストハウスだホテルだと(仕事を)やってるんだから、ダダヤマもフラッグショップでもないが一軒くらい民泊を経営してみればどうだ。実際にゲストを泊めてもいいし、清掃のモデルハウスにしてもいい。さらには研究機関として使えばなおさら格好がいい」


「それも考えてるんですけどね・・・」とダダヤマはいう。一年間通して、そこを宿泊施設に使わなくていいのだ。ある時期は短期集中型の教育機関としてそこで研修してスタッフのスキルアップを目指す。実際に自社で民泊を有することでこれまでじゃ発見できなかった、サービスアイデアに繋がるかも知れんぞとヒゲの総帥は言葉をつぎ足す。ヒゲの総帥が念頭においているのは、もちろんのこと伝説の店「エルブジ」であろう。


「ホステルとホテルの違いって何なん」と遠い目をして無味乾燥な声質でダダヤマに訊くのは忌部である。


「スが入ってるかどうかじゃないのか」とヒゲの総帥は忌部にいうが、「いや、そういうことじゃないでしょう」と絶妙の間合いでアラタメ堂のご主人が逸脱しかけた話しを本題に戻す。この間合いを取れるアラタメ堂はさすがである。


「多分ですけれど、室内の形態の違いだと思います」とダダヤマは専門職でありながら、なかなか適当なことをファイナルアンサーで出してくる。いつしか話しはカプセルホテルという業種に向く、ダダヤマは以前に東京の錦糸町にある新機軸のカプセルホテルを先輩から教えられて、それが随分と快適だったと皆に話す。ヒゲの総帥は錦糸町にあるオリナスタワーに常駐するシステムエンジニアと仕事をしていたことがあるが、そんなカプセルホテルの噂は訊いたことがなかったので興味深く傾聴する。


「僕の知ってるカプセルホテルとは違うな」とヒゲの総帥はこれまでにほんの数回しか泊まったことのないカプセルでの経験談を話しだす。


・・・それはそれは惨いものであった、大衆浴場のようなところでは狭い台に乗せられた全裸のおっさんたちが、おばはんたちにアカスリをされているのである。アカスリをされずに湯に浸かってるおっさんたちは、「あー」とか「うー」とかいう。その光景はヒゲの総帥が幼い頃に祖母から読まされた地獄絵図になんだか似ていた。おばはんにアカスリされる台の向こうには、サウナではなく針の山とか血の池地獄とかが広がっていそうなのである。


カラカラと乾いた笑いで忌部も話しだす「なんかそんなんありますね。僕もそういうとこ行ったとき、洗体いうんをしてくれてるのを見ましたわ。500円くらいでおばはんが身体を洗てくれるんですけど、洗体が終わったあと無愛想な顔したおばはんが、ザッパーンと桶に入れた湯をおっさんの頭からかけとりましたわ」と自己の経験談を話す。


ダダヤマのいうカプセルホテルは施設内に何でも揃っているのだという。酒場もあれば漫画もあり、温泉もあるというのだ。「そこに泊まればなんでもあるやん」という感じだったのだそうだ。


ヒゲの総帥はダダヤマにも新しいカプセルホテルをプロデュースしてみてはどうかという。ダダヤマは「どんなのがいいですか?」と訊ねる、ヒゲの総帥は神妙な顔をして自身のアイデアを伝える。


「カプセルホテルと回転寿司が合体してるのだ。寝るだけのスペースしかないカプセルホテルでも、自分の枕の横では常に新鮮なネタが回っているという安心感」と堂々と説明する。「そんなの魚臭くて寝られやしませんよ!」とアラタメ堂は笑いながら合いの手を打つ。「それならカプセルに入った自分たちがカプセルごとレーンに乗せられて回ってみるのはどうか?チェックアウトの時間になったらカプセルが傾いて自動的(強制的)に転がり落とされて、運が良ければガチャガチャから何かをもらえる・・・的な?」とヒゲの総帥の頭脳は間違った方向へ快進撃を続ける。


ダダヤマは競合会社との格差はどこで作って行くかという話しをヒゲの総帥にする。サービスの値段を下げるというのはこの場合、最悪の選択であることは誰もが知っている。質の向上の「質」とは何かということを相談してくるのである。


ヒゲの総帥は「そんなのは簡単だ、誰もが出来ないことで喜ばれることをすればいいだけだ」と超然と答える。「例えば?」とダダヤマは勿論のこと聞き返す。


「一度、常識的なことは置いておけ。例えば、ダダヤマの会社が清掃に入ってくれるたびに、部屋が1平米ずつ広くなっていれば喜ばれるはずだ」とヒゲの総帥はいう。「なるほど、増築してくれてるということですね」とアラタメ堂はいうが、「増築では費用がかかるので、空間を歪めるのです」とヒゲの総帥は大真面目な顔していう。


ダダヤマはまたも相談相手を間違ったようである。


物事はシンプルである、誰もが出来たらいいなということを出来るようにする者が、その時代を制するのであり、人間を進歩させるのである。ただ、それが誰にも出来るようなことでないから、人はどうするのだ?


そう、工夫するのだ。自分なりの知恵で工夫するのだ。漢字にしてたったの7画である。では、工夫は何から生まれるのか?これも簡単である常にそれと触れていることで自然に工夫を導き出すのが人間だ。


最後に・・・、凄いアイデアを託そう。とヒゲの総帥はいう。その目はまるでこれから討ち入りに行こうかという赤穂浪士の如くである。脳内には五木ひろしの歌が流れる。


「この世で何が気持ちいいといって、布団で寝ているときにその布団のままどこかへ移動させられる気持ち良さはない。親戚の家などで酔いつぶれて、布団に寝たままで邪魔だからと誰かにどこかの部屋へ移動させられるときの気持ち良さといったらないのだ。いいでやんすでそれをしようではないか。僕が被験者になる、適度な移動スピードとかタイミングとかデータを取ってくれ」という。


ダダヤマと一堂は期待していた分、呆れる。版画家の万作だけが「ワシも、それ好き」と手を打ってヒゲの総帥に共感するのであった。


回路基板を持ち歩く男、この男が言っていたのも我々には「工夫」があるということだ。物量で敵うことがない相手をそのまま模倣するよりも、そこに我々なりの工夫を凝らすことによって、新しい可能性はがふんだんにあるのだと勇気を持たせてくれたのだ。


今、日本という国は切り落とす枝と、伸ばす枝の選定をしっかりとしているのである。ゆらゆらと揺れながらではあるが、確実に。アンテナは大きければ大きいほど、ありがたい。


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by amori-siberiana | 2018-05-26 16:26 | 雑記 | Comments(0)

電話がなる。


ヒゲの総帥は仕事を終えて北濱のオフィス「ザ・ジンクス」へ移動して、なにやらゴゾゴゾとしている。珍しくアラタメ堂もジンクスへ来ており、「阿守さん、飲みに行きましょう」とヒゲの男を誘っている。まさにそんな折、ヒゲの総帥の電話がなりだした。


これまた珍しい、電話をかけてきたのはタッキーである。


このタッキーという男はことごとくヒゲの総帥からの電話を無視するわ、メールしても返事はしないわを繰り返してきた男であるが、最近はヒゲの総帥が巧妙に手慣らしているので以前に比べて腰は軽やかになったようである。何かあるたびに「経団連」を連呼するという悪癖も最近は影を潜めたように感じる。というか、噂には聞いているがタッキー自身が「経団連」を連呼したところにヒゲの総帥はお目にかかったことがない。


「アモさん、これから何かありますか?」


「特に何もないけれど、君から電話なんてこれまた珍しい、どうした?」


「よければ、一緒に飲みませんか」といった顛末である。


「アラタメ堂のご主人も一緒だが構わないか?」とタッキーに問うヒゲの総帥であったが、もちろんのことこの辺りに関しては問答無用である。


どこかしらの出張から戻ってきたばかりのタッキーは新大阪からタクシーで北濱までやって来る。ヒゲの総帥とアラタメ堂のご主人は空腹だということもあり、ジンクスの裏にある安いだけで大して美味しくもない居酒屋へタッキーを連れて入店する。もう一画奥には「いいでやんす」のダダヤマ社長がオススメする、さらにイマイチの店があるのだが、それはまた折のいいときに紹介しよう。


タッキーが手に何かさげている。それはなんだと訊いてみると、どうやらボルドーワインだというではないか。タッキーは語る。


「先日、阪神百貨店のワイン祭に参加してからというもの、ワイン熱が急にやってきまして、今ではネットでワインを見てはポチる手が止まらないんです」


それにしても入手したばかりのボルドーをこうして皆で飲もうなんていうのは、殊勝な心掛けじゃないかとヒゲの総帥が褒めると、どうやら一緒に飲もうと約束していた知人にドタキャンされて他に当て所がなかったのだと正直に白状するタッキーであった。


「なるほど、二番煎じでもなんでも酒が飲めればいいや」と世界中でも寛大な部類に入るであろうヒゲの総帥とアラタメ堂のご主人は卑屈にガハハと笑い、タッキーの八方美人すら受け入れる。自分が利益を享受できると知るや、謀反の血判状にでも名前を連ねるであろう恐ろしい二人である。


先日、タッキーはわざわざ「モンラッシェ」を手に入れたとヒゲの総帥に写真付き(普段は写真なんてないのだ)のメッセージをくれた。ヒゲの総帥が是非とも一緒に飲もうと呼びかけると、すでに飲んでしまってないという素っ気ない返事があった。「それじゃあ、ただの自慢じゃないか!豚野郎」と悪態をついて互いのメッセージは終了したのであったが、後日、同じくワイン好きで知られるジローにそのくだりをヒゲの総帥が説明したところ、「それは、要らない情報ですよね・・・」とジローもタッキーの所業に苦笑していた。


たいして美味しくない居酒屋で食事のあと、口直しに北濱で一番美味しいスコッチウイスキーを出すであろう、「マギー」へ移動する。ヒゲの総帥はラフロイグ、アラタメ堂とタッキーは何らかのウイスキーを飲み、そのあとコロマンサへ三人で移動する。


コロマンサには常連の不思議な女とガルパンの男、そしてデザイナーの男が奈落で偶然出会った者同士かのように静かに佇んでいる。


全員でタッキーの持参したボルドーを飲む。2014年なのでまだまだ若いが、これはこれで楽しめる。版画家の万作がこのワインにあう料理ということで、レンジでチンしたじゃがバターを器に盛ってテーブルへ運んでくる。


上機嫌になったタッキーはおもむろに「アモさん、マネーロンダリング入門の本を読んだんです。バチカンがマネーロンダリングの温床だって知ってましたか?ローマ教皇もひとりそれが起因となって暗殺されてるんです」と問いかけてくる。「カルヴィの絡んだ事件のことだろ、有名だよ」とヒゲの総帥は返答をする。アラタメ堂は「なんなんですか、この二人の話しの内容は?」と半ば呆れ顔になる。


さらにタッキーは先日、ロシアの政府高官と会ったときの話しをする。もちろん手にはボルドーの赤が握られている。やっぱりロシアを語るに赤いモノは欠かせない。「アモさん、結局のところソ連が解体しても、アレが、アレが、アレ・・・・」とタッキーは行き詰る、「オリガルヒといいたいのか?」とヒゲの総帥は助け舟を出す。「そう!それ!オリガルヒです」とタッキーは愉快な空飛ぶ豚のような顔をする。アラタメ堂は「なんなんですか、この二人の話しの内容は?」と呆れ顔になる。


さて、ここから魔境に入る。


タッキーの延々なる仏教の話しを聞かされることとなるのだ。ライザップでシェイプアップされた以前の体も今ではやはり元の木阿弥となっている。腹をタプタプさせながらタッキーは上座仏教や大乗、小乗仏教について語る。不思議な女もそれに乗ってくる。


今週、延々と禅の話しをしていたヒゲの総帥は酩酊以上に仏さんの話しが食傷気味になる。


「さて、タッキー。そろそろタッキー主催のワイン会をしようじゃないか。君も高名なソムリエと仕事をしている身だ、犬でも飼い主に似るというのだから、君もそれなりに味の解る男になっているだろう。僕とジローもこれぞというワインを持ち寄る」とヒゲの総帥は話しをワインに戻す。


「いいですね。でも、アモさん。ただワインを持ち寄るんじゃなくて、この一見何の変哲もないワインとこれを食べると、”ええっ!”という、一品も持ち寄るような会をしたいですね」とタッキーは会のレベルを上げる。


「じゃあ、それでいこう。アラタメ堂のご主人は審査員長だ」とヒゲの総帥は適当な人選をする。


「僕はワインなんて何にも解らないですよ!」とアラタメ堂は謙遜するが、ヒゲの総帥は「それでいいんです」と変に超然としている。タッキーも頷く。


場所はどうします?


誰が言いだしたか解らないが、確かに一番の疑問である。


ヒゲの総帥は、ここぞタッキーのワイン会に最適という場所がパッと閃いた。


そう、北濱のオフィス「ザ・ジンクス」である。俗名を「THE LINKS」というそうだ。


日本には大きく分けて禅が三つある。臨済宗、曹洞宗、黄檗宗。そしてこの北濱のオフィス「ザ・ジンクス」もそれぞれにタイプの違う三人の男たちから創造された秀逸な空間であるが、それはまた別の話し。





※ミーティングルームの小さな方で、もしかしたら泥酔者と酩酊者のためのファラオ主催の「早押しクイズ大会」が開かれるかも知れないよ


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by amori-siberiana | 2018-05-23 20:57 | 雑記 | Comments(0)

平成30年に入ってからというもの、ここまで上半期におけるホテルの建築ラッシュは異常なほどである。北を土佐堀通、南を本町通、東を横堀川、西を御堂筋までという狭い範囲でみても、20件ほどの新設のホテルができあがっているのだ。国粋主義のAPAホテルに負けてなるものかと、WBFなるプロレス団体みたいな名前のホテルも一挙にホテル数軒をオープンさせる。今、この辺りはホテル戦争の渦中である。


さて、木曜日からのこと。


仕事が終わりコロマンサへ行くと、ツタの絡まる青山ビルの一角を占拠する自称302才の女が営む「ギャラリー遊気Q」のメンバーたちが奥のテーブルで何やら話しをしている。そして中央のテーブルにはヤナ(Jana)がちょこんと座ってビールを飲んでいる、ガルパンの男は視線を前方に向けることはなく、ずっとスマホ内にあるであろう戦場において一所懸命である。


ヒゲの総帥はヤナに今日は何をしていたのかと質問する、訊けば姫路城に行っていたとのこと。その話しを小耳に挟んでいた版画家の柿坂万作は「うーん、姫路やったらもっとええとこあったのに」とチェコ人に話しかける。「どういうふうにええんですか?」とヒゲの総帥を通じてヤナは訊ねる、万作は「うーん、なんちゅうか、ええ具合の参道があって、そこの階段を上っていくと、ぽつんと寺があって、それが昔ながらの感じでええんですわ」と大層訳しにくいことをいうので、ヒゲの総帥は「とにかくそれぞ古来の日本だ」とだけヤナに伝えて会話を終了させる。


しばらくすると、他のチェコ人たちもやって来る。彼らは総勢15名で旅行しているのだというが、それが一体どういったコミュニティなのかは最後まで謎であった。金曜日の夕方には関空を出て、ドバイ経由でプラハへ帰るのだという。さすがに三日間も一緒にいると気を使うこともない。


「お別れになにか一曲弾いてくれ」とウラディミールがいうので、ヒゲの総帥は「Miss Silence(ミス・サイレンス)」という曲を弾く。


この曲はある母親の手記にインスピレーションを得たとヒゲの総帥は彼らに語る。


若くして自分の娘が死ぬ、それでもいつものように朝がくる、毎日が過ぎる。あるとき母親は気がついた、娘が死んでからというもの、洗濯物を干していて赤やピンクの服がないということに。死んだ子の服だけれど、試しに洗濯して干してみようと明るい色の服を物干し竿にかけた。服は風に揺れ、まるで、悲しまないでと娘が母親に語りかけるようであったと。「さようなら」は本当に悲しいことだと、母親は泣き崩れた。


チェコからの旅行者は静かにヒゲの総帥の話しを聞く。


「また近いうちに会おうね」とヒゲの総帥は皆と握手をする。ウラディミールは「次はお前がプラハに来るのだ」という、「是非そうしよう」とヒゲの総帥は約束する。いつ果たせるのかわからない約束をする。


そういえば彼らは先日、冷泉や不思議な女が歌っていた沖縄に由来する歌に興味を持っていた。


昨夜、冷泉は「島唄」をヒゲの総帥のギターを伴奏に熱唱する。これからいよいよ大サビというところで、ヒゲの総帥の携帯が着信する。ヒゲの総帥は携帯アプリで譜面を読んでいるため、「ここで?」というタイミングで島唄は一時中断する。この狙ったかのようなタイミングで電話をかけてきたのは、タカハシン・コルテスという男であった。トランシルヴァニア(ルーマニア中部・北西部)のドラキュラのような血色をした男である。


「阿守、お前、土曜日は何かあるのか?大峰山で山行するから来い。メキシコ人も一緒だ」と唐突なタカハシンからの問いかけである。大峰山といえば奈良の天川村にある役小角で有名な修験の山であり、ヒゲの総帥は天川村にはちょっと詳しい。しかし、メキシコ人についてはそれ以上の情報をドラキュラはくれなかった。


「いや、お前な土曜日は雨だぞ、雨」とヒゲの総帥は先々の雲行きの怪しさをタカハシンに伝える。


「・・・、雨だとまずいのか?」とタカハシンは聞き返す。


「お前が死ぬぶんにはまずくもなんともないが、まあ待て。大峰山で修行したことのある人間が目の前にいるから、雨天決行がいいものかどうか聞いてやる」とヒゲの総帥はタカハシンに伝えて、目の前で島唄を中断させられていて阿呆のような顔をしている冷泉に雨天の大峰山は厳しいかどうかを訊ねる。何を隠そう冷泉はかの山で修験をしたことがあるのだ。


「冷泉、大峰山で確か岩から放り出されるみたいなのしてたね。あれって雨でも大丈夫なもんなのかい」


「ああ、しましたね。雨ですか・・・、死にますよ。ぐふふ・・・」と不敵な笑みを浮かべる。


ヒゲの総帥はそのままをタカハシンに伝えると、彼の心はとても簡単に折れたようでメキシコ人だけ山へ行かせて、自分は家で寝とくことにすると翻意したのであった。


島唄は無事に再開されることとなった。


そういえば、ヒゲの総帥が最初に天川村へ行ったときはバスであった。時は2月、路面が凍結しているのでバスで来たほうがいいと宿の人から勧められて、バスにしたのだ。近鉄電車で下市口駅まで行き、そこからバスに乗って天川村の洞川温泉へ向かう。これぞ秘境というつづれ折りの道を深山幽谷へ分け入るように進むバス。


宿に到着したはいいが、吹雪のせいで自分以外に客はおらず旅館一棟がすべて貸し切りという恩恵を賜った。ところがかくれんぼをするわけでもなく、広くても暖房効率が悪くて寒いばかりなので、何十畳もある大広間をどんどん襖で塞いでいって、最終的には炬燵を中心とした6畳間ほどのスペースで閉じこもっていたのであった。


かの地の名水「ごろごろ水」で炊飯されたご飯はとてつもなく美味しいものであり、何杯もおかわりしたような気がする。


それ以来、何かあれば天川、用がなくても天川という日が何年か続くことになる。天川村でも何度か天体観測をした、星が見えることは見えるのだが土地柄、左右を高い山に囲まれているため視界は開けない。つまり角度の低い星は見えないのだ。


そういった意味では天川から東南へ数キロ、大台ケ原の山頂駐車場(ビジターセンター)などというのは、我々からすると奇跡のような場所である。視界は開ける、星は凄い、急にハーモニカを吹くおっさんがやって来る。


天川、大台ともに変わらないのが、とにかく酒をめちゃくちゃに飲まされるということだ。


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by amori-siberiana | 2018-05-21 18:09 | 雑記 | Comments(0)

フフフ、私の名前はアラタメ堂。


フランスのだな、哲学者のルソーはこんな言葉を書いている。


人は二度生まれる、最初は生存するために、二度目は存在するために」とな。書いてるんだよ、実際な。私はもちろんのこと後者のセクション(段階といってもいいだろう)に入っている。君ら?君らは言わずもがな前者だ。寝ても覚めても前者だよ。私の知恵が欲しいか?欲しくて欲しくてたまらないか、だったら取りに来い。お前の失敗を喜ぶ者たちにお前のオールを任せちゃいけない。


場所は京橋だ。大坂夏の陣で淀殿が自害したあたりだよ。竹内結子がな。


OBPアカデミア。 ※OBP=大阪ビジネスパークの略


「アカデミア」というのはプラトンが塾を開いた場所の名前だよ。プラトンだ、プテラノドンじゃないぞ。化石のようなカチコチの頭脳しか持たない君たちをこの私が是正してやろう。偉そうにいうが何を使ってかって?ふん、痴れ者が。


もちろん、人狼だ。そう、人狼だよ。日勤の仕事に追われてだな、集客に困っているのだよ。困って困って困り果てているのだよ、このアラタメ堂がな。いいか、私に恥をかかせるんじゃないぞ。絶対に私に恥をかかせるんじゃない。この価値観、皆で共有する。


どうして人狼なのかって?どうにもこうにも野暮天ばかりが揃うてはりますなぁ。


つまりこういうことだ。正座して読め!


O B P人狼 ~心理ゲームでコミュニケーション能力を磨こう~


◆2018年5月25日(金) 19:00 ~ 21:30
◆会場:OBPアカデミア セミナールーム
◆参加費:2,000円(税込) 定員:10~100名


楽しみながらコミュニケーション能力を高める
会話型心理ゲーム「人狼」にチャレンジしませんか?


人気の高い会話型心理ゲーム「人狼」のプレイを通して、「聞き出す」「見抜く」「信頼を得る」「状況を整理する」といったコミュニケーション能力を磨く交流イベントです。

みなさんは対人コミュニケーションでこんな悩みや課題をお持ちではないですか?


【受講対象者】


◎自分の考えや意見をうまく伝えられない

◎人見知りで良い印象を相手に与えられない

◎仕事でのプレゼンテーションが上達しない

◎会議やミーティングの進行をうまくできない

◎誰かと交渉したり調整するのが苦手だ

◎暇を持て余している人

◎アラタメ堂に義理や恩義、または友情の類を感じている人


もしかしたら、コミュニケーション能力や印象アップの研修、セミナーなどを受講されてきたかもしれません。実際の成果はどうでしょう?


あるいは「研修」という言葉にアレルギーを感じてしまう人もいるかもしれません。


そんな方は、ちょっと方法を変えてみてはいかがでしょう。


ゲームを楽しみながら学べて、コミュニケーション力アップの気づきを得られる機会があれば、参加してみたいと思いませんか?それが今回おすすめする【人狼ゲーム】なのです。



【内容】


人間に紛れて正体を隠している「人狼チーム」と、言動や表情などをヒントに人狼を見抜く「市民チーム」とで心理的な駆け引きを楽しむゲーム。それが「人狼」です。参加者は人狼や市民、予言者、霊媒師、ボディガード、裏切り者といった役職につき、聞く、話す、見る、推理する、説得する、交渉するといったアクションを行いながら進行します。よく「嘘をつく遊び」と呼ばれますが、実はいかに自分が信頼を得て、仲間のために能力を発揮してゴールを目指すかがこのゲームの本質です。


これは仕事や友だち、家族との関係でも非常に求められるコミュニケーション能力ではないでしょうか。人狼は、自分のコミュニケーションの得意、不得意が浮き彫りになる絶好の機会なのです。


もし人狼を経験したことがある方の中には、こんな意見があるかもしれません。


「経験者の言っている意味がわからず、黙っていたら追放された」
「強い口調で詰め寄られて、怖かったからもうやりたくない」
「なんとなく参加してみたけど、結局理解できなかった」


これはプレイ経験の度合いや人狼の捉え方に差があり、参加者間でミスマッチが生じた例です。徹底的に勝ちにこだわりたい人と、ゆるく楽しみたい人では、どうしても温度差が生まれるのです。


「OBP人狼」は初めての方、経験の浅い方を対象にした人狼イベント。


「楽しみながらコミュニケーションを学ぶ」をテーマに掲げていますので、わいわいにぎやかに参加者と交流していただけます。(人狼のエキスパートを目指す方にはお勧めしていません)


【受講後の効果】


◎初対面でも緊張せず、自分の意見が発言しやすくなる!

◎会議やミーティングを取り仕切るためのヒントが見つかる!

◎議論をまとめ、状況判断するリーダーシップが身につく!

◎自らの信頼を高めるアピール力を磨ける!

◎暇つぶしができた

◎アラタメ堂に喜ばれた


さらにゲームを通して、推理力・洞察力・論理的思考力を研ぎ澄ましていくトレーニング効果も期待できます。


遊びを通して成長したい、ポジティブなみなさまの参加をお待ちしています!


※人狼カードの写真


(キャプション)大人気の「人狼DX」カードを使用します。


【タイムスケジュール】


19:00〜19:20 趣旨説明・ルール解説

19:20〜21:55→(訂正)19:20〜19:55 人狼ゲームプレイ1回目・振り返り

 [休 憩]

20:00〜20:35 人狼ゲームプレイ2回目・振り返り

 [休 憩]

20:40〜21:15 人狼ゲームプレイ3回目・振り返り

21:15〜21:30 まとめ・終了


◎前回より開催時間を増やして1回多く楽しんでいただけるようにしました。
◎お茶・ジュース、お菓子をご用意していますので、ゲームから抜けたり、休憩中にどうぞ。


「OBP人狼」は、特にゲーム後の「振り返り」を重視しています。主催者側から市民または人狼側が勝利したポイントや、参加者個々の良かった点、このように発言すれば良かったというアドバイスなどを行い、次のゲームに活かしてもらうようにします。


最後に人狼ゲームから学んだこと、今後の生活で活用できそうなポイント等をシートに書いていただきます。


■主催:ARATAMEDO 福田哲也
■協賛:OBPアカデミア


※本イベントのお申し込みは、下記の主催者宛にお申し込みください。


下のURLにアクセスし、お申込みをお願いします。
http://aratamedo.jp/obp_jinrow


以上だ!


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by amori-siberiana | 2018-05-21 16:17 | イベント | Comments(0)

今日はよく晴れている。吹っ切れたように広がる青空は、鳥すらもその誰にも飼いならされない本能をふんだんに使用しても、姿を隠すことができないほどである。


ヒゲの総帥は今日は早退である。明日から一斉になんらかが始まるのであるが、明日の準備はすでに先週末にできているので、我が愛すべき大阪市は仕事がよくできているということである。よくできてなくてはいけないのだ、さっさと昇進しなくてはいかん。こんな薄給で生きていけるか、バカ野郎。


さて、後編。


来店時と退店時では歯の数が一本違うヒゲの総帥と、元来、歯はガタガタのアキラメ堂のご主人はお好み焼き屋からコロマンサへ向かう。吟遊詩人の女は賢明にも「私はここらで」と帰路につく。


店に到着するとすでに無法松先輩とチェコ人たちがいる。しばらくすると多角的ネット販売会社の社長兄弟を連れて冷泉もやってくる。気がつけば最近はレコーディング三昧だというギバタ、ゲームセンス・ゼロのアシム、ジローやガルパンの男、バイリンガルの女、外資系保険の女、そして今もっとも奈良のあたりで熱い男ことファラオもやってくる。


チェコ人たちは京都の銀閣寺→南禅寺→龍安寺の観光から帰ってきたのだとヒゲの総帥に説明をする。


ここでチェコ人グループの最年長であるジョセフという男がヒゲの総帥に「日本についての質問をさせてくれ」と訊ねてくる。なんでも訊いてくれとヒゲの総帥は快諾するが、その質問の珍妙なことといったら他に例がない。


【質問】日本の総人口は現在、何人ほどで、1994年と比べてどうなっているのか?


このおかしな質問にヒゲの総帥と無法松先輩は「大体でしかわからないですよね、統計をとった資料もないですしね・・・」と頭を悩ませながら、こんなもんだろうと回答をする。ボーダーのTシャツを着ている禿頭で初老の男ジョゼフ。体形や服装などを含めて、店が混雑しているときなどは万作と見間違えることしばしばの男からの質問は続く。


【質問】チェコでは年間自殺者がこれくらいいるが、日本での年間自殺者はいかほどなのか?


なんとも一般的な旅行者とは思えないような質問を投げかけてくる。そしてそのジョゼフ(Josef)の顔立ちはロシアのプーチン(Putin)大統領に似てなくもないので、ヒゲの総帥はまるで在りし日のKGBからの尋問を受けているような錯覚をおぼえる。


チェコ人のリーダーのウラディミール(Vladimir)が何か歌ってくれというので、同じくチェコ人のマルティン(Martin)と一緒にヒゲはギターを弾き、彼のリクエスト通りにコールドプレイの「Viva La Vida」を歌ってみるが、歌えたもんじゃない。すると俄かに店の中央がザワザワしだす。冷泉とジローが腕相撲対決をはじめるというのだ。


呆れ顔でその二人の対決を見ていた無法松先輩。ハイボールのおかわりをもらってきますと奥の席から人混みをかいくぐり万作のいるカウンター方面へ消息を絶つ。数分後、先ほどの呆れ顔がウソのように嬉々としてジローと腕相撲に興じる無法松先輩の姿がある。


「ミイラとりがミイラになるとは、まさにああいうことだ」とヒゲの総帥はアシムと苦笑いをする。チェコ人たちは腕相撲を観戦したあと、ごく自然なかたちで殴り合いを観戦させられることになる。ヤナ(Jana)やLenka(リンカ)といった女性陣もたいして怖気づくことなく、酒宴の一興くらいのつもりで見ているのにはこちらが恐れ入った。


夜が更ける。


山の向こうに帰らなくてはいけないファラオは当たり前のように帰るタイミングを逃し、ホテルを取ることとなった。ヒゲの総帥とファラオは二人で夜道を歩きながら、最近のファラオのゲームイベントが好評であることを語り合う。話題はいつしかクイズになる。


「僕の一年の最たる楽しみは、アメリカ横断ウルトラクイズの放映だった」とヒゲの総帥はファラオに告げる、ファラオも同番組に精通しているようで話しは弾む。いつか早押し機を使った本格的なクイズ大会をしたいねと二人の見解は一致する。


「僕なんかはアタック25の予選に参加したんですよ。書き問題は通過したんですけど、面接のときに顔で落とされましたよ」と苦々しく語るファラオ。


テレビというメディアが、まだ良識を持っていた頃の話しである。


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by amori-siberiana | 2018-05-21 14:28 | 雑記 | Comments(0)

「右手と左手で柏手を打つと、パンと音がするだろう。なら、片手で柏手を打つとどんな音がするのか?」


ヒゲの総帥は真顔で珍妙なことを問いかける。


「えっ?どういうことなのかまったく意味がわかんないんっすけど・・・」と呆れ顔に返事をするのは、ゲームセンス・ゼロの女ことアシムである。「スカッ、スカッ、とか、こういうことっすか?ええっ、音なんてしないでしょう」とアシムは頭に「???」を浮かべたままヒゲの総帥の問いに答える。


「つまりそういうことなのだよ、そういったものを作りたいのだ」とヒゲの総帥はアシムに話す、「アモさんからなんだかよく解らないことを言われそうな雰囲気でしたけど、本当にわかんないっすね」とアシムは答える。アシムの向こう側では冷泉とジローが歯をぎりぎりいわせながら腕相撲の頂上対決をしており、アラタメ堂や無法松先輩、不思議な女やガルパン、そしてチェコ人たちは興味深そうに兄弟対決の決闘の行方を追っている。


北濱にある猫のひたいのように小さな店、コロマンサは文字どおり、足の踏み場もないという状態であった。あちらこちらで笑い声と殴りあう音、そしてギターの音と調子はずれの歌が聞こえる。


時間は巻き戻る。


二日酔いで半ボケのままヒゲの総帥は役所仕事を終えて、そのまま北濱のオフィス「ザ・ジンクス」へ向かう。ここで吟遊詩人の女と打ち合わせをするのだ、人が人と話すのにこの辺で最も心地のよいソファを置いているのがジンクスである。株式会社「い~でやんす」のダダヤマを例に出すまでもなくあらゆる人間がジンクスを拠点に面接や商談、交渉やどうでもいい井戸端会議を繰り広げている。


ここは文字どおり現代の交易場なのだ。昔のように反物と果物を交換するようなことはないが、ツールは違えど発想の原本は古今東西、あまり変わりはないのであろう。1分を誰が60秒と決めたのか?とそんな考えの奴らが集まり、1分を61秒や59秒にしてみて奮闘しているのである。


面接の時間になったはいいが、蓋を開けてみると誰も面接に来なかったという悲劇的屈辱を何度も経験したダダヤマがジンクスのソファーにて、ぼんやりした西日のなかボケ老人のようにフテ寝している姿をよく見たものだ。


吟遊詩人の女ことアルセアがのこのこやって来る。ほぼ、同じタイミングでアキラメ堂のご主人もジンクスへやってくる。


「ご主人、これから外で食事しますけれど、よければ一緒にどうですか?」とヒゲの総帥は偉大なる先輩を誘う。


「いや、いいです!僕も仕事があるんですよ、仕事が終わってからコロマンサへ行きますから」とアキラメ堂は連れない感じであるがヒゲの総帥が「お好み焼きを食べに行く」と口にすると、さすがは生粋の関西人であるのかアキラメ堂は仕事を諦め、ヒゲの総帥とアルセアに同行することとなった。


お好み焼きを食べながら打ち合わせがはじまる。アルセアは前もってヒゲの総帥から頼まれていた何かしらのデザインアイデアを提示する。(何かしらと言葉を濁すのは、それは時間がもっともっと進んだ頃に判明することだからである。物事には順序があるもので、義経のように八艘跳びなどしてはいけないのだ)


ヒゲの総帥とアラタメ堂はそれを見ながら、うんうんと頷く。ヒゲの総帥はアルセアに【EL BULLI】を知ってるかと問いながら、料理の写真を見せる。アルセアは唐突なる料理の写真群を突き付けられ「こいつは何を言ってるのだろうか」という視線を送る。つまり、そういうことなのだとヒゲの総帥は熱っぽくどうして自分がそのような写真を出したのかを支離滅裂気味に語る。


話しが佳境に入ろうとしたとき、ヒゲの総帥は口の中に異物があることに気づく。「あっ、とうとうこの店やりやがったな」とヒゲは直感で思う。


異物はそのままヒゲの総帥の口から飛び出し、鉄板の上をからんからんと音を鳴らしながら転がる。以前からここのお好み焼き屋は不気味だったのだ、やたらニヤニヤ笑う店員、せっかくミディアム・レアで焼いた肉を意味もなく鉄板の上で提供することによってウェルダン状態にしてしまい、一体何がしたかったのだと客をうならせるような店である。いよいよ、店側が牙を剥いてヒゲの総帥たちに異物混入という無言の圧力をかけてきたのであろう。異物混入を口の中で感じてから、ここまで考えが逡巡するまでに一刹那。


怒鳴りつけてやるとヒゲの総帥は店員を呼ぼうとする前に念のため、鉄板で焼かれている異物が何だったのか探る。


そこで焼かれていたのはヒゲの男の差し歯であった。店が牙を剥くのではなく、頼まれもしないのに抜いたのはヒゲの男その人なのだ。アキラメ堂とアルセアは失笑する。


失笑するしかないではないか。




常に客に驚きを提供する― フェラン・アドリア




(後編につづく)


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by amori-siberiana | 2018-05-19 19:50 | 雑記 | Comments(0)

窓の外を一頭の水牛が通る。


最初にその立派なる角が見えて、そして水牛の頭がにゅっと出てくる。さらに背中も見える、ところが尻尾だけはいつまで経っても出て来ないのである。まったく窓からでは確認できない、なぜか。


いろいろなことがあった。そのひとつひとつを頭のなかに保存しているのだが、古いものはどんどん新しいものに取り換えられていく。


コロマンサでは殿様のような笑い声をあげる副社長の社長が、思考回路の整理整頓をさせるプロを連れてきてくれたり、辛子れんこんを手土産に大学生の女が大学職員になるため幾つもの関門をくぐりぬけている途中だと教えてくれたり、不思議の国の女が星師匠と恋の話しをしているところへ醤油売りの女が来たりと一事が万事のようであった。


さて、先日のこと。


ヒゲの総帥はヨーラン・モンソンという笛吹きの演奏を聴きに行く。会場は東心斎橋にあるキリスト教の教会である、仕事を定時に終わらせて開演までしばらく時間があるので星師匠と焼売を食べてハイボールを飲む、教会へ到着する頃にはすでに赤ら顔でできあがっているヒゲの総帥。教会前にはすでに開場を待つ人たちがそぞろに集まっている。


ヨーラン・モンソン先生はスウェーデン人、そしてスウェーデン人といえばカコフォニー・フィールズのドイワ会長がいることは火を見るより明らかである。ヒゲの総帥も隠れキリシタンの足跡を追って、天草諸島などの教会を巡っていた頃を思い出す。知人で弁護士事務所で働くミスター・プラムと会えば、ツタッキーとも遭遇することになる。このツタッキーという女と最初に会ったのはパリであった、ヒゲの総帥がアパルトマンに夜な夜な出てくるネズミに頭を悩ませていたときであり、ツタッキーと会うとネズミの駆除に腐心していた自分自身を思い出す。ツタッキーはデザインの勉強でベルギーのアントワープに滞在しており、自分の親戚がいるパリにバカンスしにきたという具合だった。


「おお、ツタッキー。懐かしいな、それこそ10年以上ぶりじゃないか」とヒゲの総帥は挨拶をする。


「そんなことないよ、ヒゲの総帥は前にFM OSAKAで見かけたよ」とツタッキーは返答するのだが、見かけたのと会ったのでは全然その意味合いが違わないか?とヒゲの総帥は右手でヒゲをひねりながら苦笑する。まあ、酔っぱらってるのでどうでもいいかと得心して開演を席で待つ。しかし飲み過ぎたのか、どうにも落ち着かないのでトイレに行く。するとヨーラン大先生がトイレにおり手を洗っている、その中腰で手を洗っている先生めがけてヒゲの総帥は声を掛ける「ヨーラン、しっかり演奏するんだぞ!ガハハ」と言いながら、ヨーランの尻をバチンバチンと二発叩く。非常に肉厚であった。


魔法の笛を操る男、笛が魔法なのか、笛吹きが魔法使いなのか、それともその両方なのか。それはどちらでもいい、長きにわたって演奏され続けてきたスウェーデンの民俗音楽がはじまる、その土臭さ、空気の冷涼さ、人々の生活のリズム、イントネーション、妖精や悪魔、そういったものが笛の音をして再現されていく。おお、これは呪詛だなとヒゲの総帥は嬉しくなる。ドレープのカーテンにてこれまで折りたたまれていたスウェーデンという土地の記憶の部分が、ゆっくりと開かれていってはまた閉じられて、開かれては閉じて、それがアコーデオンのように繰り返される。何度も繰り返される。



どうしてここ(スウェーデン)はこんなに美しいのだ、どうしてここはこんなに寒いのだ、笛の音は深く下りろ、深く下りろ、と繰り返す。最小限の照明によって映し出された、ヨーラン・モンソン御一行は秀逸の演奏をヒゲの総帥たちに披露してくれた。


終演後、ヒゲの総帥はピアノ工房の軍司に呼び止められる。「全然、どこにおるのか解らんかったぞ、今、来たばかりか?」とヒゲの総帥は軍司にいうが、開演してすぐには着座していたのだと軍司は回答する。


軍司はそのまま夜のネオン街へと消える、ヒゲの総帥は星師匠と別れてコロマンサへ向かう。ヒゲの総帥の携帯には共同経営者で版画家の柿坂万作からメールがきており、「チェコ人がギターを演奏して欲しいというてます」という旨のことが書かれていたのだ。


ゴガッという締まりの悪いガラス戸の音がする。常連の不思議な女とガルパンの男がおり、奥の席にはチェコ人の一団が談笑している、これまた彼らとは久しぶりの再開である。しばらくするとヒューレット・マザーファッカードの男もやってくる。「この男は唐突に僕の家まで来て、どうしてバンドを解散させたんですか。と、殴り込みに来た男なのだ」とヒゲの総帥は常連の二大巨頭にファッカードを紹介する。


するといちげんさんがやってくる。賢そうな輪郭と商才豊かな顎をもった男である、訊くところによれば映像ディレクターをしているとのこと、ある男にこの店で待ち合わせと言われて来たのだという。もちろんその説明である男というのが、冷泉であることはその場にいる皆がわかっている。


5分くらいの時が経過する。どすどすどす。全身の体重を階段にかけた音がする、ドアが開くとそこには全身を黒ずくめにして、さらには大仏のようなパンチパーマになった冷泉が「ぐふふ・・・」と不敵な笑みを浮かべて立っていた。


そういえば去年、奥の席にいるチェコ人の一人と冷泉は殴り合いをして、酒飲み対決をしたのではなかったか。


そこからというもの、ヒゲの総帥の目の前には常にウイスキーがあることになる。チェコの来客からのおごりということで、断っては不躾になると飲み続けたのだが、次の日の公務は二日酔いであった。二日酔いが醒めた頃にはそろそろ終業という時間なのだから、ぐだぐだもいいところである。


冷泉は飲み足りない、飲み足りないと、ブツブツ言いながら、最後にこう言った。


「明日は・・・、地獄にしたいです」。


ヒゲの総帥は地獄には阿鼻叫喚がつきものだと、早速、知り合いのなかで一番良い阿鼻叫喚をあげる男、アキラメ堂のご主人を誘うことにした。


アキラメ堂から返事がくる。


「殺す気ですか?」


今週は、平日ぐっと気温も上がりここから夏日が続くこととなるのだ。水牛の尻尾はまだ見えない。


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by amori-siberiana | 2018-05-18 20:10 | 雑記 | Comments(0)

役所の一室で妙に宇宙めいた音を発する謎の部屋がある。その部屋にはヒゲの総帥と相棒だったテッドが「ハーデス(冥途の神)」と名付けたオバハンが常駐しているのは確かである。


ズキュン、ズキュン、ズキュンと延々と鳴るのだが、それが何の音なのかは知る人しかわからない。もちろん、ヒゲの総帥も音の発生源が何なのかわからない。ハーデスが何らかの儀式をしているのかも知れないし、また冥府とのコンタクトを取ろうとしているのかも知れない。


ズキュンという音はとても機械的であり、どこか滑稽であり、ひと昔前の宇宙戦争に使われていた光線銃の音を連想させるものである。(もちろん宇宙戦争などがどんなものなのかは映画やアニメでしか知らないのだが・・・)。


―さて、ワイン祭の続き―


ヒゲの総帥、タッキー、ジローちゃんに星師匠の四人はワイン祭に来ている。混雑した中でしたたかに試飲を続けて歩きまわったので、これまた随分とくたびれた。くたびれた先でバーカウンターのある一角を見初めてそこへ行くと、白ワインの王様モンラッシェが飲めるというが、値段が高すぎて手が出ない。ということで、比較的に手が出せそうなワインの飲み比べを試してみることにする。


内容は一人4000円でシャンパンと白ワイン、赤ワインをそれぞれ20mlずつリストから選んで飲めるというものだ。


まず、シャンパンを選ぶ。バーカウンターにいる女主人が「あいにくドンペリは売り切れた」と弁解するが、そもそもドンペリやクリュッグのようなギラギラしたシャンパンに興味のない一行はそれぞれ新規開拓という気概でシャンパンを頼む。ヒゲの総帥はなんちゃらかんちゃらのロゼをオーダーしたが、これは失敗に終わった。いや、正確にいうと失敗ではない。成功ではなかったというだけのことだ。


次に白ワインを飲む。これは全員が同じものをオーダーする。そしてこの白ワインの名を今後忘れることはないであろう。「このワインは、危ないね」とヒゲの総帥がいう、「危ないですね」とジローは満面の笑み、タッキーも同意する。


【ムルソー・ジュヌヴァリエール・1ere 2013 ラトゥール・ジロー】


これはブルゴーニュ地方の白ワインだという。グラスを変えてヒゲの総帥がワインを飲む、口の中に住んでいるであろう妖精が叫ぶ、「もっとだ、もっとだ。その酒で俺を溺死させてくれ」というのだ。ジローが「これはバターですね、バターですよ」と言い、ここでヒゲの総帥とハイタッチである。タッキーもすっかり感銘を受けた顔をする。


「以前、モンラッシェを飲んだことがありますけど・・・、これはそれと同じステージにありますね。まだまだステージに上がりたてですけれど、これからが楽しみです」とタッキーは話し出す。ヒゲの総帥の耳は自己の口に住まう妖精の叫びで盛況なので、タッキーの高尚な話しを聞き逃してしまう。飲み干すのが勿体ないが、飲まなくては味わえないというジレンマに駆られる。明らかに他とは圧倒的に何かが違ったワインと出会える幸福は、記憶のなかにあった不幸な出来事をひとつ、知らぬ間に消し去ってくれるようでもある。


ところがヒゲの総帥は赤ワインの選択ミスをした。どうせならと思い切ったところを攻めたが、返り討ちに遭ったのである。


ワインを飲み終えたあと女主人が人数分の伝票を切ろうとするのでヒゲの総帥はそれを手で制止させる。「資源は大事にしなくちゃならない、紙ですら例外ではないのだ。勘定はひとつにまとめて彼のところへ置くように」とタッキーを指さす。律儀なる女主人は笑いながら、ヒゲの詐欺師の言うままにタッキーのところへ伝票をそっと置くのである。


さて、先ほどからケルト音楽の生演奏が流れている。酔っぱらい四人はステージ前へ移動する、会場の盛り上がりが足りないのでヒゲの総帥はステージで演奏するミュージシャンをステージ中央に集めて選曲ミーティングをする。もちろん演奏家の皆さんとは初対面だ。酩酊者の所業とはいえ、よく受け入れてくれたものだ。


ケルト音楽の演奏家たちはヒゲの総帥に指示されたままライアンのポルカを演奏する、会場は盛り上がる。演奏中にヒゲの総帥の背中あたりでガヤガヤする、一体なんだとヒゲが振り返るとそこにいたのはカコフォニー・フィールズ代表のドイワ社長であった。「すぐ阿守君が来とるなってわかったわ」とドイワは笑いながらいう。奇遇にもこのワイン祭の舞台を仕切っているのはドイワ社長だったのだ。


トラッド(民俗)音楽あるところにドイワあり、ドイワあるところにトラッド音楽ありである。


そう、今年の10月にはエストニアから「トラッドアタック」なる怪物バンドを呼び寄せる男である。ドイワはトラッドアタックと殴り合いをさせるミュージシャンを探している、映画「ロッキー」でいうところのアポロ・クリードの挑戦相手を探しているプロモーターというところだ。すでに目星は付いているというが、ヒゲの総帥はトラッドアタックの演奏さえ見られればいいので、対戦相手が誰なのかかなどにはまったく無頓着である。


一行は阪神百貨店でそれぞれ分かれることとなる。それからというものオンラインショッピングでムルソーをポチりそうになる戦いをずっと続けているヒゲの総帥である。ダメだダメだ、過ぎたるは及ばざるが如し。足るを知るということをそろそろ身に染みて学ばなければいけないのだ、だってヒゲは不惑の年齢だぞ。


ああ・・・。


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by amori-siberiana | 2018-05-09 19:33 | 雑記 | Comments(0)

ミカン爆弾の男こと、バナナイチローは失職を目の前にしている。くしくも太平洋の向こう側にいるイチローが特別待遇の契約を球団から勝ち取った同じ時期、もう一人のイチローは失職しようとしているのだから、これはなんとも皮肉なことである。


原因は東京本社からの異動命令にたてついたことを発端とするのだと本人から訊いた。ヒゲの総帥の知人で、アニヴァ―サル・レコードという世界最大手の会社で働いていた男がいるが、この男も急に東京からロンドンへ異動してくれと会社から通達が来た。東京に新居を買ったばかりの彼であったが、苦渋の決断にてロンドンへ行くこととなった。沢山のレコード・コレクションをどうするのか逡巡した挙句、ヒゲの総帥に「預かってくれ」と頼んできた。


ヒゲの総帥は「もちろんだ」と快諾する。そしてすぐさま平尾先生に連絡して「キミがレコードを丁重に預かるように」と他力本願を出す。小説家の平尾先生は「もちろんだ」と快諾する。その後、平尾先生は電気工事士のヤマトコに連絡して「山さんが預かってくれませんか」と懇願する。ヤマトコは二つ返事で「もちろんだ」と快諾をする。あれから数年経つが、あのレコードは今どうなっているだろうか・・・。


話しを戻そう。


ロンドンにて赴任することになったその男。赴任先で家族にも恵まれるが、急に本社からの通達で「日本へ戻るように」と指示がくる。さすがにすでに生活の基盤がロンドンにあるので、それは無理難題であると本社からの人事異動について難色を示すと、次の日には「さいなら、お疲れさまでした」という類の社内メールが来ていたそうだ。ヒゲの総帥は外資系は怖いなとつくづく肝を冷やしていたが、今まさにバナナイチローがその渦中にいるのかと思えば多少なりとも気の毒な感がする。が、やっぱりどこか他人事である。


さて、ゴールデンウィークも終わった。よくギターを弾き、よく本を読み、よくYouTubeを見た休日であった。つまるところ何の予定もなく暇を持て余していたわけであるが、それなりに愉快なこともあった。ちょうどゴールデンウィーク期間中に阪神百貨店にて世界のワインを試飲できる会が催されているとヒゲの総帥に教えてくれたのは、冷泉の弟のジローであった。


どうせ止めどなく酔っぱらったとして、明日も休みなのだからとヒゲの総帥はワイン試飲会へ行くことにする。そしてワインといえば世界最高のソムリエ先生と仕事をするタッキーを呼ばなくては面白くない。この人類史上、例をみないほど愉快でトンマな男は世界のソムリエ御大の側にいることで、まったくもってワイン通を気取る愚か者である。しかし、単なる愚か者ではない。タッキーという男はそういう意味では無邪気であり、自分を駆り立てる好奇心という王者の前ではうやうやしく頭をひれ伏すほど純真さを持つ男なのである。なので偉大なる先人の背中を見て、その感性をラーニングする速さは稲妻の如くである。


このタッキーを連れて世界のワインを飲みあさり、タッキーにうんちくを語らせたらさぞかし面白かろうとヒゲの総帥はほくそ笑む。そのような悪趣味なことを楽しむこのヒゲの総帥も例に漏れず随分と愚か者である。冷泉の弟ジローもワインにはやかましいので、これもやっぱり愚か者の類であろう。


そもそもワインというのは単に味だけを楽しむものではなく、博学的に語られたり、高尚な演出めいたユーモラスなところに面白味があるものなのだ。ワインの香りだ、色だ、哲学だ、文学だ芸術だというもは人間が生きていくうえでさして重要(生存本能におけるワインの優先順位は他事と比較しても随分と下であろう)ではない。その重要ではないことを、さも重要であるように語り合うキッカケを我ら愚か者に与えてくれるこのブドウ酒という飲み物は、その側面において他の酒の追随を許さない。そして都合よくタッキーは日本に滞在しており、さらには半日ほど予定が空いているとはいうではないか。いざ、陶酔のときへ。


西梅田の行きつけのカフェにてタッキーと星師匠と待ち合わせをして、そこから三人で混雑する阪神百貨店の催し会場へ上がる。上がるとさらなる混雑をしており、そこいら中でワインの試飲に群がる人間たちで溢れかえる。ヒゲの総帥はワイン通のタッキーに「どの地域から飲むのか」と訊いてみて、タッキーの背中にくっついていく。祭りで賑わう参道の様相を見せる会場の人だかり。ここだけで1週間に億を稼ぎ出すビッグイベントなのだ。


「阿守さん」とジローが声を会場で声を掛けてくる。「よくこんな混雑でわかったね」とヒゲの総帥が驚くと「すぐにわかりましたよ」とジローは笑いだす。そんなジローの手にはワイン品評リストと使い捨ての鉛筆が握られており、すでに自分が試飲して気に入ったワインには〇印が入っていた。


「アモさん、次はカベルネ行きましょ」、「アモさん、次はリースリングにしましょう」、「アモさん、次は新世界のワインに行きましょ」、「アモさん、ジョージアのワインはないんですかね?」とタッキーはぐんぐんと奥地へ進んで行く。赤に白にスパークリングによく解らないワインにと何でもかんでも飲む。飲んで飲んで飲みまくり、いつしか皆が上機嫌になってくる。タッキーはワインを口の中でゴロゴロ転がしながら汗だくになる。


試飲のたびにタッキーとジローはワインの感想を述べる。さすがにこの二人は板についた評論をするものである、これを拝聴しているだけでも愉快である。ヒゲの総帥は一人のワイン商の男を捕まえて話し出す。このワイン商の男には師匠がおり、その師匠というのは京橋で「ケース」というワインバーを経営しているのだという。


それを聞いてヒゲの総帥は驚く。「奇遇ですね・・・、そのお店でボーヌの07年を飲みましたよ、とても良いワインでした。そうですか、あのかたが師匠でしたか」とヒゲの総帥はワイン商の男に自己の経験を伝える。世にも奇妙な縁があるものだ。


飲みつかれた一同は塩気を求めて簡易のバーカウンターがある一角へ向かう。「タッキー、生ハムを食べようじゃないか」とヒゲの総帥はタッキーを突く、仕方がないなという表情をしたタッキーであるが、「えっ!」という声とともに、その目が、急に見開く。


「アモさん、ジローちゃん!モンラッシェが15000円で飲めますよ!」とタッキーは憑かれたように大声を上げる。「モンラッシェといえば、白のロマネコンティですよ!」とタッキーのテンションは上がる上がる、ジローも「まさか・・・」という顔をする。ヒゲの総帥といえば「モンラッシェ」の一言で王様のレストランという20年以上前のドラマを思い出していた。


確か・・・、第一話で千石さん(松本幸四郎)がオーダーするワインがモンラッシェではなかっただろうか。しかも1970年代だかのヴィンテージを注文するのである、ソムリエはそんなワインは当店にはないというが、千石さんはなぜかそのワインがこっそりと仕舞われている場所を知っており、それをソムリエに伝えるというシーンであった。


「いや、待ってください、20mlで15000円ですって」と言ったのはタッキーであっただろうかジローであっただろうか。


20mlなんていうのは4人で分けられる量ではない。されど4人がそれぞれ注文すると合計60000円であり、バカを申すなというところであろう。しかし、ヒゲの総帥はタッキーをつんつんと突く。タッキーはヒゲの総帥の意図を察してか目も見ず「いや!無理っす!絶対、無理っす」と脂汗をかく。


「タッキー、取りあえずこのカウンターに座るのか座らないのか、それをハッキリさせようじゃないか」とヒゲの総帥はタッキーにかぶり寄る。ワインの試飲で東奔西走していたタッキーは「じゃあ、取りあえず」とカウンターの席に座る。それに続いて四人ともカウンターに座る。


目の前にはワイン飲み比べのメニューがある。モンラッシェには手が届かないが、ここに書かれている品揃えもなかなかのものであることを確認した一行はそれをオーダーすることにした。一人4000円を払う。正確にいうと一人が全てを払うことになってしまうのだが、それはまた後の話し。


バナナイチロー、飲もうじゃないか。飲まずにやってられるか。


次回に続く。


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by amori-siberiana | 2018-05-08 21:49 | 雑記 | Comments(0)


北浜というビジネス街を独立させようと企む、ヒゲの総帥のブログです。
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