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「阿守さんに会わせたい人がいるのです」


そう言ったのは無法松先輩であったか、それともチンピラの男であったか、はたまたその両者であったのかはハッキリと覚えてはいないが、とにかくこの二人と同席しているときにそういう話しがヒゲの総帥へ持ちかけられた。彼の名前はタヌキ君という。


これこれこの日にタヌキ先生を北濱にある猫のひたいのように小さな店、コロマンサへ連れてくるので、ヒゲの総帥にも同席して欲しいとのことである。二人に訊くところによると、とにかくこのタヌキ君は随分と凄いのだそうだ。何が凄いのかについての核心を二人はいつまで経っても話してくれず、ニタニタするばかりなのでヒゲの総帥はタヌキ君についての想像がかきたてられる。


それからしばらくして、その日がやってきた。


ヒゲの総帥がアラタメ堂と星師匠と合流してコロマンサへ行くと、すでに無法松先輩とチンピラの男とガルパンの男。さらに奥の席には冷泉と見るからに優秀そうな男たちが酒を飲んでいる。はたして、このなかのどれがタヌキ君なのかとヒゲの総帥は地獄耳で、奥のテーブルの話しを聞いている。しばらくしてゲームセンス・ゼロの女ことアシムもやってくる、なにか面白そうだなと不動産デザイナーでワイン会のチラシを作った忌部もやってきては、カラカラ笑う。


どうやら、タヌキ君はこの中にはいないらしいということが話しの端々で解った。さらに奥のテーブルにいる一団は株式会社「擬音語」の人たちであり、タヌキ君の上司連中であるということも解った。これだけの人を集結させるだけの男とはどんなものか、ヒゲの総帥は高鳴る胸を抑えながら、王者の到来を待つのであった。


ギシギシ、誰かが階段をあがってくる音がする。いよいよタヌキ君の登場である、同僚と二人でやって来たタヌキ君の手には微妙な水色の婦人用日傘が握られていた。多少、頭が大きくてずんぐりむっくりの体は、彼が何を言わずとも愛嬌の良さを呈している。またタヌキ君の肉体から醸し出されるオーラが「私をいじりなさい」と言わんがばかりの迫力と熱量を備えていた。声は甲高いが耳障りではない。


そこから数時間、コロマンサはタヌキ君という恒星を中心にして、我らはふしだらで自ら輝く術のない惑星のように、タヌキ君からの光を享受または反射するだけであった。


内容などないのだ、中身すらない。経緯もなければ緯度もない、エスでもエムでもなければ、愛でも金融屋でもない。ただ、タヌキ君による自身の胃痛があり、我々は彼のコメディセンスによって腹痛があるばかりなのだ。


さて、タヌキ君登場から数日前後するのであるが、ヒゲの総帥はタッキーと飲みに行く。何の話しをするために彼を呼び出したのかは、残念ながらとんと忘れたのだが、この日は昼間からヒゲの総帥はワインをガブ飲みしていたので仕方がない。タッキーはタクシーで北浜の「ピンク&ガン」までやって来る。


もちろん、何の話しをするために呼び出したのかわからないのだから、そこで何を話ししたのかも大して覚えていない。覚えているのは二つだけ、タッキーが言うには今月末に日本へやってくるOtava Yo(オタヴァ・ヨ)というサンクトペテルブルグ出身のバンドは抜きんでた存在であるということ。そしてヒゲの総帥に天保山の赤レンガ倉庫へ視察へ行って欲しいとのこと。以上の二点である。


前者についてはタッキーに言われるまでもないが、後者については非常に興味があるのでヒゲの総帥は快諾することにした。


タッキーはいう「ちょうどいい日があるんです、この土曜日は赤レンガ倉庫でイベントをしてるので是非、どんなところか見に来てください」とヒゲの総帥を誘う。


「タッキーは一緒に行かないのか?」というと、「毎週土曜はご存知のように役員会なんです」と柄にもなく役員会さえなければ一緒に行きますよといわんばかりのことを言う。多分、役員会があろうとなかろうとタッキーが来ないであろうことは、すぐ解る。


この天保山の赤レンガ倉庫はタッキーの会社が管理しているものだということで、当日はヒゲの総帥に広報の人間をつけて案内してくれるという。この広報の人の名を室堂君という。「そういうことなら、是非行ってみるとするか」とヒゲの総帥は土曜日の予定を空けることにした。


赤レンガといえば、ブランキ―の1st「Red Guitar And The Truth」である。僕の心を取り戻すためにという曲が大好きだ。行かないわけにはいくまい。


いよいよ金曜日、前日となり、ヒゲの総帥と室堂君は電話で話しをする。


「どうもお世話になります、阿守といいます」


「どうも、室堂といいます、よろしくお願いします」


「明日は何時くらいに赤レンガ倉庫へ向かえばいいですかね?」


「明日!!?」


タッキーの世界では日曜日のことを土曜日というのだそうだ。


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ヒゲの総帥は昔のことを思い出す・・・。急にタッキーから電話がかかってくる、緊急事態を暗示する声である「アモさん、これからラジオの生出演です!すぐに来てください」。


「ええっ!?なんも聞いてないよ、タッキー、そのスケジュールを僕に伝えたか?」


「いや・・・伝えてないです」


行けるかっ!


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by amori-siberiana | 2018-06-04 21:25 | 雑記 | Comments(0)


北浜というビジネス街を独立させようと企む、ヒゲの総帥のブログです。