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ヒゲの総帥は田舎の母よりこんなメールを受け取った。




さっきアルバイトから帰って来た。テーブルの上に朝採った大玉のトマトが4個赤くまぶしく目にとまる。


あの頃が甦る。


アパートでトマトをちぎる孝夫。


何年ぶりかに育てた大きいトマト。こんなに立派に出来たのは信じられへんくらい。そばにいたら一番に食べてもらうのに・・・。




あの頃というのはいつなのかヒゲの総帥にはわからなかったが、その後の文面でハッとする。アパートに住んでいたのはヒゲの総帥が6才までであるからして、その当時のことなのであろう。人が住んでいるのだか、アブラムシが住んでいるのだか解らないようなアパートだったと年老いた母親はいつも当時を回想するのであるが、まだ6つ時分のヒゲの総帥にはそれを不自由に思った記憶はない。


もちろん、それは大人からの目と子供からの目という違いがあるのだろうが、周囲もみんな同じような環境で生活してる人たちばかりだったので取りたてて自身の現状を嘆いたことはない。もちろん、6才で自身の置かれた環境を嘆くほど早熟な者もそうはいまい。


ヒゲの総帥は今朝がたにそのメールを受け取り、明日、実家へ帰ろうと決意したのである。何をしに帰るのか、もちろんトマトを食べに帰るだけなのだ。真っ赤に熟れたトマトはあまり好きじゃない、まだ青みが残った酸っぱいトマトが好きなのだ。ヒゲの総帥の帰郷が遅れれば遅れるほど、トマトは熟れてしまい、最後には腐ってしまうだろう。


だから、急いで帰ることにした。


昭和23年生まれのヒゲの総帥の母親は、文頭にもあったようにまだ働いている。愛していたのだかどうなのだかわからない伴侶を喪失し、よく出来る娘を早くに喪失し、社会的にも経済的にも安定しない長男は、異国で革命だ独立だ、果てはビジネスだなんだとギャーギャー言っている。


この年老いた母親はヒゲの総帥が生まれたとき、どのような人間になると想像しただろうか。熱望しただろうか。多分、お金持ちになってくれとか偉くなってくれとか、そういうことは考えもしなかったのではなかろうか。人の役に、世間の役に立ってくれとは思ったかも知れない。


充実した「生」を送れよと、世間に放り出したのだろう。


ヒゲの総帥より30年ほど先に生まれている母親は順調にいけば、ヒゲの総帥より30年ほど早く天寿をまっとうすることになるだろう。いつの間にか人の死には一般的な程度において慣れた。それでもやはりいつか家族と「さよなら」するときが来るのだとすると、どうも恐ろしく感じる。


ヒゲの総帥は走って走って走り回っているが、彼の母親はどうなのだろうか。一か所から動く気配すらない、動かそうと誘ってみたこともあるが、頑として動かないのだ。


「ここが私の家。ここに私の思い出のすべてがあり、私が守って行かなければいけないものがある」


毎回、これなのだ。守って行かなければいけないものはなんだと訊いたら、家と墓だという。どちらも生きてないではないかとヒゲの総帥が言うも、生きてなくともそこに「在る」のだと母親はいう。


なんとも融通が利かない、旧時代的な女である。もっと効率的に合理的に、クラウドを駆使して友人を沢山持って、趣味に余生を使い切るような生き方をしてくれないものか。本当に下手くそな老後の生活設計である、ノスタルジーが彼女を支配しているのだ。


ありとあらゆる想念や愛情が彼女を縛っているのである。なんとも愚鈍で薄幸な女の一生ではないか。トマトひとつを見て、取り返しのきかない時間の概念を追いかける。脳はどんどん萎縮して、身体はどんどん不自由になっていく。



とにかく



私は、この母親のような老人に、なりたい。



下手くそでもいい、自分のままに生きたい。



だから、トマトをちぎりに帰るのである。だって、私だっていつも帰りたいのだから。



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by amori-siberiana | 2018-07-31 00:47 | 雑記 | Comments(0)

文:タッキー  補記および訂正:ヒゲの総帥



①【レコーディングキャンプ『蜂の巣』】



―2007年08月19日―



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2ndアルバムの製作が始まっております。


レコーディング開始は今月末ごろなんですが、それに先駆けてアレンジ等を固めるために、『レコーディングキャンプ・蜂の巣』と称して山本邸に集まっております。


ご存知とは思われますが、シベリアンニュースペーパーおよび13PROJECT(当時の音楽事務所)には金がありませんので、レコーディングスタジオを長期間押さえることができません。


そこで、レコーディングが始まってからああだこうだと悩まずに済むよう、今のうちに一旦仮レコーディングをしておこうということになったわけです。


メンバーは時間の空いた時に山本邸を訪れ、自分のパートを録っていくという、なんともよくわからないことしております。


阿守なんぞは山本邸から職場に通うという気合の入りようです。


低予算でも良いものを作る為にメンバー一同粉骨砕身しておりますので、ご期待ください。


発売時期に関しては後日詳細の発表があるやに思われますので、しばしお持ちを…!


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②【レコーディング開始寸前!!】



―2007年08月22日―



早くも今月の25日からセカンド・アルバムのレコーディングに突入するシベリアンの面々ですが、本日は横浜から藤田“軍司”一宏が来阪し、市内某スタジオにてプリプロダクションを行いました。


7月末からのフジ・ロックも含めたハードスケジュールをこなしながら、アルバム用の書き下ろし新曲の編曲をしているので、この大詰めの時期のスケジュールは殺人的です。


本日も6時間のスタジオプリプロダクションを終えたあと、今度はレコーディングキャンプ“蜂の巣”(山本邸)に戻りアレンジの続きと、ガイドパートのレコーディング(パーカッションやベースを先に録る時の為に、イントロやバッキングのパートを先に作成しておくもの)を行うそうです。


真鍋さんなんかはギタリスト兼プリプロ音源のレコーディングエンジニアとして、昨晩から徹夜作業を続けている状態。大好きなお酒も控えつつストイックに激務をこなしております。


何を作り上げるのにも「生みの苦しみ」というのはあるのでしょうが、今のシベリアンがまさにその状態。思い返せば、アジアティック・スパイをレコーディングした頃もそうでしたね。


しかし、良い物を作り上げる為に一切の妥協は無しという姿勢は美しい限りではありませんか。


偉大なギタリスト ロバート・ジョンソンはブルーズの為に悪魔と契約したと言われていますが、阿守総帥は何と契約したのでしょうか?


消費者金融ではないことを祈るのみです。


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③【男に二言は無い!!】



―2007年08月25日―



◆12:00 シベリアン・ニュースペーパー セカンド・アルバムのレコーディング開始


◆13:30 先鋒の平尾氏が大胆発言!「全曲1テイクで終わらせるから黙って見ておれい!」頼もしい限りです。


◆13:32 平尾氏、前言撤回「もう一回お願いします!!」


穏やかな午後の雰囲気の中、過酷なレコーディングが始まりましたよ。



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大胆不敵な笑みを浮かべる平尾氏



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自分たちのパート録りがないのでリラックスした二人。


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④【レコーディング・レポート】



―2007年08月25日―



平尾さんの前言撤回 のおかげで、どうなることかと思われた初日のレコーディングですが、その後 本調子を取り戻した平尾さんの巻き返しにより予定以上の成果を上げることができました。




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本日は平尾氏に譲り出番の少なかった山本さんは明日が正念場です。



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※エレキベースはガイド用に使用していたもので本日の収録は全てコントラバスでしたが写真を撮るのを忘れていました。


明日はライブ未発表・書き下ろしの新曲の収録が目白押しです。


山本さん・平尾さん 今のうちにゆっくりお休み下さい。明日は、、、、荒れますよ。


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【レコーディング2日目】



―2007年08月26日―



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鬼プロデューサー・タッキー登場


今日も一日ご安全に!!


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【チョイ悪系!?】


―2007年08月26日―


今年の秋の流行は、サングラスにヘッドフォンのコンビネーションがGOOD!


手元のコントラバスがチョイ悪兄貴を演出します。これで巷の艶女からもモテモテ!?


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【なんとか進行中】



―2007年08月27日―


昨日の時点で自分のパートを録り終える予定だった平尾です。


2曲ほど持ち越してしまいました。


なかなかサクサクとは進まんもんです


それでもなんとかレコーディングは進行中です。


1日10時間もスタジオに閉じ込められると、頭がおかしくなりそうですが、なんとか踏ん張ります。


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野良仕事にでも出かけそうな感じの山本さん。


とてもレコーディング中のミュージシャンには見えませんね。


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【3日目開始】



―2007年08月27日―


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タラ登場!!


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【3日目終了・・・そして・・・】



―2007年08月27日―


メンバーのテンションも最高潮!見て下さい、この熱いまなざしを!


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ギター録りも始まり、サウンドにシベリアンらしさが満ち溢れてきました。手前味噌ですが、凄いアルバムになりそうな予感がしてきました。


明日は引き続きギター録りです。阿守総帥&真鍋さん宜しくお願いします。


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【予定どおり遅れてます】


―2007年08月29日―


いや〜、レコーディングなんてものは、いくら事前に準備して綿密な計画を立てたところで、すんなり事が運ぶなどありえないんですねぇ


2日で自分のパートを録り終える予定が、前半戦最終日を迎えようというのに予定の3分の2しか終わらせられなかった平尾です。


なんででしょうね?


人生とはままならないものです。



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本当は寝ているところに眼鏡の上からサングラスを掛けられたにも関わらず、全く気付かず眠り続けている爆睡中のタラさん。


口を開けて寝ているときは、口の中に【梅ねり(梅風味ソフトキャンディ)】を口に入れても30分ぐらいはそのまま寝ています。


【梅ねり】に気付いて目覚めた時の表情が最高です。


いずれ写真に収めたいものです。


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【前半戦最終日でござる】


―2007年08月29日―


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今日で5日目を迎えるレコーディング。


前半戦は本日をもってひとまず終了となります。今日は目にも留まらぬ早弾きでウォームアップを終えた真鍋さんから録音が始まります。


昨日までは12時〜22時という時間制限があったのですが、今日は時間無制限だそうで、ノルマを達成するまで帰してもらえないそうです。


こら大変だっせ!


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【前半戦終了】


―2007年08月30日―


平尾です。


前半戦最終日は地獄でした。


まず真鍋は3曲で4時間半。


阿守は1曲で5時間。


俺も1曲で4時間ぐらい使いました。


真鍋は単純に曲数が多いのもありますが、技術的に難しい部分が多く、リテイクの嵐。


少しでも弱音を吐いたら無理させず交代しよう、と他のメンツは言っていたのですが、気合で最後まで弾き切ってしまいました。


阿守は鬼のような重ね録り。弾き終わった後は、真っ白な灰になっておりました。


俺はとにかく出来上がってない曲をどうするかでてこずりました。2時間ほど1人でスタジオに篭っても一切フレーズが出てこず、「真っ暗闇です」と他のメンツに弱音を吐く始末。「試しに真鍋くん叩いてみなさいよ」ということで、真鍋の遊び演奏から光明が見え、なんとか役目を終えることが出来ました。


昼の12時に始めて、終わったのが午前2時。


こんな嫌な作業は二度としたくないと思いましたが、1週間後には雄作と軍司が参加する、後半戦が始まります。


頑張ります。


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本気モードのクラシックスタイルに切り替える真鍋。このスタイルは相当お尻が痛いそうです。


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5時間の録音を終え、憔悴しきった阿守。


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【前半 名場面集】


―2007年08月30日―


まずは、本邦初公開!今回のレコーディングの道先案内人・エンジニアの「浩司ばい」こと小野さんです。前でだらけている平尾さんは無視して下さい。


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演奏していないメンツが休憩している間も黙々と作業に付き合ってくれていた浩司ばい。作業終了後も満足そうな笑顔で皆を和ませてくれました。


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最終日、最強の難曲を仕上げた総帥、精魂使い果たし抜け殻のようになっています。


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そんな総帥を優しい母性で包み込む真鍋さん、メンバー愛ってこういうものなんですね。


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そんな優しい真鍋さんも時には落ち込むこともあります。ソロが上手く弾けず、レコーディングブースから逃げだし亡命したかと思われた真鍋さんは、トイレで一人で落ち込んでいました。その頃他のメンバーは、睡眠中。


メンバー愛ってなんですか??


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自分に厳しく人に厳しい阿守総帥。イカしたフレーズの出て来ない平尾さんに説教です。
見て下さい、平尾さんのふてぶてしい表情。


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今回のレコーディングに参加してくれたギター&ベースの皆さんです。


どうですかこの本数!?実際には使用されなかった物も何本かありますが、それぞれが多彩な音色で楽曲に広がりを与えてくれました。


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by amori-siberiana | 2018-07-30 21:41 | 雑記 | Comments(0)


2018年10月7日に再活動するシベリアン・ニュースペーパー(SIBERIAN NEWSPAPER)。これからヒゲの総帥が所属することになる団体である。


しかしながら、シベリアン・ニュースペーパーというバンドが盛んに活動していた頃のことを知る人はそんなに多くない。そうなると改めてシベリアンなんちゃらについて、皆でおさらいしておく必要がある。知識というものはそれが社会的に貢献するのであれば共有されるべきものであるし、結局のところ知らないことには人は興味を持たないものなのだ。


今回、シベリアンニュースペーパーについて答えてくれるのは、チェコのデザイナー、ジョセフ氏が描いてくれた「シベリやん」。このシベリやんが君たちの疑問質問なんかを良識あるコンプライアンス内で全て答えてくれる。※感じかたには個性があります。


バイオリン王子から大しておもんないと評価をいただいた第一回はこちら!


https://framehouse.exblog.jp/26958922/



今回は第二回、中盤戦(前より)



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それではいってみよう。


◆質問


彼らは海外でも公演しました、念願のフジロックにも出ました。このときってバンドとしてはCDを何枚出してたの?


◇回答


まだ「ASIATIC SPY(アジアティック・スパイ)」っていう一枚しか出してなかったね。だから人気が出てくるに伴って新しいCDを作らなくっちゃってことになったのさ。また「ASIATIC SPY」の在庫がなくなったというのを繰り返して増版してたからね。



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商品説明(引用)

結成わずか3年でフジロック出演・イギリス公演・そしてBBCからの世界全土に向けてのON AIRなどグローバルな活躍をする7人編成のアコースティック・グループ、SIBERIAN NEWSPAPERの廃盤となっている1stアルバムが、収録曲「SLOVENIAN MORNING」のタイガー魔法瓶TV-CMタイアップ決定により問い合わせ殺到のため急遽再リリースが決定!! BBC Radio 1から世界全土に放送され話題を呼んだ「柵から逃げ出し亡命する軍馬のはなし」や、現在でもライブでは1番の人気曲「僕の村は戦場だった」を含む、バンドの原点となる1枚

Neowingより


※増版しても追いつかないと考えていた、「ASIATIC SPY」は後日、タッキーのデスクの裏から大量に発掘されるのであったが・・・。




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◆質問


幾ら狭い国土だといってもメンバー各人がそれぞれ別々の場所に住んでるのにレコーディングとかどうしたの?もしかしてデータ送信だけでレコーディングしたっていう現代風なやり方だったのかな?


◇回答


いやいや、彼らのレコードの作り方はいたってアナログなやり方だよ。一か所に皆で集まってリハーサルを繰り返しては、ああだこうだ掴み合いの喧嘩をして作ってたんだよ。そこに巻き込まれたのが門司出身の浩司ばいというレコーディング・エンジニアさんなんだよ。



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◆質問


でもさ、例えばバイオリンの雄作さんがレコーディングをしてるときっていうのは、他の人は何をしてたの?


◇回答


ぐわーってなってる雄作さんをただ見てたんだよ。「もっと厳しく」とか「もっとなんかしてくれ」とかフワフワした要求を出してたり、次に録音するパートの人はコントラバスケースの中で寝てたり、あとはベースの山本さんの車(通称:かも南蛮)なんかは車上荒らしに遭ってたりしたね。



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◆質問


ひどいねえ、人が必死で寝ずにレコーディングしているのにその隙に車を盗もうとするなんてね。火事場泥棒みたいな奴がいるんだね。


◇回答


徹夜続きで目の下にクマを作った疲労困憊した山本さんが、窓ガラスをバリバリに割られた愛車を目の当たりにしたときの顔ったらなかったね。割れた窓ガラスを応急処置ってことでガラスを全部はがして、ゴミ袋を窓ガラスがわりに貼って早朝の千日前の大通りを傷ついた愛車で走り去っていく姿ったら悲しかったよ。ただ、なんだか笑える光景でもあったんだけどね。


◆質問


そんな満身創痍で作られたアルバムがセカンド・アルバムなんでしょ?


◇回答


満身創痍でなかったときは一枚もないんだけれどね(笑)。そうだよ、そうして「COMICAL SALUTE(コミカルサルート)」というアルバムが出来あがったわけだね。



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商品説明(引用)

坂本龍一がジプシー・スウィングに手を出したらこうなる!? そんな音楽性を持った7人組インスト・バンドの2作目。優雅で奔放なヴァイオリンが先導するアコースティック・アンサンブルは、言わば〈夢の国の民族音楽〉で、脳内には「アルプスの少女ハイジ」で見たような緑溢れる景色が広がる。爽やかに、ファンタスティックに、クルクルと展開するサウンドには、誰もを幸せな気分にする魔法が宿っている。


ヴァイオリンにアコギ&クラシック・ギター、パーカッション、ピアノを含む異色の7人編成で繰り出すアコースティック・アンサンブル。ヴァイオリンが軽やかに歌い、トライバルなパーカッションが躍る、優雅かつ攻撃的なクラシック・タッチのメルヘン・サウンドは「世界の車窓から」さながらのさまざまな風景を喚起させる

2008年03月 タワーレコードより



◆質問


知ってるよ。そして見事に全国区のCMタイアップを勝ち取ったんだよね。それってどうやって勝ち取るに至ったの?


◇回答


広告代理店でシベリアンなんちゃらのことを推してくれる人がいてね、その人が企業に向けてプレゼンをして決めてきてくれたんだよ。ただし、コミカルサルートは権利の一部を他局のテレビ局が保有することになってるから、別の曲でってことで「アジアティック・スパイ」からSLOVENIAN MORNING(スロヴェニアン・モーニング)という曲がチョイスされることになったんだよ。


◆質問


リリースした新曲からじゃなくてってところが、シベリアンのなんともいえないチグハグ感だね。でもさ、以前に録音している曲だからそのまま提出わたせばよかったから楽だったんじゃないの?


◇回答


録り直したよ。CMには絵コンテと一緒にゼロ・コンマ何秒というところまで書き込まれていて、このショットのときに楽曲のここが来て欲しいからというクライアントからの要求に応えるためにテンポを電卓叩いて割り直したりして、再録音も大変だったよ。


◆質問


シベリアンって大変なことばかりだね。どうしてなの?


◇回答


簡単さ、決められた予算のなかで最高のパフォーマンスをしようとするからさ。お小遣いが100円しかないのに、1000円のものを買おうとするわけだからね。そりゃ、皆に頭を下げて「100円しかないんですけど、それください」お願いしますお願いしますと言い続けるわけさ。


◆質問


世間からの反響はどうだった?


◇回答


ゴールデンタイムで日本を代表するアイドルグループの冠番組で延々と流れるわけだから誇らしかったね。ヒゲの総帥のご両親なんていうのは同じ家に住んでても普段は一緒に食事することすらなかったのに、毎週この番組のときだけは二人ともテレビの前に正座して、CMが流れるのを拝みながら楽しみにしてたそうだからね。


◆質問


そしていよいよ船は漕ぎ出されるってわけなんだね。アルバムを発売してからツアーとかするってことになるんでしょ?


◇回答


うん、「THAT'S COMICAL SALUTE SHOW」っていうどっかで聞いたことのあるようなタイトルでツアーをするんだね。メンバー7人とシャチョーとタッキー、チャッピー、そしてタカハシン・コルテスっていうゾンビみたいな顔した音響屋を連れてのツアーが開始されるんだよ。



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◆質問


おもしろそうなツアーだね、目的地というか行き先はどこだったの?


◇回答


簡単だよ、今よりちょっとでもマシなところならどこでも良かったんだ。







つづく


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by amori-siberiana | 2018-07-30 19:06 | 雑記 | Comments(0)

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文:タッキー (2006年度の執筆)


◆セットリスト


1.ガヴォット
2.ホエールライダー
3.緑の手袋をした私のフィアンセ
4.ボクの村は戦場だった
5.カトマンドゥ・ノワール
6.柵から逃げ出し逃亡する軍馬の話し



空気が変わり始めたのはリハーサルの後半、ホエールライダーが演奏されたときからだった。


海外演奏のため、通常演奏時に使う楽器が使用できず、イギリスでレンタルした楽器を使用していることや、前日までのハードスケジュールによる疲労の蓄積、不慣れな英語での音響サイドとのコミュニケーションによって引き起こされた演奏内での不具合や、ステージに漂うある種不自然な空気は瞬く間に消え去って行った。


リハーサル中にも関わらず会場内にいた関係者たちからの拍手と、音響ブースから聴こえてきたエンジニアたちの「エクセレント!」という声が、この日のライブの成功を予期させてくれた。


イン・ザ・シティ(ITC)でシベリアン・ニュースペーパーが出演したのは、LATE ROOMというマンチェスターの中心部ピータースクエアからすぐの場所にある中規模サイズのライブハウス。メイン会場であるミッドランド・ホテルからは目と鼻の距離で、音響設備も僕が知る限りイギリスの同規模のライブハウスの中では、かなり恵まれた環境だった。


リハーサルを順調に終了させたメンバーは、本番に備えて近くのカフェで休憩するものや、スタッフに同行して会場周辺でのフライヤー配布を手伝うもの、ITCのプレス陣のインタビューに対応するものなど、本番までのわずかな時間をそれぞれのスタイルで過ごしていた。


スタッフチームが最終の打ち合わせや確認などを済ませ、予定通り19:00に開場したのだが、その時点で入場してきた観客や関係者、プレスは極僅かな人数。


思わずこの先に待ち受けるシベリアンのライブに一抹の不安がよぎったが、ジャパン・ショーケースの一番手であるミュージシャンのライブ中盤あたりから徐々に人は増え始め、シベリアンの演奏開始寸前には1階フロアーにプレス陣と観客、2階フロアーにはITC PASSをつけたヨーロッパ各国のメーカー関係者やブッキングエージェントといった様子で、開場は満員とまではいかずとも、かなりの人の数でうめられていた。


前の出演者の演奏が終わり、シベリアンへのセットチェンジが始まると、日本の公演時にもおなじみのラヴェルのボレロがSEとして流れ始める。実はITCでは原則的にSEの使用は許可されていなかったのだが、リハーサルでシベリアンの演奏を見て納得してくれた会場の舞台監督であるジム氏が、特別に許可してくれていた。


ステージセッティングが終了し、ボレロが緩やかにフェイドアウトしていくと、それにあわせて、阿守のアルペジオからシベリアンのライブは幕を開けた。


1曲目は、これも最近のライブではお馴染みになってきた「ガヴォット」。


同曲名がフランスの古典舞曲の名称として知られるが、シベリアンのガヴォットは古典舞曲として知られるそれとはまた一味違い、緩やかなクラッシックギター真鍋のソロパートとアコースティックギターのアルペジオの旋律から展開が始まり、徐々にシベリアン節とでもいうべきメロディーラインへと繋がって行く。


さらにクラッシックギターのロングソロの後、本来の“ガヴォット”特有のリズムが盛り込まれている所が、羊頭狗肉には決してならない彼ら特有の知的さを感じさせてくれる。


筆者は本番中、ビデオカメラの撮影に集中していたため気付かなかったのだが、この段階で既にオーディエンスの半数以上は、初めて見るこの日本人のバンドの音楽に魅了されていたらしい。その証拠にガヴォットの演奏終了後、オーディエンスからの予想を遥かに上回る熱い拍手が送られた。


このなった時のシベリアンはもう手がつけられない。


2曲目のホエールライダーでは爽やかな立ち上がりから一転、フロアタムのリズムパターンを軸に、まるで海原をうねる高波のようなアグレッシブさで心の琴線に揺さぶりをかけてくる。以前、作曲者である阿守が、「この曲は未だ行ったことのないグリーンランドまでの旅路をイメージした」と記述していたのだけれど、この日の演奏では、このライブが始まるまでのトラブル続きの旅路をシベリアンのメンバー達が波乗りをする様に乗り越えて行くイメージを受けた。



ホエールライダーの演奏が終わった時には既に、会場は遠い異国の地のライブハウスではなく、シベリアンのホームグラウンドのようになっていた。


大きな拍手の音に混じって、指笛をならす音や賛辞の声が聞こえてくる。


阿守がおもむろにマイクを掴みMCを始める、まずはこの場に足を運んでくれた人たちへの感謝の言葉、そして次に演奏する「緑色の手袋をした私のフィアンセ」の曲名を紹介する。オーディエンスが阿守の拙い英語を本当に理解してくれていたのかは不明だが、またもや大きな拍手で応えてくれる。


そして3曲目「緑色の手袋をした私のフィアンセ」の演奏がはじまる。


本日のセットリスト中、唯一のスローバラード曲。メンバーは一人ずつ丁寧に心を込めて音を紡いで行く。後日、阿守とウェールズを旅したときにこの日聞いたこの曲がずっと頭の中で鳴りつづけていた。スコットランドの古い民謡の一部の曲は、蛍の光など日本人の魂にも深く染み付いた曲として知られているが、シベリアンのこの楽曲は逆に、日本人である彼らの情緒感がイギリスの風土や人々に上手くマッチして溶け込んでいるように感じられた。


その後、短いMCを挿み、4曲目の「ボクの村は戦場だった」が始まる。


まさにシベリアンの代表曲として知られる楽曲なだけに、異国でのオーディエンスの反応が気になる一曲だが、メンバーはそんなことはまるで気にしていないかの様に明るく、充実した表情で演奏をしている。


緩やかで叙情的な第一部は、これ以上ない程に優しく、激しくエモーショナルにかき鳴らされる第二部はこれまでに見たことがないほどに感情的に演奏されていた。直接的な「歌詞」というものを持たない分、シベリアンの音楽は言葉が伝わらない異国の地でも、日本と変わらずオーディエンスに彼らの思い描く風景が伝わって行くようだった。


この曲の曲名はアンドレイ・タルコフスキが監督を勤めるロシア映画の邦題として日本では知られているが、英国での映画タイトルは「My name is Ivan」と名付けられていた上、阿守の紹介した英題は「My village was a battlefield」だったため、オーディエンスに同名映画との関連性は感じられなかったと思われる。


しかし、その部位に語弊を交えずにシベリアンが思い描く―ボクの村は戦場だった―というタイトルに基づいたこの楽曲のストーリーは伝わったのではないかと勝手に解釈している。


余談になるが、このツアー中に阿守がふと漏らしていた「オーディエンスや業界関係者たちが自分たち(シベリアン・ニュースペーパーとはどういう意味かなど)を理解するために宗教的な意味合いや、政治的な意味合いを求めていくことに不安を覚える」という言葉が、この場限りでは無用の心配に思えた。


どのようなタイトルを楽曲に付け、どのようなアーティスト名を名乗り、どのような経歴を持ちえても、このように自分たちが生まれ育った環境とかけ離れた土地で演奏するときには「そこに存在する音楽」以外は関与しようがないのだ。彼らの、時として意味不明な言動や、詳細不明のプロフィール、実態の見えないバンド組織などは、ライブに置いて彼らの音楽を感じる上では重要な要素ではないのだ。


「ボクの村は戦場だった」の演奏終了後、このライブ中に初めて後ろに振り返ったのだが、いつの間にか会場に存在する人の数は大幅に増えていた。撮影中にカメラのフラッシュが若干うっとうしかったのだが、その理由も判明した。


演奏終了後に毎回送られる拍手はその大きさを曲毎に増していっていたし、入場口の階段に待機するガードマンまでもが熱心にライブを見てくれているのが嬉しかった。


この後のMCでは、ついに阿守の英語力に限界がきたのか、カンペを使ってのMCだったが、ぶっきらぼうに「どうせわからないのだから」といったノリで日本語のMCを行うような暴挙を行わず、あくまで少しでも伝えようとする姿勢は逆に好感をもってもらえたのではないだろうか。


そして演奏された「カトマンドゥ・ノワール」。


導入部の演奏が始まったとき、胸に手をあてて周りのメンバーの奏でる音を誰よりも気持ち良さそうに受け入れているコントラバスの山本や、その前で目を閉じて瞑想した様に見えるディジュリドゥのタラを見ていると、このライブを誰よりも楽しんでいるのは彼らシベリアン自身なのだと思った。ダイナミクスのあるサビの部分に入るとメンバー全員が本当に嬉しそうな顔をして演奏している。


彼ら一人一人に思うところはあったのだろうけれど、そんな彼らの幸せそうな表情と、そこから生まれる明るく全てを包み込んで行く様なメロディーに酔っていると、気付かないうちに涙が流れていた。この場に立ち会えた幸せとステージ上のシベリアンの姿から得られる誇らしさとで満ちあふれていた。


2コーラス目のサビの部分で、ヴァイオリンのメロディーが通常演奏時とかなり違う方向に流れたのだが、後に聞いた話ではこの日のライブの異常なテンションと集中力で演奏していたことによって酷使されていた、(土屋の)指がつってしまったらしい。


しかし、本番中には微塵もそんなことは感じさせずにすぐに調子を取り戻し最後まで素晴らしい演奏を聴かせてくれた。


会場のテンションはまさに最高潮の状態で、ラスト1曲「柵から逃げ出し亡命する軍馬の話し」を残すのみとなった。


阿守がMCでもう一度感謝の気持ちと最後の曲名を紹介する。


メンバー全員が見つめ合い、軍馬のイントロが始まる。


コントラバス山本がパーカッション平尾とイントロ中に目をあわせて驚いた表情で笑い合っていたが、それもそのはず。


この日の軍馬は完全に異常なテンポで始まろうとしていた。


イントロが終わり阿守の掛け声から本編が始まるが、予想通りの超高速バージョン。そこにメンバーのハイテンションなグルーヴが加わり、まさに「柵を蹴り破ったうえ、ヨーロッパ全土をノンストップで駆け抜けて行く軍馬の話し」といった感じの演奏だ。


曲の序盤では、楽しそうに演奏していた面々もラストに近づいて行くにつれてどんどんと限界に近い切迫した表情へと変わって行く。途切れそうなギリギリの体力と集中力の中で、奇跡的に演奏は凄まじいグルーヴを持続させていき、シベリアンのメインテーマである「悲劇的ではなく焼けつくようなやつさ。革命に必要なリズムとは」という言葉を実践しきってライブは最終楽章を終えた。


一度目のお辞儀を終えても鳴り止まない拍手と歓声のなか、二度目のお辞儀をしてステージを去る彼らの横顔は、喜びと達成感に満ち溢れ、それを見送るオーディエンスの表情は、満足感とこれからシベリアンが巻き起こしていく事象への期待感で充足しているように見えた。


ステージを終えた楽屋裏でヴァイオリンの土屋雄作はこう言った。


― まだまだこれが僕たちの革命の出発点ですね ―


こうして、シベリアン・ニュースペーパーの初の海外演奏は幕を閉じたのだが、波瀾万丈な彼らはこの後、帰り道のヘルシンキの上空で死の恐怖を味わうことになる。




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【イギリス人の音楽評論家からみたシベリアン】◆2006年のある変哲もない日。



日本語訳:ドクトール山本



我々には彼らがどのような音楽を奏でようとしているのかは知る由もなかったのだが、彼らの30分間の演奏によって、会場にいた全ての人々は身動きがとれないほどに驚愕させられることとなった。


ライブが終わった後、我々は彼らがどのような音楽を目指し演奏していたのかを検討したのだが、きっと彼らが作り上げたものは我々が想像しうる全てだという結論に至った。


ありとあらゆる楽器を使い、オーケストラ的な複雑なアレンジを施している彼らの音楽は、大げさな表現になるが、地球上の音楽全てを内包した物だ。


中世のイングランド民謡のメロディーに絡まりつく北アフリカ地方の熱狂的なリズム。スパニッシュギター、アボリジニーの気怠いディジュリドゥの音。


GODSPEEDのような広角映像的なポストロックと、カナダの現代音楽的要素。また、Sigur Rosの氷河期の北極のような音の波に、Durutti Columnの様なクラッシック要素を含んだポップミュージック。


あるところでは荒々しく躍動的であり、またあるところでは陰鬱な風景画のようでもある。


それでいて彼らの音楽は首尾一貫しており、よく考えられ、一切気取ったところもない。


この驚くべき7人の若い音楽家たちは集中した演奏の合間にお互いに微笑み合い、演奏の終盤にかけて行われたMCでは、あっけにとられていた我々に対し、少し恥ずかしそうにたどたどしい英語でこう言った。


― この場で演奏することは我々にとってとても誇らしいことです ―


なにをいうか、SIBERIAN NEWSPAPERがこの場で演奏をしたことは、我々にとっての誇りである。


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by amori-siberiana | 2018-07-28 13:30 | 雑記 | Comments(0)

ワイン会の打ち上げが行われることになった。幾つか日程を出し厳正なる審査を経て、ソムリエ全員のスケジュールが空いている日に設定した。


当日。


ワイン会にて北濱ナンバーワン・ソムリエの称号を手にした豚野郎ことタッキーは、接待があり遅れるという。ナンバー・ツー(フランス語風にいえばドゥー)ソムリエのマンホーにいたっては、数日前から夏の盛りの熱射にやられたか、それとも食に当たったかロクに動けない状態だという。


ソムリエ順位でいえば下位であるジロー(第三位)とヒゲの総帥(第四位)、そして審査員長のアラタメ堂のご主人は参加できる。三人で開始しても面白さも半減するだろうと、ほぼ無理やりジンクスでケタケタ笑っていたファラオを居酒屋へ連れて行くことにする。


ジンクスから歩いて3分も歩けば到着する「フクビキ」という居酒屋へ向かう。コロマンサを退いてからというものヒゲの総帥はこのフクビキへ通いだすのだが、とにかく安いのである。頼むものはいつも同じ、まず198円のハイボールである。ここのハイボールは飲んでも飲んでも酔うことがないので、自分が酒に強くなったかのような錯覚を引き起こすが、なんのことはないウイスキー成分が極端に少ないのである。


もちろんこの日も全員でハイボールを頼む。アラタメ堂などはそこからサイドメニューを頼んだりするのだが、ヒゲの総帥はよそ見をせずに看板メニューである「豚鉄」という300円の鍋を頼む。チゲ鍋風のスープに山盛りのもやしと白菜とたまねぎ、そして薄い豚肉が乗っかっている鍋である。カセットコンロが眼前に置かれ、カチッと火がつけられると豚鉄の宴がスタートされる。


ヒゲの総帥は近くだからということで船場ビルディングで仕事をしている、不動産デザイナーの忌部を招く。一緒に安いものを食べようかとメールをすると、「安いもんなら食べます」とすぐに返事がかえってくる。このカラカラと笑う男なくして、ワイン会のポスターもなければヒゲの総帥の沈黙コンサートのチラシもないのである。安いのであれば火事場泥棒に参加することも辞さないという勢いである。


まずアラタメ堂とファラオとヒゲの総帥で乾杯をする、フクビキの店員は「これからまたいつものように人が増えますかね?」と神妙な顔をして問うてくるので、当然であるとヒゲの総帥は憮然として答える。いつかなどはヒゲの総帥と税官吏の上司と二人きりではじまった鍋がいつしか大人数となり、そのまま深夜に忌部の会社へ乗り込んでからの酒盛りがはじまるという顛末であった。


ファラオは早速のようにハイボールを飲みながら、せっせこせっせことスマホを触りだす。「ファラオ、ちまちまと何をしてるんだ?」とハイボール片手にヒゲの総帥はいう、「そうですよ、僕たちを前にして何をしてるんですか」とアラタメ堂も乗っかる。ファラオは呆れ顔をして「今夜の宿を取ってるんじゃないですか!どうせ終電で帰れないでしょう!」という。アラタメ堂のご主人とヒゲの総帥は互いの顔を見合わせて、「そりゃ、そうだな」と感得する。


しばらくすると「やっとりますな」とカラカラ笑いながら忌部がやってきてジンジャーエールを頼む。そして続けざまにジローも葉巻を持ってやってくる、フクビキで葉巻などくゆらすのは世間広しといえどもジローぐらいではなかろうか。あとはタッキーが来るのを待つだけなのだが、タッキーといえば今日は野球をVIPルームで観戦しながら商談をしているというではないか。


「試合が早く済めば、早い段階で合流できます」と聞いていたので、ヒゲの総帥は該当する球場と試合をネットで調べ上げて、アラタメ堂に逐次報告する。


「5対7ですね、7回表です。泥仕合になってきてますね」とヒゲの総帥がいうと、「まだ7回ですか、この調子じゃ長くなるんじゃないですか」とアラタメ堂は返事をする。合計で3度のカセットコンロのボンベ交換を経て、目の前の豚鉄なる鍋はぐつぐつと煮えてきている。


野菜がしんなりしてきて、豚肉に火が通ったころ鍋はそれぞれの椀へと分散されて胃の中へと放り込まれていく。鍋の中にスープしかなくなった後、ここへ麺を投入して第二楽章へ突入する。オーダーのためにテーブルへ置かれたブザーは、何杯飲んでも酔えないハイボールを呼ぶ亡者どもの要求に応えようと度重なるアラートを店員に伝える。それはまるで一族の怨念のようでもある。


鍋のなかにどっさりと投入された麺もぺろりと平らげられる。鍋のなかにはもう何がなんだかわからなくなった野菜の破片が間抜けにプカプカ浮いているだけである。「実はここで凄惨なテロ事件が昔にあったのだ」と大家が新しい借主へは言わずに内緒にしている黒歴史。それを知る隣人が、こっそりと教えてくれた真実のような鍋の様相である。


そんな折、大汗をかきながらタッキーが到着する。タッキーのテーブルの上にも先ほども説明したままの鍋がポツンとある。畳でいうところの「たた」が無くなり「み」だけになったようなのがタッキーを待ち構えている。


「タッキー、よく来てくれた。鍋を頼んだんだけどタッキーが来るまで誰一人として手を付けちゃいかんぞって皆で見守ってたのだ」とヒゲの総帥は息を吸うようにウソをつく。「・・・これのどこが誰も手をつけてないんですか」とタッキーは唖然とするが、その唖然を感傷的にさせる暇を与えずにアラタメ堂が「タッキーさん、ハイボールを頼んでください」と感情の論点を巧みにずらす。タッキーのハイボールが到着して、本日第4回目の乾杯が粛々と行われる。


鍋にはこれでトドメだと言わんばかりの白飯が投入されて、タッキー以外の人間にとっての〆、タッキーにとっては始まりで終わりという雑炊が出来あがる。ずるずると音を立てて雑炊を食べながらタッキーは「このハイボールは酔えないですね、ホントにウイスキー入ってます?」とブツブツ独り言を口にする。


我々からすると、ハイボールが酔えないことなど、今さらながら地球は青かったのですと改めて言われるようなことなので、誰もタッキーの言動を拾わないし当たって然りのことなので感動や発見すらない。


唐突に誰かがファラオの顔を見て「写真展」をやらないかと一堂に言いだす。プロアマ含めたカメラマンやデザイナーがファラオという男を題材に作品を製作して、最終的に合同展として発表するのだという。皆が「いいね」と言いだし、それぞれが発想の翼を広げてアイデアを語りだす。タッキーはそれなら合同展のときに指値オークションをしましょう、ヒゲの総帥はそれを聞いて場所は僕が用意しようと張り切る。ジローは笑いながら葉巻をくゆらせて会話の行方がどこへ辿り着くのか船長のように見ている、忌部はカラカラ笑い、アラタメ堂はファラオを見定める。


ファラオにいたっては「もう好きにしてください」とギロチンにも恐れないトマス・モア卿のような威厳を見せる。


タッキーは何かを思い返すような遠い目をして語りだす。これまでにいろいろありましたと感慨深そうに口上を切る。


「何年前でしょうか。新年早々、久しぶりの友人とお酒を飲んで盛り上がってるとき。アモさんから唐突に千日前の交差点に呼び出されて、タッキーの日頃の苦労に報いるため夜景が綺麗なバーに連れてってやると車に乗せられ、真冬の吉野の山奥へ放り出されました。そうかと思えばすぐそこへ行くだけだからと、何の用意すらさせてくれずに真夏に四国の剣山の頂上まで登山させられました」とツラツラと謝辞と恨みつらみが混ざったモノローグを語りだす。


「剣山なんてまだマシだよ。平尾なんてのはマッターホルンの頂上まで甚兵衛にサンダル姿で連れて行かれたんだからね。山頂でヒステリーを起こしていたのだから大したもんだよ」とヒゲの総帥はいう。タッキーもニンマリしながら「そんな平尾ちんも今では小説家なんですから、面白いですね」という。その顔が「やわた」の通販宣伝をしている船越英一郎にそっくりだったのだ。


「大エジプト展というタイトルをつけて本気で取り組もうじゃないか!」と妙なテンションで一致団結する男たち。フクビキの店員はさっさと帰ってくれと言わんばかりに店内清掃を部分的に開始する。炎と氷。氷はマイナス273℃までしか下がらないが、熱は何万℃にもなって凄いんだぞと言わんばかりに「お会計!!」というヒゲの総帥たち。


そもそも安い店で盛り上がりましょうとは、マンホーの提案であったはずだが、張本人は腹痛にてどうにもならない状態なのだと当日に連絡があった。


今、北濱が必要とするのは地元に根差す小さな小さなコミュニティなのだ。小規模コミュニティといっても最低でも100人は人材が必要である。ゲバラは言った「革命は叙事詩の勝利だ」と。


叙事詩というのはそこに熱い気持ちを持つ人が集まるから成立するものではない。そういうバカなところが世界のどこかに本当にあるんだという、テーゼとアンチテーゼが揃っている安心感こそが叙事詩なのである。ゲバラは革命家として有名だが、実際のところ彼はただの格好いい大人だったのである。


理想と現実は違うという。当然だ。現実は自分が何をするでもなく勝手に成立する、しかしながら理想はどうか?


理想というのを自分のなかで待望するのは、いつも自分というものを客観視している自分という他人なのである。自分が地球一周分歩いて自分の背中と出会うのだ。


そんなヒゲの総帥は人生で初めての有給休暇を取ってみた。


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by amori-siberiana | 2018-07-27 11:41 | 雑記 | Comments(0)

今回は2018年08月05日に北浜のザ・リンクスで開催されるアラタメ堂エキスポ《哲楽》にて、会場の総指揮を執られるファラオ会長をお呼びして、ヒゲの総帥との対談(後半)を引き続きお送りします。


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ー夢を見たことがありますねぇー




ファラオ:ご無沙汰しております。毎日、暑いですね。阿守は体調を崩されたりしておられませんか。


ヒゲの総帥:いえいえ僕などは内勤なので、極端な弱冷であるとはいえ、直接的に日光に当たらないだけマシですよ。


ファラオ:阿守さんは、今のまま同じ仕事を続けていくつもりですか。


ヒゲの総帥:どうですかね、これまで役所勤めなんてしたことがなかったもんですから、そういう意味ではまだまだ興味が尽きないんですけれどね。ファラオこそ、アナログゲームに飽きたりしないんですか?


ファラオ:飽きるとは?


ヒゲの総帥:つまり、ファラオは自分の時間を使って皆をゲームで楽しませていますけれど、それはファラオにとって何らかの恩恵があるものなんですか。そういうイベントをすることにです。


ファラオ:そういえば、阿守さんの言われている質問の答えになるかどうかわかりませんけれど、夢を見たことがありますねぇ。


ヒゲの総帥:夢は犬でも見るそうですから、ファラオでも見るでしょう。


ファラオ:いや、そういうことじゃないんです。その内容です。


ヒゲの総帥:ああ、内容。どんな内容の夢だったんですか。ガイコツが呼んでるとか・・・ですか。



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ーアダムスキー型ー


ファラオ:僕が宇宙船に乗ってるのです。アダムスキー型の宇宙船に乗ってるんです、僕は小さな木製の椅子にちょこんと座らされて宇宙船内の査問会のようなものに出されてるんですねえ。


ヒゲの総帥:つまり、人類の代表みたいになって、宇宙人相手に答弁をするというシチュエーションですか?


ファラオ:いえいえ、僕は僕の代表ですねぇ。僕が座ってると宇宙の帝王がやってきて、「稲垣よ、お前に悩みはあるか」と訊いてくるんですねぇ。


ヒゲの総帥:イナガキとは・・・?


ファラオ:僕の本名ですよ!!


ヒゲの総帥:そうだったかな。ごめんごめん、続けて。


ファラオ:僕は宇宙帝王に言うわけです。「帝王閣下、僕はゲームの会を開催するのなんてやめて、もっと意義のあることをすべきなんではないでしょうか。飢えた人を助けるとか、宣教師になるとか、誰かにとっての転ばぬ杖になるべきではないのでしょうか」と問うわけですねぇ。


ヒゲの総帥:それを聞いて、宇宙帝王はなんて言ったんですか?


ファラオ:今でも一語一句、克明に覚えてますよ。「ひとつ言っておこう。おまえは宣教師ってタイプじゃない。続かないよ。ついでに言うと、スーパーマンでもない。おまえはゲーマーだ。人類の役に立ちたいんだろ?ならもっと面白いゲームを紹介することだ」と言われましたねぇ。


ヒゲの総帥:なんだか、威厳に満ちた言葉で、ファラオがこれまでやってきたことへの自信にもなるね。


ファラオ:ありがたかったですねぇ。


ヒゲの総帥:次のリンクス日曜、趣味のじかんが楽しみですね。


ファラオ:そうですねぇ。


ヒゲの総帥:もう特に話したいこともなくなってきたね。


ファラオ:ありませんねぇ。


ヒゲの総帥:終わろうか。


ファラオ:終わりましょうか。阿守さんは、今日はこれから何があるんですか?


ヒゲの総帥:ああ、これからアラタメ堂のご主人とジローちゃんと不動産デザイナーの忌部とビックリするくらい安いもんを食べに行くんだよ。あとでタッキーも合流するそうだけどね。



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【リンクス日曜、趣味のじかん】



https://www.facebook.com/events/414723152379222/

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by amori-siberiana | 2018-07-24 20:23 | 雑記 | Comments(0)


命にかかわる暑さの恩恵に与る私たち。それはもちろんヒゲの総帥と自称302才のギャラリーの女も日本に住んでいる以上は例外なく一緒なのである。そんな暑さの最中にヒゲの総帥がギターを抱えてギャラリー「遊気Q」で演奏会を催すこととなった。


名付けて、【アモリのつもり 沈黙(シリーズ全四夜)】。


シリーズ第一夜は「月に憑かれた素敵な詐欺師」と題される。


毎回、猫の目のように展示物の変わる遊気Q。そのツタの絡まる大正レトロな青山ビルにて散々冷たい麦茶を飲ませてもらうだけだったヒゲの総帥がいよいよ立つ。


入場はもちろん無料。命にかかわらない程度のチップ用の小銭があればそれで十分。是非とも奮っての皆さまのご来場を心よりお待ちしております。




※懐かしの森本レオの声を想像して、読んでいただきたい。




そこにあるのはエアコンとギターと


ギャラリーの展示物とパイプ椅子だけ、


食べものどころか飲みものも出ない。


マイクもなければ


メロディーすらない。


あるのは完全和音と


不完全和音の響きと、ヒゲだけ。


ヒゲの総帥こと


阿守孝夫という男は、


果たしてミュージシャン


といってよいのだろうか。



お問い合わせ


takaoamori@yahoo.co.jp



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by amori-siberiana | 2018-07-21 10:07 | イベント | Comments(0)

2018年08月05日、北浜の『THE LINKS』において開催される、アラタメ堂エキスポ「哲楽」。そのイベントで主賓となり場を盛り上げてくれるであろう、三郷サイコロクラブの名誉会長のファラオ稲垣会長と仕掛け人でもあるヒゲの総帥こと阿守さんに来ていただきました。三郷サイコロクラブは常々、ヒゲの総帥のブログで「談合チンコロクラブ」として登場する人気クラブです。


今回はファラオ会長がアナログゲームに賭ける想い、またトップクラブを経営運営していくうえでの苦労や発想の原点、人材の育成やマネージメント面での戦略、さらには今後の三郷サイコロクラブの展開などをお聞きできればと思います。


ーまだ、何も話してないじゃないですか!!ー



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ヒゲの総帥:酷暑のなか足をお運びいただきまして、ありがとうございます。ただの稲垣会長からファラオ会長という名前を付けられて、その後のクラブの躍進たるや凄いものがありますね。


ファラオ会長:おかげさまで、自分でもこんなにしっくりくると思ってもいませんでした。それこそワールドカップやってたでしょ、いつの間にかエジプト代表が自分の祖国の代表のように感じられて、頑張れ頑張れと真剣に応援する自分にハッと気がつくときがありますねえ。無意識にですよ、名前って怖いですねえ。


ヒゲの総帥:名は体を表すといいますからね。栴檀は双葉にして芳しく、蛇は寸にしてその気を表すといいます。稲垣というただのゲームマニアの男を捉えて、とっさに「ファラオ」と命名した冷泉さんはなかなかの慧眼の持ち主だったというわけですね。


ファラオ:そもそも皆で集まって、笑ったらウイスキーを一気しなくちゃいけないってゲームのときに冷泉さんがふと、「ファラオさん」と僕のことを呼んだのが起点ですからねえ。人と人の交流から何かが出来上がるっていうのは、こういうことかも知れませんねえ。


ヒゲの総帥:どうしてゲームの会をいろんなところでしようと思ったんですか?


ファラオ:好きだったからですかねえ。


ヒゲの総帥:そりゃそうでしょう(笑)、好きでもないことモチベーション保って継続的にできるもんじゃありません。懲役や労役じゃないんですから。


ファラオ:確かに質問の答えとしては、安易かも知れないですけれど、「好きだから」という理由以上のものをくっつけても、それは周囲は「そうなのか」という納得が得やすくなるだけで、実際のところ蛇足になりますねぇ。だって、ゲームが好きなんですから仕方がありませんねぇ。


ヒゲの総帥:なるほど、それは仕方がありませんね。放っておいても自分を自分が突き動かすのですから、それに抗うことは難しいものです。自分がそうすることによって、クラブに足を運んでくれた人たちが「楽しかった」とか「悔しかった」、一喜一憂している姿はファラオさんにとっての財産になりますね。


ファラオ:そうですねぇ。本当のところ自分が一番楽しいのかも知れませんねぇ。


ヒゲの総帥:じゃあ、ファラオにとってゲームとは何ですか?


ファラオ:ゲームですか・・・(しばらく考える)。ゲームは、ゲームですねぇ。


ヒゲの総帥:(爆笑)そのとおりです。これは質問がよくなかったですね、失礼いたしました。


ファラオ:阿守さん、こんな話しを知ってますか?


ヒゲの総帥:いえ、初耳です。


ファラオ:まだ、何も話してないじゃないですか!!


ヒゲの総帥:すいません(爆笑)。



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ー「在る」けど「有る」ではないー



ファラオ:渡り鳥いるじゃないですか、何千キロも移動する鳥、海へ山へ、まるで国境なんて人が勝手に作ったバカバカしいものだってあざ笑うかのような鳥たち。


ヒゲの総帥:はい、以前にフランスのドキュメンタリー映画だったかで観たことがあります。つまり、ファラオは渡り鳥だということですか?それは初耳です。人間だとばかり思ってました。


ファラオ:人ですよ!人!そんな話しはしてないじゃないですか!!確かに鳥目ですけど、僕は人ですよ。口が悪い!


ヒゲの総帥:すいません(爆笑)。


ファラオ:ひどいことをする人がいてですね、渡り鳥の羽根を切ってみたんですよ、そしたら渡り鳥はどうすると思いますか?


ヒゲの総帥:どうするんだろう。


ファラオ:その羽根を失った渡り鳥はですね、歩いて行くんです。歩く地面がなくなったら、そのまま泳いで行くんです。残酷な話しになりますけれど、それならと渡り鳥の足をちょん切ったら、くちばしを地面に突き立てて、そして前へ前へと進んで行くんです。自分が行かなければいけない何千キロも向こうにある場所へ。


ヒゲの総帥:そこまでして、何が渡り鳥を突き動かすんですか。


ファラオ:本能です。代々、彼らが進化の過程で何億、何兆羽もの犠牲を払って生き延びてきて獲得した本能です。抗うことのできない本能ですねぇ。


ヒゲの総帥:本能ですか、本能って自分自身で感じることができませんよね。


ファラオ:ですから、抗えないんですねぇ。本能を感じようとしているとき人は本能を失ってます。あるのに失っていることになりますねぇ。それって「在る」けど「有る」ではないことなのかも知れませんねぇ。ですけど確実に、本能は常に生きるものすべてに備わっていて作用しています。


ヒゲの総帥:たとえばお腹が空いたとか、眠たくなったとかいう一般的にそれが本能だと言われるようなものの話しではないということですね。


ファラオ:それは本能とはどういうものかを、あくまで極端な喩えを出して広く理解させようとした言いかたですよねぇ。


ヒゲの総帥:毎日そんなことを考えながら、ゲームしてるんですか?大切なことですけれど度が過ぎるとノイローゼになりますよ。


ファラオ:ゲームはそれこそ誰かが編み出した、「工夫」の美しさがあるんですねぇ。誰か顔も知らない人が作ったロジックに基づいた場だけが用意されて、そこへ放り込まれてさて、自分がどうするのかというのが面白いですねぇ。


ヒゲの総帥:その他人が作成したロジックに従うことへの、なんとなくやらされてる感っていうのに拒否反応とか起きないものなんですか?


ファラオ:そこ否定してしまったら、ゲームはゲームから逸脱してお勉強になってしまいますからねぇ。大体、阿守さんにしても僕にしても気がつけばこの世のなかに放り込まれていて、どうにもならない原則に従って生きているじゃないですか。


ヒゲの総帥:なるほど、そういわれれば確かにそうです。僕らは初期設定なんかなくまったくもって選択できずに、ただ運の向くまま風の吹くままにこの肉体と環境に登場していますからね。僕なんてプレイヤーの名前も最初から「阿守孝夫」と決められているわけですから。


ファラオ:ですから、人間の持つ自由意志というのは尊重されて然るべきなんでしょうねぇ。


ヒゲの総帥:ファラオさん、ゲームの醍醐味ってなにですか?


ファラオ:そりゃ、勝敗が決するところでしょう。ゲームから勝敗を取り除いたらただの暇つぶしになってしまいますねぇ。


ヒゲの総帥:インスタントに勝敗がつくということが醍醐味だということですか。


ファラオ:人は誰しも勝ちたいし負けたいんじゃないですかねぇ。勝つことによって味わう快楽もあれば、負けることによって得られる屈辱もあります。勝った側の気持ちになること、負けた側の気持ちになること、これがとても大事なんですねぇ。これを大きな規模でしちゃうと戦争になってしまいますけれど、結局のところ・・・。


ヒゲの総帥:結局のところ?


ファラオ:ゲームには戦争の要素が詰め込まれているんですねぇ。


ヒゲの総帥:えっ?



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ー35という数字ー



ファラオ:でも、三郷チンコロクラブが大切にしているのはゲームに勝つことではなくて、勝った人、負けた人の両者の気持ちが理解できるところです。だって、戦争では負けちゃうと実際に命を落としてしまうけれど、ゲームでは自分の心のなかで作り上げた、その場だけの自分というプレイヤーが敗北するだけですから。


ヒゲの総帥:ゲームで実際に人が死ぬなんてナンセンス極まりないですし考えられないことです。確かシュワルツェネッガー主演の「バトルランナー」というB級映画ではそんなナンセンスが主題になってましたね。


ファラオ:さすが映画通の阿守さん、バトルランナーご存知なんですね。あれ、映画の時代設定は2017年だそうですよ。


ヒゲの総帥:えっ?去年じゃないですか。


ファラオ:そうなんです。僕が主宰している三郷サイコロクラブでは【35】という数字をモチーフにしているんですけど、これが何か阿守さんにわかりますか。


ヒゲの総帥:34でもなく、36でもなく、35・・・。なんだろう、体温にしてはちょっと低い感じがするし、元素記号での35番目は臭素だけどゲームとは結び付かないし、コーランの35番目の章は確かに重要な内容だけれど、遠い気がするし・・・。


ファラオ:わからないですか。


ヒゲの総帥:うーん、降参。「35」という数字にはどういう意味があるんですか?


ファラオ:三郷(さんごう)を35と数字にしてるんですねぇ。


ヒゲの総帥:ええっ、それだけ!!?






つづく

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by amori-siberiana | 2018-07-14 23:18 | イベント | Comments(0)


親愛なる、牛を追う者たちへ



私の名前はエドモント福田。そう、人呼んで「アラタメ堂」。あるときはアキラメ堂、そしてまたあるときはデタラメ堂、お前たちの好きなように呼べばいい。ただし、俺はお前たちが呼びかけたくらいでは振り向かない。元来、親が呼んだって振り向かないのが俺の性分なんでね。


いいか愚か者たち、今回、俺はとんでもない博打をうつぞ。アラタメ堂の挑戦状の最上級版だ。お前たちが「かくかくしかじか、なんたらかんたら」と、もぞもぞして他人に自分の気持ちを打ち明けようとするとき、俺はLCCに乗りまくってLCCならではの空の旅をする。お前たちが日本の敗退によりサッカー・ワールドカップの寝不足から解放されたとき、俺は自宅のパソコンで最初期の一太郎(ジャストシステム)を起動して、ただただ笑う。なにも出来やしないじゃないかと、ただただパソコンの画面に向かって笑うのだ。


卑屈かね?なんとでも言うがいい。今回はお前たちを叩きのめすために十の関門を用意した。そして十人の俺の指揮下の将軍を用意した。ひとりひとりに挨拶をさせよう。




>ファラオさん、他9名が入室しました。




>よろしく




>ファラオさん、他9名が退出しました。


以上だ。


いいか、よく聞けよ。一度しか言わないからな、これが俺からイノベーションへのインビテーションで、今度はアイソレーションでのソリューションだ!

ビジネス街キタハマにアナログゲームが大集結!
本気で遊べ! 全身で楽しめ!

定番のテーブルゲームから本格的なボードゲームまで、あらゆるジャンルのアナログゲームを用意して、個性豊かなエージェントたちが君を待っている。さあ、賽は投げられた。熱く戦い、そして友情を分かち合おうじゃないか。

【開催情報】

2018年8月5日(日) 13:00~19:00

会場:THE LINKS KITAHAMA

アクセス:地下鉄・京阪「北浜」駅から徒歩5分/地下鉄「淀屋橋」駅から徒歩7分

参加費:おとな2,000円 こども500円

募集人数:50名

ラインナップ:カードゲーム(ごきぶりポーカー、ラブレター、ナンジャモンジャ、HANABI、コヨーテ、ハゲタカのえじき、ワードバスケットなど)/ボードゲーム(コードネーム、サイズ大鎌戦役、シヴィライゼーション、カタン、パンデミック、スコットランドヤード東京、ドラスレ、ディクシット、モノポリー、TOKYO HIGHWAYなど)/テーブルゲーム(麻雀、テキサス・ホールデムなど)/会話型ゲーム(人狼、レジスタンス:アヴァロン、ワンナイトマンション、アンロック!、ギャングスターパラダイスなど)ほか多数

【企画の背景】
●THE LINKSというコワーキングスペースは、ビジネスユーザーからの評価が高い。もっと多くの人に知ってもらい、この場所の魅力を感じてもらうために、長時間滞在できるイベントを開催したい。

●テレビ番組などで「ボードゲーム」が最近取り上げられるケースが増え、ボードゲーム専門のカフェも出店が続いている。「機会があれば遊んでみたい」という潜在層が多いはず。

●ボードゲームは会話によるコミュニケーションで楽しむツールであり、さまざまなシーンで最適な人的交流を図ることができる。

●名刺交換だけのビジネス交流より、遊びを通じてお互いを知り、かつ頭脳戦、協力戦などビジネスの能力育成にもつながるボードゲームのイベントのほうが交流が図れる。

【内容】
開催時間中は会場内の好きな場所で、好きなゲームを楽しむことができます。エージェントが受け持つテーブルに行き、参加を申し出てください。
受付で参加費と引き換えに会場内通貨「ファラオ」を渡しますので、ゲームへの参加費やドリンク、軽食の購入に利用してください。ファラオがなくなったときは追加購入できますが、事務局で無料補充のチャンスを得ることもできます。

<会場スペース>
◎尋牛/見跡/見牛/得牛の卓
ビギナーでも安心して参加できるゲームを、4つのテーブルで楽しむことができます。

◎騎牛帰家の卓
アメリカのカジノでおなじみのテキサス・ホールデムをプレイできます。

◎忘牛存人の卓
メインテーブルでは広いスペースを必要とするゲームを専門に楽しめます。

◎牧牛の卓
謎を解き明かして脱出を図るゲームや、重量級ゲームをじっくり楽しむ場所。

◎返本還源の卓
雀士たちがしのぎを削る、麻雀に特化した専用スペースです。

◎入鄽垂手の卓
人狼をはじめとする正体隠匿系ゲームで遊べる部屋です。


■主催:ARATAMEDO
※本イベントのお申し込みは、下記の主催者宛にお申し込みください。

下のURLにアクセスし、お申込みをお願いします。
http://aratamedo.jp/analog_expo


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by amori-siberiana | 2018-07-08 09:50 | イベント | Comments(0)

北濱にあるジンクスにて、吟遊詩人のウォルセア・アスカと久しぶりに会った。彼女の心配事はふたつある、まずひとつは同居しているフェレットの容態、そしてもうひとつはこの日曜日に控えているライファンにおける天候模様である。ライファンというのは「LIFE is FANTASIA」の略称でRPGの世界を体感するイベントだ。


ピアノ工房の軍人もジンクスへやってきて、ヒゲの総帥を交えて三人でソファ席にてなにやら相談をしている。何ができあがるのやら。


話しは少し時間が巻き戻る。ヒゲの総帥は役所を定時に退庁後、ツタの絡まる青山ビルにあるギャラリー「遊気Q」へ向かう、ギャラリーには自称302才の女がおりヒゲの総帥によく冷えた麦茶を出してくれる。ヒゲの総帥はギャラリーにて売っているクッキーを勝手にとり、袋を開けてはソファにもたれてガリガリと容赦なくかじりだす。ギャラリーの女はその様子を見ながら「あなた、それ、売り物なんですよ」と手で口を押さえながら笑うのであるが、ヒゲの総帥はやっぱり容赦なくガリガリやってる。


そういえば、とヒゲの総帥が話しをしだす。


「そういえば、ここへ来る途中なんですけれど万作さんとお会いしました」と。万作というのは淡路町にあるクント・コロマンサというカフェを経営している、ちょんまげ頭の版画家、その名を柿坂万作という男である。雨降りしきる堺筋をヒゲの総帥が歩きながら北上していると、何者かの視線とぶつかる。ヒゲの総帥が視線をあげるとそこには首をすくめた格好の万作がこちらを見ているではないか。


「万作さん、傘が歪んでますよ」、「あ、阿守さん、へえ、歪んでしもうとりますな」というだけの会話であったが、どうして堺筋の西側に万作がいるのかは容易に想像がつく。万作の日課といえば近くのコンビニでの漫画の立ち読みであったのだが、そのコンビニが本棚の陳列スタイルを変えて漫画を置かなくなった。自然と万作は立ち読みができるコンビニへ移動するわけで、それで「遊気Q」の斜め向かいにあるコンビニへ来るようになったのだ。


さて、ヒゲの総帥は本題だとばかりにギャラリーの女に自分の脳みその中にあることを告げる。それは【アモリのつもり】という名称をつけた何らかなのだ、名称の発案はソファの隣に座るギャラリーの女なのだ。


しかしながら、ヒゲの総帥の話しを聞くや否や「いやですよ、いやですよ」とギャラリーの女は手で制していうのだが、ヒゲの総帥は説得を続ける。


「それならあくまでお手伝いという形であれば、いいですわよ」とギャラリーの女が仕方なく譲歩してくれる、ヒゲの総帥はその言葉を聞くや否や手を打って喜ぶ。その模様は子供が嬉しそうにはしゃぎまわる姿と一緒である。


「では、話しを進めてまいります」と帽子を手にとりギャラリーの女に向かってぺこりとお辞儀をしてヒゲの総帥は青山ビルの裏口から出て行く、そしてジンクスへ到着するという足取りであった。


吟遊詩人の女との打ち合わせも終わり、そのままピアノ軍人と一緒にヒゲの総帥は以前から気になっていたお好み焼き屋へ入る。予約で満席なのだが雨の影響による列車のなんたらかんたらで予約客が来ないので入って構わんといわれ、そのまま入る。この軍人とはおよそ25年の付き合いであるが、びっくりするほど考え方や感じ方が噛み合わない場面が多い。しかしながらお好み焼きはきちんと鉄板の上で切り分けて二人で食べているのだ。その切り分けること入念であり、絶対にどちらが大きいとか小さいで喧嘩をしないよう巧みに専用のコテで半々に切り分ける。


「以前、ブライアン・イーノとダニエル・ラノワにインタビューした奴がいて、こんなことを彼らに訊いてたんだ」と日本酒を飲みながらヒゲの総帥は軍人にいう。


「ふん」とだけ言い、軍人はその切れ長の目で話しを前に進めてくれと促す。


「インタビュアーがあなたたちはレコーディングの環境も優れた場所を自由自在に使える。最先端の機器も持っている、それだけ恵まれた環境があることについてどう思うのか?みたいなことを訊いたんだ。その質問への彼らの回答が素晴らしかった」


「どんなん?(訳:どういうふうなの?)」


「確かに私たちは環境に恵まれていることは確かだ。ただ、これからU2のレコーディングをするんだけれど現場には古いテープレコーダーしかないんだよと言われれば、私たちはそのテープレコーダーだけで傑作のアルバムを作るだろう。もちろん作る自信はある、創意工夫してね。そのためのチームなんだから。と言ったんだ」とヒゲの総帥はいう。


軍人は追加注文した焼きそばを食べながら、頭のなかで逡巡して、そして納得したのか焼きそばを胃の中へ放り込んでいく。


「僕はそのインタビューを読んで、なんだか世界が明るくなった気がした。救われた気がした、なるほど機会は常に平等なんだと思った。これは僕もなんかできるぞと感じたのだ。そのインタビューを読んだ当時、自分の将棋盤のマス目が9×9だったのが、90×90くらいに感じられるくらい素敵な言葉だったのだ」とヒゲの総帥は手振りを交えながら軍人に向かっていう。


話しはいいところなのだが、ヒゲの総帥は次にゲームセンス・ゼロの女ことアシムと打ち合わせがあるので、店を出てジンクスの前へ軍人と移動する。しかしながら話しは尽きないのでジンクス前でヒゲの総帥と軍人はあれやこれやを話し出してしまう。アラタメ堂のご主人、ファラオ、そしてアシムがジンクスから出てきても二人の立ち話しは続くのである。


アシムは打ち合わせよりも餃子を焼きたいのだ、餃子を持ってきているのだ、餃子を焼かせろとやかましい。アラタメ堂はコロマンサへ行き、ファラオも山の向こうへ今日は帰るという。30分だけと時間を区切って打ち合わせをして、後は餃子でもなんでも焼くがいいとアシムを「マギー」へ連れて行く。軍人は帰る。


30分もあれば十分だとヒゲの総帥はアシムと打ち合わせをする。「あなたはアシムだ、髪の毛がなくなってもアシムである。右手がなくてもアシム、下半身がなかったとしてもアシムだ。ならば、どこまで切り刻めばアシムはアシムではなくなるのか。つまりアシムの最小単位はどこになるのか」とヒゲの総帥はアシムに問いかける。


「んなの、心っすよ」とアシムはいう。「そういや、この前、阿守さんに言われたことほんのちょっとわかってきたんっすよ。自分の器は自分で決められないってことです」とアシム、確かサラリーマン金太郎かなにかに書かれていたセリフをヒゲの総帥がそのまま転用したのではなかったか。そしてアシムはカウンターでそわそわしだす、グラスに注がれていたウイスキーのロックはロックだけを残して阿呆のようになっている。いよいよそわそわも限界だ「すんません、おかわり!」と右手のひとさし指を一本あげて女オーナーにアシムは自身のアルコール欲求を伝える。すっかり30分は過ぎている。


どんどんとマギーの階段を下りてくる足音がする、振り向くとカラカラと笑う不動産広告デザイナーの忌部がやってくる。飄然たること柳の如し、湿気で髪の跳ねること「π」の如しという感じでバーカウンターに座る。座るというより、とまる。そして忌部がマギーに持ち込んできたものに一同は爆笑する、「こいつはいいな」とヒゲの総帥は腹を抱えて笑い転げて、アシムは「5秒、見てられないっすね」とケタケタ声をあげる。その模様を見ながら「お前ら、実は世界はすでに終わってるんだぞ」と平気で言いだしそうな顔をする忌部。


さらにどんどんと階段を下りてくる足音がする、やってきてのは新たにパンチパーマを巻きなおした黒ずくめの男こと冷泉であった。そして無法松先輩とアラタメ堂のご主人もやって来る。「やっぱ、バーカウンターがあるっていいっすよね」と無法松先輩は子供のようにバーカウンターの横についている、馬の紐を引っ掛けておくための鉄製のバーを押したり引いたりする。


押したり引いたり、その振動がバーの一番端にいるヒゲの総帥にも伝わってきて、まるで海だなと思う。


外に出ると雨は俄かになっており、信号機の光が黒くつるっとした路面に映り込んでいる。なんだか気持ちが晴れるよい週末であった。都会へ出て来て22年、ヒゲの総帥はまだ都会人にはなれていない。都会人か何かもわからない。


すべてはファラオの名のもとに


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by amori-siberiana | 2018-07-07 11:23 | 雑記 | Comments(0)


北浜というビジネス街を独立させようと企む、ヒゲの総帥のブログです。