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2018年を振り返ってみて、まず思いつくことがある。それというのも北濱クントコロマンサという風変りなカフェでの一夜のことだ。この夜、寒いなかにもかかわらず大勢の来客があり、そこで行われていたアイリッシュバンドの演奏は盛況を極めるものであった。


終演後・・・。


賢明なる演者や聴衆は去り、演奏会場となったカフェに集うのは会の責任者であるヒゲの総帥と黒ずくめのIT参謀こと冷泉、そしてチンピラの男と無法松先輩、さらにはギターリストのピロシ君と愛国十字軍のグァルネリくらいであった。


ヒゲの総帥はチンピラの男に命じられるままに、右のこぶしで木製の見た目よりも重たい椅子を殴りつけている。他にも数名が同じことをしていたようだが、今となっては記憶は判然としないし、またその事例が今回の主題ではないので思い起こす手間も省きたい。


冷泉と無法松は何やらくんずほぐれつやっている。いつもの殴り合いの類である。


そのときである、店中に「パキッ」という乾いた音が響いた。音のするほうへ目を向けると無法松がおり、「ちょっと待って・・・、折れた」と自身の肋骨あたりを服のうえからなでる。新年早々、無法松の肋骨は折れることとなった。それがアイルランド音楽の夜なのだ。


こうして衝撃的に始まった新年最初のアイリッシュ音楽の宴、スタートが抜群だっただけにどうやって今年最後のアイリッシュ音楽の宴の幕を下ろせばいいものか悩んでいた。一度折られた肋骨を今日という日に修復すればプラスマイナスがゼロになり辻褄があるのだろうが、誠に遺憾ながら無法松の肋骨は完治してしまっている。


アイデアは出ないまま今日を迎えてしまっているのだが、そもそも計算によって産み出されたアトラクションではないだけに、いくら事前に考えても骨折り損のくたびれ儲けであるのでやめる。


是非とも今夜のアイリッシュ・セッションへお越しいただきたい。自身の飲み食いする以上の対価が発生することはない。そして来られる際にはウソでいいので「あのチラシを見て来ました」と店側に伝えていただけると、光栄の極みである。ウソも方便、それは世界中の歴史が物語っている事実ではないか。


それでは今夜、皆さまとお会いできることを楽しみに。



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by amori-siberiana | 2018-12-15 14:28 | イベント | Comments(0)




これは間違いなく、良い作品だよ」 寺山修司






この男を抹殺しなくてはいかん」 日本版画協会






真冬のニューヨークはマンハッタン。自分が想像していた立ち並ぶビルまみれの国際都市とは違う、その古びた街の埃っぽい景観にただただ圧倒されているのはヒゲの総帥。時差ボケのままホテルの窓から見下ろすマンハッタンは立ち上る蒸気が情緒を香らせ、赤茶けたレンガ造りの建物はこの街が確かにいろいろな分野の才能を生み出してきたのだという風格を感じる。


ヒゲの総帥がどうしてマンハッタンに来たのかというと、それはここに友人ができたからである。友人といってもヒゲの総帥の母親と同じくらいの年齢の夫婦。前述した二つの言葉を日本滞在時には一身に受けた芸術家なのである。


名を長谷川真紀男という。


代々、梅田の少し南側、堂島浜にて船大工を営んできたが戦災により一家は財産を失いほうほうの体で堺まで逃げてきたそうだ。ニューヨークに住みついて30年以上になるという。堂島浜といえば殿様のような笑い声をあげる男が手掛けるシェアオフィスがある辺りではなかったか。


ヒゲの総帥がGoogleの地図を頼りに長谷川夫婦のアトリエ兼マンションに到着すると、細君の晴子さんが笑顔で出迎えてくれる。それにしても道中が寒かった、ハドソン川方面から吹き込んでくる冷気は多分に五大湖を経由したカナダからの肉体を切り裂くような寒さを含んでいたのだ。


到着すると真紀男は仕事をしている。白基調のアトリエ、よく手入れの行き届いた本棚の前、大きな仕事用のテーブルにてジャクソン・ポロックの複製を方眼に細分化した紙を前に、ポロックがペイントした部分へ丁寧に「×」印をつけていっていた。×はひとつ、ひとつと賽の目上にされた□の中に埋まっていく。どのような根拠があってそのようなことをしているのか10のうち10はわからなかったが、ヒゲの総帥の目の前で容赦のない仕事が行われていることはよくわかった。


いつしかヒゲの総帥はギターを弾かなくなっていた、それよりも仕事をして稼ぐということが面白くてたまらなかった。マンハッタンで住むにあたって月々の家賃が50万くらいだと聞いても、それくらいなら住めるなと考えていたのだ。芸術に対して疑問はなかったが報われない不信感を持っていたのは確かである、青春の全てを捧げたつもりだが、一体なんの見返りが自分にあったのだろうか。気が付けば30才も半ばであった、誰よりも出遅れた社会人のスタートであったが、運だけはそのときに至っては彼に味方した。


敢えて自分が音楽をしていたというようなこともしなかったが、自然とこのご夫婦はヒゲの総帥がそういう類の道を歩んでいたことを知っていたようであった。晴子さんの方は最初にヒゲの総帥と山荘で出会ったときのことを今でも覚えているという。山荘の広い玄関口にあるソファでボケッとタバコを吸っているヒゲの男を見て、「この男は芸術家だ、若い頃の真紀男に似ている」と思ったのだと所見をいう。


芸術家としてあらゆるコンペに作品を出しては賞金稼ぎをしながら生活していた若き日の長谷川真紀男。誰よりも若いうちにニューヨークにあるグッゲンハイム美術館にて作品が飾られるという栄誉を授かるも、日本の古株から嫌われて日本を出た男。真紀男の本棚には当時の美術雑誌があり、そこには若き日のサングラスをして顎が強そうな真紀男が大きく映り込んでいる。上半身は裸でデニムのベルボトムを履き、地球儀に聴診器をあてている。なるほど年長者に嫌われそうな生意気な顔をしている。


真紀男はアンディ・ウォーホールにも噛みついた。この銀髪カツラの時代の寵児が【a】というデザインを世に出したとき、真紀男は「こいつはどうにかしてやらなくてはいかん」と使命感に駆られる、このアンディから提示されたデザインに意趣返ししなくてはと散々に考えた挙句、遂に【a´】という作品を生み出す。すると面白い人間がいるもので、その【a´】をアンディ・ウォーホール本人のところへ持って行く。


自分の渾身の【a】が【a´】にして返ってきたアンディ・ウォーホールが激怒したのかどうか知らないが、真紀男の創作した【a´】をTシャツにプリントして、それを着用するのがアンディ・ウォーホールという男のセンスとユーモアの凄味でもあり、偉大なる芸術家でもあると感じる逸話である。


他にもこの男、いや、このご夫婦には面白い話しが沢山ある。ヒゲの総帥は1ドル4セントの話しも好きだし、真紀男と一緒に行ったディア・ビーコン(巨大な現代美術館)での鉄板の逸話も大好きである。



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何より驚いたのはこの夫婦が北濱にあるギャラリー遊気Qにヒゲの総帥のギターの演奏を聴きに来てくれたことである。そして急遽の要請にも関わらず、当日にギャラリーで個展をしていた作家の笹岡氏とヒゲの総帥と真紀男の三人でほんの少しの時間でもデザイン論を語り合うことができた。お互いにその場で言葉は交わしているが、三人とも言葉に大して重きを置いていないので視線と身振りでコミュニケーションを取っていた。


それは愛すべき緊張感であった。デザインという技術をボールにドッジボールや何かの球技をしている気分であった。そして、それを興味深そうに聞いている仲間たちがいる。ああ、今の自分は青春を駆けてきた自身の行いの見返りを享受しているのだなと感じた。


またこの夫婦と会えるのだろうか。また会えるとしたらいつ会えるのだろうか。いつも今生の別れのように感じてしまうのは、何故なのであろうか。



―自分について何が書かれているかなんてどうでもいい。大事なのは、その記事にどのくらいのスペースが割かれているかだ―


アンディ・ウォーホール



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by amori-siberiana | 2018-12-12 00:54 | 雑記 | Comments(0)

明日くらいから寒くなるとのことですので、どうぞみなさま風邪など召さぬようお付き合いくださいませ。





◆12月07日(金) 19時00分から




冷泉酒店 /本町 AGITO




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デザイン:冷泉彦彦

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◆12月08日(土) 19時00分から 





北濱派アーモリーショー /北濱の青山ビル




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デザイン:カラカラ笑う忌部

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◆12月15日(土) 19時00分から





キリンケラーヤマト ケルトナイト /北濱の青山ビル




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デザイン:カラカラ笑う忌部

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◆12月16日(日) 19時00分から






アモリのつもり出張公演 /ギャラリー偏西風






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デザイン:カラカラ笑う忌部

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◆12月22日(土) 不明





アラタメ堂のアナログ忘年会 /THE LINKS ※総帥は不参加




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デザイン:アラン・スミシー

by amori-siberiana | 2018-12-06 18:58 | イベント | Comments(0)


北浜というビジネス街を独立させようと企む、ヒゲの総帥のブログです。
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